人虎さんの全身をくまなくもふり隊!!
驚いて足が止まる、なんて物語の世界だけだと思っていた。
でも今、実際に僕の足は地面に縫い着いたかのように動かない。
それ程までに、目の前の景色は、到底信じられない目を疑うようなものだったのだから。
「んっ……く、ふっ……はぁっ……」
吐息に合わせて、くちゃりと湿った水音。
まるで僕に服従するかのように高々と突き出された尻。
赤らんだ顔と、ふさふさとした獣毛の生えた腕、足。
まさか、人虎のお姉さんが、森の中で裸になって一人自慰にふけってるところに出くわす……なんて。
偶々森に散歩にでかけただけで、まさかこんなものを見ることになるなんて思ってもなかった。
これが発情期というやつ……なのだろうか。
「はぁっ……はぁっ……む？」
しかし、いくら発情期といえども、武人である彼女達を相手にずっと立ちつくしたままだったというのはまずかったらしい。
しまった、と思った時には既に、ずっと地面に向けられていた彼女の視線が、僕の視線と交差していた。
「……人間だぁぁぁぁぁぁっ!!」
驚いた顔をしたのも一瞬。
恐ろしい形相で飛びかかってきて、僕は為す術もなく地面に押し倒されてしまった。
「はぁっ、はぁっ!!この際、何故人間がいるのかなどとはどうでもいい!!くれ!!私に、濃い精液をいっぱいぶちまけてくれぇ!!」
息を上がらせながら、淫らな言葉遣いで僕を求めてくる人虎のお姉さん。
正直言ってしまえば……とても、嬉しい。
発情期だろうがなんだろうが、女性に言い寄られて喜ばない、ましては受け入れない男などいるものか。
「ま、待って!!待ってください、お姉さん!!」
だけど、そのまま受け入れてしまいたくはない、という気持ちが僕の中にはあった。
当然、そんなものを聞いて納得してくれる程、発情期の人虎というものが甘い訳はない。
「いやだ!!ようやく、ようやく男が捕まえられたんだ!!もう逃がさん!!私と交尾するまで、絶対に離さないからな!!」
「そ、そうじゃないです!!僕もあなたとエッチがしたくない訳じゃないですし、むしろ大歓迎なぐらいです!!でも、ちょっと待ってください!!」
「……む？じゃあ、何だ？」
勢いに任せて恥ずかしいことも言ってしまった気がするが、お姉さんもそこまで言えばようやく話を聞くぐらいには落ち着いてくれたらしい。
最も、顔が真っ赤になっているのがまだ収まってないから、別に性欲が消えた訳じゃなさそうだけど。
「で、ですけど、あなたのお願いを聞く代わりに、僕のお願いも聞いて欲しいんです。それぐらいなら……いいですよね？」
「……なるほど。まぁ、私も交尾してくれるなら、文句は言わん。それで、何が望みなんだ？」
二つ返事で了承してくれた人虎さんに、内心でガッツポーズをする。
そして、僕は一つコホンと咳払いをして心を落ち着かせると、ずっと心の中に秘めていた夢を暴露した。
「あなたの全身に……触らせて欲しいんです!!」
あぁ……ついに言ってしまったな……
何を隠そう、僕は近所に住んでる稲荷さんとかワーウルフさんとか、そういったものしか愛せない、俗に言えば重度のケモナーだった。
我が家で飼ってる猫がいつかネコマタになったら思う存分堪能しようかと思ったけど……目の前に、猫以上かと思うぐらいの毛並みの生き物がいるのだ。
それに触らずして、何がケモナーか。
「ふ、ふむぅ……？つまり、前戯をしたいのか？そういう事なら……ほら」
僕の性癖までは流石に分からなかったみたいだけど、人虎さんは特に何の疑問も持たずに地面に寝そべって、手と足も投げ出した状態で仰向けになって、動物で言う服従のポーズみたいな格好になった。
起き上がって、その姿を見下ろしてみる。
しかし……改めてみると、本当に綺麗な人だよなぁ……
普段は凛々しい表情をしているのだろう顔は、今は早く行為をしてくれ、とせがむように期待に満ちた目で僕を見ている。
腕は外側が黄色と黒の縞模様で、内側は真っ白になっていた。
足の方も、模様は一緒だ。
そして、手にも足にもついているのが、長く尖った爪と、桃色をした肉球。
……これを、自由に触っていいんだよな？
ごくり、と喉がなる。
そして僕は、恐らく彼女の期待とは全く違う場所、肉球に視線を集中させて身体を寄せ……人差し指で、つんと触れた。
「ぁっ……!!」
……すごい。触ってみると、本当に肉球独特の感触がする。
柔らかいようでいて、形を全く崩さない固さを持つ、猫科独特のそれ。
それがそのまま、人間大の大きさになっているのには、ある種の感動さえ覚えた。
小さい頃は、家の猫の肉球を触ってはこれがもっと大きかったらいいのに、なんて思ってたっけ……
人差し指だけでは物足りず、今度は親指を使って触れてみる。
ぷに、ぷに。
……面白い。
弾むような感覚に夢中になって、何度も指を押しては引いてを繰り返していた。
「やっ……あぅぅ……何で、そんなとこばっか、狙うんだ……」
そんな事をしていると、人虎さんの悲しそうな声が耳に届く。
おっとっと、危ない。肉球の感触は楽しいけど、もっと他にも触りたいところがあるんだ……
それを思い出して、肉球に触れながら空いたもう片方の腕で、人虎さんの手に触れる。
うわぁ……本当に、ふかふかしてる……
目にした時点で理解はしていたけれど、触ってみる感触はまるで別物だ。
感慨深いものを感じながらも、その手をそっと腕の付け根側にまで動かそうとする。
さわぁっ……
それは、何の障害もなくあっさりと触っている手を下に滑らせていった。
ふさふさとした虎の毛に撫でられる、こそばゆさにも似た心地の良い感触までオプションにつけて。
「……っ……!!く、くすぐったいぞ……!!」
どうやら、くすぐったさを感じるのは向こうも同じだったらしい。
けれど、毎日毛並みの手入れをしている我が家の飼い猫よりも数倍滑らかなその感触は、一回味わうだけではちっとも足りなかった。
二回、三回、四回、五回……
虎の毛の間を自分の手がすり抜ける感触が、たまらなく心地良い。
勿論、その逆の手で肉球をいじるのも忘れてはいない。
気が向いたら、肉球と腕をいじる手を入れ替えて、また味わって。
