読切小説
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性夜の贈り物

 0時をもうすぐ回る頃、寒空と闇夜に覆われながら、俺は帰宅の途に就いていた。
 今日はクリスマスイブ。キリストだかの降誕を祝う日らしい。日本じゃ、充足な生活を送っている奴らがワイワイ騒いだり、性活に勤しむ日だろう。
俺もさっきまではその充足な生活の一端にいた。友達主催のパーティ。3on3のいわゆる合コン。だけど俺はいま、一人で家に向かって帰っている。
 ほかの二人の友人はそこで仲良くなった子と、その子の自宅かホテルで今頃楽しくヤっていることだろう。友人の一人はかなり手癖が悪いので二人お持ち帰りしていた。よって俺が一人なのは当然のことなのである。
 が、そもそも俺はあくまで数合わせで合コンに行ったので、二人と仲良くヤっているだろうその友人に文句は一つもない。高そうなチキンをタダで食えたし、文句なしだ。俺が合コンなるものに釣られたのはそれが理由だったりする。
 俺が誰かと付き合うなんてありえない。ましてやクリスマスなんかに。
 いまだ去年のクリスマスイブに彼女に振られたことを、未練がましく気にしている俺が誰かと付き合うなんてできるはずがない。

「あー、寒い寒い。懐も寒い」

 アパートの階段を音を立てないように気をつけながら上がる。去年のこの日はやけ酒で酔って帰って、音を立てまくって大家さんにこっぴどく叱られたっけな。その後、理由話したら慰められて、ケーキとチキンおすそ分けされたけど。
 今日は歩いて帰ってきたので酔いもすっかり覚めている。大丈夫だ。
 さっさと風呂入って寝よう。今日に限ってわざわざ夜ふかしする理由はない。

「ん?」

 俺の部屋の前になにか物がある。正方形の何か。大きめのダンボール箱くらいのサイズ。人一人なら軽く入れそうな大きさだ。
 大家さんが何か置いたのか。まさか俺のことを気にして……ないかな。さすがにこのサイズのものを部屋の前に置いたら迷惑だと、大家さんならわかるだろう。
 近づいて見てみるとそれは、緑と白の縞模様の箱に、赤いリボンで封をした、いわゆるプレゼント箱というやつだった。
 しかし、こんな大きさのプレゼント箱、テレビでしか見たことがないぞ。誰だよこんなものを俺の部屋の前に置いたのは。

「なんだこれ、手紙、いやクリスマスカードか?」

 リボンの間に挟まったクリスマスカードをよく見ると、そこには俺の名前「日々木真樹(ひびき・まさき)様」の文字があった。
 俺宛? カードを抜き取って差出人を見るが書かれていない。箱自体にも伝票などはない。誰が俺にこんなものを? いたずらか? 
カードの裏には一言「Please Open Me」と書かれているが、この“Me”って箱のことか? わけがわからん。
箱には何が入っているんだろう。爆弾? と一瞬考えるがすぐに却下。ないない。テロ的な目的で爆発させたいにしても非リアな俺を狙うのは明らかにおかしい。とすると一番考えられるのは友人のいたずらで、中身はびっくり箱的なオチか。今頃、どこかで俺が引っかかる様子を今か今かと待ち望んでいるのだろう。
仕方ない。こんな大道具を用意しての仕掛けだ。せっかくだから引っかかってやろう。そして大家さんにこっぴどく叱られてもらうことにしよう。ふはは、大家さんのガチ怒りはかなり怖いからな!

 俺はリボンを紐解いて、プレゼント箱の蓋を開いた。

 サンタクロースがいた。

 金髪ロングの、サンタクロース服に身を包んだ絶世の美女が、にんまりと笑んだ表情で、座っていた。

「〜〜ッ!!」

 悲鳴が口から噴出しようとした瞬間、女はいきなり俺に飛びかかり、俺の口を自分の口で塞いだ。
 それがまた俺を驚かし、俺の身体を硬直させる。その隙に女は両腕を俺の首に回し、体重を全て箱の奥へと傾けた。
 抵抗などできるはずもない。全てが突然のことだったのだから。それに。
 その女の碧眼を見た瞬間、頭の中の全ての感情が塗り替えられた。

