読切小説
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臥竜
その空間には絶望が満ちていた。
部屋の隅には膝を抱えて蹲るリリム、床にはエキドナが倒れ伏している。リッチは無表情でひたすら壁に額を打ち付け、デュラハンは自らの首と兜でお手玉をしていた。バフォメットは壊れた蓄音機のように何かをつぶやき続け、ヴァンパイアは真っ白な灰になっている。中でも異様であったのは、手足を折り床に額を擦り付けながら謝罪を続けるヴァルキリーの姿であった。
名だたる上級魔物達の目からは皆一様に光が失われ、普段の姿は見る影もない。
部屋の中心には台座があり、そこには手足を鎖で固定された一人の勇者がいた。この惨状を作り上げたのが彼だと知ったら、教団は大喜びだろう。囚われの身となり五体の自由も魔法も封じられた状態で、彼は彼女達を打倒したのだ。
だが、その過程を知れば、彼らの賞賛の気持ちは勇者への同情と変わるに違いない。そして、主神への非難の声をあげる者も出てくるはずだ。

何より彼自身がそうであった。
「神よ。私はあなたを恨みます」
口からは主神への呪詛が溢れ、光が消えた目から止めどなく涙が溢れていた。



彼、勇者ミシェルの人生は順風満帆であった。彼は貴族の家に生まれ、才能にも恵まれていた。その上、努力を惜しまず誰よりも鍛錬を行う。そんな彼が国王の信頼も厚い第1級の戦士となるのに時間はかからなかった。そして、穏和な性格で物腰の柔らかい人柄は敵を作ることもなく、誰もが彼を慕い、彼は人々を守るために勇者となることを望んだ。そうして、望み通り彼は主神の加護を受けて勇者となった。
勇者としての彼の働きは凄まじく、国内に侵攻していた魔物を全て一掃することに成功する。民は彼を讃え、さらなる魔物の討伐を望んだ。だが、彼はそれを受諾しなかった。自分は守護の勇者であり、魔物の討伐に乗り出せば国を守ることが難しくなる。守れない人が出ることが自分にとってはとても耐え難いこと、彼は人々に頭を垂れつつ懇願した。もちろん非難するものもいたが、彼の人望と功績がその声を押しとどめた。
守護に徹し、攻勢に出ない勇者ミシェル。周辺の親魔物国家は彼を”臥竜”と呼んで怖れていた。

曰く、あの国には人の姿をした竜がいる。こちらから手を出さない限りは臥せたままだが、一度立ち上がれば甚大な被害は免れない。

そうして守護の勇者としての名声を欲しいままにしていた彼の前に、ある時ヴァルキリーが降り立つ。
「勇者ミシェルよ。主神様はあなたに更なる加護を与えよとの命で私を遣わしました。この第二の加護を受けるのであれば、あなたが魔物に屈することはなくなります。しかし、その代償としてあなたは自身の未来を失うこととなるでしょう。それでも、この加護を受けますか?」
神々しい輝きを放つ彼女に臆することなく、ミシェルは答える。
「神の御使いよ。是が非でもない。民を守れるのならば我が未来など安いもの。その加護お受けいたします」
「流石は守護の勇者ミシェル。では、加護を授けましょう」
そう言うと、ヴァルキリーはミシェルに静かに口付けをした。
確かにミシェルはヴァルキリーの、神の威光には臆していなかった。だが、女性経験もなく健強な男性である彼が女性としてのヴァルキリーに平静を保てていたわけではない。彼女の端正な顔立ちが目前にあり、陽光のような輝きを放つ彼女の髪の匂いさえも感じ取れる。唇に触れる柔らかく瑞々しい感触と彼の逞しい胸板に押し付けられて形を変えている豊満な彼女の胸の感触によって、彼はただただ硬直するしかなかった。
そんな彼が自身の体に起こった重大な変化に気づけなかったのもなんら無理のない話であろう。
淡々と口づけを終えた彼女はミシェルの前で跪き、
「私の名はミカエラ。この時から私はあなたの剣となります。共にこの国を魔物から守りましょう」
そう誓った。
その言葉によって、ミシェルは我に帰る。
「ああ、よろしく頼みますミカエラ殿。これ程頼もしいことはありません」
屈託のない笑顔を浮かべてミシェルは握手を求めた。一瞬ミカエラの瞳が揺れたように見えたが気のせいだろう。彼女はすぐに握手に応じ、ここに最高のタッグが生まれた。
これで、この国の平和は保証された。ミシェルは安堵する。
しかし、虚しくも国はその数日後に落とされるのであった。


終わりは呆気ないものだった。
リリム率いる精鋭部隊が彼の国を急襲した。周到な準備の上に行われた作戦によりミシェルとミカエラ以外は戦う間も無く魔物に変えられ、国は魔界と化した。ミシェルとミカエラも奮戦虚しく、二人は捕らえられてしまった。
そして、待っていたのは二人に対する苛烈な陵辱、のはずであったのだが…、



