読切小説
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青い稲妻
遠雷が響く。遠くからでも青みを帯びた稲妻が見て取れる。
灰一色の殺風景な岩山の上では稲妻の青さはとても鮮やかに、鮮烈に閃いていた。
その内に一条の稲妻が雲の流れに逆らってこちらに向かってきた。一つ、また一つと、まるで雲を蹴飛ばすように速度を上げて近づいてくる。

また、来るのか。

私は身じろぎこそしないものの、己の心を頑なにあろうと引き締める。
そうして、蒼き雷光を纏った彼女は岩山に轟音を立てて着地した。落雷と変わりない音と衝撃が真近で炸裂する。
私は沈黙を貫き、身じろぎもしない。
美しい女性だ。稲妻よりもなお鮮やかな青い髪は腰まで流れて、彼女自身の雷光を映して煌めいている。つり目がちの勝ち気そうな目にも雷の如き強い意志の光を宿している。そして、猛々しさを宿す彼女の体躯は、反面とても魅惑的な形をしていた。
その大きさ故に半ばまで着物からまろび出ている胸は張りも柔らかさも兼ね備え、臀部も着物の上からでもはっきりと形がわかるほどに張り出している。艶かしい脚を惜しげもなく晒し、しゃぶりつきたくなるほどに魅力的だ。
枯れ果てるためにここに座り、枯れ果てたと思ったこの身が熱を持って疼きだしそうになる。

「やっと見つけたぜ。毎度こんな殺風景なところに、来る日も来る日もよく続くじゃないか。俺だったら1日だって耐えられねぇぜ」
カラカラと彼女は笑いながら近寄ってくる。

雷獣の雷鼓。
初めて会った時、彼女はそう名乗った。

「そんなむっつりした顔のままじゃこっちだって景気が悪くなっちまう」
彼女は無遠慮にも私の頭にその豊満にすぎる胸を正面から乗せ、
「いくら修行だっていってもこんないい女が目の前にいて抱かないなんてどうかしてるぜ」
己の右手を自身の下腹部にあてて自慰を始める。
私に見せつけるように女陰を開いて、指を抜き差ししていく。
「じゃあ、我慢比べと行こうか」
彼女はいつもながら愉しそうに唄う。

「んっ、はぁ❤︎」
彼女の指が艶めかしく女陰を出入りする度に声には艶が混じり、指は湿り気を増していく。彼女が身悶えする度に私の頭に乗せられた乳は揺れ、その柔らかさを言葉なく主張してくる。頭にかかる重量がふるふると震える度に、その感触に集中してしまう自分がいる。頭ではなく、両の手の平でその重みを受け止め揉みしだきたいという欲望がせり上がってくる。

いかん。

このままでは彼女の思う壺だと、心を強く持って煩悩を振り払う。
私が心を持ち直した矢先、
「あぅっ❤︎」
一際高い嬌声を上げて彼女が跳ねる。私の頑なになる心の上で柔らかい二つの果実も跳ねる。
耐えるため、思わず歯を食い縛ろうとしてしまうが、それすらも捩じ伏せて私は身じろぎもしないで耐える。

ほたり、と私の膝に雫が落ちる。
彼女の女陰から涎が滴って、私の膝を濡らしていた。彼女の香りが強くなってきている。甘く虫を誘うように、蜜まで用意して。
私の体に熱が戻り始めているのが感じられる。
「ああ、指だけじゃ物足りねぇ。お前のチンポが欲しい」
切ない吐息と喘ぎ声とともに彼女の体から稲妻が漏れ出す。
ぱちぱち、ぱちぱち。
小さく泡が弾けるような音が鳴り始めている。
「あっは、来た来た❤︎ 俺が感じてるこのビリビリをやぁっとお前に伝えられる」
音は彼女の嬌声に共鳴して、重なって大きくなっていく。初め私の肌をなぞって行くだけだった雷は、徐々に徐々に肌に纏わり付いて私の中に入ってこようとする。