――この女を犯したい。

それ一色に。だから、逃れることなどできるはずがなかった。俺がそれを望まなかったのだから。
視界が一瞬真っ暗になったかと思うと、俺は薄暗い、淡いピンク色の照明が灯る部屋にいた。扉も窓もない奇妙な部屋。あるのは俺たちが乗っている大きなキングサイズのベッドと、その脇に置かれている大小様々な宝箱のようなもののみ。
しかしそれ以上に気になるのは、俺のお腹の上に馬乗りになっている金髪碧眼美女のサンタクロースだ。
おおよそ日本人とは思えない、いや人間とすら思えないほど整った顔立ちの女性。吸い込まれそうな瞳に、吸い付きたくなるほどの艶やかな唇。
 サンタクロース、といったがそれがわかる要素は唯一色だけ。小さな肘程までしかない赤白のケープを肩から羽織り、同色のミニスカを履いているだけ。ふくよかなおっぱいも、可愛いおへそも、スラッとした足も、よく見たら股の部分でさえ白日の下に晒されている。エロコスだってここまで際どいものはない。防御する気がさらさらない。寧ろ攻めてくれ、と言っている気さえした。
 女は俺の視線に気づいたのだろう。にぃっと笑うと、俺の手を取り、胸に押し付けた。柔らかな感触とちょっぴりコリコリした感触が手のひらに広がる。

「な、なにを……!」

 と言いつつ俺は手を引っ込められない。揉みしだくのをやめられない。

「んんっ、あ、いいよ、もっと、揉んで」

 頬を赤らめ、目を細め、女は喘いだ。

「あ、あんた誰だよ! っていうかここどこだ」

 そんなこと言っている俺だけどやっぱり揉むのはやめられない。両手使って揉みしだいてしまう。

「あっ……んっ。ふふっ、私の名前はミリィ。ここは私だけの部屋。ううん、私とあなただけの部屋。誰にも邪魔されることのない、秘蜜のときを刻む場所」

 ミリィと名乗る女は俺に胸を揉ませながら、顔を近づける。近いと思う間もなく、唇を奪われた。柔らかい唇が俺の唇を飲む込まんばかりに啄んでくる。それだけじゃない、にゅるりとした蛇のような舌が俺の口内に入り込み、貪るように俺の舌に絡みついてくる。

「んちゅ、むちゅ、んんっ、ちゅっ」

 会って間もないミリィとのキスは、これまで感じたことがないくらい気持ちよかった。ミリィの唾液が甘く感じられ、もっと欲しくなってしまう。舌がまるでペニスになったかのように敏感な箇所へと変貌し、ミリィの舌に舐めしゃぶられる度に、正気が削ぎ落とされていくようだった。
 俺は胸への手から、彼女のお尻へと狙いを変え、揉みしだく。張りのあるむちむちとした感触は手に張り付いてくるようでいつまでだって揉んでいたくなるほどの心地よさだ。

「んぁ、はぁ……ミリィ、君は……」
「待ってたの、今日、この日を」

ミリィがまっすぐ俺を見据える。

「今日このクリスマスの日、あなたを私のモノにするって、誓ったの。そう、あの夜、あなたが帰っているのを目にしたときから、ずっと」
「っ、はぁ、はぁ……」
「全て塗り替えてあげる。私の箱にあなたの抱えているものぶちまけさせてあげる。そして、私だけのモノに、私だけの、あはっ!」

 ミリィは魔物じみた恐ろしく淫猥な、恍惚に塗れた笑みを浮かべた。
 それは怖くもあり、しかし美しくもあり、優しくもあった。ただ唯一俺だけに向けられていると感じられる、変わることのない偏愛の感情だった。
 それがたまらなく嬉しく思えたのだ。

「だから、ね……?」

 ズボンが脱がされる。手も使わずに。魔法? なんでもよかった。
 俺のペニスはギンギンに勃ち、解き放たれた瞬間、ミリィのお腹に当たる。
 ミリィが俺に視線を合わせたまま、俺のペニスを握り、軽く上下させる。吸い付くようなミリィの手のひら。細い指が俺の亀頭の絡みつき、上下左右とあらゆる方向から刺激を与えてくる。もう、これだけでイってしまいそうなくらい気持ちいい。

「はぁはぁ、ミリィ、俺……」

 ミリィの瞳を見れば見るほど、俺の頭の中の全てがミリィ一色に染まっていく。ミリィ以外がどうでもよくなる。
 ミリィだけが欲しい。

「それでいいの、それで。あなたは私のもの。私はあなたのものだから」

 ミリィはペニスを自身の股にあてがう。
 そこはミリィの秘所。柔肉で蠢く蜜壷だ。

「プレゼントよ、あなたに私をあげる。だから」
「うん、俺をあげるよ、ミリィ、君に」

 妖花が咲いたようにミリィは笑顔を浮かべると、腰をズンっと一気に落とした。

「っ!?」
「んひぃっ!」

 ペニスの先から根本までを、ミリィのオマンコの肉ヒダが一斉に包み込んだ。

「っ、あ、ふぅっ、ああっ、んんっ」

 ミリィが快楽になんとか耐えるように、細かく吐息を漏らして、身体ビクビクさせている。しかし涎をだらだらと垂らして、その目にはすでに正気が失せていた。あまりの刺激にトンでしまったのだろう
 そして、それは俺も同様だった。ミリィの肉壷は、人外のものだった。肉ヒダは絶えず蠢き、ヒクつき俺のペニスを包み込み、竿を上下に擦り上げ、カリ裏を擦り、亀頭を撫でるように締め付ける。全ての感覚がペニスだけになり、ミリィの蜜壷だけを感じていられる状態だった。
 そしてこれは、まだ入れただけなのだ。動いてすらいないのだ。
 それにミリィも気づいたらしい。これで動けば、俺たちはもっと気持ちよくなれる。