「まぁだまだぁぁっっ!」
床に倒れ伏していたエキドナが勢いよく起き上がる。巨大な蛇体をもたげて麗しい唇から檄を飛ばす。
「皆、私たちは何?、男を愛し快楽を与え堕落させる魔物娘でしょう。愛する男を手に入れたというのに何という有様なの。私は諦めない。主神の加護なんてものに負けたりはしない。彼のザーメンでこのおまんこをパンパンにして、彼の子をどんどん孕むんだから!」
そう言うや否や彼女は再び彼のペニスに襲いかかる。
いくら見目麗しい女性の顔をしているとは言え、その下半身は巨大な蛇体、更にはその容貌でさえ鬼気迫る表情を浮かべて自らに襲いかかってくる。たとえどんな魔物娘好きであろうともこのような状況に置かれれば恐怖を禁じ得ないだろう。ましてや反魔物国から捕らえられたばかりの彼であればなおさらである。だが、彼は期待を瞳に浮かべて縋るような表情で彼女を見つめていた。
「そうよね。私たちは魔物娘。ここで諦めてしまっては私たちの存在意義自体が揺らいでしまう。私たちは主神の呪いなんかに負けたりはしない」
傍にいるリッチを差し置いて、幽鬼よりも幽鬼らしい佇まいでリリムが立ち上がる。
「あなた達も打ちひしがれていないで、何か策を考えなさい。それでも誇り高き魔王軍なのかしら。そんな体たらくだったら、彼を堕としても分けてあげないわよ。彼と私がまぐわっているところを指を咥えてみていればいいわ」
ふふん、とその豊かな胸をそらしながらリリムが言い放つ。
「言ってくれるのじゃ。そこまで言われて奮わなければバフォメットの名折れ。よいぞ、ワシの全叡智を結集して彼奴の呪いを解いてくれよう。その暁にはわしが小僧の一番搾りを頂くのじゃ」
バフォメットはその幼い容貌に不釣り合いな艶美な表情を浮かべて舌舐めずりをする。
「ダメ、それは私のもの。彼の解呪と一番乗りは私のもの」
リッチが壁に手をついたまま、首だけをミシェルに向けて言う。氷のような無表情の中、瞳の奥に灯が灯る。
「宣言するならば、ちゃんとこちらに向き直って言うが良い」
バフォメットが呆れながら言う。
「これは計算。この角度、乳首がチラッと見える」
ローブを揺らしながら、(彼女曰く)ドヤ顔だ。
「なんと、あいも変わらず強かな女よの。だが、それでこそ競い甲斐があるというものじゃ」
相手にとって不足なし、とバフォメットが勢いづく。
「待つのだ。それでは解決できない。不肖ながら全員で協力してことにあたるべきだ」
ヴァンパイアが輪に加わる。気丈そうに見えるが、彼女の背面にはまだ色が付いていない。
「あら、あなたの口からそんな言葉が聴けるなんて驚きね」
エキドナが嬉しそうに声をかける。それでも、彼女は握ったペニスを扱くことを止めない。
「ああ、この状況では全員の力が必要だ。そこにひれ伏しているヴァルキリーの力も、だ」
ビクッとミカエラの肩が震える。ヴァンパイアがその紅い瞳でミカエラを見下ろす中、部屋にいるほぼ全員の視線が彼女に注がれた。
「そうね。確かにあなたが彼をあの体にしたのよね」
リリムがひれ伏しているミカエラの背に座る。
「その話もっと詳しく聞きたいのだけど」
「あ、ああ」
ミカエラは魔物に座られるという屈辱と自らに沸き起こる新たな感覚に戸惑いながら口籠る。
「ねぇ、私とあなたとの間柄じゃない。さっきはお互いあんなに激しく求め合ったというのに。私の片想いだったのかしら?」
そう言いながら、リリムはミカエラの臀部に指を這わせる。ミカエラの張りのある尻肉の上を蛇の舌のように淫魔の指が這い回る。
艶かしい感触は弱火で炙るようにミカエラの熱を焦らす。溢れそうになる吐息を必死で堪えるものの、指先が尻肉の割れ目に近ずくにつれて堪え切れなくなった吐息に艶が混じり出す。焦らしながら指先は股の間の泉に辿り着き、その蜜を掬い取りながら源泉に侵入する。
「くっふぁぁぁぁぁぁぁっっっ❤︎❤︎❤︎❤︎。っぅぅぅっ❤︎❤︎❤︎」
堰が切れたように嬌声と愛液が吹き出しミカエラの腰が砕ける。
「椅子の役目もできないなんて、ダメねぇ」
嗜虐的な瞳がミカエラの屈辱の表情を絡め取る。ミカエラは未だ引かないアクメの波に体を痙攣させつつ悶えている。
情欲に目を潤ませ、口からはだらしなく涎が溢れ、犬のように舌を出して喘いでいる。主の威光を受けたヴァルキリーではありえない有様だ。
それでも、言葉を返せるだけ流石といえようか。
「わ、私が知っていることはさっき話したことで全てです。主神様から彼に第二の加護を渡す命を受けて彼にそれを施した。第二の加護がどういったものか、それによって何が起こるかなんて知りませんでした」
「そうなのよね。じゃあ、もしもあなたが後悔しているのなら私たちに協力しなさい。いいかしら」
「はい」
本来ならば、魔物娘に協力するなどヴァルキリーとしてあるまじき行為であったが、ミカエラは苦しむミシェルが見ていられず、女としての自分を優先していた。いや、そんな表面的なところではなく、もっと深いところで彼女に変化が起こっていたのだろう。
「ふふ、聞き分けがいい子は好きよ」
リリムは満足そうに微笑むと他の魔物娘たちに声をかけた。
「それぞれ解呪と魅了に分担していきましょう。それでさっきから話に加わっていないけど、あなたはどちらに加わるのかしら」
リリムは残された最後の一人であるデュラハンに声をかけた。
だが、デュラハンは相変わらず自分の首と兜でお手玉をしていた。いつの間にか籠手も交えて計4つの玉での見事なお手玉だ。
まだトリップしている。
「ちょっと、あなたそれでも戦士長なの⁉︎」
リリムが呆れて怒鳴るが彼女の耳には届かない。
「この豆腐メンタル。ヘイ、パス」
リッチが回るお手玉のうち、首をリリムに向かって弾き飛ばす。それでも、体は残りの3つでお手玉を続行中だ。
リリムは飛んできたデュラハンの頭を片手でキャッチするとそのまま五本の指で締め付ける。
「しょ、う、気、に、戻りなさい」
万力のような力で締め付けられたデュラハンは、
「うぇぇぇえーん。だって、だって、あんなに恥ずかしかったのに、頑張ったのに、ダメっだったんだも〜ん。それに姫様だってダメだったのに私なんかが出来るわけないですよ〜〜」
「あれ、さり気無くあなたも傷つけてないかしらこの子」
玉袋を揉みながらエキドナが言う。
リリムの頬は引きつり、指にはさらに力がこもる。
「だから、頑張るんでしょう。今から誇りを取り戻して、夫も手に入れるんでしょうが。あなたも協力しなさい」
「わ、分かったから、力を緩めてよ〜。痛い、いたい、イターイ!」
「ふん」
べしっ、と上手投げでデュラハンの頭を体に投げつける。頭を受け取ったデュラハンは元の位置に頭を乗せると、
「それでは、私は魅了側に加わりましょう。今の状況を覆すために尽力いたします」
口調を正してもこの空気は覆らない。

