連載小説
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ジュン「友人とバーに行ったら無理やりに考え方を変えられたよ…」 後編 (アプサラス)
翌日…

「もう退院か。」

「あの女が治すのに協力したとはいえ、あの女が原因で起こったことですよね。」

「確かにな。」

とりあえず俺達は病院から出た。

「なら砦に戻ろう。」

「はい!」

それからしばらくして、砦で今後のことを話し合った。

「さて、これからどうするか。」

「リーダーに会いたいと言ってる女性が来ました。」

「誰だ、こんな時に?」

「どうしますか?」

「簡易検閲を通して異常が無ければここに連れてきてくれ。」

「分かりました。」

それから少し経ってその女性は俺の所に来た。

「で、要件は?」

『要件は1つ、貴方方の開発した件の鎧の情報を渡して欲しいわ。』

「…」

俺は机の右側にあるスイッチを入れた。

『ちょ、何これ!?』

「転送装置だ。」

一瞬の内に彼女は駅の中央部に転送された。

「油断していたから効いたものの、危なかった。」

「もっと検閲を厳しくする必要がありそうですね。」

「だな。」

彼女を強制転送してから次の日に、事は起こった。

「リーダー、大変です!」

「どうした?」

「この手紙を、読んで下さい…。」

「なになに…。」

その手紙には、俺達が開発した鎧及びそのデータを2週間以内に渡さないなら魔王軍が押収すると書いてあった。

「まだ慌てるような状態じゃない。」

「魔王軍相手に、どう戦えばいいんですか?」

「何も闘う必要はない、奴らには俺達なりのやり方で対処したらいい。」

「?」

「とりあえずあの鎧を生産ラインに載せる、話はそこからだ。」

「はい!」

それから1週間経って生産ラインが完成した。

「作ってから作戦を話す、次は参加人数分の生産だ。」

「はい!」

「その間に俺は…。」

「?」

俺はタブレットから、リベリオンのメンバーの報復対象で特に悪質な輩をリストアップすることにした。

「なるほど、なら…。」

「リーダー?」

「よし、結界を起動して生産ライン以外のメンバーは俺と来てくれ。」

「?」

「報復対象を捕獲する。」

「効きますかね?」

「効かなかったとしても報復はしたいだろう?」

「はい!」

それから俺達はやることこそ違うがあっという間に1週間は過ぎた。

「さて、そろそろ来る頃だが…。」

「来ました!」

「…向こうの動きがあるまでは待機だ。」

それからモニターで確認すると、魔王軍の部隊が来たようだ。

「出るか…」

俺は砦の外に出ることにした。

「…!?」

そこに居たのは、ドラゴン、バフォメット、リリム、エキドナなど、最高クラスの魔物達ばかりだった。

『貴方が、リベリオンの将かしら?』

「ああ、そうだ。」

『どうしてあんな恐ろしいものを作ったの?』

「理由を聞いたとして、引くのか?」

『…』

「リベリオンには、お前達に男を奪われた奴や人間を増やす為の道具にされそうになった奴、お前達によって職や希望を失った奴もいる」

『それとこれがどう繋がるの?』

「そういうことの加害者を始末するのが俺達リベリオンだ。」

『そう、だけどあの鎧を作った理由とは繋がらないんじゃないかしら?』

「邪魔をする奴らに対しての防御策だ。」

『つまり私達に対する防御策…』

「そういう事だ。」

「ちなみにもうあの鎧はない。」

『?』

「今俺達が着けているのは改良型だ。」

『あれを更に改良するって…』

「まあいい、俺達の鎧はあくまでも防御用だ。お前達を滅ぼす為に作ったものではない。」

『…。』

「リベリオンの解散と共にこの鎧は抹消する。」

『解散って?』

「報復を望む者が居なくなったその時だ。」

『私達がそこは何とかすべきね。』

「お、あんたは魔物の中では頭が柔らかい方みたいだな。」

『だけど、命を奪っていい理由にはならないわよ?』

「ここに居る奴らの命は奪わない、少なくとも今のところはな。」

『今のところ?』

「あんた達が引けば殺さずに解放してやる。」

『本当に?』

「ただし断った地点で処刑開始、制圧にかかった時間によっては全滅かもな。」

『…考えさせてくれるかしら?』

「もちろん、じっくり考えて判断して欲しい。」

彼女は一度陣営に戻った。

「…。」

「どうなりますかね?」

「まあ、待てば結果は出るさ。」

それから1時間くらい経って、彼女達は返事を決めたようだ。

「で、どうする?」

『引かせてもらうわ、だけどいくつかいいかしら?』

「何だ?」

『1つ目はその人間を私達に渡してもらえるかしら?』

「こちらとしても押し付けるつもりだった。」

『?』

「もうしないように徹底的に頼む、またこういう事になるのが嫌ならな。」

『もちろん、責任を持って徹底的に調教させてもらうから。』

「で、次は?」

『その鎧をリベリオンの解散と共に処分することの署名を。』

「疑り深い奴だ、書類は?」

『ここにあるわ。』

俺は書類を読んで署名した。

「これでいいか?」

『えぇ、大丈夫。』

「なら引き渡す、連れてきてくれ。」

「はい!」

それから数分経って、彼女達が先に口を開いた。

『アキレス腱を切られたり、手足の爪を剥がしたり、全くどういうことかしら?』

「誰も無傷とは言ってないが…」

『やり過ぎよ。』

「命があるだけ感謝して欲しい。」

『…まぁ嘘ではないけど。』

「まだ生きてるだろ?」

『しかもご丁寧に傷口を焼いてあるわね…』

「死なないなら安い。」

『早急にこの国だけでも何とかしないと…』

「そうしてくれ、俺達は方向性は違うが平和の為に行動しているのは同じじゃないか?」

