連載小説
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第1話 少女と青年
「おねぇちゃぁん!どこ〜?」
とある夕暮れの寂れた大きな館があった。そこは、以前は人の住処だったものがいまやデビルバグの巣窟となっている。この少女「マルル」は、自分の住処の中だと言うのに自分の姉と逸れてしまって涙目になりながら歩いていた。

「・・やぁ、そんな浮かない顔をして・・何事かお悩みかな?」
「・・グスッ・・ふぇ・・?」
その声は唐突に訪れた。元々は人も寄り付かないような寂れ切った館だが、そんな場所へこの青年はいつの間にか入りこんでいた。そしてマルルに声を掛けた青年は、マルルの人ではあり得ない足などに構いもせず彼女の手を取った。

「いやいや、これは失礼。私の名前は・・・・・そうですね、「ジョン」とでも呼んでください。以後、お見知り置きを。」
「グスッ・・・・・ジョン・・・さん・・?」
唐突に姿を現し、唐突にマルルに声を掛けた青年はあまり世間に馴染めていないかのようにぎこちなく礼をすると、頭を上げて自分の事も教えた。そして泣きやんだ頃には何故かマルルも自然と自己紹介をしていた。

「・・・ほぅ、マルルさん・・ですか。」
「うんっ!」
すっかり元気を取り戻していたマルルは、すっかりジョンに懐いてしまっている。しかもジョンの腕に抱き付いてスリスリしている。その笑顔は幼い少女そのものだった。

「・・ところで、マルルさんはどうしてこんな所に?」
「あのね?お姉ちゃんとね?はぐれちゃったの・・」
「ほう・・それでは、私が探して進ぜ様」
「ホント!?」
「えぇ。私は「魔法使い」なのですから」
そう言うとジョンは特に魔法陣を敷くことも無くマルルの手に、自分の手を合わせて包んでやると目を閉じた。マルルからすればジョンを襲って引ん剥く事も出来るには出来たが、今は姉と再開すると言う目的の方が優先された。

「・・・お姉さんの居場所は、この真下ですね。どうやら違うフロアを探していたようですな。」
そう言うとジョンは、マルルの頭を数回撫でてやると背中に乗せておんぶして上げ、そのまま下の階へと降りて行った。その時に、マルルにはジョンが不思議な感覚を纏っていると体で感じていた。

「此処の様だね。」
「・・・お・・お姉ちゃん・・?」
「・・・!マルルぅ!(ダキッ!)」
古びたドアをそっと開くと、奥では一人のデビルバグがメソメソと涙を流していた。泣いていた少女が、自分の下半身にも手が伸びていたように見えたジョンだったが、それについては触れないことにしておいた。

「よかったですな、マルルさん。」
「うん!ありがとぉ!ジョンさん!」
「ジョン・・さんねぇ・・・・ねぇ、マルルはジョンさんの事スキ?」
抱き合っている二人の前に立ったジョンが、マルルの頭を撫でてあげた。触角に指が触れる度にザラザラした感触がしたが、ジョンはそれでも頭を撫でていた。それを嬉しそうに受け入れたマルルは、とても良い笑顔を作って笑っていた。その時、マルルの姉が唐突にマルルに質問してきた。

「私の名前はクロ。アナタ・・・ジョンさんだっけ?一人なの?」
「そうですなぁ・・・一人と言えば一人ですし、一人じゃないと言えば一人じゃない・・・ですかな?」
意味不明とも思える言動を吐いたジョンだが、マルル達にはそれが嘘を吐いているようには見えなかった。そして、数拍遅れてマルルが首を縦に振った。先程の質問の答えがやっと帰って来たのだ。その時のマルルの顔は幼さに見合ったように頬を赤く染めていた。

「へぇ・・やっぱり好きなんだぁ・・ジョンさん?恨むなら妹を恨んでよ?」
そう言ってジョンの後ろに回り込んで何か工作を施したクロは、ジョンが疑問符を頭に浮かべている間にも笑顔を絶えず作りながら少しジョンから離れると、手元のスイッチをゆっくりと押した。

「?!(バタン)」
「ジョンさん!」
「喜びなさいよ!マルルには初めての男でしょ?久し振りにHが出来るわ♪」
クロがスイッチを押したと同時に、ジョンの背中に付けられた仕掛けから電流が発して一瞬のうちにジョンは気絶してしまった。ジョンを呼んだマルルだが、もちろん気絶しているので返事は有る筈もない。高らかに笑顔を浮かべて笑っていたクロは、とても14歳とは思えないほどに黒い笑いを浮かべてマルルに一喝すると、ジョンを担いで自分の寝床へと連れて行ってしまった。そこには、マルル達の母親も姉妹もいると言うのに。
10/11/02 07:02更新 / 兎と兎
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■作者メッセージ
さぁ!開始早々でジョンは犯されてしまうのか?これでは主人公の座なんてどこにもあったもんじゃないぞ?頑張れジョン!目を覚ますんだ!
と言う訳で次回もお楽しみに!

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