リリム、エキドナ、ヴァンパイア、そしてデュラハン。彼女たちは自らの魅力とテクニックを駆使してミシェルの陥落を目指す。
バフォメット、リッチ、ヴァルキリー。彼女たちは自らの知識と知恵を総動員させて主神の呪いに挑む。
これはただ単に、主神や勇者との戦闘や、夫を手に入れるための闘争では無い。彼女たち魔物娘としての誇りと存在意義をかけた決して負けられない戦なのだ。



それは主神による壮大な実験だった。
いくら勇者を量産しても魔物娘はその勇者を陥落し、更に勢力を拡大させていく。強力な勇者を作り出してもより強力な魔物娘の丁度良い餌になるだけ。近頃では強大な力を持った古い魔物娘たちが、強い勇者プリーズ、と主神に祈りを捧げて来る始末。このままでは、主神側の消耗戦になるのは明らかであり、危機感を覚えた神々はただ強力なだけの勇者を量産する今の方法ではなく、新しい手を打たなくてはならないと思索した。
そこで主神が考え出した策が神為的なエレクチオンディスオーダー、つまり男を勃起不全にすることだった。その最初の被験者として選ばれたのがミシェルである。心身ともに男性である彼は魔力に当てられてもインキュバスにこそなれ、アルプと化すことはないだろう。更に、主神の力の効果を限定させることにより、呪的効力を増加させて簡単には解呪できなくする。主神は名案だと思った。
が、魔物娘によっては精液でなくとも精を補給する術はあるので、魔物娘の弱体化まで期待できるものではない。
故に、この試みは連日の負け戦にトチ狂った主神が魔物娘に対して行った単なるイヤがらせの域をでないものであった。
だが、効果はバツグンだった。
いくら精は得られるとはいえ、ちんぽをまんこに入れられない。男性のペニスを勃起させられない。となれば、魔物娘の名折れ、存在意義さえゆるがせかねない一大事と化すのであった。


「くっ、ここまでしているのにピクリともしないなんて」
リリムはミシェルの顔面に跨りながら憤る。
ジャブジャブさながらに溢れ出す彼女の愛蜜を音を立てながらミシェルは嚥下する。飲み込むたびに胃から腸から、身悶えを通り越して身も心も捩切れてしまうかのような欲情が脈動する。乾くことのない美酒が艶かしい芳香で鼻腔を満たす。一息ごとに目の奥で快楽の光が瞬く。ぷっくりと勃起したクリトリスも視界に収まりきらないような双丘も暴れ踊っている。常人ならば、いや勇者であろうとも抗えるはずのない淫毒が全身を焼き続けていた。
すでにミシェルは身も心もインキュバスになっている。目の前の雌にただただ自分の精液を注ぎ込み、己の物だという証を刻み込みたいという衝動に駆られていた。だが、ミシェルのペニスはナマコよろしく、くったりしたまま。ペニスには幾重にも舌が巻き付き、カリ部分を二股に分かれた舌先が執拗に擦りあげてはいたが、
「ほほひひはは、はへはひははふほはへほ・・・(大きいから舐めがいはあるのだけど)」
だんだんとエキドナの顔がまた沈んでいく。いっそ陰嚢に穴を開けて精液を吸い出してやろうかなどと恐ろしい考えが思考の端に見え隠れしていた。ペニスを包む舌は上から下へ、下から上へ、感覚に慣れてしまわなないように不規則なリズムで蠕動する。唾液にぬらぬらと濡れて生温かい体温を伴い、ペニスという触覚器官に耐えず快感を送り込んでいく。その実、快感の暴風雨に曝されるような暴力的な感触にもかかわらず、反応は得られない。
「っはぁ❤︎、これでは先に私の方が参ってしまいそうだ」
悩ましい吐息を吐き出しながら、ヴァンパイアは彼の首筋から紅い唇を離して一息つく。彼女は彼につけた犬歯の傷を愛おしく撫でさする。
「なんという美味な血潮か。芳醇なワインのようでもあり、澄み通る清酒のようでもある。そして、なにより火酒のように熱い。芥子の香も入っているのではないだろうか。これが飲めなくなれば私は死んでしまうと思うほどに中毒性を持っていて美味だ。だが、このまま飲み続ければ私は私を抑えることができないだろう。なんというジレンマ」
彼の血液を吸って情欲を高めるはずが、逆に当てられて思わず饒舌になっている。続きを行うことができないのはヴァンパイアの貴族としてのプライドから。続ければ彼よりも先に彼女の理性が決壊する。それほどまでに彼の血は甘美であった。いや、男性に触れるのが初めてであった彼女にとっては首筋に唇を這わせ、その肌に牙を突き立てるその行為そのものからして、自らを慰めるたびに思い描いていた甘く喜びに打ち震えるものに違いなかった。すでに下着は下着の体をなさない程濡れそぼり、染み出した雫が内股を伝っている。もじもじと両の腿をこすり合わせながら、彼女は下腹部の疼きとむしゃぶり付きたくなる衝動を抑えつけていた。
「頑張れ!やればできる!諦めるなぁぁ!!」
とそこに、空気の読めないデュラハンの叫びが入る。
「「ヤれないから、(子供が)出来ないんでしょう(だろう)がっ!」」
放たれたリリムの手刀とヴァンパイアの延髄蹴りがデュラハンの首の部分でクロスする。交差した手と足の上にデュラハンの頭部が鎮座した。
「ごっ、ごめんなさい〜」
体から離れた生首が涙目で震え出す。
「せっかく気分が上がってきたところだったというのに」
「だいたい何。あなた、さっきも彼の服を脱がせるだけで精一杯って、呆れて物も言えないわ」
「だって、あんなに逞しいもの(胸筋や腹筋)を目の前にしちゃったら、その」
「逞しいって、パンツを下ろしたのはエキドナじゃない。おちんちんも見ずに真っ赤になるって、どれだけ初心なのよ」
「お、おち、ち、ぷしゅう」
湯気が出るのではないかというくらい、生首が赤くなっていく。
「まったく、彼を墜としたら、彼女の教育を行わないといけないな」
「ほふへぇ(そうねぇ)」
「あ、フェラに彼女も混ぜてあげたらどうかしら」
「ひひはほ(いいわよ)」
「そうだな、彼女にはそれくらいの荒療治の方が良さそうだ」
「ふえ、フェ⁉︎、まだ心の準備が」
「問、答、無用だ」
あたふたする首のない体をそのままに、ヴァンパイアが生首をエキドナに蹴り渡す。
「あつかいがヒドイよ〜」
目を回す生首をエキドナが受け取ると、そのまま自分の舌ごとペニスを咥えさせる。目を白黒させて真っ赤になっている生首をオナホのように扱って、ミシェルの肉棒に新たな刺激が加わった。
「猟奇的にすぎるかもしれないけど、できることは何でもしましょう。彼女のためにも彼のためにも」
リリムはミシェルを獲物を狙う目付きで見下ろす。とは言え、暴れる彼女の爆乳でミシェルの顔は見えないのだが。
腰の動きを強めつつリリムはポツリと独りごちる。
「実際、追い詰められているのはこちらなのだし」


