読切小説
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ある淫魔の憂鬱
 200X年。人間は静かに、滅亡の危機を迎えていた。
 全ては数年前の1999年、突然空に異世界との回廊、通称ゲートが開いたことから始まった。
 ゲートから現れたのは、神話や民話、ファンタジー小説などで語られるような魔物を女体化させたような、魔物娘達だった。手当たり次第に現代社会を侵略し始めた彼女達に対し、人間達は抵抗する術を持たなかった。
 あるいは彼女達が武力で世界の侵略を試みたのであったのならば抵抗出来たことだろう。だが彼女達の目的は人類を皆殺しにし、世界を奪い取る事では無かった。人間と愛し合い、争いも無く末永く幸せに暮らしたいという、そんな恋する乙女のような理想を抱いて現代社会に侵入してきていたのだ。
 どんな相手であろうと攻撃する為にはそれなりの理由が必要となる。だが当時の人間達は少女のような理想を抱いた彼女達を攻撃できるような理由を見つける事が出来なかった。
 そして、その一瞬の躊躇いによって大局は決してしまったのだった。
 魔物娘達。獣や昆虫のような特徴を持つ、美しい女性の姿を持った彼女達が現れて数年。それまで地球上に何十億と居た純粋な人間は、今や山奥や絶海の孤島のような場所にしか見られなくなった。地球上を埋め尽くしていた人類のその大半は、今や侵入してきた魔物達と同じような存在へと変じてしまったのだ。
 魔物娘達の肉体、そして魔界門から流れ出る異世界の空気には、人間を魔物へと変えてしまう力があったのだ。だが人々がその事に気が付いたのは、人類の半数が魔物に変じてしまった後の事だった。
 男性はインキュバスという魔物に、女性はサキュバスを始めとする様々な魔物に変じた今、地球の支配者は明らかに人間では無く、魔物達だった。
 だがそれを憂う者は今やどこにも居なかった。なぜなら、魔物達にとっては恋人とイチャイチャとする事以外は些事でしか無かったからだ。
 皆が皆そんな調子だったから、戦争というものも馬鹿らしくなって無くなった。
 国境というものの線引きも、いつの間にか意味をなさなくなった。
 エネルギー問題、環境問題、食糧問題なども、魔物娘達の魔力エネルギーなどによってご都合主義的な程に見事に解決されていった。勤勉が推奨されていた時代は廃れ、今や働こうとする者は奇異にみられるような時代にさえなっていた。
 人類は堕落してしまったのかもしれない。しかし、皮肉にも人類が人間を辞めたことによって初めて、人類が長い間求めてきた相互理解と恒久平和もまた実現されたのだった。
 ……前置きは、こんなところでいいだろうか?
 何が言いたいのかと言えば、つまりは現代は魔界によって完全に侵略され尽くされ、人類はほとんど魔物になっちゃったけど、平和に幸せに、基本的には何の悩みも無く生活できるようになったっつーことなのである。
 それでもまぁ、たまには波風も立つ。例えば、こんな風に……。


 朝日が顔に当たり、アキラは顔をしかめていつものように隣にあるはずの温もりを探した。
 いい匂いのする柔らかい彼女の身体に顔を埋めてひたる朝のまどろみは何物にも代えがたい至福の時間なのだが、どんなに腕を伸ばしても愛しい人の身体は見当たらなかった。
「ヒロ。どこだ」
 アキラは寝ぼけまなこを擦りつつも狭い六畳間を見回す。珍しく早起きしたらしい愛しい彼女は、日の差し込む窓側の机でパソコンに向かっていた。
 朝はいつも身体も下半身もなかなか離してくれないヒロが食いつくように画面に向かって何かを調べている。
 アキラは落ち着かない気分になって来て、居てもたってもいられなくなる。魔物娘が朝立ちした恋人から一番搾りを啜る事よりも優先するほどの事とは何なのか、恋人のアキラとしては気にならないわけが無かった。
 アキラは簡単に洋服を身に纏うと、足音も殺さずにヒロの後ろに回り込む。彼女は相当集中しているらしく、後ろに回り込んでも全く気が付いていなかった。
 熱心に覗き込んでいる画面上には魔界ネットの掲示板が映っていた。アキラはちょっと安心してしまったが、しかしまだパートナーを見つけられないでいる男性や魔物娘の書き込みなんかがされている掲示板を見てヒロは何をするつもりなのだろうか。
「ヒロ? ヒロってば」
 呼んでも返事は帰って来ない。
 アキラは腋の下から腕を回して乳房を握りしめようとしかけ、その腕を途中で止める。それではいつもやっている事と変わらない。この場合は直接的に視界を遮ってやる方が有効だろう。
「だーれだ」
 と言いながらヒロの目を自分の手で塞ぐアキラ。だが彼の小さな笑顔はすぐに怪訝な物へと変わる。
 手の平が濡れる感触があったのだ。この状況でそんな事になる理由は、考えられる限り一つしかなかった。