今度は……ここも、触ってみよう。
腕に触れている手を、下側ではなく今度は上側……つまり、人虎さんの手に向かって進ませる。勿論、手に触れたいだけではない。僕が触れたいのはその先……爪だ。
指の上に指を這わせて、手の平全体で触れるのとはまた違う、先っぽに毛が集まる感覚を楽しみつつ、黒光りしたそれに触れた。
……硬い。
爪だから、当たり前だ。
だけど、その硬さは人間のそれとは違う。がっしりとして、鋭くて、その気になれば人間さえ容易く引き裂いてしまえそうな、そんな硬質感。
まぁ、人虎さんがそんな事をしないっていうのは、わかってるつもりだけど。
「なぁ……まだなのか？もう、これだけ触れば満足したんじゃないのか……？」
腕だけを触られてる状況が我慢できないのか、懇願するように人虎さんが聞いてきた。
僕としてはすごく興奮するシチュエーションなんだけど、やっぱり腕だけを触られるのは人虎さんとしては足りないんだろうな。
「スイマセン……だけどまだ、触りたい場所が僕には沢山あるんです!!」
だけど、僕としてもそこを譲る気はない。
例えばそう……この、足とか。
腕から足の方に向くように身体の向きを変えて、今度はそこに触れる。
うわぁ……ここも、すごい……
足なんて、腕に比べれば遥かに汚れやすいって言うのに、腕の毛を触った時とまるで変わらない手触りがする。
しかし、発達した筋肉のおかげか獣毛の奥はがっしりとした硬さがあって、毛並みの柔らかさとはまた対照的な感覚だ。
今度は手を滑らせるのではなく、手の平を使って軽く足を握ってみる。
硬さと柔らかさ、二つの物に同時に触れるというのは……性的な刺激なんて僕は一切受けてないのに、背筋がゾクゾクとした。
ここが、腕とこんなに違うなら……じゃあ、ここは……？
手を持っていくのは、足の裏側、肉球。
「ふぁっ……はん……!!」
お姉さんは肉球が弱いのだろうか。
腕の時もそうだったけど、他の場所に触れた時はあまり言葉を口にしなかったのに、肉球に触れた時だけは艶めいた声をあげる。
でも……今の僕には、そんな事は関係がなかった。
だって……だって……!!
足の肉球は、いつも地面に触れているからだろう。
勿論、柔らかいことは柔らかい。ぷにぷにとした感覚はそのまんま残っている。
だけど……そこには、主を支えようとする、しっかりとした硬さがあって……
指を受け入れようとする手の肉球とは違って、指をはじき返そうとするのが、足の肉球。
柔らかいのに、硬い。そんな矛盾にも似た性質が、クセになってしまう。
ぷにぷに、ぷにぷに。
片手なんて悠長な事を言わず、両手でとにかくその肉球を味わった。
「う……う、むぅ……!!」
お姉さんの口から漏れてる声も、僕をより助長させるスパイスになる。
しかし、一方でずっと肝心の行為を放置して僕一人が楽しんでいる状況が、少しだけ不安になったのも事実だった。
肉球をいじる手の動きを早める一方で、視線は下に……足首を沿って、人と獣の境へ。
『あそこ』がどうなっているのか、確かめたくなった。
お姉さんの、女としての部分。
やはりそこは、先程のひとりエッチの影響で、周りの虎の毛まで及ぶ勢いでしっとりと湿っていた。
ただ、予想と違ったのは……そこが今も、愛液を垂れ流しにしているということ。
「は、はぁっ……なぁ、わかるだろ……？私も、限界なんだ……だから、焦らさないで……早く……」
本当に限界なのは、声が途切れ途切れになっていることからもわかる。
それにしても、お姉さんの位置からじゃ足に身体を向けているせいで背を向けている僕の顔は見えないはずなのに……視線だけで、快楽になっちゃうのかな。
でも、僕は視線を外すことなんてできない。
初めて見る、女性の証……今までずっと、人ではないところのみに触れてきていたのに、そこだけは人間のような綺麗な玉肌をしていて。
そこが今、僕に向かって開いている。
肉球よりも桃色に染まったそこは、まるで独立した生き物みたいに中でひくひくと動いて、その度に液を零す。
そこに、触れてみたいとは思ったけど……僕は、予想以上に興奮していたらしい。
肉球から離した手を、そのまま持っていくのではなく……その桃色の花びらに、そっと顔を近づけて、口を付けた。
「ひぅ……!!」
僕の唇が触れた途端、お姉さんの身体が大きく震える。
でも、僕はそれだけで止めたりなんかしない。
唇の隙間から舌を伸ばして、三点でお姉さんの大事な場所に触れる。
舌から伝わる感覚は、柔らかと温かさ。
それも、獣毛のそれとは違う、人間味を帯びたもの。
湿ったそこに触れた舌を、さっき手でやったように滑らせる。
「んぁっ……!!そんな、いきなりっ……!!」
愛液が舌にすくわれて、代わりにまぶされるのは僕の唾液。
それはまるで、僕の唾液で塗りつぶそうとしているかのようで。
僕がお姉さんを興奮させている、僕がお姉さんを自分のものにしているかのようで、それがまた僕の劣情をかき立てる。
ぴちゃり、ぴちゃりと、僕の舌がお姉さんと触れ合う度に、そんな音が耳に届く。
「んっ……んんっ……!!」
その時、僕の視界の外で、何かが揺れたような気がした。
ずっとお姉さんの秘所に向けていた目を、少し横にずらしてみる。
地面に寝そべるようにゆらり、ゆらりと揺れているもの。
黄色と黒の、縞々模様のそれ。
……尻尾。
それが目に入った瞬間、思わず僕はお姉さんから口を離して、それに見入ってしまっていた。
「お、おい……何だ……こんなところで、やめるな……もっと……もっとぉ……!!」
お姉さんが辛そうに言うのも無理はない。
多分、もうちょっとでお姉さんは達していたんだろうし……生殺しもいいところだ。
だけど……僕は、沸き上がる欲を抑えられなかった。
「お姉さん……うつ伏せに、なってください……」
「な、なんで……早く、早く……」
「これで、最後にします……僕だって……抑えきれないのは、一緒なんですから……」
ズボンはとっくにテントを張っていて、少し擦れる痛みさえ感じるくらいだ。
お姉さんは魔物だから、我慢汁が滲み出ているのだってわかるかもしれない。
それでも……僕は……!!
