読切小説
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プロジェクトX ― 人工進化 ―
― 「学園」 ―

「外地」から「門の向こうの国」、つまりは日本への移住を求める魔物娘達がまず入学しこの世の理を学ぶ学校であり、意図せずに魔物化してしまった人々のアフターケアを行う医療機関としても機能していた。また同時に「学園」は学術研究を行う研究所としての側面もあり、機械工学の応用や魔力研究、新たに創設された魔界工学においては「王魔界」よりも抜きんでているさえ言われている。故に、「学園」には学術研究用として危険度も内容も様々な禁書が多数保管されている。当然のことながら、この地の人間にこれらの術式を展開させることは不可能ではあるが閲覧不可の禁書であることに変わらず、一般の目に触れることはない。
そんな学園の地下。その広大な空間には未来の技術に望みを託し、伴侶である魔物娘にも悪影響を与える危険なマタンゴとともに人工冬眠に入った研究者が安置されているとか、王魔界への転移ポータルがあり、学園でも匙を投げられた「落ちこぼれ」を極秘裏に「外地」へと強制送還しているとも密かに噂されている。

ギシッ・・・ギシッ・・・

「うぅぅっ・・・・」

様々な曰くや黒い噂の絶えない「学園」の地下、その一室で一人の魔物娘が入念に縛られて天井から吊るされていた。
彼女が纏うのはドイツの民族衣装であるディアンドルによく似た衣服であり、純朴そうな彼女の雰囲気によく合っている。魔物娘である彼女のスカートからは足がなく頭からはなめくじのような触角が飛び出し、全身から分泌された粘液がぽたりぽたりと滴り落ち、冷たい石の床に小さな池を作っていた。

「のう行里川、いくらおおなめくじのお主とて儂の魔力から錬成したその縄からは逃れられんぞ?観念して吐いたらどうじゃ?誰の命令で禁書を盗み出そうとしたのじゃ?」

行里川と呼ばれたおおなめくじの目の前には、ブラックレザーのボンテージワンピースを着こなしたバフォメット、学園長の「ジル・バーンウッド」が嘲るように彼女を眺めていた。

「保管庫に侵入するために、おおなめくじの特性を利用して岩塩を飲み込んで幼女化、それに加えてピクシーの職能である縮小を合わせ掛けするとは中々じゃのう。じゃが、最後は甘かったのお。この禁書全てに魔力タグが張り付けられている、開いたのが許可証を持たない者ならすぐに通報が行く構造になっておるのじゃからな」

チキリ・・・チキリ・・・

ジルが手に持った先端がやや膨れた円筒の底に着けられた螺子を回すと、円筒の先端がゆっくりと開いていく。

「これは儂のお気に入りの玩具じゃ。人間は非道じゃのう・・・これをヴァギナに押し込み中で開くことで女の身体をヴァギナから引き裂くのじゃからな」

ゆっくりと行里川に近づいていく。

「安心するがいい。これは魔界銀製じゃ、ヴァギナを引き裂かれることはない。じゃが・・・・これでヴァギナを直接刺激されたらどうなるのじゃろうな?ひぎぃ!やうほぉん!じゃ済まない程の快楽、果たしてお主に受け止め切れるかな?」

行里川の目に絶望の色が広がる。

ヌプッ・・・

「おや?お主、処女じゃったか?喜べ、この苦悶の梨がお主を女にしてくれるぞ?」

「い・・・言います!!!言いますから処女だけは許してぇぇぇぇぇぇ!!!!」



「そう言う理由じゃったか・・・。じゃが、お主は自分がどれだけ危険な事をしようしていたか分かっておるのか?」

「でも私には・・・この方法しか思い浮かばなかったんです・・・・」

「・・・・お主、血を流しても願いを叶えるつもりはあるか?どんな辛い試練でも耐える覚悟はあるか?」

「はい!私は・・・どんな責め苦でも受け止めます!!!」

シュル・・・・

行里川を束縛してた縄が消え去る。

「今は休め。明日から地獄の特訓が待っておるのだからな」

その日から彼女の地獄が始まった。



「たかが三メートルの距離の的になぜ溶解液を当てられんのじゃ!お主の先祖は10メートル離れても女勇者の服だけを溶かす離れ業をやってのけたのじゃぞ!!!」

「そんな・・・」

「水分補給したらつべこべ言わずに訓練じゃ!!!先祖に恥ずかしいと思わないのか!!」

「はい!!」



「お・も・いコンダラ〜。スピードが落ちとるぞ!!もっと気張らんか!!」

ピシャ!!

行里川の背に乗ったジルの手にした鞭が彼女の尻を叩く。

「ヒギャ!」

「お主はおおなめくじだからといってそれに慣れ切っておる!!北海道では時速36キロで疾走するなめくじが見つかっておるのだぞ!魔物娘として恥ずかしいとは思わぬか!!」

「それ・・虚構新聞ネタじゃ」

「つべこべ言うでない!!!」

ピシャ!!!

