読切小説
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ある日届いたチラシ
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ハーピーカフェ、近日開店!

ハーピー属の魔物娘の魅力はなんといってもそのふかふかの羽。

そんな彼女たちの羽を、最高級の紅茶と自然に囲まれた落ち着いた空間のなかで思う存分堪能できるハーピーカフェがついにオープン!

お店に一歩足を踏み入れた瞬間、あなたはハーピー達の鈴を転がすような、それでいて愛らしい声で迎えられるのです。

さて、あなたは案内された席に腰を据えてほっと一息。すると可愛らしい足音を立てながら一人のハーピーが駆け寄って、その柔らかい羽毛でやさしく包み込んでくれます。

桃色の髪に鳶色の翼、本家本元のハーピーなら
あなたは今日が最高の日であることを知るでしょう。彼女の魅力は羽だけではありません。元気一杯なその姿と笑顔は、いかなる悩みさえ消し飛ばすのです。

落ち着く大人の闇の翼、ブラックハーピーなら
あなたはすこしだけ気を引き締めなければいけないかも知れません。もし彼女に気に入られてしまったら、お店から出たその瞬間、そのまま愛の巣へご案内。

赤いトサカ(?)に真白き翼、コカトリスなら
あなたは羽に包まれるのではなく、包む側になるでしょう。怖がりで引っ込み思案、だけどとっても優しい彼女をそっと抱きしめてあげてください。

日出づる国の黒き翼 カラステングなら
あなたは再び勇気を取り戻すでしょう。凛々しく美しい彼女の、だけどちょっと説教臭く、それでいて頼もしい言葉は、疲れた心を癒しつつ、また明日を生きる活力をくれるのです。

青い海の青い翼、セイレーンなら
あなたは何よりもまず一曲リクエストするべきです。彼女が喜んでそれに応えるとき、その真の魅力に心を打たれるでしょう。

雷走る翡翠の翼、サンダーバードなら
あなたは安らぎより、むしろ刺激を感じるかも知れません。彼女の翼から痺れを感じたら、それは手遅れのサイン。気づいたときにはその痺れの虜になっているのです。

情熱宿す陽色の翼、ガンダルヴァなら
あなたは翼に触れた瞬間、もう一つの幸福を手に入れるでしょう。彼女がそこから漂わせる香気は、心地よいまどろみと微かな熱をもたらします。

愛と不思議の桃色の翼、ジャブジャブなら
あなたは全てを超える癒しを得るでしょう。彼女の翼こそそのためのもの。包まれた相手にはすべからく最高の一時が約束されているのです。

ご用意させて頂く紅茶は全てマッドハッターたちによって厳選された茶葉と研究し尽くされたブレンドを不思議の国から直輸入。他のどんな魔界にもない紅茶の中の紅茶をお楽しみください。

ところで、疲れた体を柔らかい羽毛で受け止められれば、誰だって強烈な眠気に襲われるというもの。

ご安心ください。当店2階部分には簡単な宿泊施設をご用意しました。夕方から夜にかけて受付をしておりますので、さらなる癒しをお求めの方は是非ご利用ください。

最近元気が出ない、気力が湧かないという方は是非当店にお越しください。愛らしくも美しいハーピー達が、不思議の国の美味しい紅茶を用意してお待ちしております。



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満を持して開かれたハーピーカフェは、郊外にひっそりと佇む小さな店にもかかわらず、開店の瞬間から客が殺到し、店の前には昼夜を問わず行列が見られるほどの大盛況を記録。その情報が口コミによって瞬く間に広がり、それによって客足が増えていったことで、ハーピーカフェは開店数日から人手不足に悩まされる事態となった。
カフェのオーナーは急遽従業員の募集を開始、順調な経営からくる好待遇もあって応募が途絶えることはなかったが、やはりハーピー種のみの募集である故にその数は絶対的に少なく、さらに開店当日から従業員の結婚が相次いだことも手伝って人手不足は悪化の一方を辿り、改善策を打ち出せずハーピーカフェはやむなく閉店。
わずか二ヶ月足らずの幻の店として人々の記憶に残った。
17/03/19 15:45更新 / fvo

■作者メッセージ
某喫茶店漫画が元ネタなのは言うまでもない

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