「わ、わかった……けど……早く、しろよ……？」
お姉さんは目元を潤ませながらも、僕の言うことを聞いてくれた。
大丈夫だよ……だってここは、お姉さんにとっても……
お姉さんの背中に乗っかって、僕はそれを見やる。
お姉さんがうつ伏せになった途端にピコピコと、僕を誘うようにして動く、それ。
長くしなやかで、お姉さんを表しているかのような……尻尾。
その付け根、獣と人の境目に見とれながら……僕はそこを、そっと撫でた。
「……きゃふん!?」
ピン!!と天を目指すかのように力強く、尻尾が張り詰める。
触れたまま、僕はその手を少しずつ尻尾の上へと持ち上げるようにして滑らせていく。
「くぁっ……!!あっ、駄目っ……!!」
毛並みの柔らかさは、今更語るまでもない。
手の間を、何の違和感もなくすり抜けて、僕を受け入れてくれる。
けど……今までと一番違うのは……
中に、しっかりとした硬さがあること。
足の筋肉の、がっしりとした硬さとはまた違う、芯のある安定した硬さ。
……尻尾の骨に、僕は今毛皮越しに触れているのだ。
その事実に気がついて、触れるだけでは物足りなくなる。
もっとちゃんと、その感触を味わいたくて……手の平の中に、抑えるように握った。
「あひゃぅぅぅ!!」
お姉さんが悦楽にまみれた声を上げるのも、地面に爪を立てるのも、今の僕には見えないし、聞こえない。
細い尻尾が握った手の中から伸びるのは、まるで巨大になった猫じゃらしを見ているかのようで。
それなのに、中の骨は硬くて、これが縦横無尽に動き回るのが信じられない程。
子供が猫じゃらしで遊ぶかのように、手を上下させて、動かす。
「ひゃめぇっ!!しっぽ、そんなに、いじられちゃっ……!!あたま、おかしく、なっちゃ……!!」
手の動きに合わせて、お姉さんも叫ぶ。
表情を見なくても悦んでくれているのはよくわかった。
さっきと違って、直接性器に触れているわけでもないのに、お姉さんの股からはとろとろと愛液がこぼれていて。
……嬉しかった。僕が勝手に自分の欲望を満たしているだけなのに、それに付き合ってくれるのも、それで快楽を感じてくれるのも。
尻尾をいじる手が、なおのこと速さを増す。
「やっ……!!ぁっ、にゃぁっ……!!ふにぃ……!!」
それでも……そろそろ終わりに、しないとね……
僕は人虎さんに会うのなんて初めてだから、これで悦んでくれるのはわからない。
けれども、人虎さんならきっと、心配する必要はないと思った。
「くひぃん!!」
だから僕は、自分の欲望のままに尻尾の先端に触れる。
それだけで、お姉さんは身体をエビのように反らしてくれた。
だけど……これで、終わりじゃないよ。
尻尾の先端は、毛先だけあってひたすらに柔らかくて、それが擦れる感触はくすぐったさもあったけど気持ちが良い。
僕はその先端を鷲掴みにした。
手の中に尻尾が包まれて、手の感覚全てが尻尾の感触のみになったかのような錯覚さえ感じる。
僕はそれに、喜びを感じながら……思いっきり強く、それを引っ張った。
「ぁっ……!!来ちゃう、来ちゃ……!!ぁぁぁぁぁぁっ……!!」
ぷしゃっ。
人虎さんの女としての箇所が、弾けるように興奮の証を放つ。
それは地面を、足を、尻を、いたるところまで汚して、染めて。
僕はその背中から降りて、人虎さんの傍にそっと近寄る。
「ぁっ……はぁっ……」
手も足もだらんと投げ出して、それでも人虎さんは幸せそうに恍惚と笑っていた。
その顔を見ていると、僕もついにやけてしまう。
でも……この様子だと、本番は無理かもなぁ……
なんせ、人虎さんの許可を得たのを良いことに、好き勝手色んな所を触ってしまったのだ。
体力的にも、精神的にも疲れてるだろうし……
けれど、そんな僕の心配は、杞憂に終わった。
なんせ、僕の表情を見た途端に起き上がってきた人虎さんに、僕は再びマウントを取られてしまったのだから。
「はぁっ、はぁっ……」
興奮で言葉すら出てこないのか、息を荒げながら僕のズボンはその硬い爪であっという間に引き裂かれて、僕の欲望の塊が露わになる。
服の圧迫から解放されたそれは、青い空に向かって高々と伸びていて。
「ウ……ウルォォォォォォ!!」
それを見た瞬間に、お姉さんは吼えた。
ビリビリと、空気が震えそうになるぐらいに、恐ろしくも凛々しい虎の声で。
そして、僕がその叫びに圧倒されている間に……お姉さんは、腰を下ろしていた。
「ぁぁっ……!!」
僕の口から、情けない声が漏れ出る。
舌でも味わったその柔らかさは、僕をくわえ込んで離さない。
愛液をまぶせられ、潤滑に僕の愚息は膣に擦りつけられながら進んでいく。
進む度に、人の肌の柔らかさと温かさが僕を刺激する。
それは文字通り、叩き込まれたかのような快感だった。
「ガァァァァッ!!」
ぷちん、と進み続けた僕の愚息が、何かを千切った感覚がした。
それが何なのか、想像するのは難しくない。
お姉さん……僕に、初めてくれたんだ……!!
