連載小説
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魔物さんが営むお店へ行こう
 人間さんと魔物さんのご夫婦が切り盛りするお宿。
 魔物さん達がアイデアを出し合って始めた注目のレストラン。
 人魔を問わず、いつもたくさんのお客さんで賑わっている峠のお茶屋。

 ……などなど、対魔物:友好国である我が国には、個性豊かなお店が数多く存在しています。
 そこで、本誌:秋号では行楽シーズンの到来にあわせ、【秋満喫! 素敵なお店特集!】の記事をご用意いたしました。

 本誌:春号にて実施した『あなたのオススメ! 名店・名宿アンケート』の結果も踏まえつつ、実際にそのお店を利用された皆様のお声を最大限に反映させていただいた、渾身の企画でございます。

 この無料お試し版では、その一部をチラリとご紹介。
 素敵な秋の楽しみが、あなたを待っていますよ!


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 【 ジパング風温泉旅館 〜 ツバキ 】

「建物の外観、庭、客室の全てが、趣あるジパング様式。もちろん、出される食事も絶品のジパング料理! 国内に居ながら遥か東方に想いを馳せることが出来る、最高の宿です」 (三十歳/女性)

「女将を務める、双子の稲荷さんが超美人! 艶やかなジパングのキモノが、その美貌をさらに引き立てます! もう本当にドキドキしっ放しなんだけど……二人とも既婚者なのが残念だなぁ」 (二十一歳/男性)

「女将さんと同じで、板長さんと番頭さんも双子なんですってね。双子の稲荷と人間が出会って、結婚して、四人で力を合わせて温泉旅館を切り盛りする。不思議だけど、とっても素敵なお話だわ!」 (五十歳/女性)

「乳白色の温泉は、美肌効果バツグンだよ! 肩こりや腰痛も治っちゃうから、困ってる人は試してみてね。……あと、大きな声では言えないんだけど、夜の十一時以降は大浴場も露天風呂も混浴になるの。ムフフ〜っと期待してみてね。なんちゃって♪」 (?歳/ワーキャット)

「運が良ければ、旅館の仕事を手伝いに来ているジョロウグモさんや河童さんといった、ジパング出身の魔物さんと出会えます。実は僕の親友は、この旅館で素敵なゆきおんなさんと巡り逢い、結婚したんですよ……羨ましいぜ!」 (二十七歳/男性)

「本当に素晴らしい温泉旅館なのですが、『油揚げが苦手』という方には向いていないかも知れません。いや、一言伝えれば、ちゃんとそれを除いたお食事が出て来るんですけど……女将さん達が耳を折り曲げてショボンとした顔をされるので、何だか申し訳なくて」 (三十歳/女性)


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 【 新感覚魔物レストラン 〜 マモターズ 】

「いやもう、反則でしょう。あの店は。調理、接客、運営、全て魔物さん。その制服は、ピッチピチのタンクトップと、パッツンパッツンの短パン(もしくは腰巻き)。右を見ても左を見ても、色んなモノがこぼれ落ちそうで大変です」 (二十歳/男性)

「最初はいかがわしいお店かと思っていたのですが……料理も接客もきちんとしていて、驚いてしまいました。多国籍料理のレストランとしては、人間のお店に勝るとも劣らない水準ですよ」 (二十七歳/女性)

「清潔な店内、美味しい料理、可愛くてドキドキ出来る魔物の店員さん達……。本当に最高のレストランなのですが、結婚以来久しく行っていません。僕の奥さんはラミアなので、バレたらきっと絞め殺されます……」 (三十五歳/男性)

「毎月行われる様々なイベントも、この店の楽しみの一つです。ちなみに先月は、『サバトの日』でした。可愛い魔女さん達が、ブカブカのワイシャツ一丁で接客を担当するという、夢のような一日! もう本当、タマらんくらいに最高っス!」 (二十二歳/男性)

「三ヶ月前の『妖精の宴』イベントは、色んな意味で大騒ぎでした。可愛らしい妖精種の面々があの制服に身を包み、店内を飛び回ったり駆け回ったり。私も注文した料理をつまみ食いされましたけど……不思議と怒る気にはなれませんでしたね」 (三十四歳/女性)

「実は私、このお店で働いてま〜す♪ あ、念のために言っておきますけど、店内ではお触りとかのイヤラシイ行為は厳禁ですからね? ……あなたが誠心誠意口説いてくれたら、閉店後はどうなるかわかりませんけど。なんてね♪」 (?歳/レッサーサキュバス)


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 【 ドワーフ直営 装飾品販売店 〜 ドワドワ 】

「鉱石の採掘 → 様々な加工 → 販売までを、ドワーフさん達が直接行っているお店です。中間の業者などを介していないため、最新の品々を他の街よりも安く購入することが出来ます。実は、僕と妻(人間ですよ)の結婚指輪も、こちらで選んだものなんですよ」 (四十歳/男性)

「『おぅ、いらっしゃい! 今日は何をお探しだい?』 その見た目にそぐわぬ口調に、最初は面食らってしまうかもしれません。ですが、あたたかな笑顔と丁寧な説明、そして素晴らしい出来栄えの品々に触れるうち、きっとあなたもこのお店の虜になってしまうでしょう」 (三十歳/男性)

「種類を問わず、装飾品の洗浄やリメイクも行ってくれる素敵なお店です。ただし、腕利きの職人さんばかりなので、雑に扱った物を持って行くと『バカヤロー! ちゃんと手入れしてやんなきゃ、指輪が泣いてるぜ!』と見抜かれ、怒られてしまいますよ」 (三十八歳/女性)

