連載小説
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晩秋から初冬、回復と転生
晩秋から初冬に変わりつつある日の午前中、俺はまた依頼を受けた

和也「で、今回の人は?」

リリム『彼女よ』

車椅子に乗っている少女が来た、年は十歳行くかいかないかだろうか

和也「君に、何があった?」

少女『わた、しは、あたまの、なか、すこし、たべられ…』

和也「まさか…」

俺の脳裏には、ある病原体が浮かんだ

リリム『※原発性アメーバ性髄膜脳炎、と呼ばれる病よ。』

和也「良く生きてたな…」

※原発性アメーバ性髄膜脳炎とは、消毒の不十分なプールや湖、池などに生息する原生動物のネグレリア・フォーレリ、通称「脳食いアメーバ」による感染症で鼻から水のなかにいたネグレリア・フォーレリが脳に侵入の後そこで脳細胞を溶かし栄養として吸収、増殖する。感染こそまれなものの具体的な致死率は97%(アメリカ)の圧倒的致死率を誇る感染症である

リリム『あら?知ってたの?』

和也「…ああ、おかげで消毒のされてない水辺が今でも怖い」

少女『わたし、きせきの子、からだ、うごかなくなっても、いきられたから』

和也「まあ、そうだろうな…」

リリム『彼女を転生させてほしいのよ』

和也「魔物にして治るのかこれは」

リリム『母さんを、信じるわ…』

和也「魔物になることのメリット、デメリットを聞いたか?」

少女『うん…わたし、またはしったり、できる?』

和也「可能性はある」

少女『もう、いっかいだけ、きせきを…』

和也「なら、行こう…」

俺は祈るように言いながら屋敷に向かった

和也「治ったら、何がしたい?」

少女『おとうさんと、おかあさんのところに、ひとりであるいていきたい…』

和也「そうか…」

自分まで弱気になってはどうする!?と何度も心に刻みながら屋敷に着いた

楓『彼女は?』

和也「とりあえず、花に入れてから話す」

雫『訳あり?』

和也「ある意味な…」

そのまま彼女を中庭までつれていく

少女『おっきなお花…』

和也「この花に入った人間は、女なら魔物になる。どんな魔物になるかは君次第だ」

少女『うん…わたし、がんばる…』

和也「俺が…」

瑠璃『??』

和也「それもあとで話す。」

和也「君の名前は?」

少女『わたし、あすか。あしたのかけはしってかいてあすか。』

和也「明日架だな、了解」

そのままネームプレートに明日架とかき花の葉っぱのひとつに引っ掻けて彼女を抱え花の真ん中に降ろすと、花は閉じていく…











和也「さて、どこから話したら良いかね…」

楓『ならまず、彼女は何故車椅子に?怪我をしてはいないようでしたが?』

和也「ある感染症にかかって生き延びた奇跡の子だ」

雫『???』

和也「その感染症は、感染こそまれなものの致死率は9割オーバーだ」

瑠璃『そんな恐ろしい感染症が…?』

和也「だから奇跡の子と言っても差し支えないだろ?」

楓『はい…』

和也「で、ある調べものをしていたら俺もそれを見つけた、今でも消毒のされてない水辺が怖い…」

雫『なるほど…』

和也「その病原体は脳に侵入して、脳を溶かし、溶けた脳の成分を吸収して、増える」

瑠璃『え…』

和也「彼女はまだ命に関わるレベルまで食われてなかったから多少の言語障害と麻痺だけで済んだんだ、殆どは脳を食い荒らされてそのまま御陀仏だよ…」

楓『…なんとしても、助けてあげたいですね…!』

和也「ああ。」

聞いたところによると学校のイベントで感染したとのことなので彼女に落ち度はない、なんとしても彼女を普通に生活できるようにしてあげなければ…

雫『!』

彼女たちも納得したように頷く

そのまま彼女の入っている花を四人で手を繋ぎ囲む

和也「俺達の…」

瑠璃『私達の…』

楓『希望と…』

雫『力を…』

和也「受けとれ…!」

そのまま魔力を花に浸透させていく…

和也「よし…手応えあり!」

魔力が宿ったのを見てその日はそれで終わったが、普通なら1日たてば出てくるのに出てこない…

和也「失敗か…?」

それから次の日になっても、彼女は出てこない…

和也「…」

結局5日経ってやっと出てきたが、その姿に俺たちは愕然とするのだった

晩秋から初冬、回復と転生 おわり
19/11/22 23:47更新 / サボテン
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■作者メッセージ
どうも、サボテンです。

この話は、もし魔物がいたならこの感染症で死んでしまった海外の友人は助かったのではないか?という願いをこめて書かせていただきました

ご意見、ご感想、リクエストありましたらお待ちしております

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