「今年のクリスマスのプレゼントはどうしよう……ベルン？」

「そうね……どうしようかしら？」

　僕は今、妻であるベルンと一緒に今年で６歳になる愛娘へのクリスマスプレゼント選びのためにおもちゃや子供服のチラシに頭を悩ませながら目を配っていた

「あの子たら、天真爛漫だから何をもらっても嬉しがるのよね……」

　ベルンは少しタメ息を吐きながら娘の長所でありながら親にとっては泣き所でもあることに対して僅かながらの嬉しさを込めて愚痴った

「うん、ルリが真っ直ぐに育ってくれるのは嬉しいけど……たまにはワガママを言ってくれてもいいよね……」

　ぼくもそれに呼応するかのように僕達夫婦のかけがえのない宝物である妻の名前が宝石を意味し僕が日本人だからつけた妻と同じ宝石の名前である日本人らしい名前をつけた愛娘の親にとっては嬉しいけど多少寂しさを感じる美点に対して僕らは贅沢を口に出した

「はあ、暁の気持ちがわかった気がする……」

　僕は娘のクリスマスプレゼントに対して悩むことで幼馴染の親友がよくルリとは違う意味で親泣かせである彼の長男である明君のことで愚痴っていたことを思い出した。ルリがいい意味で子どもぽくて手間がかからないのに対してあの子は母親を幼くして亡くしたためか逆に大人ぽいところがあり父親である暁にとってはある意味で頭を悩ませることが多い

「暁、元気にしているかな……」

「優……」

　暁は僕にとって大切な友人だ。恐らく、色々な人間にはめられて世間から追放された僕のことを信じてくれたのは彼だけだろう。いや、彼だけじゃない。あと他にも１人いる。正確には２人だけだけど
　その人間は僕と暁の大学の共通の友人で性格は多少ひねくれているがなんだかんだで友情に篤い人間だ。だけど、彼とは彼が魔物娘の夫であったことから再会することができた。しかも、なんと彼の妻はベルンの４人いる幼馴染の１人だった
　そして、今はもういない暁と僕の幼馴染であった暁の妻の礼子さんも生きていたらきっと信じてくれただろう
　僕が物思いに耽り、ベルンがそんな僕の心情を察して僕の古傷が開いたような悲しさや寂しさ、切なさを含めた苦しみを少しでも癒そうと見守るような目を向けていると

「パパ〜！ママ〜！」

「「！？」」

　僕らのかけがえのない愛情の結晶である愛らしい愛娘の僕らの名前を呼ぶ声が廊下から聞こえてきた

「ベルン……！」

「ええ……！」

―クシャ―

―ガタガタ―

―クシャ―

　僕達は互いに顔を見合わせると示し合わせたかのようにそそくさと慌てる様に机の上のチラシを多少皺になることを気にせずに引き出しの中にしまった
　そして、しまい終えると

「ルリ、どうしたんだい？」

　僕はなるべく子供が相手をビックリさせるためにイタズラを隠すようになるべく動揺とある秘密を隠しながら娘の呼びかけに応えた

「あ、パパ〜？しょさいにいるの？」

　するとどうやら廊下にいるらしい娘が幼いながらも優秀な自らの洞察力と推理力で僕らがいつも仕事をしていることから推測して両親がどこにいるのかを突き止めて廊下にまだ幼さを感じさせるトタトタとその小さな身体から生み出される可愛らしい廊下を走る音を立てながら書斎へと近づいてきた

「もう！ルリ、廊下は走っちゃダメよ！」

　ベルンは魔物娘の中で最も群を抜いて自らの血統に誇りを持つと言われる貴族たるヴァンパイアのと言う種族の性か、娘の多少行儀が悪い行動を叱った

「は〜い♪」

　母親であるベルンの説教を聞いても走るのはやめたが愛娘はあまり気にせず明るいいつもの声で素直に母親に返事をした
　ベルンはちょっと娘の教育にうるさいと思う所があるがそれは娘のことを思ってのことだ。そう考えると母親を早くに亡くした僕から見てもベルンは立派な母親だと思える

―カチャ―

「パパ〜！ママ〜！」

　ドアノブが音を立て回るとそこからベルンの美しい金髪とルビーのような紅い瞳を受け継ぎながらもベルン曰くどうやら僕と似たらしくベルンと比べると多少丸みを帯びている目を持つ愛らしい僕とベルンの愛娘、ダンピールのルリが両親を見つけたのが嬉しいのか先ほどのベルンの注意を忘れて満面の笑みを浮かべて駆け寄って来た