バチバチ、バチバチ。
雷は凶悪な音を響かせながら、私を苛んでくる。体の芯から彼女を求めるように仕向けてくる。
彼女から滴る蜜は私の衣服を汚して、大きな染みを作っている。それを目にするだけで私の下腹部にに集まってきている熱がぶるりと身震いをする。
「早、く、戻ってこいよ。戻って、きて、俺を、犯してくれ。お互、いに、我慢は、よくないぜ」
息も絶え絶えな彼女は、私同様にまとわり付く雷で身を焼かれているのだろう。立つことも辛そうになってきている。
徐々に私に寄りかかって重量のある胸肉がずり落ち、今では私の顔面を覆っている。片手は未だ股間をまさぐったまま、もう片方の手で私の頭にしがみつく。そのせいで、彼女の胸が形を変えながら強く押し付けられてくる。着物からはみ出している彼女の素肌が直接触れ、彼女の火照った体温が伝わってくる。
鼻腔を満たす彼女の香りに私は思わず大きく息を吸い込んでいた。

彼女は胡座をかいた私の足に跨って、太腿に股間をひたすら擦っている。私の背中に手を回してしがみついている。濡れた吐息が耳にかかって、こそばゆい。私のやせ細った胸板に彼女の豊満な胸を通して、彼女の熱と彼女の鼓動が流れ込んでくる。彼女から流れ込む電流を通して私に熱が宿り、鼓動とともに下腹部に流れ込んで行くのを感じる。
「あっ、ぁあああぁあぁあ❤︎」
高まり続ける熱に堪え切れなくなった彼女は、ぎゅうっ、と私を強く抱きしめ絶頂を迎えた。
彼女の絶頂とともに雷鳴が轟く、雷光が視界を焼き、電流が快楽となって私に叩き込まれてくる。
心地の良い余韻とともに、気づけば私の股間にあるものは立ち上がっていた。

「また、なり損ねたか」
私は、荒い息をしてしなだれかかってきている彼女を見る。

「かかっ、また俺の勝ちだな」
彼女は心底嬉しそうな笑顔を私に向けてくる。
その顔は稲妻のように鋭く私を打つくせに、まるで日向のように暖かい。
その笑顔のせいで、邪魔をするな、という言葉を口にすることができない。
「じゃ、敗者は大人しく勝者の慰み者になりやがれ」
彼女は私にかける力を強くして、そのまま私を押し倒す。
嗜虐的な笑みを浮かべながら舌舐めずりする彼女は肉食獣そのものだ。まな板の鯉さながらの私はこのまま彼女にされるがままとなるだろう。
彼女が魔物娘であるだけでなく、このやせ細った腕ではあらがえない。彼女の稲妻を受けて私の魔羅は立ち上がったが、体自体には力は入らない。

しゅるしゅるという衣擦れの音とともに彼女の腰帯が解かれる。着物がはだけると二つの乳肉が解放されてまろび出る。薄桃色の乳首はすでに硬く尖り、蜜の滴る女陰も丸見えだ。私は思わず生唾を飲み込んでしまう。
「そんなに食い入るように見るなよ」
興奮するじゃねぇか。歯をむき出しにした獰猛な笑みを彼女は浮かべ、
「じゃあ、いただくぜ」
私の魔羅を一気に飲み込んだ。
「ああああぁぁぁぁあぁっ❤︎」
獣の叫びとともに稲妻が迸り轟く。
私自身堪えられるはずもなく、認めたくもない雄叫びを上げて彼女の胎内に射精していた。ただひたすらに吐き出していた。
頭の中は真っ白で全てが満たされていて、私の求めているものはここにあると認めざるをえず、悔しかった。

二匹の獣が雷鳴さながらに吼え、雷光以上の快楽に焼かれつつ、お互いの体に走る電流に身を任せて睦み合う。
彼女の雷で私はすでに活力を取り戻していた。私を抑えるものは何もなく、私は彼女を貪り彼女も私を貪った。
彼女は私の上で艶めかしく踊って腰をくねらせる。一度(ひとたび)毎に、膣肉が私の魔羅をねぶり上げていく。ぴたりと吸い付いて、ぐねぐねと蠢いている。
「ははっ、硬くなってきた❤︎」
彼女は嬉しそうに股の締め付けも腰の動きも強めていく。