「あちらは盛り上がっておるようじゃな」
バフォメットがミシェルに群がる彼女たちに羨ましそうな目線を向ける。
「うん、でも、みんな目が」
「ああ、死にかけておる」
二人は哀れみの目線を投げかけていた。
「とはいえ、お兄ちゃんに触れておるのじゃから、羨ましいのには変わりないの」
「そう、それは事実」
ギリギリと歯ぎしりの聞こえてきそうな表情のバフォメットと無表情のリッチの心は一つであった。
早く主神の呪いを解かなくては。
そのためにも、今はこのヴァルキリーから話を聞かなくてはならない。
「さて。お主が主神の呪いをかけたということじゃが。どのようにかけたのじゃ?」
まずはそこからじゃ、バフォメットはミカエラに顔を近づける。ミカエラは腰が抜けたまま床に座り込んでいるので、バフォメットに覗き込まれる形になる。あどけない風貌の中にある可愛らしい瞳は深い理知の光を湛え、覗き込まれれば脳みそを手で探られているような感覚でミカエラの背筋が寒くなる。いくら少女の外見をしていようが相手は老獪なバフォメット。嘘を言えばすぐに見破られ、恐ろしい罰を受けるだろう。しかし、ミカエラの心にはもはや目の前の魔物を騙そうという気持ちなどなく、彼女の心中を占めるのはミシェルへの想いであり、それは◾︎◾︎ともいえるものでーーー、
「よい。儂に協力すれば、お主の想いも遂げられるじゃろう。」
くつくつ、とバフォメットは少女らしからぬ笑みを漏らす。ミカエラはまだ言葉の定められない心、まだ認められない想いを見透かされて、座り心地の悪さを感じた。
「そっちは後でいい。今は呪いを解くことが先決。さぁ、ちゃっちゃと吐く」
話がずれそうになるのを防ごうとリッチが口を挟む。
「はい。第二の加護は天上からは与えられないということでしたので、私から直接授けるという形を取りました」
「して、その方法とは」
「その、接吻」
ゴスッ。
リッチの蹴りがミカエラの後頭部に入る。
「おい、今なんつった。接吻。まさか、彼のファースト。許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない」
無表情で呪詛を呟きながら蹴り続ける。
「痛っ、痛い、痛いです。それについては謝りますから、蹴るのは止めてください。そうでないと私はなんだか」
「おいお主ら。双方ともに新たな扉が開き始めておるゆえ。堪えるのじゃ、止めるのじゃ」
バフォメットが慌ててリッチに飛びつく。
「放しておばあちゃん、そいつ蹴れない」
「誰がおばあちゃんじゃ!」
禁句を言われた バフォメットが叫び声とともに魔力をリッチに叩き込む。魔力はリッチの体内で荒れ狂い、彼女を絶頂へと導く。
「っぅぅぅぅーーーーーーっ❤︎」
堪らずリッチは床にへたり込み、肩で息をして喘いでいる。無表情ながらも頬には赤みがさしている。
「のう。誰が、おばあちゃんじゃ。誰が。のう」
至近距離から刺し殺すような視線を浴びせかけられ、リッチは目を背けてしまう。
のう、のう、と繰り返しながらバフォメットの瞳がリッチの眼球を追いかける。
「今は彼のことが優先なのでは?」
かけられた言葉に二人が止まる。
「そうじゃな。儂としたことが我を忘れてしまった。今はそれよりも為さねばならぬことがあったな」
矛先を収めたバフォメットが言う。
「ありがとう、助かった。でも、ファーストの事は別だから。また、後で」
ふふふ、と表情を変えずにリッチが笑う。
ミカエラの頬を冷たい汗が流れる。同時にぞくぞくと何かが下腹部から込み上げてくるような、この感情はなんというか、期待感というか。
「折檻は後で行う」
笑うリッチの後ろから、乾いた声が追いかける。ひぃ、と小さな声が聞こえた気がした。
その後、ミカエラから主神の言葉、他に行ったことがないか聞き出した二人は、
「鍵は、「あなた」お主じゃ」
と声を揃えた。
「おそらく主神めは自身の手による加護の重ねがけができないため、第二の加護を授けるには他者の手を借りなくてはならなかったのじゃろう。そこでお主を選んだ。じゃが、神族ではないお主が加護を授けるにはただ渡せば成立するというものではない。そこでキスという共感魔術の力も利用したのじゃろう。お主と奴をリンクさせて加護を成り立たせたのじゃ」
その結果、ナニ立たなくなったのじゃという言葉は、聞こえなかったこととする。
「じゃから、お主をどうにかすれば解呪できるかもしれん」
「イかせてみる?」
リッチが手をワキワキさせながら提案する。
「ダメじゃろうな。先ほど姫が散々イかせておったろう」
「確かにそうだった。おまんこ大洪水、だった。だけど、彼はチン黙したまま」
「〜〜〜〜〜っ」
ミラエラは真っ赤になっている。バフォメットはお前も沈黙しろとリッチに冷たい視線を投げかけていた。
「それに見たところ此奴は触媒として使われただけで、今は影響を及ぼしておるようには見受けられん。うーむ、他に案はないじゃろうか。代役とはいえ主神の術を力尽くで解呪するのは骨が折れるじゃろうし、流石に勇者とはいえかなりの負担を強いられるじゃろう」
「正攻法で一つ一つ丁寧に破っていくのは、時間がかかって彼女たちが保たない。もちろん私も」
「儂もじゃ。それに、その方法で解呪できるとも限らぬ。インキュバスになっても勇者としての力が残っておることもその証拠じゃ」
その時、ミカエラがおずおずと挙手しながら提案した。
「もう一度接吻する、とか」
ミカエラの発言に場が止まる。
「ほう。お主、羽は白いままじゃが、すでに堕ちておるのではないか?」
「この、泥棒猫っ」
その方面から切り崩そうとしたミカエラにバフォメットは感心し、リッチは唾を吐く。
「いえ、接吻で加護が授けられたのならば、もう一度接吻すれば解けるのでは。ただそう思っただけなのですが」
「そうか、お主、アホの子じゃったか。自分にかけられた魔術も見抜けぬとは」
アホと言われて、ミカエラはムッとするが、
