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6月号-魔物たちの生活

魔物にはそれぞれ特徴があります。

例えば、魔王の力が通じずに昔の特徴がそのまま残ってしまった魔物。

例えば、他の魔物と共生関係にある魔物。

例えば、人間に襲い掛かる事の出来ない魔物。

彼女達を恐ろしいと見るか、可愛らしいと見るか。

それはやはりあなた自身が見つけるべき答えなのです。






























双眼鏡と望遠鏡









「うわー、すごい。遠くまで見えるよ」
「それ壊さないでよね。高いんだから」
 物珍しそうにレンズを覗き込んで右を左を見ている女性に彼女は注意する。
 なにせ何もない所でこけてしまうようなどじっぷりなのだ。
 高価な望遠鏡が壊されては仕方ない。
「でもいいなーこれ。欲しいなー」
「だめ! それ高いんだよ!」
「じゃあー、ちょっと待っててー」
 律儀に望遠鏡を返してから女性は木組みの家へと入っていく。
 何をするのかと彼女が待っていると、女性は何かを持って外に出てきた。
「なにそれ?」
「これはね、ほら見てみて」
「あれ、これにもレンズがついてる」
「これはねー、双眼鏡っていうんだよ」
「そうがんきょう?」
「望遠鏡が作られてから、『両目でも見やすいように』って事で作られたらしいんだよ」
「へー。でも何であんたが持ってるのよ」
「友達から貰ったんだよ。でもねー」
「無理でしょ。あんた単眼なんだからさ」










































リザードマンハント







「最近、私は思うんだけどな」
 リザードマンが切り株に腰掛けて剣の手入れをしている。
 それだけなら問題はないのだが、なぜ俺の目の前で剣の手入れをしているのだろう。
「私は今まで相手の都合のいい時に決闘をしよう、無理やり婿入りさせるのは止めようと決めていたのだ」
 シャリ、シャリと研ぎ石で刃物を研ぐ音が聞こえる。
 彼女は戦士らしく凛々しい顔立ちをしているが、無表情で刃物を研ぐ姿はかっこいいというよりサスペンスだ。
「だけど、それももう終わりだ。私も覚悟を決めたのだ」
 むしろ覚悟を決めろ小僧と言わんばかりのオーラを叩きつけられている。
 逃げたいんだけど、これ逃げたら絶対に死亡フラグだよな。
「時間が無い。明日まで、明日までに全てのケリをつけなければいけないのだ」
 理由はわからないが相当焦っているようだ。
 たまたま森で出会った俺と決闘するぞなんて無茶振りにも程がある。
「あんたさ。おれ、木こりだぞ? 木しか切った事の無い、どこにでも居るような凡人だぞ?」
「武器を携えたあの眼光、その肉体。これこそ戦士に違いない、ああそうに違いない」
「聞いちゃいねぇ」
 無表情から笑顔になった。
 ただし、小さい子供が見たらしゃっくりが止まるほど怖い笑みだ。
 シャコッ。
 一際強く剣が研がれた。
「さぁ戦おう今戦おうすぐ戦おう決闘だ決闘だ楽しい楽しい決闘だ」
「いやいやいやおかしいから。あとその笑顔怖いから! 子供のトラウマになるくらい怖いから!」
「行くぞ!」
「無茶言うな〜!」



「ぜー、ぜー」
「し、しぬかとおもった」
「た、たたかえなかった」
 二人して元いた場所まで帰ってきた。
 笑いながら剣を振り上げる恐ろしい女から逃げ回るなんて、俺の人生は一体どうなっているんだ。
「ぜー、ぜー、く、くそ、決闘だ、決闘しろ」
「むちゃいうな。それにもう月があんなに高く上っているんだ。今日はもう寝て休めよ」
「な、し、しまったぁああ!」
 月を見上げると、この世の終わりだと頭を抱えてそのまま蹲るリザードマン。
「お、おい、どうしたんだ」
「うそだ、そんな、もう月が昇ってしまったのか」
「それがどうしたんだ。まさか、呪いでもかかっているのか!?」
 決闘とのろいがどう関係するのかわからないが一大事だ。
 しかし俺も殺されたくは無いので決闘なんてとてもじゃないが出来ない。
「呪いか。確かにこれは呪いなのだろう」
「大丈夫なのか!? 見た目じゃ無事かどうかわからないけど!」
「見た目ではわからないが、おそらく私は変わってしまった。もう、どうしようもないほど変わってしまったのだ! 私は、私はもうリザードマンとして生きていけない!」
「何だ! いったい何に変わってしまったんだ!」