「ルリ、おいで」

「わ〜い♪」

「もう、家の中じゃ走っちゃダメて言ってるのに……」

　僕はそんな娘のことを両手を広げて迎えてルリはそれを見るとさらに喜色を増して僕の胸目がけて駆けてきた。それを見て先程注意したことをすぐに再び行ったことに少しふてくされながらも仕方なさそうに我が子の明るさと無邪気さに嬉しそうに母性溢れる眼差しを向けた
　ルリは嬉しいことに自分の両親である僕とベルンのことが大好きであり普段の日常ではよく僕達の傍に来て腰に抱きついて来たりすることも多い

「仕方ないよ、ベルン。この家は広すぎるんだし」

「そうね……」

　今、僕ら一家がいるのは僕とベルンが出会い、三日間の主従の関係で過ごしたベルンの屋敷だ。僕とベルンはあの一日目に出会い、三日目に結ばれ、その時に授かった大切な宝物こそルリだ
　ベルンと僕は基本的に静かなこの辺りが好きだけどルリにはいつか父親としては寂しく思うが自らの伴侶を探すために人間の社会で生きていくための術と知識を力をつけてもらうために住宅街の少し広い一軒家を購入して普段はそっちで住んでおり、長期休暇になるとこちらに帰って過ごす様になっている
　でも、やはりこの家は広いからたとえ元気が良過ぎるルリじゃなくても走るのも仕方がないと思う

「ねえ、パパ？ママ？ここでお仕事してたの？それとも……えへへ……」

（うっ……）

　僕は返答に困る娘の一言に僕は心の中で焦りと動揺を感じて固まってしまった。ベルンの方を見るとベルンも苦虫を噛んだような表情と顔を羞恥の赤に染めたような表情が混ざったような表情をしていた

「い、いや……お仕事の方だよ？」

「え〜……そうなの……？」

　僕はなるべく動揺を隠しながら嘘を吐いた。僕の嘘を聞くとルリはちょっとつまらなそうな表情をした。魔物娘の子供は無邪気なのにこう言った知識を知っていることに関して僕は妻との秘め事を知られていると考えるとちょっと気恥ずかしさを感じる時がある
　

「ええ……そうよ、私達は仕事をしていただけよ？ルリ」

　僕が嘘を吐くとベルンもそれに乗ってきた。ちなみにベルンもヴァンパイアのプライドが原因なのか娘の日常におけるこう言った発言に羞恥を感じることがあるらしい。まあ、僕とベルンは魔物娘とインキュバスの性か、夫婦の交わりの際にはそう言った恥じらいはどこかに飛んでいるけど
　そして、ベルンが僕の嘘に乗ったのは僕と同じようにルリはまだ六歳なのだから親としてはクリスマスには夢を持っていて欲しいのだ。だから、僕達は何としてもルリにはばれないようにクリスマスの準備をしなくてはならないのだ

「ところでルリ？ルリは今年サンタさんにプレゼントして欲しいものは決まったかな？」

　僕は子供の夢を壊さない様に今、ルリが最も欲しいものを訊ねた。するとルリは

「う〜ん……いつもパパやママがお仕事でがんばってくれているから欲しいものはないよ？」

「そうか……あはは……」

　この時期では一番困らせる普段なら喜ばれるであろうこんな時にはあまりありがたくない答え
を告げた
　僕は娘の答えを聞くと少し苦笑いをしながら反応するしかなかった
　だが、そんな時に一筋の光明が差した

「あ、でもね……ルリ、いきたいところがあるんだ〜♪」

「「……！」」

　愛娘のその一言に親バカである僕らは耳をすぐに傾けた。たとえ、サンタさんじゃなくても子供が喜ぶのならば親はクリスマスなどのイベントには何かしてあげたくなるものだ
　そして、僕らは娘の願いを聞きとめようと再び訊ねようとした

■作者メッセージ
　ふ〜、ようやくここに到着しました……遅れてすいませんね……少しばかり、悩んでいる者に知恵を授けてばかりなので
　さて、この度の喜劇は日常劇です……
　親にとって、子どものワガママは多少煩わしいところがありますが……この時期だけは特別です……
　なにせ、この特別な夜は子どものワガママを大人が知ることでクリスマスの精霊がそれを実現させる約束された日でもあります……