「さっきも言ったじゃろう。お主は触媒として使われただけで、今は何の効果も及ぼしてはおらんとな。じゃから、キスしたところで単にキスするだけになるだけじゃ。それともあれか。王子様はお姫様のキスで目覚めるとでも?。なら口ではなく鈴口にキスでもして、チンポを目覚めさせろということじゃ。なんならエキドナのように、舐め回してしごいてバキュームすればよいのじゃ。いや、いっそ下のお口同士でキスすればよい。ちゃんと唇もついとるじゃろうに」
「そ、そんな破廉恥なこと、出来るわけありません!」
顔を真っ赤にして、ミカエラは言い返すが、その瞳に宿り始めている炎にバフォメットが気付いていないわけがない。
だが、いつの間にか考え込んでいたリッチが、
「それ、いいかもしれない」
二人は思わずリッチに顔を向けた。
「今、彼にかかっている呪いが彼女を通してかけられたものならば、キャンセル出来ないにしてもアクセスは出来るかもしれない。そして、パスが通っているのならば上書きしてしまえばいい」
「確かに。それならば可能性はあるかもしれん。じゃが、上書きといっても主神の術を上書きするとなるとそれ相応の術式とエネルギーが必要になるぞ」
「そう。でも、彼女の種族は何?」
「何とは、ヴァルキリーじゃろ、う。そうか、そうじゃな、ヴァルキリーじゃ!」
バフォメットは合点がいったと興奮する。ミカエラは話について行けていない。
「ヴァルキリーなら、そのまま魔物娘化する以外にダークヴァルキリーになって魔物化するルートがある。そこで声をかけてきていた堕落神に協力してもらって、神の力で上書きを行う。そうすれば、神族同士ということで今かかっている加護にもアクセスしやすくなって、負担にはならないかも知れない」
「そうじゃな、じゃが推測の域をでんじゃろう。彼奴を危険にはさらせんぞ」
「大丈夫だと思う。主神が今回行った加護は、男性器を立たなくさせるということ。魔物娘はチンポ以外からでも精を摂取できるのに、そんな方法を試してきたということは、半ば八つ当たりに近いと思う。そんな術式は強固であろうとも、巧妙なトラップが仕掛けてあったりすると思う?」
「うむ、ザルじゃな」
「うん」
バフォメットはリッチの言葉に納得がいったと頷く。
「では、此奴に堕ちてもらい、キスをしてリンクした隙に堕落神の力を借りる。というものじゃな」
「そう。それでキスだけど、最初のキスは彼の精神を揺らす役割も持っていたと思う。でも、今は散々やられて…」
そこで、ミシェルをみると、ちょうどエキドナが彼のアナルに舌を挿入している光景が目に入った。
リリムが顔面に跨って踊り、ヴァンパイアが一心不乱に血液を啜り、デュラハンが自らの頭部をおナホにして彼の肉棒をしゃぶっている。エキドナの舌はかなりの長さが入っていそうだ。
「「「なんと羨ましい」」」
声がハモる。
「は、置いておいて、確かにあの状態ではキスごときで揺らぐとは思えんの」
「そう、だからさっきの。下のお口で、おまんこでキスしてもらう。実は、勃起しないからみんなまだ素股とかして下のお口ではキスしてない。だから、今まで加わっていなかったメンバーがまんこで挟んで咥え込めば、彼の動揺を誘える可能性がある。そうすれば、上書きもよりやりやすくなる」
「そうじゃな。ついでに淫語でも囁きつつ迫れば、効果も上がるじゃろう」
「でも、問題が一つある」
「なんじゃ」
「それはこの泥棒猫に下のファーストキスも奪われること。さらにダークヴァルキリーになっている状態で彼のチンポが立てば、キスで終わるはずがない。下手をすると、彼の初めてを総取りされる心配がある」
「確かに。ミシェルの肉棒を陰唇で挟み込み擦りながら、彼にしがみ付き乳首をこすり合わせ、耳元で淫らに囁きつつ、あまつさえ唇や舌も歯も唾液も貪る。その中で彼の逸物が立ち上がるのならば、もう膣どころか子宮の奥深くまで咥え込まずにはいられようか(いや、いられない)」
「うむ。大問題じゃな。じゃが、背に腹は代えられまい。量で埋め合わせることとしよう」
「うん。納得は出来ないけど、仕方がない」
「よし。では、堕ちよ。今すぐに、疾(と)く堕ちよ。というか、お主すでにダークに堕ちておるじゃろう」
「何を好き勝手に言っているのですか。私にそのような淫らなことが出来るはずがありません」
ミカエラのその言葉に、バフォメットとリッチは顔を見合わせる。
「これは、ワザと?、それとも天然、本当にアホの子なの?」
「アホの子じゃと思うぞ 」
「人のことをアホの子などと侮辱するのは止めていただきたい。主神さまの声も、私も力を貸そう、そして、今すぐに堕ちて彼を貪るように、と仰っていますが、残念ながらその声には従えません。なぜなら、私は貪りたいのではなく、貪られたいのです!」
ミカエラは胸を張り、凛とした声で言い放った。
「残念なのはお前の頭じゃ!、そこまで自らの欲望を叫んでおきながら、未だにダーク化していないことの方が驚きじゃ」
「私もこの子は残念なアホの子だと思う。ごめんね、泥棒猫なんて言って。意味、分からなかったよね」
リッチはもうすでに可哀想なものを見る目を彼女に向けている。
埒があかないので、ため息をつきつつバフォメットが切り出す。
「先ほどからお主自身の欲望がだだ漏れじゃのに、認めぬとは。止めを刺すしかないようじゃな」
バフォメットが艶やかな笑みを浮かべながら魔術で鏡を作り出し、ミカエラを映す。
「見るがよい。鏡に映った己の姿を。これならば言い逃れもできまい。お主、蕩けるような笑みを浮かべておるぞ。その顔は儂ら魔物娘と寸分と違わぬて」
そこには、淫らな妄想に頬を染め、凛々しさのかけらもない蕩けきった表情を浮かべる一匹の雌が映っていた。目は劣情に染まり、吐き出す息の一つ一つに欲情が込められている。確かに、これではまるっきり魔物娘と変わらない。いくら口で違うといっても、心は信じようとしても、これでは認めざるを得ない。