「ヒロ?」
「うぇ、うぇぇぇ。アキラぁ」
 アキラに気が付いて振り向いたヒロの顔は、やはり涙で濡れてぐしゃぐしゃだった。
 慌てたのはアキラだ。愛しい人がいきなり泣いているのだからそれも当然だった。一体彼女に何が起こったのか。何が彼女をここまで悲しませたのか。もしも誰かに何かされたなんて事であれば、相手が誰であれ断固として戦わなければならない。
 それにしても泣き顔もそそるなぁなどと思いながら、アキラはひしっとヒロの柔らかな肢体を抱き締める。
「どうした。何があった? 大丈夫。大丈夫だから。俺がそばに居るから。だからそんな泣くなって」
「あき、アキラぁ。あたしってちゃんと個性あるよね? エロいだけの女じゃなくてちゃんと魔物娘してるよね? 魔物娘じゃなくたっていいわけじゃ無いよね?」
「何。急にどうしたんだよ」
「アキラはあたしがサキュバスだから好きになってくれたんだよね。稲荷とかワーウルフみたいなもふもふがいいんじゃなくて、バフォメットとか魔女みたいなロリがいいんじゃなくて、ホルスタウロスやホブゴブリンみたいな巨乳がいいんじゃなくて、ベルゼブブやデビルバグみたいな虫の部分が逆にそそるとかじゃなくて、ウシオニやオーガみたいに無理矢理されるのがいいとかでも無くて、サキュバスである私を好きになってくれたんだよね」
「っ、何言ってんだよ。当たり前だろ」
 アキラは一瞬何を言われているのか良く分からず一瞬口ごもってしまう。それは真剣に答えようとするゆえの沈黙だったのだが、かえってその間は逆にヒロに火をつける結果になってしまう。
「今一瞬何考えたの? あぁそうか。きっとラミア種みたいに全身ぐるぐる巻きにされるのが良かったんだ。それか、ドラゴンみたいな格好いいのが良かったんでしょ! どうせ、どうせあたしなんか」
「ヒロ!」
 理解が追い付かないアキラに出来る事は、怒鳴りながらも震えるヒロの身体を強く抱き締めてやる事だけだった。
「俺が愛しているのはお前だけだから。どこにも行かないから。他に嫁を作る気も無いから。俺のちんこは一生お前専用だから。だから落ち着けって」
 うぅ。うああああ。
 胸の中に顔を埋めて泣き出すヒロをしっかりと抱き締めながら、アキラはちらとパソコンの画面に目を移す。
 そこに映っている文字の列を見て、アキラは何となくヒロが泣いていた理由を察したのだった。


 アキラはベッドの上に深く腰掛け、しっかりとヒロの身体を抱き締めながら、その艶やかな長い髪を撫で続ける。
 アキラとしてはこれだけでも小さな満足感に浸ってしまいそうだったが、ヒロの様子を見ればこの状態をいつまでも続けているわけにもいかなかった。
 ヒロは感情的に声を上げる事は無くなったものの、その瞳からはまだ時折ぽろぽろと雫がこぼれ続けていた。
「いいじゃんかサキュバス。可愛いじゃんか。何が不満なんだよ」
 アキラの腰に巻き付いていたヒロの尻尾がきゅうっと締められる。
「だって。だってあたしにはあったかそうな毛皮も無いし、ロリでも無ければおっぱいもそんなにないし、腕っ節だってそんなにないし、触手とかフェロモンも無いし、使える魔法だってえっちなのだけだし、強気に襲い掛かるわけでも無いし」
「むしろ俺以外の誰かに襲い掛かってたら俺が涙目だよ」
「襲い掛かる相手なんてアキラだけに決まってるでしょ! 他の人に襲い掛かるなんて……気持ち悪い事言わないでよ」
 怒られた。
 だがアキラとしてもヒロが言いたいことを分からないわけでは無かった。ヒロは後天的なサキュバスでもあるせいか、どんな手を使ってでも誘惑するほどの強引さも、無理矢理押し倒して犯し抜くほどの攻撃性も持っていないのだ。
 感じやすく、底なしの性欲で何度絶頂を迎えてもなかなか満足してくれないヒロだったが、恥じらいが全く無いというわけでも無い。その性格も、割と人間だったころの色合いを強く残しているところもある。
 アキラとしてはそこが大好きだったのだが、今ヒロが問題にしているのはサキュバスとしての自分の魅力についてであって、ヒロとしてどこが好きだと言ったとしてもきっと満足してくれないだろう。
「で、でもさ。ヒロだって立派な羽や尻尾や、あと角だってあるじゃん。十分な個性だよ。魔物娘ってだけで、実はかなり特殊な性癖の持ち主をターゲットにしてるんだぜ?」
「でも魔物娘図鑑だと他の魔物の方が明らかに注目されてる……」
 メタ的な発言に、メタ的に返された。
「それに羽や尻尾や角なら、アリスとかアマゾネスだって持ってる。羽の形は違うけどダークプリーストだって。
 ……ねぇ、あたしって何なの! 魔物娘図鑑におけるサキュバスの存在って、何!? 確かに汎用性は高いけど、没個性って事なの? ただのモブキャラなの?」
