連載小説
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競技場と二人の友人
▲タマゴの里・マドラ&初太の家▲
▲コルヌ視点▲


「何だこれ……家が、膨れあがってる。おーい、マドラー、初太ー、いるなら返事してくれー」

ボクは二階の窓に向かって親友と、その夫の名を呼ぶ。



返事がない、ただの窓のようだ。



「……はーい」



「と思ったらあった。良かったーー」

窓が開く

帽子

帽子

帽子帽子

帽子帽子帽子帽子

帽子帽子帽子帽子帽子帽子帽子帽子帽子帽子帽子帽子帽子帽子帽子帽子帽子帽子帽子帽子帽子帽子帽子帽子帽子帽子帽子帽子帽子帽子帽子帽子帽子

帽子が滝のように流れ落ちてきた。

「ごめーん、コルヌー、帽子が落ちちゃった」

「大丈夫だよ、一応ね」

「ふわ〜マドラ、もう朝か?」

マドラに続いて、夫が顔を出す。

「びっくりしたぞ、目覚めたらマドラが横にいないからさ」
「ごめんごめん初太、普通ならお目覚めのセックスをしているところだね」
「そうだぞ、家がぱんぱんになるまで、キノコを産み出そうと言ったのはマドラじゃないか?」
「そうだね、じゃあ」

マドラは帽子を脱ぎ捨る。

「初太、シよ」
「ああ、いつも通りにな」

「ボクを無視するな!」

流石のボクもちょっとキレたよ。


Μマドラ宅内部Μ
Μ初太視点Μ


「家が帽子もといキノコだらけになってる……まるで帽子のプールだ」

「ぼくと初太の愛の結晶だよ」
「丸三日掛けて交わって、産み出しては外し、また産み出しては外すの繰り返しだったからな」
「これもぜーんぶ初太のおかげだよ」
「当然のことをしたまでさ、マドラの絡み付く肢体のおかげさ」
「ううん、初太が気持ち良ーくぼくを攻めてくれるおかげだよ」
「マドラが可愛いからだよ」
「やだー初太ったら」
「照れるマドラも可愛いなー」
「はーつーたー」
「マードーラー」

「二人とも、イチャイチャしてないで帽子片付けるの手伝ってよ!」

「はーい」
「判ったから急かすな」

Μ掃除完了Μ

「ふぅ、大分片付いたね」
「この袋に入ってる帽子、どうしようか?」
「食べる?」
「マドラ、それ本気か?」
「冗談だよ初太。この帽子は寄付するつもりだよ」
「寄付って、サンドラ洋服店にか?」
「流石に家一軒分の量は多すぎるよ。ぼく達の帽子を有効に使ってくれる場所があるんだ」
「その場所って?」

「競技場さ」

「コルヌ、競技場って?」
「この里からはるか遠くにあって、毎日様々な競技が開かれてる場所さ」
「遠いってどれくらい?」
「そうだね、何のハプニングも無ければ、歩いて三日は掛かるかな?」
「三日!?そんなに掛かるのか?」
「心配ないよ、隣町に転送用のポータルがあるから、そこからなら三十分でたどり着くよ」


ΜラピッドタウンΜ


「隣町って俺達が住んでる所と雰囲気が違うな」
「この町は固有種に限らず、外部からの魔物も沢山住んでるからね」
「あちらこちらで夫婦が交わる点はタマゴの里とほぼ一緒だな」
「初太、観てよあのヴァンパイアのカップル、素っ裸でセックスしてる」

「マドラ、初太クン、ボサっとしてないで行くよ」

「ごめんごめん、コルヌ」
「コルヌ、袋を一人で抱えて大丈夫なのか?」
「心配しなくていいよ初太クン。これから転送施設へ向かうよ」


Μ飛脚運送Μ


「人が多いな」
「ここでは毎日沢山の人が宅配や移動に利用してるからね」

「うわーっ、あんな奴にハントされるのはゴメンだーっ!」
「あなたードコイクのー?」

「何だ?男が泣きながら外に出たぞ?奥さんらしき魔物も跡を追ったし」
「初太が気にしなくていいよ。ぼく達も受付に行こう」

Μ転送装置Μ

「受付を済ませたのはいいが、何故に案内先がベッド何だ?」
「キミ達二人が、ベッドの上でいやらしいことをするのさ、そうすれば装置が起動して競技場に行ける」
「結局、エロありかよ」
「それが不思議の国クオリティさ」

