読切小説
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魔物娘が中二病を発症したようです
 リリム様が発症した場合

「今宵は魔の月が鮮やかな光芒を放っているわね」
「我こそは魔の王が産み落とし力のヒトカケラ……その身に純白と紅の証を持つ姫君」
「さあ、この魂を灼く眩き陽炎よ……! 今こそ我が寂寥の夜を彩る光とならん!」

 すみません、魔界語はちょっと分からないです。



 バジリスクさんが発症した場合

「……私に近づかないで」
「この仮面の奥にある“蛇毒の魔眼”を見てしまえば……あなたは人としての生を終えることになるのよ」
「この眼は強力すぎて、私でも制御できないのだから……」

 全部本当のことなだけ厄介っていうか、なんて言うか……。



 セイレーンちゃんが発症した場合

「ダメダメ、今さらストレートなラブソングなんて甘ったるくて仕方ないわよ」
「もっと突き刺すような威力、心臓を揺さぶるようなビートが必要だわ」
「ま、普通の子達には分からないでしょうけどね。このエレクトリックで刺激的な音の魅力には」ジャイーン!

(あ、これはきっと数ヶ月後にはエレキギターが埃を被ってるパターンだな)



 デュラハンさんが発症した場合

「この首輪は封印の枷なんだ。“もう一人の私”を閉じ込めるためのな」
「もしもそれが解けてしまえば、もう一人の私はきっとお前を襲うことだろう」
「理解ったか? だからくれぐれも注意をすることだ……それがお互いの平穏のためなんだからな」

(なんか『首輪を外して』って言ってるように聞こえるんだけど……うーん)




 リビングドールちゃんが発症した場合

「私は人形……アリスの心の鏡、アリスが閉じ込めている心そのもの」
「決してアリスが気付かない、お兄様への淫らな想いが私の人格」
「お兄様、一緒に踊りましょう? 寝具の上で跳ね廻る、甘い夜の舞踏を……」

 あー、いや。これまた妙な設定を思い付いたなぁ……。



 バフォ様が発症した場合

「ほう……儂が“サバトの黒き魔獣”と知って、なお挑むというのか?」
「よかろう……ならば我が力の片鱗、その身でとくと味わうが良い」
「そして貴様も我が配下達の手により、背徳者の一員と成り果てるのだっ!」

 おーい。そろそろ晩ご飯だから、ボスキャラごっこは止めて手を洗ってきなさいな。



 アントアラクネちゃんが発症した場合

「労働とは何か……私にとっては樹を育てることと言えるでしょうね」
「それが結ぶ実は極めて甘美だわ。甘い汁を吸った私はもう、その実のこと以外の何も考えられなくなっている」
「しかし、実は禁断の果実……口にしたことが知れれば楽園を追放されてしまうのよ」

 だったら追い出されないように一緒に植樹(労働)してきたらどうなんだっつーの。



 キキーモラさんが発症した場合

「うふふ……ご主人様、早く起きてくださいな」
「あまりお寝坊さんでいると、私もつい本性が出てしまいますよ?」
「先ほどからご主人様を……“喰い散らかし”たくて、うずうずしてしまっているんですから」

(実は嗜虐的なんですよアピール……正直言ってすごくカワイイです)



 グラキエスちゃんが発症した場合

「エターナルフォースブリザード!」

 それは駄目だって……ッ! 相手(の腹筋)は死ぬから……ッ!



 ヴァンパイアさんが発症した場合

「我が糧となりし卑しき従者よ! 私は今、強い血の渇きを感じているわ!」
「首筋を晒しなさい! そして、その鮮血を我へと捧げる光栄に身を震わせることね!」
「ククッ……この下賜の果て、いつかその身も魔の血族へと堕ちる日が来るわ……」

 カッコつけて魔界語で話すのは止めましょうって。ダンピールさんに馬鹿にされますよ?



 ダンピールさんが発症した場合

「愚かなりし吸血の姫め……自身を高貴たる者と錯覚し人間を見下すか」
「彼の者を貴様の魔手に堕とすことなど、私は絶対に許しはしない!」
「我が銀の名剣でその躯を貫き、魂の奥底で叫ぶ真実の声を聞かせてやろう!」

 あなたも魔界語使うんですかっ!? 止めてくださいよ、俺まで使わないといけない空気になりますからっ!