 アキラは顔を引きつらせ言葉に詰まってしまう。そんな煮え切らない恋人未満の男を問い詰めるような口調で言われても、何を返していいやら分からなかった。
「メインヒロインみたいなもんだよ。投稿数だってほら、一番多いじゃないか(2013/5/24現在)」
「仮にそうだとしてもサブヒロインが三ケタも居るんだよ! しかも、どんどん新しいヒロインが出てくる」
「でもほら、魔王直系の種族じゃないか」
 魔王の娘であるリリムという存在も思い浮かんでは居たが、流石に口には出せなかった。
 ヒロは少し気を取り直してくれたのか、口元をほんの少しだけ緩める。
「じゃあ、自分の家に魔物娘が一匹だけ来てくれるとして、みんなサキュバスを選んでくれるかなぁ」
 ……どうだろうなぁ。
 日の差しかけたヒロの表情が、再び厚い雲に覆い隠されたようだった。
「何? 今の"……どうだろうなぁ"って言う地の分は何なの? ねぇアキラの声なの!? ちゃんと答えてよ!」
「いや、俺が愛しているのはサキュバスのヒロだけだよ。ただ、人の好みは好き好きだからなぁ。……じゃあさ、探してみようよ」
 アキラはヒロの長い髪の中に顔を突っ込んで、耳の裏の匂いを肺一杯に吸い込んでその匂いを楽しむ。脂っぽい獣の匂いとも、柑橘のような植物の匂いとも、昆虫のフェロモンとも違う、女の淫靡な性欲を煮詰めたような甘ったるい匂い。
 ヒロはそんな行為だけで感じてしまったのか、小さく息を漏らして身をよじった。
「さ、探すって、何を?」
「サキュバスでしか出来ないようなセックス」
 耳の裏を舐めると、ヒロは「ん」と漏らして尻尾に込めた力をさらに強めてくる。
「多分、この状況はそういう事の為に用意されたんだろうし」
「え? 今なんて?」
「何でも無いよ。サキュバスのカラダの良さを良く教えてくれって事さ」


「とりあえず脱いでみようか」
「……って言ってもさ、あたし着てるの図鑑みたいなボンデージじゃないんだよね。まぁどっちにしろ露出は高いんだけど」
「魔界に侵略された現代だからなぁ。部屋の中でボンデージやビキニアーマーって言うのも変だしな」
 アキラはそう答えながら、目の前で始まったヒロの脱衣ショーを観賞する。腰から生えている尻尾や羽が潰れるのを嫌うため、ヒロはいつもおへそが見えそうな程短いチビTを着ている。
 その薄い生地がゆっくりとたくし上げられてゆき、肋骨がほのかに浮いた白い素肌があらわになっていく。
 乳房の南半球が顔を出す。ぐっとTシャツが一気にたくし上げられると、丸々とした柔らかな二つの膨らみが窮屈だった衣服からの解放を喜ぶようにぷるんと跳ねた。
 シャツの首元をくぐり抜けた長い髪の帳が降りて、綺麗な桃色を失わない乳首を隠してしまう。
 アキラは指先で髪を払いのけながら、肌から立ち昇るヒロの匂いを大きく吸い込んだ。
 大きく無いとはヒロの弁だが、その豊かな乳房は片方だけでもアキラの片手では収まらない程の大きさだ。手で包み込んで柔らかな感触を楽しむもよし、荒々しく揉みしだいて形の変わるさまや指の沈み込むさまを見るのもいい。谷間に男根を挟んで擦る通称パイズリだって出来る。そして何より形がいい。
 目と鼻の先にある女性と母性の象徴をじっくりと眺めながら。アキラは神妙な顔で頷いた。
「あ、あんまりじろじろ見ないで。恥ずかしいよぉ」
 恥じらいに白い肌が桜色に上気し始め、そこから立ち昇る匂いも少しずつ濃くなってゆく。
「でも、世の中には貧乳好きや爆乳好きも居るからな……」
 ぺたんこの胸のぷっくりした乳首がいいとか、乳に埋もれて窒息したいと望む者にとってはちょっと物足りないのかもしれない。
「ねぇアキラ。人のおっぱい凝視しながら滅茶苦茶失礼な事考えてない?」
 母乳もまだ出ないだろうし。……本当に出ないのだろうか。一度考え始めるとどうしても確かめずにいられなくなり、アキラはキッとヒロを見上げる。
「ヒロ。おっぱい吸わせてくれ」
「……そんなキメ顔で言わなくても吸わせてあげるわよ。はい」
 ヒロは跪き、ベッドの上に座るアキラの眼前に自分の乳房を捧げる。
「俺さ、いつも迷うんだよ。右から吸うべきか、左から、いてっ」
「早くしてよ恥ずかし、あんっ」
 右手で叩かれたので、アキラは右側の乳房に吸い付くことにした。
 汗が少ししょっぱかったが、ヒロの匂いはいつも通りに脳が溶けそうな程甘かった。舌の上で少し硬めのヒロの乳首を転がすと、猫の鳴き声のような鼻にかかった声が降ってくる。
 だが、どんなに舌先でくすぐってみてもやっぱり母乳が出てくる気配は無かった。
「あぁ、んっ。だめ、そんな、れろれろしないでぇ」
 魔法薬でも使わない限り、妊娠せずとも母乳が出るのはホルスタウロスだけの特権という事か。
 だが、仮に母乳が出なかったとしてもこの揉み心地や舌触りは至福以外の何物でもない。おっぱいはただおっぱいであるだけで価値がある。おっぱいに貴賤は無いのだ!