「魔法使いにだ!」






















































五分五分ゴブリン













ゴブリンが群れるのはなぜか。
「楽しいから!」
ゴブリンが小さいのはなぜか。
「そんなの知らない!」
だってゴブリンだもん。
「ゴブリン盗賊団、ファイトー!」
「おー!」










森の中を歩いても、町は見当たらない。
いつもの事ながら適当に歩く癖は何とかしないといけない。
歩けばいつかは町にたどり着くだろうと森に入ったのが運の尽きと言わんばかりに、薄気味悪い光景が広がっている。
日の落ちた森は歩き辛い上に時々聞こえる鳥の羽ばたきにたびたび驚く。
「夜の鳥はいい思い出がないからなぁ」
踏みしめた時に枯れ枝を踏み折ってしまう。
音を立てると襲い掛かってくる。
そんな経験から反射的に周囲の音に気を配る。
「お、何か聞こえたぞー!」
「げ、近いのかよ」
「ひとだ、人の声だ!」
予想通り何者かに気づかれたので思わず声が出てしまった。
決定的に存在がばれてしまった。
「襲え襲えー!」
「たーべちゃうぞー!」
「ちくしょうが!」
見つかってしまったらもう逃げるしかない。
大急ぎで走り出すと、後ろから追っ手の足音が聞こえてきた。
「まてまてー!」
「つーかまえるぞー!」
「ぱくって食べちゃうぞー」
「やってられるか!」
聞こえる声は子供の声で言い方も子供っぽいんだけど、内容は恐ろしい。
カリカリもぐもぐと食べられるのはもう勘弁したい。

走って逃げても無駄なのは知っている。
いくら相手が子供でも体力が違う。
というか俺は死ににくいだけで筋力も体力からきしだから、すぐに息が切れる。
「何かある、というか誰か倒れてる?」
転ばないようにと地面を注視していると何かを見つけた。
丸太のようだと思って跳び越えようとする寸前に、それが人の姿をしていると気づいた。
「こんな所で寝るなんて、危ないだろう、どわぁ!?」
地面を踏みしめようとして硬い何かを踏んでしまった。
受身なんて取れるはずもなく、そのまま地面に倒れこむ。
「やったー!」
「たおれたぞー!」
「あれ、でも誰かいるー?」
一体何が原因で転んだのかと確かめる。
「棍棒?」
「ん〜、むにゃむにゃ」
倒れていた誰かは騒がしい声で目を覚ました。
「ん〜」
「こいつ何だ?」
「お、おっきいぞ! すごいぞ!」
「おっきいゴブリンだ!」
ゴブリンっていうと、小鬼の事か。
確かにやってきた3人はみな女の子みたいな姿をしているが、起き上がっている4人目は3人に比べて異様に体のある一部分がでかい。
「ぎゅぃいいいん」
「ぎゅいい?」
「いいいん?」
むにゃむにゃと寝ぼけているゴブリンが俺の上に圧し掛かってきた。
何だかよくわからないが不吉な音を発しながら。








「むにゃ〜、おっぱいどりる〜」



「ちょっと待ておまえ色々とつっこみどころが〜〜〜!!」

















 




