その事実がまた、僕にもたらすのは興奮。
僕は、いつ暴発してもおかしくない状態にまでなってしまっていた。
多分、もうちょっと刺激が加わったら、果ててしまいそうな気がする。
それでも、ずぶずぶと進んでいくのは止まらないし、止められない。
僕はこれで、人虎さんの体を、隅々まで堪能したつもりだった。
言いようのない多幸感に包まれて、これ以上となく満足していた。
だけど、僕はまだ触れていなかった場所があったことを、忘れていた。
男と愛し合った末に、女性が子供を作る場所。
膣の果てにある、その場所……子宮。
先端が、コツリとノックした。
「あ……あぁぁぁぁっ!!」
「グルァァァァ……!!」
そこまで味わって、僕に限界が訪れた。
体を触っている時でさえずっと溜め込み続けた精が、僕の中にある欲が、全てお姉さんの子宮へと向けて発射される。
虎の鳴き声をあげながら、お姉さんはそれを嬉しそうに受け止めていた。
びゅるるるる……
溢れだし続けるそれを放っている時間は、どの位だったのだろう。
けれど、お姉さんとの愛を確かめあうその時間は、僕にとってはとても長くて、長くて。
「は、はぁっ……これが、人間の精……とても、美味だったぞ……♪」
どうやら、精を受けたおかげで理性が戻ってきたらしく、ようやく放出が終わった後で、先に口を開いたのはお姉さんだった。
それは、気高き武人としての顔ではなく、僕に向けて愛を注いでくれる一人の女の笑顔。
人虎のお姉さんにそんな物を見せられたら……むくむくと欲望がまた立ち上がってくるのも、しょうがないと思う。
「んんっ……♪なんだ、もう一回か……？ちょうど、いい……私も……んんっ……一回では、物足りないと……思っていたところだ……♪」
再び腰を動かそうとする、お姉さん。
僕としても、それに賛成だったけど……その顔を見ていると、忘れていたことをもう一個だけ思い出した。
「……お姉さん。その前に、ちょっといいかな」
「ん？どうした？また行為の前に何かしようとでも……」
疑問を浮かべながらも、素直に待ってくれるお姉さんはやっぱり優しい。
まぁ……正解、なんだけどね。
上半身を起こして、お姉さんの顔の前に僕の顔を近づけて。
僕は、お姉さんの頭をそっと撫でた。
「ぅん……」
快楽とはまた違った心地よさに、お姉さんは目を細める。
一房だけが黒い黄色の髪は、とてもさらさらとしている。
僕の髪……いや、人間の髪とは、大違いの滑らかさだ。
それに触れるのは、とても心地がよかった。
だけど……僕の狙いは、そこじゃない。
「ぃう……!!」
その頭から生えている、一対の虎の耳。
それを、頭に沿って後ろから撫でる。
あ……ここはやっぱり、猫みたいだな……
耳の中に生えてる毛も、三角の形をした耳の骨の硬さも、飼い猫にそっくりだ。
撫でられると、驚きながらも嬉しそうにするところも含めて、全部が。
「……こら」
「あいたっ!?」
そうやってまた、耳の感触を味わおうとすると、今度はチョップが頭に叩き込まれた。
「やっぱり、私の言うとおりじゃないか……私達が今も繋がっているの、忘れていないかお前？」
「いや、忘れてはないんですけど……こればっかりは、性分ですので」
実際、人虎さんの中でさっき出したばかりの愚息は、もう既に全快状態になっている。
とはいっても、この興奮の半分ぐらいは、耳に触ったことが原因のような気はするけど……
「はぁ、全く……これから何度でも、触る機会ならあるだろうに……」
そんなことを考えていたからか、溜息をつきながら告げられた人虎さんのその発言を、思わず聞き流してしまいそうになった。
「え……ど、どういう事ですか……？」
「ん？だから、私達は番となるのだから何も今でなくともいいだろう、という話だが……」
「つ、番……」
改めて口にされると、ドキッとする。
そりゃあ、ここまでしておいて僕の事なんて何とも思ってなかったなんて、そんな事を言われたら身が張り裂けそうな思いになるだろうけど……こんな綺麗なお姉さんと、いきなり結婚できるなんて……
「さぁ……もう、いいだろう？続きを、始めようじゃないか……♪」
「ぁっ……うあぁぁっ……!!」
「グルァァァァァッ……!!」
でも、僕の気持ちの整理なんて待ってくれる程、発情期のお姉さんは我慢なんかできなかったみたいだ。
破けた服はどうしよう、とか両親になんて説明しよう、とかこれからの問題は山ほどある。
けど……僕だって、お姉さんの体を味わい足りないから、いいか。
そんな風に、快楽に流された頭で結論づけて、今度は自分から腰を打ち付ける。
そうして僕もまた、一匹の獣になってお姉さんとの交尾を続けるのだった。
でも今、実際に僕の足は地面に縫い着いたかのように動かない。
それ程までに、目の前の景色は、到底信じられない目を疑うようなものだったのだから。
「んっ……く、ふっ……はぁっ……」
吐息に合わせて、くちゃりと湿った水音。
まるで僕に服従するかのように高々と突き出された尻。
赤らんだ顔と、ふさふさとした獣毛の生えた腕、足。
まさか、人虎のお姉さんが、森の中で裸になって一人自慰にふけってるところに出くわす……なんて。
偶々森に散歩にでかけただけで、まさかこんなものを見ることになるなんて思ってもなかった。
これが発情期というやつ……なのだろうか。
「はぁっ……はぁっ……む？」
しかし、いくら発情期といえども、武人である彼女達を相手にずっと立ちつくしたままだったというのはまずかったらしい。
しまった、と思った時には既に、ずっと地面に向けられていた彼女の視線が、僕の視線と交差していた。