「ああ。これでは、やはり」
口に艶然とした三日月が登ると同時。
神々しく純白に輝いていた翼が漆黒に染まる。翼の根本から闇色が染み出し、羽毛の一本一本が羽先に至るまで漆黒に染め上げられていく。白磁の様に滑らかな肌も蒼く染まっていき、愛でられるだけであった白磁の器が攻撃的な青銅器へと変貌していく。溢れ出す魔力の渦は下腹部から脊髄を舐め上げ、脳髄に辿り着く。荒れ狂う熱情と湧き上がる欲情の前には理性など保てるはずがない。理性も思考も蕩けきった後に残ったものは彼を求める獣慾のみ。
「あはぁ❤︎、なぁんて気持ちがいいのでしょうかぁ。こんな熱くて甘くて身悶えしてしまう感情を、どうして私は我慢なんてしていたのでしょうか」
唇の端を艶かしい舌で舐め上げ、瞳に劣情の灯を点しながらかつてヴァルキリーであったものがミシェルに近づいていく。彼女の歩みのあとには、雫が溢れたあとが続いている。
「おおう。此奴、よほどムッツリ溜め込んでおったと見える。魔力の溢れ具合が尋常ではないわ」
「うん。成り立てでこれって、なかなか」
バフォメットとリッチは呆れるを通り越して感心している。
「申し訳ありません。皆さん、どいていただけないでしょうか。彼には私という先約がありますぅ❤︎」
「あなた何を言って」
彼に群がって夢中、半ばヤケクソになっていた魔物娘たちは突如投げかけられた言葉に手を止める。
彼女たちの目に映るのは、蠱惑的な表情を浮かべ口からも蜜壺からも涎を垂らす一匹の雌の姿だった。
「へぇ、なかなか様になっているじゃない」
「あなたの方こそ美味しそうかもしれないわね」
「はうっ、成り立てで私の魔物娘力を超えている⁉︎」
「これはこれは、私たちの世界へようこそ」
現れた後輩の姿に彼女たちはそれぞれ祝福の言葉を投げかける。
「じゃあ、何か解決策が見つかったということかしら」
リリムは名残惜しそうに、ミシェルの頭を挟んでいる太股に力を込める。
「そうじゃ、確実ではないが試してみる価値はあろう」
「ええ、だから皆さんどいていただけないでしょうか」
ダークヴァルキリーの言葉に、彼女たちはしぶしぶミシェルの上から退いた。
リリムが頭から退いたことで、今まで彼女の踊る双丘と陰部しか映っていなかった彼の視界に変わり果てたパートナーの姿が目に入ってきた。
「ミカエラ殿…」
天上の光を宿していると思うほどに純白に輝いていた羽は、深淵の闇よりも深い漆黒に染まり鈍く輝いている。白磁のように滑らかな柔肌は青く染まり、今にもこちらに飛びかかろうとするほどに攻撃的だ。澄んだ青い湖を湛えていた瞳は赤く煮え滾る溶岩に蹂躙されている。その熱はミシェルに向ける熱情。貞淑に隠されていたはずの股間の蜜壺は晒され、はしたなくダラダラと涎を零していた。
「どうでしょうか、私の姿は。どうしようもなく淫らで醜いですか。それとも、こんな私をあなたは求めてくれるでしょうか」
挑戦的な笑みで投げかけるミカエラに、
「美しい」
ミシェルはそう嘆息せずにはいられなかった。
にぃぃ、と口端を吊り上げながらミカエラは更に近付く。
「酷い人ですね。今まで、そんな言葉をくれたことは無かったのに。今の一言で軽くイってしまいました」
吐息を漏らしながら、その手をミシェルの胸板に触れ、労わるように逆撫でるようにミシェルの乳首を捏ねる。
「そんなに切ない顔をしないてください。苛めたくなってしまうじゃないですか。私は虐められる方が好きなのに❤︎」
ミシェルの表情を堪能しながら彼の頬に舌を這わせる。ナメクジが這うように唾液の軌線を描いて頬から彼の唇へ辿り着き、端から丁寧に舐めていく。リリムの愛液の跡を舐めとりながら、彼の顔中に自らの唾液で新しいマーキングを施していく。魚のように喘ぐ彼の口を塞ぎ、甘く新しい吐息を注ぎ込む。舌と舌を絡ませ互いの唾液を互いの口内に塗りたくる。唇を放しても互いの舌をまだ唾液の橋が繋いでいた。
プツリと、橋が切れる。
「ふふ。初めてのキスもこうしていればよかった」
恍惚とした表情でミカエラが笑う。二人の温度が徐々に上がっていく。
一方でギャラリーは複雑な表情を浮かべていた。自分のマーキングを上塗りされたリリムしかり、初めてという言葉に反応したリッチしかり。
ミカエラの唇はミシェルの顔から顎へ、顎から首へ啄むように位置を下ろしていく。首筋にある犬歯の痕をキスマークが覆い隠す。
舌が這いずるように胸筋、腹筋に。腹筋の割れ目を一つ一つを丁寧になぞって進む。ミシェルは弱火で徐々に徐々に体の芯から熱せられていくようだ。焦らすように、焦らず丁寧に調理が施されていく。ミカエラが美味しくいただけるように。イくことも出来ず、先ほどまでとは違い身悶えするにも弱い刺激に、ミシェルはねだらずにはいられない。もうすぐ彼女の舌はペニスに辿り着く。その一秒、一刻がもどかしい。早く、早く。
ミカエラは彼の鼠径部をなぞり溜まっている汗を舐め終え、その中心点へ向かって舌を滑らせる。ミシェルはどろりとしたものが尻の辺りで蠢くのを感じた。ついにペニスに吐息がかかり、待ち遠しかった愛撫が。
始まらずにペニスの横を素通りして行く。そんなまるで拷問にも等しい生殺しに、ミシェルは思わず彼女に非難の目を向けてしまう。
「ダァメ❤︎、まぁだ、まだです。もっともっと望んで、願って、渇望してください。そうして、もっともっと私に縋ってください。私のおまんこの中で、ザーメンを打ちまけずにはいられないくらいに。そして、私を再び白く染め上げてください❤︎」
膝の窪みに吸い付きながら、上目遣いでミカエラがミシェルを睨めあげる。
じわじわとせり上がり熱を増していく欲情が、一枚一枚と理性の薄皮を剥がしていく。吐き出す息の一つももどかしい。望んでいる刺激が得られない。今すぐにこの束縛から解き放たれるのであれば、彼女を組み伏せその肢体を余すことなく貪り、自身の男根で彼女の女陰を貫きたい。そして、陰嚢の中身が枯れ果てるまで精液を彼女の胎内に注ぎ込みたい。ミシェルの心にどろどろとした獣慾が浸食していく。
そんな彼をミカエラは満足そうに見る。彼女とて彼と心は変わらない。早く、早く。彼の肉棒を自身の蜜壺にハメ込みたい、孕んだと見間違えるほどの精液を注ぎ込んでもらいたい。もうふにゃチンでもいいから挿れてみようかとすら思う。
でも、まだだ、ガマン。彼女は心の中、胎内で猛り狂う自身の獣を軋み続ける理性の鎖で縛り付ける。今ここで、解き放ってしまっては想いを遂げられない可能性すらある。それだけはなんとしてでも避けなくてはならない。愛した彼には十全の状態で処女をを奪ってほしい、こちらが童貞を奪うのと同じように。それに、出会った時からずっと、ミカエラは彼が欲しいのを我慢し続けたのだ。ここで限界を迎えてしまっては、とても、
モッタイナイ。
足の指の一本一本を丁寧にしゃぶり終えて、彼女は一度彼から唇を放して一息つく。
次はどうしようか。彼に私を舐めてもらっても良いが、彼の舌が触れた瞬間こちらの理性が焼き切れる自信ががある。それでは台無しだ。
そうだ、オナニーをしよう。
名案だと彼女は思った。彼に触れられてはいけないのならば、自分で触って彼に見て貰えばいいのだと。彼女は早速彼の顔に跨り、彼の唇が舌が届かないくらいの位置に淫部を近づける。彼によく見えるように手で陰唇を押し広げる。
ミシェルはこんこんと湧き出る泉のような女陰から目を離すことが出来なかった。ピンクにぬめる瑞々しい果実のような淫肉に思わず生唾を飲み込んでしまう。音が聞こえたのだろう、彼女の顔に嗜虐的な笑みが浮かぶ。
「しっかり見てください。あなたが欲しくて欲しくて、乾かなくなってしまいました。乾かない代わりに、渇いて渇いてしょうがなくて。早く責任を取って下さい。立ち上がって私を征服してください、ドラゴンさん」
言われるまでもない。すぐにでもこの女が欲しい。この女を蹂躙して自分のモノにしたい。ミシェルには自らの内に眠る竜の鼓動が聞こえてきていた。
んぅ、艶かしい声とともに彼女は自身の蜜壺に指を差し入れる。柔らかな果肉が、ふにふにと形を変えながら彼女の指を飲み込んでいく。一本、二本、三本。前後に動かしながら指を屈曲させて中をかき混ぜる。愛液の飛沫が飛びミシェルの顔に降り注ぐ。思わず彼は口を大きく開けできるだけ多くの汁を集めようとしていた。
ミシェルの様子とわずかにかかる彼の荒い吐息かかり、直ぐにでも腰を落として彼の口内に直接自分の愛液を注ぎ込みたい、その唇で啜りあげてもらいたいと獣が鎖の中で跳ね回る。でも、ダメダ、ダメダ。マダ、まダ。
「ふぅ、んぐっ、はぁっ❤︎、〜〜〜〜〜〜っ❤︎❤︎」
やがて絶頂を迎え蜜壺から盛大に吹き出した愛液が彼の顔中に降り注いでいく。
「もう、焦らさないでくれ」
ミシェルから掠れた声が漏れた。
「あら、何をでしょうか」
ミカエラが微笑ましいものを見る表情で彼の顔を覗き込む。
歯を食いしばり耐えていたミシェルは、
「早く、早くヤらせろ。そんな美味そうなまんこを目の前に見せられて我慢できるわけがない。お前の処女膜を突き破り俺の精液でお前の体を満たしてやる。溢れても溢れても止めてはやらない。泣いて許しを請うても俺が乾ききるまで止めはしない」
欲望の限りを口から解き放つ。彼の心の内の竜はすでに鎌首をもたげて彼女に狙いを定めていた。
「ふふっ、あははははははははは!」
彼の欲望の言葉をを叩きつけられて、ミカエラは心底嬉しそうな笑い声をあげた。
「そうです、それでいいのです。やっと素直になってくれましたね。でも、あなたこそその言葉を忘れないでくださいね。私の我慢もとうに限界ないのですから」
ミカエラは立ち上がり場所を移す。彼の下腹部、彼のペニスを跨いで立つ。ミシェルもミカエラも堪え切れない劣情から息が荒く激しくなり、その音が重なり合う。ミカエラはミシェルのペニスに優しく手を添えて自身の蜜壺に誘い込む。そして、ミシェルの男根をミカエラの女陰が優しく挟み込み咥え込んだ時、
突如、臥したままであった竜がその巨体を持ち上げ火を吹いた。