「アキラ? 何考えて、ひぁ、あぁあンッ」
 アキラは舌の動きを止め、じゅるじゅると音を立てて乳首を吸う。ヒロは堪えるように、のけ反りながら震える手でアキラの髪を掴んだ。
 アキラは止まらない。空いている乳房に手を這わせて、形が変わるくらいに激しく揉みしだきながら、左側の乳首もまた指先でつまんでくりくりと捻る。
 びくびくとヒロの身体が震えだすが、お構いなしだった。指の沈み込むヒロの乳房の柔らかさを楽しみながら、歯先でもこりこりとしたヒロの乳首をいじめてやる。
「だめ、だめぇ。いっちゃうぅっ」
 とうとう痙攣さえ始めたヒロの身体から、しかしアキラは途中で身を離す。
 ヒロは今にも泣き出しそうな顔を向けてきた。桜色に染まったその肌は手を離した今もまだ時折ぴくんと震えている。絶頂はもうすぐだったのに、アキラはなぜやめてしまったのか。そんな顔だ。
「ごめん、ちょっとやり過ぎた」
「ごめんって、何それ。弄んだだけなの? 確かにおっぱいは魔物娘ならみんな持ってるけど。でもだからって、私をこれだけ感じさせておいて途中で止めちゃうなんて……ひどいよ」
 懇願する声も小さく震えていた。その瞳は今にも泣き出しそうにさえ見えた。
 恥も無く自分を求めて肩にしがみついてくるヒロの姿に、アキラは嗜虐的な笑みを浮かべてしまう。
「まだあそこに入れてもないし、触っても無いんだよ? おっぱい舐めて揉んだだけ。それなのにこんなになっちゃうんだもん。やっぱりヒロはえっちだなぁ」
「全身、アキラ専用の性感帯だもん。好きな人に触られたらこうなっちゃうのもしょうがないんだから」
「じゃあ、マミーとどっちが感度がいいか試してみる?」
 アキラは小さく笑ってヒロの身体をベッドへと押し倒す。
「触ってるだけで逝けるかどうか、試してみようよ」
 ヒロは目を伏せながらも嫌がらない。ちらりとアキラを見上げる視線の奥には、強い期待感さえ滲んでいた。
 アキラはそれを肯定と受け取り、愛撫を再開する。細い肩に口づけして、鎖骨のくぼみを舐めて、震え始めた首筋を舐め上げて、耳たぶを甘噛み。
「あ、あ、あ。だめ」
 片方の手でおへそまわりの薄い腹筋の線を指でなぞり、もう片方の手で少し反りはじめる背筋を撫で上げる。
 性器は愚か、乳房でさえも触らない。にもかかわらず、ヒロは今にも絶頂を迎えようかとするように身体を震わせ始める。
 アキラは耳たぶに音を立てて何度も口づけする。その度にヒロの小さな口から色っぽい吐息が漏れ、悩ましげにその肢体が震える。
 そしてついに舌で耳の穴を舐めはじめると、とうとうヒロの身体が大きく跳ねた。
 ヒロの呼吸が一気に荒くなり、その腕がアキラの腕に、背中に強く強くしがみつく。
「だめぇ、いく、い、くぅっ」
 アキラは耳を責め続ける。耳たぶに唾液を塗り付けては啜り、耳の穴に舌を這わせる。
 やがてヒロの身体が一際大きく跳ね、力んだかと思うと、急に大きな吐息と共に力が抜けていった。


「パンツ、びしょびしょだな」
 横たわったヒロの上に覆い被さりながら、アキラは彼女の最後の下着に軽く触れる。指先に残るぬるりとした濡れた感触に、アキラは興奮を高めずにはいられない。
「そっちだって、おっきなテント張り始めてるくせに」
 ヒロは真っ赤になって顔を背けながらも、視線だけはしっかりアキラの下半身に釘付けだった。
「……今度は……よね」
「え、何だって?」
 囁きを聞き返そうとしたアキラの脚に、ヒロの尻尾が絡み付く。
「今度は、私が、責める番よね」
 にたりとヒロが歯を見せたかと思うと、ベッドと天井がひっくり返っていた。
 あっという間にヒロにマウントを取られ、腹の上に座られてしまっていた。こちらに丸めた背中を向けた彼女が何を注視しているか、アキラには見なくても分かった。
 ヒロの無防備な後姿。
 薄布越しの濡れた女陰の感触もさることながら、肉付きの良いお尻が柔らかく形を変えて潰れ、ほっそりしたウエストから肩までにかけての緩やかな曲線が、よだれが出そうになる程悩ましい。
 わずかに脂肪の乗った背中もすべすべとして触り心地がよさそうだった。先ほど絶頂を迎えたばかりのせいか少し汗ばんだ肌は、どこも傷一つなく艶やかだ。
 触れたいが、触れられない。腕を伸ばそうにも、胴体ごと両腕に尻尾が巻き付いていて動かせないのだ。
 ハート形の尻尾が嬉しそうに揺れながらアキラのへその上を撫で、薄い皮膜を張る蝙蝠型の羽がパタパタと揺れる。ヒロがどんな顔をしているのか、アキラは想像するに難く無かった。
「大きくなったねぇ。パンツの中じゃ狭いもんね、まずはぬぎぬぎしようねぇ」
 まるで子どもをあやすかのような口調で、ヒロは下半身のアキラ自身に語りかける。
 アキラは少しむず痒く思いながらも、パンツの端にヒロの指が掛かると自ら腰を上げてヒロを手伝う。
「良く出来ました。あらあらアキラ君、よだれを垂らしてパンツを汚しちゃうなんて、いけない子ねぇ」
 両手を伸ばして僕のあそこをつかまえるヒロ。尻尾で縛られたままのアキラにそれを止めるすべは無い。
「なぁヒロ。怒ってるのか」
 ヒロは肩を揺らして身をかがめる。
 くちゅっ。という音と共に、アキラの亀頭にしっとりした感触が一瞬だけ触れる。
「ううん。お姉さん、怒ってないよぉ」
