読切小説
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きっと、たぶん
「ねぇ?憶えてる?ボクとキミが初めて会ったときのこと」


そもそも魔界と地球が繋がったのは最近の事だろ。それくらい憶えてるさ。寒そうな格好をした鳥っぽい女が迷子になってた。


「ううん、もっと前のこと、ずっとずっと……ボク達が子供だった頃に会ったことあるよ」


そんなわけ無いだろ、今でさえ地球だと魔力やらなんやらが薄くて空も飛べないんだろ?それなのに子供の頃に会ったことあるとか、ありえないな。


「本当なんだからね、全く『ユウワク』しちゃうよ?」


日本語として成り立ってない10点。歌うならどうぞご勝手に、魔力の無い世界で歌を歌ったところで意味なんか無いんだからな。


「冷たいなぁー、折角の美人さんがお誘いしてあげてるのに」


魔法なんて地球で言っても痛い子にしかならないんで、あと自分のこと美人って凄い自信だな。


「じゃあいいよ、ボクは魔法使いでキミは剣士ね。世界を救う旅をしてるの」


スミマセン、そういうの中学に卒業したんで。あと俺を巻き込むな。


「ボクが得意なのは歌魔法、キミは勇者にしか抜けない剣を抜くことができた期待の剣士」


おーい?聞いてるか?勝手に話を進めるな。


「ボク達は悪の組織を倒すために勇気の石を探してるんだ」


だめだこりゃ、重症だわ。もう手遅れ、治せないわ。


「本当に憶えてないんだね、全く。お姫様のキスで王子様は記憶を取り戻すんだよ?」


そんな設定無いから、お前はお姫様じゃないし俺は王子様じゃないから。


「強く想えばその人になりきれるんだよ?これもキミが教えてくれたことだよ?」


妄想です、本当にありがとうございました。いい病院をお勧めしようか?


「ハーピー種も受診できる病院なら喜んで」


そりゃ無理だわ、すっかり忘れてたわ。お前が鳥人間だったこと。


「鳥人間って酷いなぁ、ボクはれっきとしたハーピー種のセイレーンに属してるんだから」


鳥人間で大体あってるだろ、違いがわからんし。


「セイレーンは歌が上手いんだよ、もっと彼女さんについて詳しくなるべきだよ?」


俺はいつからお前みたいな電波女の彼氏になったんだろうか?あぁ、やっぱりお前の妄想だったよ。


「えー断っちゃうの?美人さんが彼女になってあげるって言うのに」


はいはい、元の世界よりも弱体化してる魔物は黙ってようね、歌で誘惑もできなくなってるんでしょ?


「詳しいじゃん……さてはボクの事が好きで調べおったな?」


無いわーその思考は無い。流石妄想クイーンは思考からもう違ったわ。


「じゃあなんで妄想クイーンのボクとつるんでるのさ、評価下がるよ?」


お前と一緒に居ると俺がよく見えるだろ?俺、頭いいだろ。


「うわー下心満載だよ、汚い男だなぁ」


そうそう、下心満載の男だから。好きなんていわれるとすぐ勘違いしちゃうぜ。


「じゃあ、大好きだよ。キミのことがずっと」


んもー、人の話を全く聞かないんだから。


「素直にボクはキミのことが好きなんだよ、返事は?」


あーだったら返事はOKかもしれないしYESかもしれないな。


「ふふふ、ありがとう」


だったらいつものあの歌を歌ってくれよ。


「良いよ、それくらい」


やっぱりこの歌は懐かしいな。
14/09/17 08:43更新 / アンノウン

■作者メッセージ
異次元世界と魔界を繋げる実験によって異世界の少年が召喚されてしまった。

異世界から来た少年はセイレーンの少女と接触。

子供らしいごっこ遊びをしている模様。

異次元とのゲート2004281号は少なくとも人間とそっくりな生命体がいることが判明、体の仕組みは人間とほぼ同じであることも少年から分かった。

これから少年は魔界での出来事の記憶を消しゲート2004281号から元の世界へ返そうと思う。

これからはゲート2004281号とのコンタクトを中心に研究する予定。


――サバトによる異次元世界とのコンタクト実験レポートより――

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