 リャナンシーちゃんが発症した場合

「あああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「駄目っ! そのノートを開いちゃ駄目ええええええぇぇぇぇぇぇっ!」
「ふぅ……ひ、人のノートを勝手に見ようなんて最低よ! バカバカ、アンポンタンっ!」

 ご、ごめん。落ちてたから、つい……(いったい中に何が書いてあるんだろ)。



 ファントムさんが発症した場合

「そうだね。ボクは中二病に発症した……いや、生来の中二病と言えるだろう」
「でもそれを否定される謂れは無いよ。これはボクにとっての“楔”なんだ」
「不安定な魂というボクの存在が、この世界に確かにある……そう実感するための、ね」

 俺は素敵だと思いますよ。その話し方はもちろん、あなた自身のことも。



 アリスちゃんが発症した場合

「ふ、フンっ……コーヒー牛乳なんてこどもの飲み物、アリスは飲まないわ」
「コーヒーはブラックにかぎるのよ。ゴクッ……」
「ふえぇぇ……苦いよぉ、おにいちゃぁん……」

 よしよし。ほら、口直しに甘いケーキ食べような?



 キマイラさんが発症した場合

「そんなっ……!? 抑え……きれない……っ!?」
「このままでは私の中の“あの子たち”が……あの子たちが目覚めてしまう……っ!」
「静まりなさい、我が身の獅子よ……っ! 竜も山羊も、暴れては駄目……っ!」

 あの、皆さん? デートだから気持ちは分かりますけど、もう少し仲良くできませんか?



 サハギンちゃんが発症した場合

「…………………………………………………………………………」
「…………………………………………………………………………」
「……………………………………………………………………笑止」

 ど、どうしたのっ!? いったいどこでそんな言葉覚えたのっ!? ねえっ!?



 ヴァルキリーさんが発症した場合

「神に賜りし光の力……でもこの力だけでは私の勇者は守れない」
「ならば私は神に背く! 例え裏切り者と罵られようと、闇の力を手に入れて見せる!」
「光と闇が合わさったその時、私の勇者を守る最強の剣が誕生するのよ!」ズズズズ…

 合わさるっていうか、現在進行形で闇に飲まれてしまってる気がするんですが……。



 白蛇さんが発症した場合

「ああ、貴方様……私のことを覚えていてくださってますでしょうか」
「私と貴方様は前世でも、その前も、その更に前でも……ずっと愛し合っていたのです」
「こうして今世でも貴方様に会えるとは……やはりこれが運命なのですね?」

(アカン、この人はガチでヤバイ人だ)



 おまけ

 リリム様が発症した場合(魔界語翻訳付き)

「今宵は魔の月が鮮やかな光芒を放っているわね」
(こんばんは、月の綺麗な夜ですね♪)
「我こそは魔の王が産み落とし力のヒトカケラ……その身に純白と紅の証を持つ姫君」
(私はリリムっていいます。白い髪と紅い目が自慢のチャームポイントです!)
「さあ、この魂を灼く眩き陽炎よ……! 今こそ我が寂寥の夜を彩る光とならん!」
(あなたのことを考えると胸がドキドキするんです! どうか私と付き合ってください!)

 やっぱり魔界語は人間には難解ですって。

「フッ……魔の瞳を持たぬ者には分からぬか……」
(およよ……私のこと、分かっていただけないんですね……)

 いやまあ、なんとなく理解はできるようになりましたけど。

「汝も我が片割れとして魔の道を踏み出すのだ!」
(はやく私の恋人としてインキュバスになってくださいね♪)

 うーん、やっぱり魔界語は難しいなぁ……。

17/05/10 19:53更新 / まわりの客

■作者メッセージ
私は今も黒歴史に苛まれています。
そんな私のバイブルは田中ロミオ氏の『AURA〜魔竜院光牙最後の闘い〜』です。

そして今回のネタのお気に入りはキキーモラさんでした。

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