 亀頭を撫でながらも優しくヒロが語りかけるのは、あくまでもアキラの男根に対してだった。振り返って自分を見てくれない事がアキラには少し寂しく、色んな意味で怖かった。
「ただぁ」
 ヒロは身を捻り、ゆっくりとアキラを振り向いた。
 笑っていた。口元をだらしなく緩め、その瞳の奥に昏い獣欲の炎を灯らせて。
 乱れた髪が汗で張り付いているのに、それを直そうともしない。そんな事はもうどうでも良くなっているのだ。ヒロの頭には、もう一つの事しかないんだろう。
「スイッチ、入っちゃった」
 ヒロの羽先が、尻尾の先が、アキラの脇腹をくすぐる。
「ねぇアキラ。どっちで搾られたい? おちんちん、尻尾でぎゅうぎゅうしてほしい? それとも羽の膜でしこしこしようか?」
 ヒロはゆっくりと体制を変えていく。腰をくねらせながら少しだけ身体を持ち上げると、今度は向かい合うように太ももの上に腰を下ろしてくる。
 睾丸と竿の裏側に、薄布越しにびしょびしょになったヒロが当たる。
 ヒロは首を傾げながら、僕のあそこから両手を離さない。軽くしごき、鈴口を指先で弄びながらも、ヒロは決してそれ以上の刺激を与えては来なかった。
 この程度ならばアキラにとっては引いては寄せるさざ波程度でしかないと知り尽くしているのだ。
 どんなに続けられ重ねられても射精には至れない程度の絶妙な指使いに、アキラは呻く。
「人の事、散々弄んだもん。これくらいの仕返し、当然だよねぇ」
 同意を求めるようにヒロが目線を送っているのは、やはりアキラでは無くアキラのペニス。
「悪かった。謝るよ。だからもう入れさせてくれ」
「そんなの、駄目だよねぇ。だって、アキラはサキュバスのカラダを教えてほしいんだもんね。おまんこは魔物娘にはみんなついてるもんねぇ。お口も、おっぱいもそうだもん。たまには別の方法がいいよねぇ」
 アキラはその言葉にぞっとしてしまう。
 実際のところ、ヒロの身体を虐めていた時からアキラもまた昂っていたのだ。そこにこの指での愛撫が加わり、獣欲は押さえるのが難しいところまで高まって来ていた。
 てっきりヒロも欲望のおもむくまま、一番感じやすい部分で求めてきてくれると思っていた。それなのにこんな中途半端な指使いだけでおあずけを食らわされ続けたら、どうにかなってしまう。
「そんな顔しないでよ。大丈夫、思いっきり気持ち良くしてあげるから。
 私はサキュバス。全身で男の人を悦ばせてあげられるように出来てるんだよ? じゃあ、まずは羽ね」
 ヒロは昏い笑みを浮かべると、アキラの男根を見下ろすように俯きがちになる。
 その唇から舌が覗くと、糸を引いて唾液が垂れ落ち始める。ねとねとと垂れ落ちる粘性の高いヒロの唾液は、アキラの亀頭を濡らし、かりを伝って竿の部分を濡らしていく。
「ん。こんなもんかな。じゃあ、始めるよぉ」
 ヒロは自分の羽の先をつまむと、お辞儀をしながらスカートを広げるようにして見せる。そうして広げた羽の膜を引っ張り寄せ、左右からアキラの一物を包み込んだ。
「うあぁ。な、なんだこれ」
 それは何とも言えない感触だった。すべすべとした感触はストッキングのようなナイロンの感触にも似ていたが、それでいて人肌のように温かく、肌に吸い付いてくる。
 パイズリの感触とも似ていたが少し違う。押し潰されるような快感は無いが、膜越しに動く指がそれとはまた違った快楽を与えてくる。
「ヒロ、これちょっとやばいって」
「うん。じゃ、動かしちゃうね」
 ヒロは軽く言うと、男根を包み込んだ羽を両手で包み込む様にして上下に動かし始める。
 くちゅっ、くちゅっ、くちゅっ、くちゅっ。
 信じられない程の密着感。しとどに唾液で濡れている事も相まり、先端の方に向かって包み込まれ吸い上げられるようだった。
 しかし、ヒロの羽での搾精はそれだけにとどまらなかった。唾液が一物でかき混ぜられ泡立てられるにつれ、羽の中で一物を包み込む感触もまた、ローションのヌルヌルの感触から柔い泡で揉み解されるような感触に変わりつつあった。
 膜越しに指も動き、竿を、裏筋を、かりを責めてくる。
「ヒロ。もう、限界……」
 腰の奥底から熱い塊がせり上がってくる。このまま吸い上げるような感触に任せて、一気に解放……と言ったところで、急にヒロの愛撫が止まってしまう。
「え」
 上下に激しく動かしていたヒロの手が大人しくなっている。両手の動きが、竹とんぼを飛ばそうとするときのような、左右不規則にねじるような動きに変わっていた。
 不思議な、しかしそれでいて心地よい感触に包まれているのは変わらないので今もまだ気持ちはいいものの、しかし根元までせり上がった熱が噴き上がる程の物では無くなってしまっている。
「ヒロ。さっきの事は本当に謝るから、お願いだからこんな意地悪……ヒロ?」
 アキラは目を合わせようとして、ようやくヒロの様子がおかしい事に気が付いた。
 ヒロの頬は朱に染まっていた。しかしそれは男を責める事に興奮しているというよりは、身体に触れられ感じてしまっているように見えた。
 下唇を噛みしめ、視線を反らすさまは明らかに恥じらっている時の物だ。
「ひょっとして、気持ちいいの?」
 こくん、とヒロは頷く。
「だって、アキラの熱くて硬いのが、私の敏感な膜を」
 ヒロは震える吐息で一度大きく深呼吸する。
「敏感な、膜を、……擦り上げて、突き上げてきて……感じないわけ、ないじゃない」