勝負のつかない勝負


















メモ書き
いつもあの二人はお昼寝をしている。















「ボクだって。ボクだって頑張れば、出来るんだ」
幼いナイトメアが決意を固めてやってきたのはどこにでもあるような農村。
教会はあっても魔物排斥は行われていない村。
争いを好まない村人と普段は温和でのんびりとしている魔物が住んでいる、辺境の田舎。
彼女はその村の放牧地にやってきた。
青く生い茂る草を食べる羊や昼寝をしている乳牛たち。
その群れの中央で寝転がっている二人の姿を見つけると、ナイトメアは大きく深呼吸をする。
「大丈夫。相手は男の人じゃないんだから」
サクサク草を掻き分けて歩いた先には、ワーシープとホルスタウルスが丸くなって寝ていた。
「慎重に、慎重に」
ナイトメアは夢に入る時には相手に近付かないといけない。
しかし臆病な者の中にはそれさえも上手く出来ない場合もある。
そういう場合は、同性の夢に入る事で場慣れしようとするのも一つの手ではある。
「どきどき、どきどき」
幼いナイトメアはその中でも比較的温和でのんびりとしているこの二人に目をつけた。
この二人ならきっと大丈夫。
そう思って近付いて、ある事に気づいた。
「あれ、ワーシープのお姉さん。今日はもこもこじゃない」
周りを見ると羊の毛を刈っている彼女の旦那の姿が見えた。
「もしかして……」
「ん〜?」
むくりと体を起こしたワーシープ。
すぅと目を細めた顔を見て、思わず後ずさりをするナイトメア。
「どうかした〜?」
もそりと体を起こしたホルスタウルス。
こちらはいつもと同じなのであまり怖くない。
「ふふ〜。どうしたのかなー、君は」
「あ、あの、その、夢入りの、れれれんすうを!」
「だれだれ〜?」
「君の言いたい事はわかったけど。お姉さん、いまえっちな気分なんだ」
「あ、ああああ、ああの!」
「あとさー、君」
「んー、………」
「え、ああ、あの?」
「この子の前で赤い服は着ないほうがいいよ?」
「ヘ、あ、あぁああああああああああ!!」






























後日。
彼女達の旦那さんを交えた6Pだかなんだかわからない過程を経て無事に恋人を見つけたナイトメアでした、まる


















追記
羊さんに3回、牛さんに6回イカされたとか。




















あともう一つ。
あの二人は「どれだけ長い事昼寝をしていれるか」で勝負をする好敵手(らいばる)なんだとか。
よくわからないけど、私も一緒におひるねすることになった。




















































3P? いいえ、弱肉強食です

























森の中をひょいひょいと飛んで、到着。
彼女は地面に咲く大輪の花の傍にまでやってきた。
「こんにちわ〜」
「うん、こんにちわ。今日も蜜を採りに来たのね」
二人はごく自然に挨拶を交わす。
仲がいいのは当然。
やって来たのはハニービーで、応じたのはアルラウネ。
蜜を採る側と採られる側の関係でこの二人はずっと幼い頃からいっしょに仲良く遊んでいた。
「んん、んちゅ」
「やぁ、もう、くすぐったい♪」
まだ蜜の分泌が少ないので、ハニービーはアルラウネの蜜が分泌できるように体を解していく。
太ももを、腰をマッサージしていく。
巣に篭っている女王の世話をするハニービーは家事全般はお手の物、マッサージや女王の体の準備まで一通りこなす。
女王よりもよく知っている親友のアルラウネの事なら、何でも良く知っている。
「ふふふー、お蜜が出てきた出てきたー」
「はぁあ、くぅん♪」
「おー、やってるやってる〜」
「あ、この声は」
とろとろの蜜が花弁の内側から花弁の内側へ溢れて溜まってくると、どこからか毛皮を纏った女性が現れた。
グリズリーと呼ばれる獣の魔物はのそのそと二人に近付いていく。
「もう。お姉さんは蜜とっちゃやーなの」
「いーじゃない。この間のキツイ子、追い払ったでしょー?」
「きゃうっ、ぅん、あ、あれは」
「ぴちゃ、んむ、ん〜、甘くておいしい〜」
「単にお姉さんがホーネットを巻き込んで、んんっ、大変な騒ぎにしたからでしょー」
「気にしない〜、ふふ、ふふふ〜」
「あー、また来るよねー」
「んんっ、もぅ、また滅茶苦茶にされちゃうの〜!?」
蜜を舐めて興奮し始めたグリズリーを見て、アルラウネが悲鳴を上げた。























「……あたしも混ぜなさいよ」
後から現れたホーネットが3人の輪に混ざったとか混ざらなかったとか。























































魔物にはそれぞれ敵対関係があり、共生関係があります。

元から仲の良かった種族も、そうでない種族も、魔王が代替わりしてからは仲良く生活するケースが増えてきました。

今回は魔物にも共同生活があるという事例を書き連ねました。

この記事がよりよい人と魔物の生活を生み出す事になれば幸いです。

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----作者より

短編集第3弾。
ネタを貰ったりしながら短いのを何本も入れてみた(’’


絶賛ネタを募集していますので、
今後ともこの不定期な月刊誌をよろしくお願いします(。。



11/01/30 23:00 るーじ

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