「あはっ!」

 俺はミリィの腰に据え、ズンっと腰を振るった。ペニスでオマンコの肉を削り取るように。オマンコをもっと味わい尽くすために。

「はぁ、いいっ! 真樹のオチンポいひぃ!」

 ミリィがこちらに倒れ込んできて、俺たちは胸と顔を付き合わせる。どちらかともなく、キスをする。啄むように、吸い付くように、貪るように。

「んちゅっ、んはっ、むちゅっ、ちゅっ。あはっ」

 腰を振るうたび、ペニスが怒張する。彼女の影響だろう。もう俺のペニスもまともな人間のものではなかった。ミリィ専用のミリィのオマンコのためのペニスだ。

「んぎぃ、いいいいっ! ああああっ! おち、オチンポぉ! しきゅうにぃッ!」

 亀頭の先に小さな口のようなものが吸い付いてくる感触があった。ここだ、ここがミリィの一番大事な場所、子宮だ。ここを、ここに、直接俺のモノを挿れる!

「はぁはぁ、ミリィ!」

 腰を振るう勢いに任せ、俺はその口をこじ開ける。子宮に俺のペニスを挿れる。

「っあ、なんだこれ、プルプルしててすごい、包み込んで、っあ!」
「いいひぃっ! 真樹のオチンポがぁ、子宮にぃ、突き刺さってりゅのぉおお!」

 ミリィのオマンコが激しく脈動する。俺のペニスから白濁したドロドロの精液を搾り取ろうと、グチュグチュの肉壷が蠢く。
根本から亀頭まで全てを肉ヒダと子宮肉で包んで蠢く、ミリィの魔性の蜜壷。そこに挿入して耐えられるはずがない。腰を止められるはずがない。射精を止められるはずがない。

「くぁっ、出る! 出る! 出すぞ、お前の孕み袋に、たっぷり精液注ぐからな!」
「出してぇ! 私の赤ちゃん箱にたっぷり白濁ザーメン子種汁撒き散らしてぇええええ!」
「ッッ!!!」

 瞬間、ミリィのオマンコが俺のペニスをキュゥッと締め付け、振動し、最上の刺激を俺に与えた。
 直後、俺は全てを解き放った。しがらみも、過去も、欲望も。そして、これからの人生も。全てをミリィの中に吐き出し、ミリィに委ねた。
 
「っ! っ! ひぃ! あっ! んんぃ!」

 ビクンビクンとミリィが快楽に溺れ堕ちた表情で身体を引きつかせている。俺も、彼女と同様、ミリィにしがみついてただ射精の快感を味わい尽くしていた。この世で考えうる、いや考えられないものも含めてこの時が一番最高に気持ちいいのだと確信できた。
 ミリィとセックスをしているこのときが、俺にとって最高のひとときなのだと確信した。

「ミリィ……」
「んんっ、あはぁ……真樹ぃ、もっと、しましょぉ?」

 甘えるような声音で頬ずりしてくるミリィに、腰を振るうことで俺は応える。不思議と、疲れはなかった。いくらでも射精できる気がしたのだ。

「あっ、あは、ハァハァ……」
「もっと、ああ、もっとしたい。もっとミリィとしたい一生、ずっと、死ぬまで、死んでも、ずっとずっとずっと」
「うふふっ、いいわ、溺れましょ……私の箱の中で、一緒に、ずぅーっと、私の膣内で未来永劫、ね」

 ミリィの手が、脚が俺に絡みつき、今まで以上に密着する。それだけじゃない。ふわふわと宙を浮いたリボンが、俺とミリィの手足に腰に巻き付き縛り上げた。二度と離れないように、離さないように。ずっと二人が交わっていられるように。

「ずっと一緒だ」
「ええ、ずっと一緒」

 そう呟き、俺はミリィと口づけを交わした。
 俺とミリィが絡み合うこの箱の中で、俺たち二人はこれからずっと愛し合う。誰にも邪魔されることなく、二人きりで。快楽の坩堝で溶け合いまぐわい交わるのだ。

 俺にとってクリスマスは、ミリィとの永遠が始まった日だ。


[fin]
15/12/24 21:42更新 / ヤンデレラ

■作者メッセージ
サンタさんへ。プレゼントは図鑑世界へのゲートを開くということでお願いします!

そんな切実な願いを込めて、あっさりさっぱりテイストなミミックちゃんのお話でした。
短いですが楽しんでいただけたのなら幸いです。さて、FO4しながら年越しするかな。
今年も残りわずかですが、良いお年を。

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