 膜が少し充血して赤らんでいるように見えるのは、今の言葉があったからか、それとも擦られ続けてしまったせいなのか。だが、確かに他の動物がどうかは分からないが、淫魔であるサキュバスの羽に快楽を感じる神経が通っていたとしても不思議ではない気がした。
「ご、ごめんね。続きするから」
 ヒロは小さく笑ってから、再び上下運動を再開させる。
 ねっとりとした水音が再び激しくなり、アキラの根元で留まっていた熱の塊も再びせり上がり始める。
 もうアキラに余裕は無かった。いつ出てしまってもおかしくは無かった。だが、余裕が無いのはアキラを責め立てるヒロも同じのようだった。
 まぶたは薄く閉じられ、眉根も寄せられていて、繰り返される息遣いも荒く切ない色合いを帯びている。
「はぁっ、あぁっ。アキラ、アキラ気持ちいい?」
「きもち、いいよ。……もう、でるっ」
 腰から突き上げる感触がついに尿道を駆け抜けてヒロの羽の中へと放出される。
「ひゃんっ。熱い。アキラの熱いよぉ」
 ぶちゅっと音を立てて羽の間から白濁が飛び出し、ヒロの頬に掛かる。
 ヒロは慌てて、精液を全て羽の中で受け止めようとするかのように、羽をさらに強く握りしめる。
「ヒロ、そんなに握ったら」
 アキラの身体がびくりと震え、腰が跳ねる。身体の更に奥から噴き出した白い熱が、ヒロの羽を真っ白に染め上げていく。
 しかし震えているのはヒロも同じだった。
 全身を小刻みに震わせながら、ヒロは必死で官能の波を抑え込もうかとするかのように羽を押さえ続けていた。
 ヒロの手がアキラを更に締め付け、跳ね上がるアキラの腰がヒロの敏感な膜を擦り付ける。
 そんな循環が繰り返され、二人は不本意にも身体を何度も快楽に痙攣させてしまう。
「……羽、こんなに熱くなったの、初めて……」
「あ、あぁ」
 長く感じた射精だったが、それもやがては少しずつ落ち着いていく。
 それと共に思考も少しずつ冷えてくる。アキラは、自分が恋人に何をされ、恋人のどこに射精してしまったのかを自覚して苦笑いを浮かべてしまった。
 少し気まずさはあったものの、しかしアキラは満足していた。恋人の新たな魅力に気が付く事が出来たのだから。
「ヒロ。すげー気持ち良かったよ。ありがとう」
 身体を震わせていたヒロは、声をかけられてようやく顔を上げる。
 抱きしめたくなるほどの色気に満ちた泣き笑いでヒロが告げたのは、実にサキュバスらしい一言だった。
「あ、アキラぁ。あた、あたしも、いっちゃったよぉ」


 羽での交合の後、アキラとヒロは狭いベッドの上で手を繋いで仰向けに寝転んでいた。
 心地よい疲れが身体を包み込んでいた。お互い、どこかで相手を求めてはいたものの、今はまだ繋いで絡めた指先でお互いの手に爪を立てたり撫でたりという遊び程度にとどまり、肌を重ねて激しく求め合おうとするほどには至っていなかった。
 アキラの身体の奥底にはまだヒロを求める性欲の炎がくすぶってはいたが、羽での搾精が思いのほか心地よく、少し脱力してしまっていた。
 恐らくヒロもそうなのだろう。肌を撫でられ続けただけで一回、羽での搾精時にも昂って一回、絶頂を迎えていたのだから。いくら淫魔サキュバスと言えど、こんなに短時間に二回もしたら流石に疲れてしまうはずだ。
「ねぇアキラ。……えっちな匂い、するね」
「そうだなぁ」
 部屋の中には、雄と雌の体液が混じった匂いが充満していた。精液だけの匂いならば情けなくなってしまうのに、女の匂いと混じるだけで途端に意味が変わってしまう。
「私の羽、アキラの精液でぐっちょぐちょに汚されちゃったね」
 ばさりと片翼がかざされる。精液こそ舐め取られてはいたものの、綺麗だった膜は羽淫、とでも言えばいいか、先ほどの愛撫の激しさを残して皺が寄ってしまっていた。
「私、このままアキラに全身犯されて汚されちゃうのかなぁ」
 くすくすという笑いが耳をくすぐる。
 アキラが横を向くと、微笑むヒロと目が合った。その瞳の奥に見えるのは、むしろ汚して欲しいというくらに焦げ付いた欲望だ。
「綺麗なままで居たかった?」
「ううん。アキラにだったら、どこをどんなに汚されたって構わないよ。お尻でも、腋の下でも、膝でも、髪の毛でだって搾ってあげる」
「そりゃ怖い」
 目を閉じたヒロの唇に、アキラは軽く自分のそれを押し付ける。
「だって私は上級悪魔のサキュバスだもん。精を搾り取るのはトップクラスに上手いんだからね。それに、こういう魔法だって大得意なんだから」
 ヒロはアキラに身を寄せ、抱きつきながらその唇に小さく歯を立てる。
 流れ込んできた何かがアキラの心臓に強く打ちこまれ、血流を通じて身体を熱くさせ始める。
 どろどろとした血流はアキラの冷静になりかかっていた思考を溶かし、下半身に溜まって熱く熱く煮え滾り始める。
「ヒ、ロ? これは」
「無理矢理昂らせる為の劣情の魔法。加減はしたから我を忘れちゃうまでの効き目は無いけど、ふふ、たまにはこういうのもいいでしょ」
 アキラは急に喉が渇いている事に気が付く。
 しかし水が欲しいというわけでは無かった。欲しいのはヒロの唇だった。上でも下でも良かった。ただ猛烈に吸い付きたいという欲望が燃え上っていた。
 だが、動こうとしても体が動かなかった。仰向けだったアキラの身体に横からヒロが抱きついて動きを封じてしまっていたのだ。
