連載小説
[TOP][目次]
『あのバカ(王様)の血の色はたぶん赤くないと思う』
「自由だあああああああああああああああああああ!!!」

ふぅ、スッキリした。
さてと、召喚の儀もようやく終わり、やっと解放されることになりました。
ああ、因みに勇者様(哀)は泣く泣く旅立ちましたよ。
あれは流石にかわいそうだったなー。
いや、だってさ昨日までそこそこお給金のいい(と思われる)お城の兵士だったのにさ。
いきなり城を追い出されて勇者(という名の無職)って……
あのバカ(王様)、鬼すぎる。 マジ鬼畜。
町の人たちが噂してたけど…… 彼、貯金で装備を整えてそうな。
勇者様(哀)、マジにかわいそすぎる。
やっぱこの国滅ぶな。 うん、きっと彼が滅ぼす。

ま、それはそれとしてだ。
RPGの基本は情報収集だよね。
いや、町の人に聞けなんて言わないでくださいよ。
直哉君はシャイな日本人なんです。
……というわけで、まずは図書館にやってきました。
入館料を支払ったら財布の中身が半分になったけどねー。
あのバカ(王様)からの餞別、マジに小銭だった。 ま、今更だけど。

さて、入館料も支払いさっそく館内へと入ってと……
おおー、すごいなー。
この国で一番大きい図書館だって聞いてたけどさ。
見渡す限りの本、本、本。 いったい何万……いや、何億冊あるんだろうか?
魔法書とかもあったりするんだろうか? あー、魔法使いてー。
とりあえず、適当に何冊か取って……なんぞこれ?
いや、本の題名なんだろうけどさ。 これ、日本語じゃないよね?
俺は適当に取った何冊かの中身を慌てて確認する。

……大問題だ。
言葉が通じてるから気付かんかったけど……
もしかしてさ、この世界に日本語の本ってないんじゃね? 日本人の識字率、役に立たねー。
つーか、地球の文化圏にある言語全てを習得してても多分ここの本って読めなくね?



……………………………………………どうしよ?



諦めて退館する? いや、入館料がもったいない。
お金さ、あのバカ(王様)から貰った分しかないのよ。いや、日本円なら多少あるけど使えんし。
うーーーーーーん、何かないかな?
字が読めない俺でも読める本……………………………! そうだ!!!
絵だよ、絵! 絵本なら……いや、図鑑だ! 図鑑と地図だよ!!!

俺はさっそく司書さんに頼んで図鑑コーナーに案内してもらう。
あ、字がわからないので取ってもらえますか? できれば地図もお願いします。
そうですねー、とりあえず地図と、動物と、植物と…………鉱物?いや、いらんな。
他のは………魔物? おお、魔物図鑑か。 コレは見ておかないと。
じゃあ、今言った四冊をお願いします。 ええ、どうもありがとうございます。

さて、まずは地図だな。
うわあ、地球の地図じゃねえ。 すげー違和感があるなぁ。
今いるのが確か『ロンドグリム』だったか?
えーと……うーん……わからんな。 やっぱ字が読めないと駄目か。
現在位置がわからんのは困るし、後で司書さんに聞いてみよう。 うん、そうしよう。

次は動物図鑑だな。
んー、わりと普通なんだな。 もっと凄いの想像してたんだけどなー。
お、この兎、兎の癖に角が生えてる。
へー、コイツ動物なんだ。 俺的には魔物なんだけどなー。

次、植物。
俺は植物図鑑を開いて……………速攻で閉じた。
……思ってたよりも字が多かった。
毒のある植物だけでもわかればと思ったんだけど、やっぱ字を憶えないと駄目だなぁ……

お次はいよいよコイツだ。
魔物図鑑。 そう、魔物図鑑です。
いやー、本物の魔物図鑑って初めてですよ。
さてと、どんな魔物がいるのかなー。



…………………………ぱたん



いや、ちょっと待て…… 落ち着け俺、素数を数えて落ち着くんだ。
コレさ、魔物図鑑だよな?
なんつーかさ、いや、まぁ…………… うん、気のせいだよな。
それでは、気を取り直してっと。



…………………………ぱたん



…………なんぞこれ?
え? どうなってんの、コレ?
あ、そこな人。 一つ聞いてもいいですか?
魔物って、もっとこう『グァーーー 』とか『キシャァーーー 』とか、なんかそんな感じだよね?
………え? ああ、そうですか。 どうも、ありがとうございます。

……マジで? え?これが魔物?
先程の親切さん(仮名)が言うには、俺のイメージする魔物像は昔のモノであるそうだ。
それが魔王が交代した影響で魔物は現在の女性型の姿になったとか。
ふーん…… へー……………
……………魔王倒す必要無くね?

俺の世界である人はこう言いました、『かわいいは正義』であると。
うん、俺もその通りだと思う。
魔物退治? ダメ、絶対!
そんなことあのバカ(王様)が許してもこの俺が許さん。 ド許せぬッ!
つーか、アレか?あのバカ(王様)はそんな外道なことをさせる為に俺を召喚したのか?
なんかさ、魔物図鑑に幼女とかも普通にいるんですけど?
『じぇんとる』な俺に幼女を虐めろと? うん、ふざけんな。

………よし、決めた。
あのバカ、一度懲らしめよう。 うん、決定。
勇者選定の旅なんて外道を手伝う真似はしません(最初からする気はなかったけど)。
黒須 直哉は、むしろ魔物側を応援します! 魔物最高ッ! バカ(王様)は滅べ!

さて、そうと決まればこれからさっそく――――――――
お金をなんとかしないとなぁ………


10/12/06 17:16更新 / 植木鉢
戻る 次へ

■作者メッセージ
いやぁ、魔物娘でてきませんねー。
まぁ、直哉君が召喚されたのはバリバリの反魔物国家ですから仕方がないんですけどね。
旅をしようにもさー、直哉君いきなり召喚されたから旅支度なんてできてないんだよね。
そんなわけで、魔物娘の出番はもう少し後になりそうです。
バカの餞別?あんなのゴミです。 役になんて立ちません。
このままでは直哉君が金欠でGame Overしてしまう。
うーん、この後どうしようか?

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33