「……人間だぁぁぁぁぁぁっ!!」
驚いた顔をしたのも一瞬。
恐ろしい形相で飛びかかってきて、僕は為す術もなく地面に押し倒されてしまった。
「はぁっ、はぁっ!!この際、何故人間がいるのかなどとはどうでもいい!!くれ!!私に、濃い精液をいっぱいぶちまけてくれぇ!!」
息を上がらせながら、淫らな言葉遣いで僕を求めてくる人虎のお姉さん。
正直言ってしまえば……とても、嬉しい。
発情期だろうがなんだろうが、女性に言い寄られて喜ばない、ましては受け入れない男などいるものか。
「ま、待って!!待ってください、お姉さん!!」
だけど、そのまま受け入れてしまいたくはない、という気持ちが僕の中にはあった。
当然、そんなものを聞いて納得してくれる程、発情期の人虎というものが甘い訳はない。
「いやだ!!ようやく、ようやく男が捕まえられたんだ!!もう逃がさん!!私と交尾するまで、絶対に離さないからな!!」
「そ、そうじゃないです!!僕もあなたとエッチがしたくない訳じゃないですし、むしろ大歓迎なぐらいです!!でも、ちょっと待ってください!!」
「……む？じゃあ、何だ？」
勢いに任せて恥ずかしいことも言ってしまった気がするが、お姉さんもそこまで言えばようやく話を聞くぐらいには落ち着いてくれたらしい。
最も、顔が真っ赤になっているのがまだ収まってないから、別に性欲が消えた訳じゃなさそうだけど。
「で、ですけど、あなたのお願いを聞く代わりに、僕のお願いも聞いて欲しいんです。それぐらいなら……いいですよね？」
「……なるほど。まぁ、私も交尾してくれるなら、文句は言わん。それで、何が望みなんだ？」
二つ返事で了承してくれた人虎さんに、内心でガッツポーズをする。
そして、僕は一つコホンと咳払いをして心を落ち着かせると、ずっと心の中に秘めていた夢を暴露した。
「あなたの全身に……触らせて欲しいんです!!」
あぁ……ついに言ってしまったな……
何を隠そう、僕は近所に住んでる稲荷さんとかワーウルフさんとか、そういったものしか愛せない、俗に言えば重度のケモナーだった。
我が家で飼ってる猫がいつかネコマタになったら思う存分堪能しようかと思ったけど……目の前に、猫以上かと思うぐらいの毛並みの生き物がいるのだ。
それに触らずして、何がケモナーか。
「ふ、ふむぅ……？つまり、前戯をしたいのか？そういう事なら……ほら」
僕の性癖までは流石に分からなかったみたいだけど、人虎さんは特に何の疑問も持たずに地面に寝そべって、手と足も投げ出した状態で仰向けになって、動物で言う服従のポーズみたいな格好になった。
起き上がって、その姿を見下ろしてみる。
しかし……改めてみると、本当に綺麗な人だよなぁ……
普段は凛々しい表情をしているのだろう顔は、今は早く行為をしてくれ、とせがむように期待に満ちた目で僕を見ている。
腕は外側が黄色と黒の縞模様で、内側は真っ白になっていた。
足の方も、模様は一緒だ。
そして、手にも足にもついているのが、長く尖った爪と、桃色をした肉球。
……これを、自由に触っていいんだよな？
ごくり、と喉がなる。
そして僕は、恐らく彼女の期待とは全く違う場所、肉球に視線を集中させて身体を寄せ……人差し指で、つんと触れた。
「ぁっ……!!」
……すごい。触ってみると、本当に肉球独特の感触がする。
柔らかいようでいて、形を全く崩さない固さを持つ、猫科独特のそれ。
それがそのまま、人間大の大きさになっているのには、ある種の感動さえ覚えた。
小さい頃は、家の猫の肉球を触ってはこれがもっと大きかったらいいのに、なんて思ってたっけ……
人差し指だけでは物足りず、今度は親指を使って触れてみる。
ぷに、ぷに。
……面白い。
弾むような感覚に夢中になって、何度も指を押しては引いてを繰り返していた。
「やっ……あぅぅ……何で、そんなとこばっか、狙うんだ……」
そんな事をしていると、人虎さんの悲しそうな声が耳に届く。
おっとっと、危ない。肉球の感触は楽しいけど、もっと他にも触りたいところがあるんだ……
それを思い出して、肉球に触れながら空いたもう片方の腕で、人虎さんの手に触れる。
うわぁ……本当に、ふかふかしてる……
目にした時点で理解はしていたけれど、触ってみる感触はまるで別物だ。
感慨深いものを感じながらも、その手をそっと腕の付け根側にまで動かそうとする。
さわぁっ……
それは、何の障害もなくあっさりと触っている手を下に滑らせていった。
ふさふさとした虎の毛に撫でられる、こそばゆさにも似た心地の良い感触までオプションにつけて。
「……っ……!!く、くすぐったいぞ……!!」
どうやら、くすぐったさを感じるのは向こうも同じだったらしい。
けれど、毎日毛並みの手入れをしている我が家の飼い猫よりも数倍滑らかなその感触は、一回味わうだけではちっとも足りなかった。
二回、三回、四回、五回……
虎の毛の間を自分の手がすり抜ける感触が、たまらなく心地良い。
勿論、その逆の手で肉球をいじるのも忘れてはいない。
気が向いたら、肉球と腕をいじる手を入れ替えて、また味わって。
今度は……ここも、触ってみよう。
腕に触れている手を、下側ではなく今度は上側……つまり、人虎さんの手に向かって進ませる。勿論、手に触れたいだけではない。僕が触れたいのはその先……爪だ。
指の上に指を這わせて、手の平全体で触れるのとはまた違う、先っぽに毛が集まる感覚を楽しみつつ、黒光りしたそれに触れた。
……硬い。
爪だから、当たり前だ。
だけど、その硬さは人間のそれとは違う。がっしりとして、鋭くて、その気になれば人間さえ容易く引き裂いてしまえそうな、そんな硬質感。