「理不尽・・・・」



「もう・・・無理です・・・」

「おや?もう白旗をあげるのか?まだ30個食べたばかりじゃぞ?」

「魔力を高める為といっても虜の実のみはきついですよ・・・・」

スッ

「そうじゃのう。確かにいくら美味くても同じものばかりは辛いのぉ。これは口直しじゃ」

「ありがとうございます」

行里川がジルが差し出したサーモマグに口をつけた瞬間だった。

「ゴハァァァァァァ!!!!!」

盛大に紫の液体を噴き出す行里川。その姿、シン・ゴジラの如し。

「一体何ですかこれ!!」

「何って虜の実ジュースじゃよ?儂、お手製の」

「結局虜の実じゃないですか!!!」

この仕打ちに流石の行里川もキレてジルに掴みかかり・・・一秒で制圧される。

「口がダメなら、浣腸で直接腸に流し込んでもいいのじゃぞ?」

・・・・ちなみに浣腸はスペイン語で「うんざりだ」と言う意味である。以上、あまり意味のない豆知識でした。



一週間後・・・・

「はぁ!!!!」

ピュッ!ピュッ!ピュッ!!

パン!パン!パン!

「三つの的中心を見事打ち抜いた!!あの弱弱しかったおおなめくじが大したものじゃのう!!」

そこに弱気なおおなめくじであった行里川滑子はいない。。魔力を高めると同時に美容もいい虜の実を大量に摂取したことにより、彼女を魔物としても女としてもワンランク上の存在に持ち上げていた。街中で軽薄な男に声をかけられたことも一回や二回ではない。そういう場合は、彼女の得意技である溶解液でズボンを溶かし「あらかわいい」と声をかけることで撃退していた。

「もう儂がお主に伝えることはない。行くがいい!我が弟子よ!!」

「この御恩忘れません!!ありがとうございました!!!」



その日、「大那岳」はいつものコースで朝刊を配っていた。
面白くもない仕事。しかし家族を食べさせていくにはこれしかなかったのだ。かつて彼はサッカー選手として将来を嘱望されていた名選手で名門校へスポーツ推薦で入学していた。しかし、彼はそこで人間の悪意に潰されていた。負傷しても休むことは許されず、むちゃな特訓が課せられた挙句に脚の故障。プレイできなくなった彼に周囲は冷淡だった。逃げるように学校を辞め、こうして細々と新聞配達をしている。

〜 彼だ・・・いつ見てもカッコイイな・・ 〜

公園の茂みから行里川が大那を見る。その顔は恋する少女のそれであり・・・・雄を求める雌の顔だった。

ガキッ!

「痛ッ!」

唇を噛んで流れ出た血を唾液とよく混ぜ合わせる。

― 良いか、お主の精度からいって3メートルが限界じゃ。よく引き付けて放つのじゃぞ? ―

声を潜めて彼が公園の前を通るのを待つ。

〜 6m、5m、4m、3m、2m、今だ!〜

ビュッ!

行里川の口から放たれた唾液が遠ざかる彼の背中に付着する。だが、彼は待ってくれない。行里川は茂みから飛び出す。一刻の余裕もない。

― 術を使用するなら声を出すのじゃ!その方が魔力の通りも良くなる! ―

彼女は大きく口を開ける。

「秘技!なめポート!!!!!!!!!!!!!!!!!」

その瞬間、行里川の身体が煙のように消え大那の背後に現れる。

「えっ!なんだよお前!」

「以前貴方様に助けていただいたおおなめくじです。お礼に来ました!」

確かに俺は夏頃、干からびそうになっていたおおなめくじにポカリを買ってやった。でも・・・・。

「俺が助けたのはガキンチョのおおなめくじだったぞ!」

「あの時は水分を失って身体が縮んでいたんです。これが本来の私です」

ギュッ!

「誠心誠意お礼させていただきます!!」

「ちょっお前!離せ!!誰か!!誰か!!」

「ちょっと声が大きいので口を塞いじゃいますね」

そう言うと行里川は大那の口に粘液を塗りつけ、彼を公園の茂みに連れ込んだ・・・・。


― 「学園」学園長室 ―

「ジル様、なぜあの生徒に転移魔法を伝授されたのですか?」

学園長のジルの目の前には彼女の右腕ともいえる秘書の「ダークメイジ」のカーラ・シュバルツベルトが立っていた。彼女の魔法技術はジルさえ一目置いている。行里川が転移魔法を使用する際に、自らの血を唾液に混ぜて対象に吐きかけそれをマーカーにして転移するというアレンジを考え出したのも彼女だ。

「お主、カイコガという生物を知っておるかの?」

「絹の原材料となっている益虫ですね」

「そうじゃ。蚕は成虫となっても他の蛾のように空を飛ぶことはできぬ。つまりは生殖も世話も蚕は人間の存在なくして生きていくことはできないのじゃよ。人間がそう進化させた・・・」

ジルは執務机からオールド・パー18年を置くとグラスを二つ置いた。

「人口進化じゃよ。わしは人と魔物、そのありようが大きく変わった瞬間をかつて見たのじゃ。恩讐を超えて愛に飲まれたその光景を儂は・・・美しいと感じた」

ジルはオールドファションドグラスに入った琥珀色の液体を飲み干した。

「あのおおなめくじも体得した転移魔法を請われて、他のおおなめくじにいずれ伝えるじゃろう。教えられた別のおおなめくじも別のおおなめくじにそれを伝える。そうして世代を重ねていくことにより職能として転移魔法を持つおおなめくじがいずれあらわれるかもしれぬな?」

「でもジル様・・・・・・。彼女、転移魔法を忘れたみたいですよ?」

「なぬっ!」


「学園」学園長のジル、野望への道のりはまだまだ遠い・・・・・






18/01/14 12:47更新 / 法螺男

■作者メッセージ
夢の中、全裸ローション女から逃げていると背後からスコーンという音が響いた。ローション塗れだから当然だなと振り向くと・・・、「やぁ!」全裸ローション女が俺に微笑みかけていた。
どうせ夢なら一発やらしてくれてもいいじゃない!

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