「初太、はやくはやく」
「マドラは既にベッドインしてる。しょうがないな、いつも通リッ!」

マドラが不意にディープキスをする。

「くちゅっぐちゅっ」
「じゅるっじゅるる」

「とろけるような熱い口付けだね。おっ装置が反応したようだ、いざゆかん競技場へ」


Μ競技場入口Μ


「プハッ、あれいつの間に景色が変わってる」
「ここが競技場だよ」

俺は、マドラが言うその建物全体を見渡す。

「何か、歴史の教科書で見たコロシアムのような、俺達の世界で観たドームのような……とにかく奇妙な建物だな」
「不思議の国だからね。どんなに奇妙な見てくれでも不思議じゃないよ」

入口からアリス達が走ってくる。

「お疲れ様です、コルヌ様」
「係員さん、競技用の帽子だよ」
「こんなに沢山!?ありがとうございます!みんな、力を合わせて袋を倉庫まで運ぶよ」


「うんしょ、うんしょ」
「ねぇ、あの人コルヌ様だよね?」
「男装の麗人って感じがする」
「女性じゃなかったら、夫にしたいのに〜」
「でもコルヌ様って実は、可愛い女の子が大好きでゴニョゴニョ」
「きゃーっそうなの?コルヌ様が……あっコルヌ様が私に向かって、ウインクをーーばたんきゅ〜」
「ちょっと、大丈夫?」
「骨抜きになってるわ」


「二人とも入口に案内してあげる」
「あの入口じゃないのか?」
「あそこは一般席、ボク専用の特別席へ案内してあげる」


ΜVIP専用入口Μ


「関係者以外立ち入り禁止と書かれてるような、普通のドアだな」

『合言葉は?』

「ドアノブが喋った」
「このドアは、合言葉が無いと通してくれないんだ。それを知るのはハートの女王様やコルヌを含めた四人だけ」

『合言葉は?』

コルヌはドアノブを回し、ドアを開ける。

『合言葉、認証完了』

「二人とも、入っていいよ」
「判ったコルヌ、初太も行くよー」
「合言葉って、普通にドアを開けただけじゃ……ん?マドラ、何で俺の腕を組むの?」
「初太と腕組みながら、VIP室に行きたいから」
「……しょうがないな。まっ、いっか」


ΜVIP室Μ


「ベッドがあるな」
「初太、初太おいでよ」
「マドラがベッドの上で俺を誘う。さっきと同じパターンだぞ?」
「大丈夫だよ、今は競技観戦を優先するから」

「ボクは椅子に座るから、ベッドは二人が使っていいよ」
「ありがとうコルヌ。初太、競技が始まるよ」

Μ迷宮大脱出Μ

「箱部屋がぎっしりと敷き詰められてるな」
「今日の競技は迷宮大脱出。各選手は百の部屋に出入りを繰り返しながら、脱出用のチケットを探すもしくは自分の番いを捜し出す競技だよ」
「脱出用のチケット?」
「不思議の国に迷い込んだ人間や魔物がいるのはご存知だろ?参加者の中には元いた世界へ帰るために競技に参加する者も少なくないよ」
「迷い込んだ人間人間が脱出ね……まさか、あいつらも参加してるんじゃ」

「どうしたの?初太、血眼に選手を見て」
「マドラ、もしかしたら俺の友人が参加してるかもしれないんだ」
「友人?」
「名は平也と満知子。俺と同じ日本人だ?」
「にほん、じん?」
「くっ、遠くからだと見えにくい。せめて参加者さえ判れば……」

「はい、名簿」

「コルヌ、それは」
「この競技の参加者の名前及び種族が載った名簿だよ。参加には事前登録が必要だからね。それと参加者の顔をはっきり観たいなら、ポチッとな」
「モニターが映った」
「この部屋には特定の場所を映し出すことが出来るよ、横のパネルで映像の切り替えも自由だよ」
「ありがとう、コルヌ」
「礼はいらないよ。本来ならそれは選手の濡れ場を眺めるためのモニターだから……」