まぁ、人虎さんがそんな事をしないっていうのは、わかってるつもりだけど。
「なぁ……まだなのか？もう、これだけ触れば満足したんじゃないのか……？」
腕だけを触られてる状況が我慢できないのか、懇願するように人虎さんが聞いてきた。
僕としてはすごく興奮するシチュエーションなんだけど、やっぱり腕だけを触られるのは人虎さんとしては足りないんだろうな。
「スイマセン……だけどまだ、触りたい場所が僕には沢山あるんです!!」
だけど、僕としてもそこを譲る気はない。
例えばそう……この、足とか。
腕から足の方に向くように身体の向きを変えて、今度はそこに触れる。
うわぁ……ここも、すごい……
足なんて、腕に比べれば遥かに汚れやすいって言うのに、腕の毛を触った時とまるで変わらない手触りがする。
しかし、発達した筋肉のおかげか獣毛の奥はがっしりとした硬さがあって、毛並みの柔らかさとはまた対照的な感覚だ。
今度は手を滑らせるのではなく、手の平を使って軽く足を握ってみる。
硬さと柔らかさ、二つの物に同時に触れるというのは……性的な刺激なんて僕は一切受けてないのに、背筋がゾクゾクとした。
ここが、腕とこんなに違うなら……じゃあ、ここは……？
手を持っていくのは、足の裏側、肉球。
「ふぁっ……はん……!!」
お姉さんは肉球が弱いのだろうか。
腕の時もそうだったけど、他の場所に触れた時はあまり言葉を口にしなかったのに、肉球に触れた時だけは艶めいた声をあげる。
でも……今の僕には、そんな事は関係がなかった。
だって……だって……!!
足の肉球は、いつも地面に触れているからだろう。
勿論、柔らかいことは柔らかい。ぷにぷにとした感覚はそのまんま残っている。
だけど……そこには、主を支えようとする、しっかりとした硬さがあって……
指を受け入れようとする手の肉球とは違って、指をはじき返そうとするのが、足の肉球。
柔らかいのに、硬い。そんな矛盾にも似た性質が、クセになってしまう。
ぷにぷに、ぷにぷに。
片手なんて悠長な事を言わず、両手でとにかくその肉球を味わった。
「う……う、むぅ……!!」
お姉さんの口から漏れてる声も、僕をより助長させるスパイスになる。
しかし、一方でずっと肝心の行為を放置して僕一人が楽しんでいる状況が、少しだけ不安になったのも事実だった。
肉球をいじる手の動きを早める一方で、視線は下に……足首を沿って、人と獣の境へ。
『あそこ』がどうなっているのか、確かめたくなった。
お姉さんの、女としての部分。
やはりそこは、先程のひとりエッチの影響で、周りの虎の毛まで及ぶ勢いでしっとりと湿っていた。
ただ、予想と違ったのは……そこが今も、愛液を垂れ流しにしているということ。
「は、はぁっ……なぁ、わかるだろ……？私も、限界なんだ……だから、焦らさないで……早く……」
本当に限界なのは、声が途切れ途切れになっていることからもわかる。
それにしても、お姉さんの位置からじゃ足に身体を向けているせいで背を向けている僕の顔は見えないはずなのに……視線だけで、快楽になっちゃうのかな。
でも、僕は視線を外すことなんてできない。
初めて見る、女性の証……今までずっと、人ではないところのみに触れてきていたのに、そこだけは人間のような綺麗な玉肌をしていて。
そこが今、僕に向かって開いている。
肉球よりも桃色に染まったそこは、まるで独立した生き物みたいに中でひくひくと動いて、その度に液を零す。
そこに、触れてみたいとは思ったけど……僕は、予想以上に興奮していたらしい。
肉球から離した手を、そのまま持っていくのではなく……その桃色の花びらに、そっと顔を近づけて、口を付けた。
「ひぅ……!!」
僕の唇が触れた途端、お姉さんの身体が大きく震える。
でも、僕はそれだけで止めたりなんかしない。
唇の隙間から舌を伸ばして、三点でお姉さんの大事な場所に触れる。
舌から伝わる感覚は、柔らかと温かさ。
それも、獣毛のそれとは違う、人間味を帯びたもの。
湿ったそこに触れた舌を、さっき手でやったように滑らせる。
「んぁっ……!!そんな、いきなりっ……!!」
愛液が舌にすくわれて、代わりにまぶされるのは僕の唾液。
それはまるで、僕の唾液で塗りつぶそうとしているかのようで。
僕がお姉さんを興奮させている、僕がお姉さんを自分のものにしているかのようで、それがまた僕の劣情をかき立てる。
ぴちゃり、ぴちゃりと、僕の舌がお姉さんと触れ合う度に、そんな音が耳に届く。
「んっ……んんっ……!!」
その時、僕の視界の外で、何かが揺れたような気がした。
ずっとお姉さんの秘所に向けていた目を、少し横にずらしてみる。
地面に寝そべるようにゆらり、ゆらりと揺れているもの。
黄色と黒の、縞々模様のそれ。
……尻尾。
それが目に入った瞬間、思わず僕はお姉さんから口を離して、それに見入ってしまっていた。
「お、おい……何だ……こんなところで、やめるな……もっと……もっとぉ……!!」
お姉さんが辛そうに言うのも無理はない。
多分、もうちょっとでお姉さんは達していたんだろうし……生殺しもいいところだ。
だけど……僕は、沸き上がる欲を抑えられなかった。
「お姉さん……うつ伏せに、なってください……」
「な、なんで……早く、早く……」
「これで、最後にします……僕だって……抑えきれないのは、一緒なんですから……」
ズボンはとっくにテントを張っていて、少し擦れる痛みさえ感じるくらいだ。
お姉さんは魔物だから、我慢汁が滲み出ているのだってわかるかもしれない。
それでも……僕は……!!