 全力で足掻くが、力を抜ける魔法も掛けられているのかびくともしなかった。
「ヒロ、これはどういう、つもりなんだよ」
「ベッドの上で二人でしっとりお話するのもいいんだけど、やっぱり私はサキュバスだから」
 ヒロのしなやかな腕がアキラの胸に、背中に回される。抱きつかれているのだから、当然柔らかなおっぱいも潰れる程に身体に押し付けられていた。
 足もまた、むっちりとした太ももに絡み取られる。
 困惑するアキラの目の前に現れたのは、ゆらゆらと揺れる逆ハート形の尻尾だった。
「今度は、これで気持ち良くしたげる」
 囁き声に背筋がぞくりとするのとほぼ同時に、尻尾がアキラの男根に絡み付く。
 尻尾はくるくると巻き付き、羽の膜に勝るとも劣らない程みっちりとアキラ自身を締め付け、覆い尽くしてしまう。少し尖ったその先端が、アキラの鈴口を絶えずくすぐってくるというおまけつきだ。
「どう?」
「……これ、やばい」
 アキラの懇願するような声に対するヒロの答えは、耳元を甘くくすぐる吐息だった。
 ヒロは少しずつ腰を振り始めた。それに合わせてアキラの男根を包み込む尻尾もまたきゅうきゅうと蠢き始める。
 触れている感触は羽の膜に似ていた。だが羽の膜とは違って尻尾にはしっかりと肉が付いていて、乳房や太ほど柔らかく無く締まってはいるものの、その引き締まった肉付きがまた他では得られない魅惑的な刺激となっていた。
 ヒロの腰振りに合わせて右回りに左回りに渦を巻くように動く尻尾。
 いつの間にかそれは湿った音色を奏で始め、さらにそこにヒロの熱っぽい吐息が加わり始める。
「アキラのあそこ、がまん汁でべっとべとだね。私、尻尾まで汚されちゃったね」
 そう言って笑うヒロの腰もまた濡れていた。尻尾を男性器に擦り付けるうちに感じたのか、それとも腰を動かすうちに擦れて感じたのかはアキラにも分からなかったが、全身を上気させ始めている事だけは確かだった。
「そう言うヒロだって、凄い濡れてるよ」
 ヒロは笑うだけだった。
 羽の時のように加減してくれるかともアキラは思ったが、そんな事は無かった。それどころか、ヒロの腰と尻尾使いはさらに加速し始める。
 ヌルヌルに濡れた尻尾はさらに滑りが良くなり、にもかかわらず密着感と締め付けもニチュニチュと強まってくる。
「しょうがないよ。だってアキラのおちんちん、すっごく気持ちいいんだもん。擦れたらどこだって感じちゃうよ」
 ヒロの息遣いはさらに激しくなり、アキラを追い詰める。
 男性自身を締め付ける尻尾、脚に絡み付く太もも、身体を抱き寄せる腕と、押し付けられた乳房。そして自分に触れるだけで感じてしまう女の荒い吐息。
 アキラは眩暈と共に、抑え様も無い衝動がそこまで迫っている事を自覚する。だがそれが分かっていても、アキラ自身ではそれを遠ざける事は出来ない。しっかりと抱き締められた身体は、動けば動くほどに淫魔の身体に絡み取られて逆に追いつめられてしまうのだ。
 出来る事は、歯を食いしばって耐える事だけだった。
 だが、そんな些細な抵抗はささやきによってあっけなく突き崩される。
「ぁ、アキラぁ。あたしもう、限界っ」
 言葉に続いた耳への甘噛みで、アキラは限界をあっけなく超えてしまった。
 煮詰められた欲望がまたぐらから一気に迸るのを感じながら、アキラは全身を愛しい愛しい淫魔の胸の中に意識を沈ませていった。


 ほどなくして目を覚ましたアキラがまず最初に見つけたのは、自分に跨り、尻尾に絡み付いた白濁液を蕩けた表情で舐め取り続ける愛しい恋人の姿だった。
 最後まで付けていたはずのヒロのパンツは、今はアキラの胸の上で強烈に甘ったるい匂いを放っていた。アキラはその匂いを嗅いだだけでヒロがどんな状態であるかが理解できてしまった。
「あぁ、アキラぁ。やっとおきたぁ」
 堕落しきった昏い目で、幼子のように笑うヒロ。
「もぉ、まちくたびれちゃったよぉ」
 アキラが手を伸ばすとヒロはその手に頬ずりしてから、口に含んで舐めしゃぶり始める。
「ごめんね。えっと、何してたんだっけ?」
「んちゅっ。サキュバスのからだのよさを……もうそんなのどうでもいっかぁ」
 ヒロはにんまりと笑ってアキラの左右の手に手を重ね、指を絡めて握りしめる。
「サキュバスはたしかにかいらくにたいせいはあるけど、でももうげんかい。あんなにはねやしっぽでアキラをかんじちゃったら、もうしきゅうがうずいてうずいてしょうがないの」
 少し腰を上げて、狙いを定めるその下にあるのは硬く勃ち上がり切ったアキラの男根だ。羽での搾精と尻尾での搾精を経てもなお、アキラの欲望は尽きてはいなかった。
 それもそのはずだ。アキラはもう人間では無く、ヒロのような魔物のインキュバスなのだから。
「いいよね。アキラのおちんちん、あたしのおまんこにいれていいよね」
「あぁ、いいよ。こっちももう我慢できない」
「えへへ。きょうもいっぱいぐちゅぐちゅにひっかきまわして、しきゅうをごりごりついて、あたしのなかにせーえきびゅーびゅーいっぱいだしてね」
 ヒロの綺麗な割れ目から滴る蜜が、アキラ自身を濡らしていく。
 そしてどちらからともなく視線を絡ませ合うと、ヒロは一気に腰を沈めた。


 サキュバスのあそこが気持ちいいなんていう事は、今更言葉にするまでも無い事だろう。