『まあ、根っこは一緒ね。』

「虐げる奴を抹殺するか無力化するかの違いだ。」

『平和的解決という考えは無いの?』

「あんた達が言えるか?」

『?』

「過激派の奴らによってたくさんの仲間を失った。」

『…』

「あんた達も力付くなのは変わらないだろ。」

『否定はしないわ…』

「しかしどこで鎧の情報が漏れた…?」

『心当たり、あるでしょう?』

「愛神の使徒の誰かか…」

『そういう事です!』

「…お前は邪魔をしただけでは飽き足らず魔王軍に情報を売ったのか。」

『…』

「消え失せろ、二度と俺の前に現れるな、と前の俺なら言っていただろう。」

『?』

「次はない。」

『どうして?』

「何も学習してないな、自分で考えろよ。」

『考えても分からないんですけど…』

「…。」

『これ以上聞いても応えなさそうね、私達は帰るわ。』

「リベリオンの仲間には追撃はしないように言っておく。」

『ありがとう。』

それから魔王軍は帰って行った。

「邪魔だと察したのかすぐ帰ったな。」

『?』

「これで借りは返した。」

『…。』

「じゃあな。」

『待って。』

「?」

『借りって?』

「命を助けてもらったからな。」

『でも…』

「全く、お前のせいで俺の精神バランスはズタボロだ。」

『???』

「あの鎧はまだ試作品だった。」

『?』

「吸収する前に頭の中に流れ混んできたことの悪影響が出た。」

『と言いますと?』

「非情な判断に迷いが生まれた、長である以上迷いは禁物だ。」

『そんなに厳しくしないといけないんですか?』

「俺の判断が失敗で組織が壊滅したりする、嫌が応にも厳しくなる。」

『…』

「これ以上俺の精神バランスを壊さないでくれ。」

『バランスが崩れたなら、こっち側に引き込みます!』

「死にたいか?」

ティーアが俺に近づこうとした瞬間、周りに居た仲間が全員彼女に銃口を向けた。

『…』

「俺は俺を必要とする者が居る限り闘う、命尽きようともな。」

『貴方は、それで幸せなんですか?』

「少なくとも不幸ではない、共に仲間が居るからな。」

『でも…』

「お前の幸福論を押し付けるな。」

『…』

「帰れ。」

『…』

彼女は帰って行った。

「ほとんど報復が不完全とはいえ終わった、これからどうする?」

「実際、ほぼ全員の報復は終わりましたし…。」

「しばらくは、様子見だな。」

「はい!」

それから数週間で魔物達は政治、教育、医療のほとんどを掌握した。何でもどんどん政治家を籠絡していったらしい。

「さて、残ったのはあと3人か。」

「今日はあの男の出所日だ、絶対に成功させる。」

「さて、行こうか!」

そして数日経って、全員の報復と魔物達の政治の制圧が終わった。

「後は新しい同士を待つのみ。」

「そうですね。」

「?」

「リーダーと戦ってた日々、楽しかったです。」

「そうか、何よりだ。」

「もう、報復を求める者はいなくなったか。」

「みたいですね…。」

「何故だ?望んでいたことの筈なのに喪失感がある。」

「ですね…。」

「俺は報復の為に刄となって生きてきた、平和な世界における刄の必要性とは…」

『もう刄が活躍する時代は終わりました。』

「なら俺の存在意義も終わったということか。」

『これからは貴方は自分の幸せの為に生きて下さい。』

「自分の、幸せか。」

『そうです!』

「考えたこともなかった。」

『もし案が無いなら、私達のところに来ませんか?』

「何のつもりだ?」

「まあ話を聞こう。」

『貴方達が居なければここまで早く平和になりませんでした。』

「どうかな。」

『平和の為に汚れ役、憎まれ役を引き受けてくれた貴方達に対する報酬です。』

「…俺達は間違っていないと思って動いて来たが、俺達のやった事に恨みを持つ奴らも居る、当然のことだ。」

『その恨みから貴方達を守ります。』

「なぜそこまで俺達に?」

『貴方が、好きだからです…。』

「愛、俺に愛することができるのか…?」

『もう戦う必要はありません…』

見渡すと、恐らくティーアの仲間らしき女達が俺の仲間達に寄り添い、彼らは安らいだ顔をしていた。

『貴方のことですから仲間を置いて自分だけ幸せにはならないと言うと思ったので。』

「そうか、最終的にお前達は目的を達成したか。」

『後は、貴方だけです。』

「なら、1つだけ頼んでいいか?」

『?』

「あいつらを、幸せにしてやってくれ…。」

『もちろん、だけど彼らが幸せになるには貴方も幸せにならないと彼らもきっと満たされないと思うわ。』

「そうか…。」

『約束、覚えてますよね?』

「ああ、もう逃げも隠れもしない。」

彼女は俺に抱き付いてきた、宝物を無くさないように手元におくように。

「この感情が愛かはわからないが、俺の頭に流れ込んできた感情に、暖かいものを感じた。」

『!』

ティーアの表情が一気に明るくなり、その事に俺は安らぎにも似た感情を感じた。

「ふうぅ…。」

『今の貴方、とても安らいだ顔をしてる。』

「愛は分からないが、安らぎは感じた。」

『その調子!』

相変わらず愛は分からない、だがこの安らぎは何にも替えられないものだと思い、これからも大切にして行きたいと思った。
16/04/09 01:25更新 / サボテン
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■作者メッセージ
どうも、サボテンです。

いかがだったでしょうか?

引き続き、感想、リクエストなどありましたらお待ちしております。

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