「わ、わかった……けど……早く、しろよ……？」
お姉さんは目元を潤ませながらも、僕の言うことを聞いてくれた。
大丈夫だよ……だってここは、お姉さんにとっても……
お姉さんの背中に乗っかって、僕はそれを見やる。
お姉さんがうつ伏せになった途端にピコピコと、僕を誘うようにして動く、それ。
長くしなやかで、お姉さんを表しているかのような……尻尾。
その付け根、獣と人の境目に見とれながら……僕はそこを、そっと撫でた。
「……きゃふん!?」
ピン!!と天を目指すかのように力強く、尻尾が張り詰める。
触れたまま、僕はその手を少しずつ尻尾の上へと持ち上げるようにして滑らせていく。
「くぁっ……!!あっ、駄目っ……!!」
毛並みの柔らかさは、今更語るまでもない。
手の間を、何の違和感もなくすり抜けて、僕を受け入れてくれる。
けど……今までと一番違うのは……
中に、しっかりとした硬さがあること。
足の筋肉の、がっしりとした硬さとはまた違う、芯のある安定した硬さ。
……尻尾の骨に、僕は今毛皮越しに触れているのだ。
その事実に気がついて、触れるだけでは物足りなくなる。
もっとちゃんと、その感触を味わいたくて……手の平の中に、抑えるように握った。
「あひゃぅぅぅ!!」
お姉さんが悦楽にまみれた声を上げるのも、地面に爪を立てるのも、今の僕には見えないし、聞こえない。
細い尻尾が握った手の中から伸びるのは、まるで巨大になった猫じゃらしを見ているかのようで。
それなのに、中の骨は硬くて、これが縦横無尽に動き回るのが信じられない程。
子供が猫じゃらしで遊ぶかのように、手を上下させて、動かす。
「ひゃめぇっ!!しっぽ、そんなに、いじられちゃっ……!!あたま、おかしく、なっちゃ……!!」
手の動きに合わせて、お姉さんも叫ぶ。
表情を見なくても悦んでくれているのはよくわかった。
さっきと違って、直接性器に触れているわけでもないのに、お姉さんの股からはとろとろと愛液がこぼれていて。
……嬉しかった。僕が勝手に自分の欲望を満たしているだけなのに、それに付き合ってくれるのも、それで快楽を感じてくれるのも。
尻尾をいじる手が、なおのこと速さを増す。
「やっ……!!ぁっ、にゃぁっ……!!ふにぃ……!!」
それでも……そろそろ終わりに、しないとね……
僕は人虎さんに会うのなんて初めてだから、これで悦んでくれるのはわからない。
けれども、人虎さんならきっと、心配する必要はないと思った。
「くひぃん!!」
だから僕は、自分の欲望のままに尻尾の先端に触れる。
それだけで、お姉さんは身体をエビのように反らしてくれた。
だけど……これで、終わりじゃないよ。
尻尾の先端は、毛先だけあってひたすらに柔らかくて、それが擦れる感触はくすぐったさもあったけど気持ちが良い。
僕はその先端を鷲掴みにした。
手の中に尻尾が包まれて、手の感覚全てが尻尾の感触のみになったかのような錯覚さえ感じる。
僕はそれに、喜びを感じながら……思いっきり強く、それを引っ張った。
「ぁっ……!!来ちゃう、来ちゃ……!!ぁぁぁぁぁぁっ……!!」
ぷしゃっ。
人虎さんの女としての箇所が、弾けるように興奮の証を放つ。
それは地面を、足を、尻を、いたるところまで汚して、染めて。
僕はその背中から降りて、人虎さんの傍にそっと近寄る。
「ぁっ……はぁっ……」
手も足もだらんと投げ出して、それでも人虎さんは幸せそうに恍惚と笑っていた。
その顔を見ていると、僕もついにやけてしまう。
でも……この様子だと、本番は無理かもなぁ……
なんせ、人虎さんの許可を得たのを良いことに、好き勝手色んな所を触ってしまったのだ。
体力的にも、精神的にも疲れてるだろうし……
けれど、そんな僕の心配は、杞憂に終わった。
なんせ、僕の表情を見た途端に起き上がってきた人虎さんに、僕は再びマウントを取られてしまったのだから。
「はぁっ、はぁっ……」
興奮で言葉すら出てこないのか、息を荒げながら僕のズボンはその硬い爪であっという間に引き裂かれて、僕の欲望の塊が露わになる。
服の圧迫から解放されたそれは、青い空に向かって高々と伸びていて。
「ウ……ウルォォォォォォ!!」
それを見た瞬間に、お姉さんは吼えた。
ビリビリと、空気が震えそうになるぐらいに、恐ろしくも凛々しい虎の声で。
そして、僕がその叫びに圧倒されている間に……お姉さんは、腰を下ろしていた。
「ぁぁっ……!!」
僕の口から、情けない声が漏れ出る。
舌でも味わったその柔らかさは、僕をくわえ込んで離さない。
愛液をまぶせられ、潤滑に僕の愚息は膣に擦りつけられながら進んでいく。
進む度に、人の肌の柔らかさと温かさが僕を刺激する。
それは文字通り、叩き込まれたかのような快感だった。
「ガァァァァッ!!」
ぷちん、と進み続けた僕の愚息が、何かを千切った感覚がした。
それが何なのか、想像するのは難しくない。
お姉さん……僕に、初めてくれたんだ……!!