雄々しく立ち上がった彼の肉棒がそのままミカエラの処女肉をかき分け処女膜を貫く。そして、そのまま子宮口を盛大に叩き精液を解き放っていた。今まで溜まりに溜まった精液が止まることを知らずに彼女のコブクロを満たしていく。
急に叩き込まれた快楽によって、彼女の頭の中は破瓜の痛みを感じる暇もなく一瞬で快感が埋め尽くす。稲妻に打たれたような衝撃に体は震え、彼女の口から声にならない獣の雄叫びが迸る。全く引くことのない快感の波は何度も何度も彼女の意識を飛ばし、引き戻し、再び飛ばす。思考回路はとうに焼き切れ、ビクビクと痙攣を繰り返す体に今だ精を吐き出し続けて震える彼の肉棒の熱さ、それを一滴も零すまいと脈動する彼女自身の子宮の熱さだけが世界の全てになっていた。
”もうこれで一人前ね” 思考が彼方に追いやられる直前、ミカエラは堕落神の声を聞いた気がした。

ミシェルは立ち上がって火を吹いた男根に喜びを感じている暇がなかった。彼女の果肉の感触も初の性交の感慨も感じる間も無く、吐き出される精の感覚が圧倒的だった。まるで体の内側がひっくり返って、尿道から全て出て行ってしまったかのようだ。精巣の中からだけではなく、逞しい腹筋に守られた内臓が、肝臓も腎臓も腸も、果ては心臓も肺も、おおよそ胴体に詰まっている全ての器官がどろどろに溶けて精液になって吹き出てしまったかのようだ。そんな圧倒的な放出する快感が脊髄を登り、脳髄を弾けさせている。脳と生殖器だけの浅ましい生物になってしまったようだ。口からは竜の吠え声にも似た声にならない叫びを上げ、尽きることなく吐き出される精の感覚にイき狂う。