 しかしどれだけ気持ちいいのかというのは、逆にどんな言葉でも言い表す事は出来ない。男性自身を包み込み搾り取ろうとするサキュバスの膣は、恋人のそれに合わせて形を変え、愛しい恋人に至福の快楽を与えるための専用の性器へと変化しているのだから。
 柔肉や、襞、愛液の量などではその快楽を表す事は出来ないのだ。
 アキラが我も時間も忘れてヒロの身体に夢中になってしまうのも仕方が無い事だった。
 しかし、サキュバスの恋人を持てば誰しもこうなってしまうだろう。と、アキラはすっかり暗くなってしまった部屋の中で思う。
 ぐしょぐしょになったベッドから下りる。むせ返る程の淫臭で満ちた部屋の空気を換えるべく窓を開けると、空には狂ったように明るく輝く満月があった。
 流れ込んでくる冷たい空気が火照った体に心地よい。
 月光と共に入ってくる世界に満ちる魔界の瘴気、そして、周囲の家屋から聞こえ始めている嬌声。それもまた安心感を与えてくれる。
 どこにも争いなど無く、底なしに堕落した快楽だけが満ちる世界。こういうのも、やっぱり悪くは無いと思えた。
「朝始めたのに、いつの間にかもう夜になっちゃったな」
「私の身体、楽しんでくれた?」
 アキラが振り返ると、差し込む月の光の中に妖しくも美しい淫魔の肢体が浮かんでいた。
 すらりと伸びた傷一つない長い手足。肉付きのいい乳房とお尻。太陽さえも照れて隠れてしまうような、美しいその微笑。
 尻尾を太ももに絡み付かせて、脚の付け根を羽で隠しながら、ヒロは窓際までやってくる。
 アキラはその月の女神のような恋人を抱き寄せて、頭から生える角に口付けた。
「大満足。これから、どうする? 映画のレイトショーでも見に行こうか」
「ふふ、そんなのだぁめ。淫魔が夜にする事と言ったら、性交に決まっているでしょ」
「でも、ベッドは冷たくてびちょびちょだよ」
「そうねぇ。外でするとか、あ、そこはっ」
 アキラは悪戯するようにヒロの角に舌を這わせる。ヒロが慌てる頃には、既に口に含んでしゃぶっていた。
 途端に声も上げずにヒロがくらりとよろめいてしまい、アキラは慌ててその身体を抱き締めた。少し角をカリッと噛んでしまうと、ヒロは軽くイった時のように身体を痙攣させる。
「あ、あれ。ヒロ?」
「み、見つかっちゃったね。私の最大の弱点。……私、実は角舐められたり齧られると駄目なの。頭の中に直接精液流し込まれたみたいに、おかしくなっちゃって。
 ……とうとうアキラに頭の中まで汚されちゃった。へへ、でもそれは最初からかな」
 顔を逸らされ表情は分からなかったが、どんな顔をしているかくらいはアキラも想像が付いた。
 アキラは少し考え、優しくヒロの角を指でなぞりながら、今日これからの事を考える。
 だが、大したことは思い付かず、結局最後に行きついた結論はいつもと同じような、ヒロと一緒に居られるのなら何でもいいというものだった。
「ま、お互い様でしょ。で、俺の愛しいお姫様は何をご所望なんでしたっけ」
「……たまには、解放感のある野外で、おっきな声出しながらえっちしたいなぁ、なんて」
 アキラは思わず笑ってしまった。人間が多かった昔ならいざ知らず、魔物が支配する現代においては、野外での乱痴気騒ぎも羨ましがられても罰せられる事などまず無い。
 とはいえ野外で嬌声を上げたいなど、なかなかどうして普通の魔物でも言い出しにくい事だろう。
「本当に、サキュバスって言うのは飛び抜けてえっちだよなぁ」
「……え、えろくって、ごめんね?」
「ばぁか。そんなところが大好きなんだよ。さぁ、外でするんだろ。早く行こう」
 アキラは窓側からヒロへと手を伸ばす。
 ヒロは一瞬だけきょとんと眼を丸くしたあと、すぐに満面の笑みを浮かべて大きく頷いてその手を取った。


 安アパートの窓から、二人は月光の照らす夜空へと飛び出した。
 満月に触れんばかりに手を伸ばして空高く飛び上がったのち、二人は絡み合いながら、地上から絶え間なく上がり続ける嬌声の中へと紛れ込んでいった。
13/05/24 23:39更新 / 玉虫色

■作者メッセージ
ここまで読んでいただきありがとうございました。
あまり深い事を考えず、ノリと勢いで好き勝手に書いたため、このような事になってしまい……何か、すみません。

この話を書くきっかけとなったのは、実は掲示板などでたまに見かける、経験があった方がいいのか、とか、書いている話が魔物娘である必要があるのか分からなくなってくる、という書き込みに対して自分自身としての答えを出したいと思ったからのですが……。
とはいえ、サキュバスのカラダの良さをテーマに書いたので本末転倒な感じになってしまいましたね。

あとは、魔物ばっかりの世の中になったら、多分一番多数になるであろうサキュバスさんはちょっとコンプレックス持ったりするのかなぁ何て事も考えて、サキュバスさんにスポットライトを当ててみました。
魔物は全身で男を悦ばせるらしいですからね、実際羽とか尻尾とか、どうなんでしょうねぇ。


(まぁ色々言い訳がましく書きましたが、本当は長編を書こうとして躓いて、別の長編に手を着けて躓いた状態で、サキュバスさんの「息抜きしたら」っていう甘い囁きに乗っちゃっただけなんですけどねー)

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