連載小説
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はじめての町
町。入口には関所があって、そこから中に入るには身分証となるものを提示する必要がある。例えば行商人であれば商会の所属証明書や町での行動予定表、旅人であれば、居住する地方を治める領主から発行される身分証明書。そして、それらのものを持っていなければ、関所での身体検査及び犯罪暦調査を受け、通行税を払う。旅人や行商人は出発の際に旅行税を地元の役場で支払い、国が各関所で纏められた入関記録に基づき地方に再分配する。
つまり、身分証がある人間を優遇し、身分証があれば何度でもどこの町でも入り放題。経済のための優遇措置であるらしい。だからまず遠出をする人は身分証を作成する。これがこの国での基本基礎。
牢の中で、鎖に繋がれた状態で、そんな感じのことを治安監督官に説明を受けた。
通行税は一律大銅貨1枚。安い外食1食分程度だという。
そして、通行税の代金も、身分証も持たないとこのように捕まる。そして犯罪暦調査を受け、問題がなければ行動予定を提出し、1日間の社会奉仕活動に従事した後に晴れて通行が認められる。
そして、通行が認められ、滞在中の不法行為がなければ身分証代わりとなる通行履歴書が貰える。こちらは1度通過した町であれば、身分証がなくとも無料で身分証と同じように通ることが出来るが、訪れたことの無い街では時間のかかる犯罪暦調査が免状される代わりに通行税のみを支払う事で通行できるようになるというものだった。

「あなたの犯罪暦調査の結果はシロ。明日からは水路清掃の社会奉仕活動になるけど、報酬も一応小銀貨1枚出るから。ギルドか何かに登録して、身分証を持っておきなさい。それじゃあね」

優しい口調で監督官は看守に釈放を支持して退出した。
白銀の鎧をつけた女性だった。

「お前、運がいいよなぁ」
看守は錆び付いた手枷の鍵を外しながら呟く。
「え?」
「美人だろ、うちのボス」
「え、……そうですね」
「俺なんか面と向かって話したの、仕事中に酒飲んでて怒られた時くらいだからな」
ニカッ、と笑いながら男は足枷の解錠に移る。
「昨日は犯罪暦調査で身体検査もしただろ? 今は女王陛下のバカンスの時期だから監督官を白銀騎士が務めることになってんだよ。もちろん監督官副官も白銀騎士で、その2人に昨日はマッパにされたんだろ?羨ましいよなぁ!チクショウ!」
「それは……そうですけど……」
昨日会ったことを思い返す。僕にとっては嫌な思い出だ。
いきなり服を脱がされて、体の隅々まで触られた。
口の中に指を突っ込まれて、唇の裏に密輸品が無いか調査され、大事なところの皮も剥かれ、そして、ぬるぬるした液体のついた指で尻の穴の1番奥まで中指を突っ込まれた。
そして僕は、既に大事なところを触れられ、勃起したものから、どくどくと射精した。
壁に大の字になるよう固定され、監督官副官が僕の体に触れていた。僕が射精したとき、副官は僕の腰の正面にしゃがみこみ、お尻の穴に指を突っ込んでいた。
勃起したものは副官の顔にあたり、すべすべした肌の感覚をダイレクトに感じることが出来た。そして、グリグリと副官が指を奥にねじ込むと同時に、彼女の顔が白く汚れた。
副官はそれを拭うことなく、監督官に敬礼し「異常なし」と報告していた。その後検査用の拘束が解かれ、服を着た後に手枷と鉄球付きの足枷に拘束が変更された。
その間も副官は顔を拭うことはなく、ポタポタと唇の端から精液を垂らしながら、拘束の更新作業をしていた。
「ちゃんとチンポ剥き剥きしてアナルほじほじして貰えたか〜?あの2人にされたら最高だっただろうなぁ!」
ガハハ!と大声で笑う看守。実はあの不可解にも思える卑猥な行為はマニュアルで決まって居るらしい。
以前、包茎の盗賊が御神体として崇められている初代女王の遺髪を巻き付けて、皮で隠して密輸したことや、宝石類を肛門に詰めて密輸した事件があったらしい。
そして、なんとマニュアルでは肛門の中身が盗品かそれ以外のものか指先で分かるように素手で行うこと、と決まっているらしい。やばいだろこの国。
「まあ、明日から頑張りな!」
元気のいいオッサン看守はバシバシと僕の背中を叩きながら送り出してくれた。
「あとこれ、今日の飯代だ!やるよ!」
オッサンがポケットから取り出した小銭入れ。別れ際にオッサンはそれを投げて寄こした。
「いいんですか?」
「おうよ!俺もちぃせえ頃は戦争難民でなぁ!こうやって兵士にたすけてもらったモンよ!中に入ってる大銅貨は俺を助けてくれた人の数だけ入ってるからな!釣りは要らねえから稼げるようになったらその枚数に俺の分の1枚足して困ってるやつに渡してやれよ!」
僕は戦争難民でもなんでもないのだけど、彼らからしてみれば、身分証も金もなく関所を通ろうとする人間は、悪人か虐げられた善人か、その2つしかいないという認識なのだろう。
「ありがとうございます!」
オッサンはまたニカッと笑って手を振る。
「オレはドボルグって言うからな!また困ったら関所に来いよ!」
「わかりました!」
オッサンと別れてから、袋を開けて中を見る。
中に入っていたのは何故か大銅貨ではなく小銀貨が12枚。
大銅貨が5枚で小銀貨1枚の価値だから……
60人もの人にドボルグのオッサンは助けられて生きてきたのだろう。
60人の善意がドボルグのオッサンを生かし、僕はオッサンに生かされる。そんな善意のバケツリレー。この善意を受け取ったからには、僕は魔物から逃げるだけでいいのだろうか。
そんな疑念が鎌首をもたげてくる。
しかし、僕にできることは多くない。
だからこそ、僕は目の前のことをひとつひとつ片付けていく必要があるのだ。
まずは明日、社会奉仕活動。
やるべき事は、街の隅にある宿屋の井戸の清掃だ。
宿屋はこの国では一律で各町の首長と宿のオーナーが半々で運営の責任を負うものであり、公共事業としての役割もある。宿が安ければ町に人が集まり、行商人が増えて儲かるという算段らしい。
僕はドボルグのオッサンに借りた恩を返すためにも、しっかりと役目を果たすつもりだ。
21/08/18 04:15更新 / (処女廚)
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■作者メッセージ
白銀騎士エッロ!

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