うぐぅ。
強められた刺激に歯の隙間から声を漏らしてしまう。
腰の動きとともに二つの大きな乳房が揺れる。激しい動きに汗が艶めかしく張り付いている。私はたまらず彼女の胸を鷲掴みにしてやる。
「ぅあっ❤︎、ちょっと強、い」
強気な彼女の形の良い眉が切なげに顰められた。その表情が可愛らしくてもっと見たいと思う。
「ちょっと、おい」
私の手の動きに合わせて彼女の乳肉が面白いように形を変える。柔らかく、張りがあっていくら揉んでいても飽きることが無い。私に揉まれながらも、彼女は腰の動きを止めないので乳肉が手の中で暴れている。手のひらいっぱいの柔らかい感触の中で一部、コリコリと主張している部分を摘み上げる。

ぅぅ〜〜〜〜〜っ❤︎
彼女は一層切なげな顔を浮かべて絶頂をむかえる。
と同時に、膣肉が一際強く締め付け蠕動する。私の精液を残らず吸い上げていくようなその動きに、私も堪らず彼女の中に射精する。1度目にも負けないくらいの量を彼女の中に放出していく。
イっている最中に新たに加えられた快感に彼女は背を仰け反らせて、ビクビクと震えている。
彼女の胎内はそんな状況でも、本能なのか、私から精液を搾り取ろうとうねり続ける。目も眩むような快楽が背骨を駆け上がっていく。
はぁっ、ふぅ。
どちらの吐息かもわからない中、彼女は私に覆いかぶさり唇を舌を求めた。
くちゅくちゅと、お互いの唾液が混じって淫美な音を立てる。舌を絡めて貪欲に混ざり合う。

「この野郎、枯れたふりしてノリノリじゃねぇか。次はお前が動けよ」
彼女が仰向けになって股を開く。先ほど私が注いだ精液が女陰から垂れている。
「早くしろよ。お前のザーメンが垂れてもったいないだろう」
「あい、わかった」
急かす彼女を黙らせるために、彼女の女陰に魔羅を突き入れる。
「あはっ❤︎ きたきた」
待ち構えていた膣肉が私の魔羅に絡みつく。直ぐにでも射精したい衝動と快感に耐えながら抽送を繰り返す。
うっ、はっ、はっ、はぁ❤︎ ンっ、んぅ❤︎
一 突き毎に漏れる彼女の喘ぎがたまらない。
彼女と視線が絡み、唇を合わせて唾液を混ぜ合わせる。汗の乗った滑らかな首筋に、鎖骨に舌を這わせると、しょっぱい汗が甘く感じられた。
そして、彼女の胸の山を登っていく。

焦らそうと思ったのだが、私が堪えられずに彼女の乳首にむしゃぶりついてしまう。
「おいおい、随分幸せそうに吸うじゃないか」
嬉しそうに彼女が私の頭を胸に押し付ける。柔らかい感触が顔中を覆い尽くす。若干息苦しいが、息をするたびに彼女の香りが鼻孔に入ってくる。私は舌を平らにして乳首を擦りあげたり、尖らせてつついたり、甘噛みをする。
頭の上で彼女の悩ましい時が耐えずに吐き出されている。
反対の乳房も揉みしだいて、乳首を摘み上げる。
「ぅあンっ、おっぱい大好きだな」
喘ぎ声とともにからかって来る彼女の声に、私は反対の手で尻肉も揉み上げる。
「ンぁ、っは、怒るな、怒るな」
彼女は幸せそうに快楽を享受する。

私の腰の辺りが、ぶるりと震える。
「いいぜ、我慢せずに俺のおまんこにお前のザーメンをブチまけろ。深くまで突き入れて、俺を孕ませやがれ」
その言葉を聞いて腰の動きを速める。
「イイ、いいぜ」
彼女は息も絶え絶えに私の腰に足を回してしがみつく。
挿入が深くなって、彼女の膣内をかき混ぜる。
「もっと、もっと欲しいィ」
彼女の声が大きくなって、私も求める。