「他所の国からやって来た馬鹿な強盗がこの店へ押し入り、ドワーフさん達に返り討ちにされたという話を聞きました。どんな方法を用いたのかは知りませんが、強盗はペラペラの紙みたいな状態になった末、自警団に連行されたそうです……脅威のハンマー術?」 (二十三歳/女性)

「人間相手には気前よくマケてやるのに、アタイ達との交渉には厳しいんだよねぇ。でもまぁ、モノは超一級品だから、多少仕入れ値が高くても完売するんだけどね。人魔を問わず、アタイ達みたいな行商隊には、大切な取引き相手なのさ」 (?歳/ゴブリン)

「孤児院の子供達に鉱石加工や金属細工の技術を伝え、将来の糧にしてもらおうという試みに取り組まれているそうです。『いやまぁ、気まぐれと思いつきの結果さ。別に深い意味なんてねぇよ』という照れ隠しの言葉が、彼女達の優しい心を映し出していますね」 (五十五歳/男性)


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 【 峠の美味しいお茶屋さん 〜 憩い処サンガ 】

「水の精霊であるウンディーネさんとそのご主人が営んでいる、峠のお茶屋さんです。我が国と西の隣国を結ぶ山道の中間点にあり、人魔を問わない幅広いお客さんから愛されています。ただ、飾り気の無いこぢんまりとしたお店なので、見落として通り過ぎないよう注意してくださいね」 (二十八歳/男性)

「憩い処サンガのお茶を飲まずして、『お茶好き』を名乗ることなかれ! ……と言いたくなるくらい、ここのお茶は絶品です。ウンディーネさんが汲み上げる清らかな水と、ご主人が厳選した茶葉のハーモニー。あぁ、思い出しただけで、ため息が出てしまいそう」 (三十一歳/女性)

「“女の姿をしたウンディーネは、その土地を魔界に変えてしまう” なんて話を聞いたことがあるけど、あそこの夫婦を見る限りそうは思えないんだよなぁ。いつも穏やかで美しい嫁さんと、気は優しくて力持ちな旦那。そんな理想的な二人にしか見えないぜ?」 (五十一歳/男性)

「旅行者、商人、騎士団に魔物……種族や所属に関係なく、あのお店は山を往くみんなの憩い処であり、情報交換の場なんだよね。対魔物:友好国がギュッと集まってる地域だから、みんな相手が誰であろうと気さくに喋るしさ。本当、ああいう場所は色んな意味で貴重だよ」 (?歳/ハーピー)

「二年ほど前、遠くの国から流れて来た荒くれ者の連中が、この店で暴れたらしいんだが……夫婦が操る水の力で、あっという間にブッ飛ばされちまったそうだ。さすがは、水の精霊とその契約者。
ちなみに馬鹿どもの方は、偶然近くを通りかかったホーネット達にお持ち帰りされたらしいぜ」 (四十二歳/男性)

「美人でしとやか、誰に対しても平等に微笑んでくださる奥様。同じ女性として、本当に憧れてしまいます! ……でも実は、『恋のお話を聞くのが大好き』という、お茶目な一面もお持ちなんですよね。ぜひ一度、海のメロウさんと対談していただきたいです!」 (二十五歳/女性)


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 【 恐怖と驚異のお楽しみ空間!? 〜 ホテルガクブル 】

「ゴーストの奥様が妄想全開で語った、一つの計画。その内容を正確に記録し、現実のものとした人間の旦那様。そうして生まれたのが、このホテルガクブルです。世界広しといえども、受付係がゾンビとか、メイドがスケルトンとか、そんなホテルはここだけでしょう……」 (二十二歳/女性)

「いやぁ〜……正直、死ぬかと思いましたよ。だって、フロントにマッサージを頼んだら、白衣姿のギルタブリルさんが来たんですもん。そして、あの針でメッタ刺しにされたんですもん。生まれて初めて走馬灯というものを見ましたが、体は元気になりましたね。色んな意味で」 (二十六歳/男性)

「ベッドメイキングをマミーさんにやらせるって、ちょっと無理がないですか? だって、シーツが体に触れるたび、『あぁん!』とか『んっくうぅぅ!』とか言うんですよ? ベッドが綺麗に整っても、とてもうつ伏せでは寝られない様な状態になりましたよ……」 (三十三歳/男性)

「何を隠そう、私はこのホテルで妻と出会ったんです。普段は寝付きの良い私が、その日に限って何故か眠れず……。寝返りを繰り返す中でふと目を開けると、そこには大きな鎌を担いだナイトメアの彼女が! お互いにビックリ仰天でしたが、全てはそこから始まったんですよ」 (二十八歳/男性)

「私は、このホテルに勤務するワーバットです。ただ今、当ホテルでは“会員登録キャンペーン”を実施中! 宿泊費が二割引になるだけではなく、誕生日の前後一週間にお泊りいただくと、スタッフ総出であなたを驚かせる失神サービス付き! このご機会にぜひともご登録を!」 (?歳/ワーバット)

「夜、部屋で熟睡していると、ベッドの中にダークプリーストさんが忍び込んで来ました。これもホテルのビックリサービスなのかなと思っていたら……ただの単なる侵入者であり、痴女でした。何と言うか、別の意味でビックリしました」 (二十七歳/男性)


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 さて、いかがでしたでしょう?
 気になるお店、お宿はございましたか?

 本誌:秋号では、この他にも個性豊かなお店を数多く掲載しております。
 続きは、本屋さんにて……お見逃しなく!
10/11/06 04:50更新 / 蓮華
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