「モニターの切り替えを手伝うよ」
「恩に着るよマドラ」

Μ

「初太、この二人は?」
「違う、この二人じゃない」

俺とマドラは試合観戦しながら平也と満知子を捜す。

「魔物や夫を覗いた全員が鎧を着てるから顔が見辛い。それにさっきから皆交わり、身体が変化したりで、色んな意味で目の毒だ」

「当然だよ。魔力をこもった空気を吸って身体が疼き頭は性交一色、そんな状態で交わったら蓄積された魔力が一気に開花し魔物化するのさ。そう、ボク達マッドハッターの帽子のように」
「魔物化する際には何か基準があるのか?」
「一言で言えば、素質かな?」

「女性の頭からネコ耳が生えてきたぞ」
「悪戯好きや、相手を出し抜こうとする意地悪な女性はチェシャ猫に」

「別の女性からはうさぎの耳が生えて、足がうさぎ足に変化した」
「エッチな妄想をしている女性は、色に狂ったマーチヘアに」

「身体が縮んで、ネズミ耳の少女に」
「穏やかで男性を襲う意志がない者は眠りのドーマウスに」

「手足が爪のように鋭くなった。まるでドラゴンだ」
「強気で高慢な女性は、(性的に)誇り高きジャバウォックに」

「頭からキノコが生えて、帽子の形になった……」
「そして、物事を冷静に対処しようとする女性は、マッドハッターになる可能性が高い」

「これが魔物化……」
「これでも氷山の一角だよ。ほら、マッドハッターになった娘が、早速恋人に手を差し伸べ、さりげない仕草で股間を触っている。あの恋人の反応。早漏か」

「きゃっ、よっぽど気持ち良かったんですね」
「マドラ、赤面するのはまだ早い。本番はこれからさ。ほら彼女が恋人のズボンを脱がして、フフフフ」

コルヌは笑顔で、マドラは恥ずかしそうに彼らの交わりを観戦する。

結局、参加者全員が互いに交わり、皆、脱出のことを忘れているようだった。

いや、彼らはそれで幸せなのだろう。

自分もそうなのだから。

俺はマドラを見ながら、そう思った。

ただ、平也と満知子の行方を心配しながら。


Μ飛脚運送Μ


競技が終わり、帰還した俺達は帰還後の受付の行列を待っていた。

「はぁー、俺が来た日から遡って、参加者リストを隈無くチェックしたけど、参加者の大半がコードネームばかりで参考になりやしない……」

「諦めてはダメです」
「マドラ……」
「初太にとって大切な友人ですよね。今日のように私も手伝います」
「いいのかマドラ?俺の為にそこまで……」
「私達は夫婦です、家族です、初太の為なら私も一緒に捜しますから」
「マドラ……」

「ボクも協力しよう」
「コルヌも?」
「マドラが一生懸命協力しようとしてるんだ。親友であるボクも力を貸すよ。それにボク自身も不思議の国を見回ってみたいしね」

「コルヌ……ありがとうございます。ぎゅっ」
「きゃっ、久しぶりにマドラから抱きつかれちゃった♪」
「二人共頼む。気の遠くなるような捜索になると思うが、何ヵ月、いや何年掛けても平也と満知子を見つけだす」

「勿論です」
「初太クン、友人二人の特徴を教えてくれないかな?」
「一番判りやすいのは満知子かな。まず背が低い。受付のカウンターがあるだろ?カウンターから顔がぴょこっと出るくらいだ」
「それってあんな感じ?」
「そうそう、ウサギ耳は生えてないけどな。それと右目の辺りに泣きボクロがある」
「泣きボクロ?」
「涙が流れ落ちる場所にあるほくろのことさ」
「それって、あの受付嬢に付いてる奴?」
「そうそう、極めつけは口癖。何かと『参ったわ』と言いまくる」
「あんな風に?」

「参ったわ、またあの娘達が寝室から出てこないから、今夜も残業か……」

「そうそう、満知子の奴、いっつもあんな風に、言って……」

「次の方ー、何だ初太じゃない。参ったわ、よりによって初太が受付に来るなんて……」





……

………!