主観にして永遠とも思える時間も客観的にはそう長い時間でもなかったのか。
ようやく精液の放出が止まり、息も絶え絶えに溶け合っていた2人が戻った。
「ミシェル」
「ミカエラ」
どちらともなく名前を呼び合い口づけを交わし合う。
「ありがとうございます。あなたのおかげで私は救われました」
「いえ、私の方こそ。このような幸福があったと初めて知りました。まだ私の中にあるあなたのモノが熱い。それに、私の胎内を満たす精液は温かい」
言ってから、ミカエラは照れ臭そうにする。
快感の波が収まるにつれ、ミシェルの心には歓喜が押し寄せてきた。
「今まさに愛が主を打倒したのだ」
ミシェルは心からの言葉を形にした。気持ちの良いものだな、とミシェルはしみじみと感じいる。愛するミシェルが微笑んでいる。
その微笑みにミシェルの竜が身震いをする。
「あっ」
ミカエラの驚きの声。
「すまない。すまないが、またいいか?」
ミシェルの問いに、
「これが答えでいいでしょうか」
ミカエラは再び瞳に情欲の炎を灯し、彼の肉棒を膣肉で締め上げる。
くっ、呻き声を漏らしながらもミシェルは顔を綻ばせつつ第二ラウンドを始めようとする。

「そうですか、私たちは空気ですか」
その時、歯を食いしばり、拳を握りしめ、嫉妬に身を焼き滅ぼされながらも静観していたギャラリーの面々がついに口を開いた。
「やっぱりこの泥棒猫。総取りしやがった」
リッチらしからぬ言葉が聞こえる。
「激しかった〜。次は、次はぜひ私に!」
顔を真っ赤にしつつデュラハンが勢いに任せる。
「流石に、ここで続けられては儂は許せそうにない」
「そうだな。私も限界が近そうだ」
「この疼きはもう吐き出すのみよね」
年長(老年)組も堪えてきているようだ。
「主神を愛で打倒したのなら、私たちとエッチで新しい世界を始めましょう」
リリムが満面の笑みを浮かべている。が、目は笑っていない。
「じゃあ、みんなで山分けしましょうか。みんなで頑張ったのだから」
「ちんぽは代わり番ことして、私は右手を」「儂は腹筋を」「まず、胸板は譲れない」「わ、私は首が欲しいです」「私は舌を戴こう」「私は目にしようかしら」
えっ、何それ怖い。未だに体の拘束が解けていないミシェルは恐怖に顔を引きつらせる。
助けを求めてミカエラを見るが、
「私はアナルを貰ってもいいでしょうか」「「「どうぞどうぞ」」」「私たち気が合いそうね」
かしましい声に賛同している。
既に味方のいない状況にもかかわらず、ミシェルの股間の竜は臨戦態勢に入ったまま。
彼女たちを煽る効果しかもたらしていない。
「欲を言えば独り占めしたいのじゃが、それはまた今度にするかの。今はただ貪るのみじゃ!」
「枯れ果てることはないから大丈夫。この不思議なお薬を飲めばいい。もちろん口移しで」
「傷つけられたヴァンパイアの誇り、一晩ごときで癒せると思うな」
「もちろん孕むまで離さないわよ❤︎。最初の子はもちろんエキドナだろうけど、その次は誰かしら。夢が膨らむわ」
「えっと、私も忘れず愛していただけると嬉しいです」
「愛しています。ミシェル」
それぞれがジリジリと近づいてくる。
ミシェルはこれから与えられるであろう、幸福、快楽、歓喜に対して恐怖を抱かずにはいられないのであった。



ちなみに、呪いが解けた後遺症として今度は鎮まらなくなってしまったわけなのだが、それは彼の呼び名が変わってしまったという別の話だ。
さらに、彼の嫁たちによって話が広まり、今度は第二の加護プリーズという声が上がるのもまた、別の話なのであった。
16/04/16 22:22更新 / ルピナス

■作者メッセージ
お久しぶりです。
一度投稿させていただいた。臥竜ですが、ようやく書き終えることができました。ネタで終わるくらいだったはずなのにどんどん長くなっていき、気づけばこんな事に…。以前のものは停止して改めてこちらであげさせていただきます。
お時間のある時に読んでいただければ幸いです。

感想、ご指摘いただければ、励みになるのでよろしくお願いいたします。

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