連載小説
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いちっ!:私が堕ちた経緯とか
---初めの頃---

主神に命じられ、私はこの地上に降り立った。
これからは悪徳の象徴である魔物を滅するために働かなくてはならない。
よし、がんばらないと!


---降り立って一ヶ月頃---

どうにも、最近調子が悪い。
というのも、何故か魔物を滅することに躊躇いを覚えてしまう。
今まではそんなこと無かったのに……
情でも移ったのだろうか?まさか!!
「汝隣人を愛せ」とおっしゃったのは確かに主神だが、
世界を破滅に追いやる輩を隣人とは呼びたくは無い。
……うん、きっとこれは気の迷いだ。
今日は早めに寝て、明日はもっとがんばろう


---降り立って3ヶ月頃---

昔、我が主神は「生めよ増やせよ地に満てよ」とおっしゃったらしい。
この地上という場所に、ありとあらゆる生命が満ちることを良しとする
といったところ?
が、今ではその主神はその生命の一つである魔物を滅せよと言う。
私は主神の命を遂行することが存在理由なので、とりあえず魔物を滅してはいるが、
どうにもそれが苦痛に感じるようになってきた。
うーん、何でだろ?


---降り立って半年頃---

最近勢力を大きくしている親魔物領があると聞き、そこへ行って見た。
……なんだ、みんないい人だ。
ホルスタウルスさんからは良質のミルクを分けてもらったし(これがすっごくおしいの!)
行商をしているワーラビットさんからはこれまた良質な野菜を分けてもらった(自家農園で作っているらしい)
他にも、いろいろ良くしてもらった。
それも、私が天使と知っても、その態度は変わらず、今まで私が魔物を滅していたことを責めることも無かった。
何でこんないい人たち(魔物たち?)を主神は滅しろだなんて言っているんだろうか?
別に世界を壊そうとか、そういうことを一切考えてないのに
……うーん、何でだろ?


---降り立って一年---

今更気がついた。
主神の声が聞こえない。
今まではかすかにでも聞こえてたのに、今ではうんともすんとも。
これでは使命を終えたとしても、どうやって天界に帰ればいいのか分からない。
でも、使命ってあれだよね、魔物を滅せよって奴。
正直、やる気がしない。
魔物を滅せよって、あれだよね?今住んでるご近所さん殺せって言ってるようなものだよ?
やだやだ、そんな殺伐とした近所づきあい。
せっかく最近親しくなってきたばかりなんだからさ。
ほら、主神も言ってるじゃん、「汝隣人を愛せ」ってね。
滅す滅さないなんて血生臭いことなんて忘れて、平和に過ごしますか。


---降り立って2年---

やばい、これは本格的にやばい。不治の病か?
妙に心臓がバクバク言ってる。呼吸も浅く、速い。
私がやる気を出さないから主神が怒ったのだろうか?
……それは無いか。だとしたらもっと早くこうなってるだろうし。
よし、原因を自己分析してみよう。
いつもどおり、朝起きた。で、散歩しに街に出かけた。よし、ここまではなんら変わらん日常だ。
で、お隣さんのホルスタウルスさんから、毎日恒例となったミルクのおすそ分けをもらった。
うん、ここまでは何も変わらない。
で、街に出て、ぶらぶら買い物なり冷やかしなりしてたとき、ふとある冒険者をみて……
そしたらこうなった。
くそっ!あの冒険者に呪いでもかけられたのだろうか?厄介な。
だとしたら今すぐに呪いを解除させなくては!
……あれ?でも私、一応天使だから呪い効かなくね?
うん、まだ頭に輪っかはあるな。
主神の声が聞こえなくなって、普通の生活をして久しいが、一応まだ天使……なはず。
自分でも自分が天使だったってこと忘れてたよ。
まだ神聖魔法つかえるしね。威力弱くなってきてるけど。
とりあえず呪いの線は消しておこう。
……ふむ、明日になったらお隣のエキドナさんに相談してみるか。


---降り立って2年と1日---

とんでもないことを聞いてしまった!キャーーー!!
いや、ごめん、結構取り乱してる、でも、でも……キャーーーー!!
……うん、ごめんなさい、だいぶ落ち着いた。
何を聞いたかって?そう!それだよそれ!さっきエキドナさんに胸のどきどきとかのこと、聞いてみたの。
そしたら、エキドナさん、「それは恋ね」だって!!
嘘だーーーー!だって恋って何!?恋って!!
愛は知ってるけど恋なんて知らないし!
と、言うわけでいろいろ聞いてみたのよ!そしたら、まぁ、いろいろ言われたんだけど、簡単に言えば
「○○○したくなっちゃうってことかな?」だって!!
……ち、知識だけでは知ってるよ?うん、知識では。
でも、そんな事したくなる状態に自分がなるなんて、考えられるはず無いでしょ?
って言うか、何でそんなことになった!?
……うーん、何でだろ?なんてのんきに考えられっか!!


---降り立って2年と8日---

うん、もう我慢の限界。
行ってきます。


---現在---

「……ってのが、君との出会いとか、そんなのかな〜?」
「つまり一目ぼれみたいなもんか?」
「んー、そんな感じかなぁ?」

私の夫になったあの冒険者に、何で自分を選んだのかを聞かれたので、
私は今まで過ごしてきた経緯を踏まえて説明してみた。
うん、あの時は衝撃的だった、私がまさか恋をするなんてね。

「しかし、いきなり襲われたときは俺も驚いたよ」
「私もまさかあんなにこらえ性が無いなんて思わなかったわ」

どうにも、私は知らないうちに魔物の魔力に犯されていて、ずいぶん前から魔物になっていたらしい。
たぶん、やる気が出なくなってた頃には、私はすでに魔物だったんだろう。
それに気がつかず平凡に、恋とかをせずにすごして、そのおかげで飢えに飢えていた私は、
一目ぼれで我慢ができず……といった感じだろうか?

「しかし、元天使の癖にずいぶん軽いというか、フランクだなお前」
「んー、なんていうか、いつからか性格変わっていった感じなんだよね。これも魔物化の影響かなぁ?」
「さぁな、って言うか俺に聞かないでくれ、当事者はお前さんだ」
「それもそっか」

まぁ、そういう細かいことはどうでもいいや。

今がこうやって幸せならね!
11/08/20 00:09更新 / 日鞠朔莉
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■作者メッセージ
まず言って置きます。
これは今までの単発のものをそのまま移植しただけです。

内容の変化はまったくありません。

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