連載小説
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魔王とおしゃべり(取調室にて)
「あなたを雇ってからものすごいスピードで事件が解決していくわね。」

「そりゃどうも」

タバコを吸いながら答える。
ーちなみにこのタバコは教団製のもので、吸わないと魔王の前で魔力に当てられて射精することになる。

「相変わらずドーテーで、彼女もいない。誰か紹介してあげようかしら?」

「いらねえお世話だ。オレはフツーの女の子と結婚するんだよ。」

「無理よ。」

あっさり魔物娘の頂点に否定された。

「わかってるよ。1年前の魔物娘主催のゲームイベントから現代では魔物娘が急激に浸透していった。
…この日本でもはや魔物娘でない“人間”はゼロに等しい。」

「でも、そのなかでも人間をエサとする魔物娘のオリジナルである魔物は人間の男を確実に食らっていく。」

「そのためにオレが雇われたって訳だ。…魔物に詳しくて、かつお前と面識があり、腕もたつ人間の男。」

この仕事も長い。3年前から100件は越した。

「少しでもあなたの元気がつくように、今日はこれを持ってきたの。」

ばさり、大小さまざまの手紙が机におかれる。みな夫婦で幸せそうに暮らしている写真ばかりだ。
「これは?」
「貴方が魔物娘にした魔物からの感謝の手紙。」
「ふーん。」
「なんでそんなにそっけないのよ。」
「人のノロケ見せられて機嫌がよくなると思うか?」

ビキビキと青筋を立てて机に足をかける。
テレビで見る完璧な魔王の顔がため息で曇る。

「どうしてそんなに強情なの?」
「現代から勝手にお前らのパーティーに入れられて、血反吐はきながら旧世代魔王倒してお前を魔王にして、やっと現代に帰ったと思ったら故郷は魔物娘に乗っ取られてました〜 でオレが納得すると思うか?」
机をガンと蹴倒す。容赦なくつづける
「日本の政治も警察も軍隊も司法も何もかもお前らに骨抜きだ。治安はよくなったし、病人もいなくなったが、お前らのやってることはれっきとした侵略行為だよ。
こうなることがわかってたら、オレはお前を魔王にはしなかった。」
「…………………………………………」
少し言葉をつまらせた魔王が切り返す。
「でも、貴方はその“侵略行為”に一役買ってるじゃない。」
「魔物に善良な日本国民殺されるよりマシだ。」
「…貴方は私たちのことが嫌いなの?」
「ああ、嫌いだね。」
「ーーーッ」
泣き顔になる彼女。それを見て罪悪感がよぎる。たとえ今は支配者とちっぽけな始末屋の関係だとしても、

仲間だった時のことを二人とも忘れられないのだ。

「………悪かった。言い過ぎたよ。」
「…いえ、ごめんなさい。あなたの言うことももっともだわ。故郷を汚して、悪い女ね、わたし。」
「ーーハッ魔王が何を今さら。」
「フフ」
「ックク」
「ハハハ」
「ッハハハ」
そうして、少し二人で笑いあった。
手紙を受け取って、警視庁から出る。

落ちる夕日を見て、彼女を責める自分に嫌気がさした。
オレは結局、子供のようにダダをこねているだけなんだと、
本当は感謝したいのだ。
さまざまな腐敗を取り除き、組織を活性化させた彼女の手腕を、
死ぬことを待つだけだった老人や病人に活力を与えた魔物娘の素晴らしさを、
それを与えてくれた彼女に、「ありがとう」の一言がでない。
感謝して身を委ねてしまったらもう戻れない。
日本という国そのものがなくなってしまう、そんな恐怖もある。
オレの故郷がどこかへ行ってしまう。
オレの最後の拠り所。両親を失ったオレの最後のいきる意味。
そんな恐怖を感じながら、オレはまた魔物娘を増やすために、

引き金を引くのだ。
20/06/23 17:07更新 / ぐだぐだ
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■作者メッセージ
井口の過去と、彼の魔物娘嫌いが少しだけわかるかも知れないお話です。
ちなみに魔王に召還された彼は、彼女の戴冠を見届けた後、召還された10年後の日本に戻ります。
待っていたのは魔物娘が当たり前に存在する現代。
変わってしまった故郷に彼はどう思ったのでしょうか…
次も日常回です。
次は彼が最初に魔物娘にした女の子に会います。

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