その事実がまた、僕にもたらすのは興奮。
僕は、いつ暴発してもおかしくない状態にまでなってしまっていた。
多分、もうちょっと刺激が加わったら、果ててしまいそうな気がする。
それでも、ずぶずぶと進んでいくのは止まらないし、止められない。
僕はこれで、人虎さんの体を、隅々まで堪能したつもりだった。
言いようのない多幸感に包まれて、これ以上となく満足していた。
だけど、僕はまだ触れていなかった場所があったことを、忘れていた。
男と愛し合った末に、女性が子供を作る場所。
膣の果てにある、その場所……子宮。
先端が、コツリとノックした。
「あ……あぁぁぁぁっ!!」
「グルァァァァ……!!」
そこまで味わって、僕に限界が訪れた。
体を触っている時でさえずっと溜め込み続けた精が、僕の中にある欲が、全てお姉さんの子宮へと向けて発射される。
虎の鳴き声をあげながら、お姉さんはそれを嬉しそうに受け止めていた。
びゅるるるる……
溢れだし続けるそれを放っている時間は、どの位だったのだろう。
けれど、お姉さんとの愛を確かめあうその時間は、僕にとってはとても長くて、長くて。
「は、はぁっ……これが、人間の精……とても、美味だったぞ……♪」
どうやら、精を受けたおかげで理性が戻ってきたらしく、ようやく放出が終わった後で、先に口を開いたのはお姉さんだった。
それは、気高き武人としての顔ではなく、僕に向けて愛を注いでくれる一人の女の笑顔。
人虎のお姉さんにそんな物を見せられたら……むくむくと欲望がまた立ち上がってくるのも、しょうがないと思う。
「んんっ……♪なんだ、もう一回か……？ちょうど、いい……私も……んんっ……一回では、物足りないと……思っていたところだ……♪」
再び腰を動かそうとする、お姉さん。
僕としても、それに賛成だったけど……その顔を見ていると、忘れていたことをもう一個だけ思い出した。
「……お姉さん。その前に、ちょっといいかな」
「ん？どうした？また行為の前に何かしようとでも……」
疑問を浮かべながらも、素直に待ってくれるお姉さんはやっぱり優しい。
まぁ……正解、なんだけどね。
上半身を起こして、お姉さんの顔の前に僕の顔を近づけて。
僕は、お姉さんの頭をそっと撫でた。
「ぅん……」
快楽とはまた違った心地よさに、お姉さんは目を細める。
一房だけが黒い黄色の髪は、とてもさらさらとしている。
僕の髪……いや、人間の髪とは、大違いの滑らかさだ。
それに触れるのは、とても心地がよかった。
だけど……僕の狙いは、そこじゃない。
「ぃう……!!」
その頭から生えている、一対の虎の耳。
それを、頭に沿って後ろから撫でる。
あ……ここはやっぱり、猫みたいだな……
耳の中に生えてる毛も、三角の形をした耳の骨の硬さも、飼い猫にそっくりだ。
撫でられると、驚きながらも嬉しそうにするところも含めて、全部が。
「……こら」
「あいたっ!?」
そうやってまた、耳の感触を味わおうとすると、今度はチョップが頭に叩き込まれた。
「やっぱり、私の言うとおりじゃないか……私達が今も繋がっているの、忘れていないかお前？」
「いや、忘れてはないんですけど……こればっかりは、性分ですので」
実際、人虎さんの中でさっき出したばかりの愚息は、もう既に全快状態になっている。
とはいっても、この興奮の半分ぐらいは、耳に触ったことが原因のような気はするけど……
「はぁ、全く……これから何度でも、触る機会ならあるだろうに……」
そんなことを考えていたからか、溜息をつきながら告げられた人虎さんのその発言を、思わず聞き流してしまいそうになった。
「え……ど、どういう事ですか……？」
「ん？だから、私達は番となるのだから何も今でなくともいいだろう、という話だが……」
「つ、番……」
改めて口にされると、ドキッとする。
そりゃあ、ここまでしておいて僕の事なんて何とも思ってなかったなんて、そんな事を言われたら身が張り裂けそうな思いになるだろうけど……こんな綺麗なお姉さんと、いきなり結婚できるなんて……
「さぁ……もう、いいだろう？続きを、始めようじゃないか……♪」
「ぁっ……うあぁぁっ……!!」
「グルァァァァァッ……!!」
でも、僕の気持ちの整理なんて待ってくれる程、発情期のお姉さんは我慢なんかできなかったみたいだ。
破けた服はどうしよう、とか両親になんて説明しよう、とかこれからの問題は山ほどある。
けど……僕だって、お姉さんの体を味わい足りないから、いいか。
そんな風に、快楽に流された頭で結論づけて、今度は自分から腰を打ち付ける。
そうして僕もまた、一匹の獣になってお姉さんとの交尾を続けるのだった。
14/02/19 12:20更新 / たんがん