「「あーーーーーーっ!」」



「初太、今までドコ行ったのよ!」
「満知子、お前こそ何故ここに?っていうか何だその姿は?」
「初太こそ、背が低いとか、参ったわが口癖とか、貧乳とか、言いたい放題じゃない!」
「特徴を言ったまでだ、第一貧乳までは言ってない」

「満知子、何があった?ってあれ、初太?」
「平也、お前もか!」

「へーくん、聞いて、初太がさっきあたしに向かって言葉攻めしてるの」
「ぬわにぃ!言葉攻め?」
「そうよ、言葉であたしを攻めて襲うつもりよ、きっと凌辱タグがつくくらい襲うつもりだわ、ああ、考えただけで濡れてきたわ」
「濡れた?準備万端だな?」
「ええ、そうよ、もう我慢出来ないわ」
「オレもだー満知子ーレッツハンティングー!」
「へーくーん」

「おまえら、何故そこで性交に発展するんだよ!」

マドラとコルヌと一緒に二人の友人を捜す決意をして、

数分もしないうちに友人二人と再開した。



Μ続くΜ
14/02/22 23:33更新 / ドリルモール
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■作者メッセージ
夜遅く失礼します。
ドリルモールです。

不思議の国の第三話です。

やっと話の最後に初太の友人、平也と満知子が登場して、二人が合体しました(性的に)。

満知子はマーチヘア、平也は既にインキュバスになっています。

因みに初太はまだ人間です。
彼がインキュバスになるのは当分先だと思います。

今回、マドラがマッドハッターのキノコを食べるという冗談を言いましたが、マッドハッターの頭のキノコを食べる人もいても不思議じゃないような気がします。

次回は平也が大暴れします。色々な意味で。



また次回。



Μ



キャラクター紹介
【名前】コルヌ
【性別】女
【年齢】20
【種族】マッドハッター
【容姿】中性的な顔たち+二角帽+白のワイシャツの上に黒の燕尾服+さらし
【口調・口癖】ボクっ娘でナルシスト
【能力・特技】服から巨大なキノコを生やす
【概要】
 タマゴの里の住民であるマッドハッター。

 タマゴの里が不思議の国に転送された後に産まれたイケメン三姉妹の次女で、現在独身。

 本人は夫を探す気は一切なく、魔物としての性欲は全て可愛い少女に向けている極度の百合っ娘。中性的な顔立ちのため、女性ファンが多く、彼女が気に入った娘をこっそりお持ち帰りされ、その娘も百合に目覚めるケースが後を経たず、マドラも一時期彼女の影響を受けていた。

 競技場のスターと言える『フォーカード』の一人であり、スートはダイヤ。しかし、本人は自由気ままに不思議の国を冒険したいと考えており、他の『フォーカード』と比べて、積極的に競技に参加したり、女王の命令を極力無視をすることが多い。

 服から巨大なキノコを生やすという彼女特有の能力を持ち、傘代わりにして媚薬の雨を避けたり、棍棒のように武器にしたり、胞子をばらまく等、様々な用途に使うことができる。

【補足事項】
 服の下はさらしをしており、胸の大きさはマドラより大きいGカップ。



Μ



用語集
【競技場】
 不思議の国にある施設の一つ。

 古代のコロシアムや我々の世界のドーム球場を混ぜ合わせたような奇妙な建物であり、内部では毎日、様々な競技が繰り広げられ、交わり以外の娯楽を求める住民達が観戦及び競技に参加をしている。

 競技に勝利すれば賞金や商品が貰うことが出来るが、参加者の大半が賞金や商品よりもいつもと違う交わりを求める者が多く、自分達の交わりを観客に観てもらおうとするため、名誉目的で参加をしていると言っても過言ではない。

 商品の中には不思議の国から外の世界へ行けるチケットがあり、不思議の国から脱出したい人間や魔物がチケット目当てに参加することがあるが、競技自体が我々の常識では考えられない内容及び仕掛けが施されており、その異常性に発狂し、やがて魔物化もしくはインキュバス化してしまうため、競技に勝利し脱出した者は殆どいないが、結果的に思考が不思議の国の色に染まるため、参加者の十中八九が負けて正解だったと思い、それどころかリピーターになって競技に参加するようになる。

 ハートの女王も競技場を大層気に入っており、城から競技場への一本道を作ってしまう程で、また競技の成績上位四人には『フォーカード』という称号を与えられ、彼女達には女王の側近としてお仕えする名誉と、自由に極刑を拒否または執行してもらえる権利が与えられる。

 現在、『フォーカード』の称号を持つ者は、

スペード:チェシャ猫のシャーシャ
ダイヤ:マッドハッターのコルヌ
ハート:マーチヘアのマッチ
クラブ:ジャバウォックのセバス

以上の四名であるが、何らかの理由で脱退したり、成績上位の魔物がフォーカードの座を狙っているので、頻繁に入れ替えが起こることも珍しくはない。

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