私も、お前が欲しくてたまらない。

「出すぞ、雷鼓っ」
彼女の目をまっすぐに見て告げる。
「なっ、こんな時に名前を呼ぶな、馬鹿っぁぁ、あアァぁぁァ〜〜〜〜」
顔を羞恥に真っ赤に染め上げて彼女は今日一番の嬌声をあげた。
膣肉が大波のようにうねって、魔羅を奥まで飲み込んでくる。
亀頭を子宮口に突き当てて、彼女の奥深くで欲望を解放する。金玉の中から根こそぎ精液が飛び出ていく。根こそぎ吸い上げられていく。
3度目の射精であるのに、一番長く彼女に熱を注ぎ込む。
永遠とも思える快感の奔流の末、あまりの虚脱感に私は彼女を抱え込んで倒れ、気絶してしまった。


目を開けると、そこには顔を赤らめたままの彼女がいた。
「ずるい」
彼女らしからぬ、ぽしょぽしょとした声が聞こえる。
「お前、ふざけるんじゃねぇよ。あんなとこで名前呼ばれたら、嬉しくて恥ずかしくて、いつもよりも感じちまったじゃぇか」
まだ動揺が抜けきっていないのだろう。普段なら言いそうにも無い、素直な気持ちが漏れ出ている。
そんな様子を見て、私は知らず、微笑んでいたようだ。
「こら、何だその顔は」
彼女は私の頬を捻り、痛い痛いと私は抗議の声を上げる。
「はん、当然の報いだ」
彼女は拗ねたように唇を尖らせる。
私の頬から手を離して、一つため気をつくと、
「で、まだ続けんのか、こんなこと」
彼女は真剣な目で私を見据えていた。

私は彼女の目を見て考える。
修行、私の求めた道の末。
私は食を断ち座禅を組み、世界に還ろうとした。
だが、最初の回で躓いた。
彼女に出会ったのだ。
最初は一方的に彼女に襲われた。数日間に渡って交わり続けたが、私は隙を見て逃げ出した。
逃げ切った末に、私はまた修行に入る。
私が痩せ細ったころ、彼女は私を見つけた。
痩せ細った私の姿を見て、俺のせいか、と泣いた。
私は、違う、私の望みだと答えた。
そして、いくつかの問答の末に彼女はこう言い放つ。

いいだろう。それがお前の望みなら、追い求めるといい。
それでも、私の望みはお前だ。お前が還るのは世界じゃなくて俺だ。
お前がそれに気付くまで、俺はお前を追い続ける。
諦めるなんて言葉、俺にはねぇんだよ。

その後、彼女は私にまた襲いかかる。今度は私も少しだけ手を伸ばしてみた。

何度も逢瀬を重ねて、いつしか私達はお互いに交わり合うようになった。
それでも、私は道を諦めずに、繰り返し続けた。
今回はこそはと思いつつ。彼女の姿を探してしまう心を諌めつつ。

今回は正直、あと一歩だったと思う。
私が消えていく場所が近づいていた。だが、そこには彼女がいた。
私が消える場所に辿り着く瞬間、彼女に先回りをされてしまったのだ。
そうして、彼女に精を吐き出した時、私は同じ場所を見てしまった。
いや、同じ場所というのはおかしい。そこには私だけでなく、彼女もいた。
私は気づいてしまった。
私の望みはとうに彼女に置き換わっていたのだと。


「お前が望むものは何だ」
彼女は今再び私に問う。
瞳には懇願も悲嘆も期望なく、ただ諦めないという強い意志だけがあった。
私は観念して彼女に告白する。

「雷鼓。私の望みはあなただ」
告げた口で、そのまま彼女を抱きしめて口付ける。
それは私の敗北と諦念の宣言に違いないのだが、口にするととても晴れ晴れしい気持ちがした。

唇を離すと、彼女は嬉しいやら、恥ずかしいやら、驚きも混じった見たことがない表情をしていた。
だが、私の言葉を飲み込むと、
「ようやく観念したか。俺の、勝ちだ」
嬉し涙に目元を濡らしながら、顔をほころばせた。
その顔を見て、私は彼女を改めて強く抱きしめる。彼女も私の背中に手を回して抱きしめてくれる。
互いの鼓動が重なって心地が良い。
灰色の空はいつしか高い青空に変わっていた。


ここで私の求道は終わりなのだが、
私は青い稲妻に打たれて、思いを遂げたということにはしておこう。
16/04/26 23:51更新 / ルピナス

■作者メッセージ
私の書くエロはエロくないですね。難しい。

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