読切小説
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幼馴染の男の子
 これは岡村里佳子の日記より、魔物化する直前の半月間を抜粋したものである。

 一部、判別不能な箇所も、そのまま掲載する。

5/21(金)曇り

 今日も朝の挨拶だけ。また来週まで持ち越し。私の意気地なし。

 シュウくんは、今日も優しく挨拶を返してくれたのに、どうして、そのあとに会話をつづけられないのか、自分のことながら情けない。

 外ではミステリーとかしか読まないけど、実は恋愛小説が大好きで、家でよく読んでいる。だけど、恋愛小説のヒロインのようには現実はいかない。リアルってつくづく、ハードモードだよね。

 シュウくんとは幼稚園の頃から家が隣同士の幼馴染。

 冴えない外見の私は小学校の時に軽いイジメにあっていた。仲の良かったと思っていた友達も離れていった。

 でも、シュウくんだけは変わらずに私に声をかけてくれた。嬉しかった。イジメに負けないって勇気をくれた。

 だから、いつまでもシュウくんに頼っていてはダメと思った。私はシュウくんに甘えないように、シュウくんに名前を呼ばないでってお願いした。

 シュウくんは何も言わずに言う通りにしてくれた。

 何も聞かないことでシュウくんに応援されている気がした。私が頑張れば解決できると信じてくれていると。

 イジメは解決した。

 でも、シュウくんにまた名前で呼んでって、言い出せなかった。

 私の勝手で呼ばないでって言って、イジメが解決したから元に戻してって、都合よすぎるから。

 私、美人じゃないし、かわいくもない。しかも、明るく元気でもないし、地味。とどめはシュウくんの幼馴染っていう負け属性なんだ。

 顔はそばかすがあるし、眼鏡しているけどコンタクトにするのは怖いし、オシャレがよくわかんないから髪も黒で染めてない。髪型も学校の校則指定の三つ編みおさげ。スタイルもよくないし。

 自分で言ってて自己嫌悪。シュウくんの彼女になりたいけど、優しくてかっこいい彼の隣に並ぶ自信がない。だから、せめて、友達にぐらい戻りたい。

 あーあ、自信が欲しい。



5/22(土)晴れ

 今日は土曜日だからシュウくんは学校は休み。一人で登校するのは寂しい。特進コースの補講なんて申し込まなきゃよかった。どうせ、大した授業じゃないし。

 でも、無理言ってランクを下げさせてもらって、この学校にさせてもらったから、パパやママに安心してもらうために受講しておかないといけない。だけど、二学期になったら、予備校の方がレベルが高いって補講を受けないようにお願いしてみよう。

 私も成績平凡だったら、普通科を受験したのに。勉強なんてするんじゃなかった。

 学校を帰ってきたら、パパが珍しいお土産を貰ってきたみたい。

 今話題の魔界産の果物で『虜の果実』っていうものらしい。

 魔界は今、すごく話題だ。特に男子の間で。

 何しろ、魔物娘っていうか、サキュバスさんたちはびっくりするぐらい美人ばかり。

 芸能界の美人女優とか、美少女アイドルとか、霞んで普通に見えるレベル。女として、完全に勝てないって思っちゃう。

 あー、あんなのがこっちの世界に来ないでほしい。

 ただでさえ、私みたいね根暗な喪女なんて、普通の女子にも勝ち目ないのに。

 シュウくんはまだフリーだけど、あんな優しくてかっこいい男の子、発見されたら、あっという間に餌食になっちゃう。

 そのためにも、来週は頑張らなくちゃ。

 それにしても、この『虜の果実』、すごくおいしい。

 形はかわいいハート型で、皮が透けるように薄くてピンク色。中の果肉は白くて、桃よりもジューシーで、甘くて、蕩けそう。今まで食べたどのスイーツより、この果物の方が上って言い切れる。

 なんでも、美容効果があるっていうことらしいから、ママとお姉ちゃんもパクパク食べてる。もちろん、私も。少しでも効果があれば、自信がつくかも。



5/23(日)曇りのち晴れ

 信じられないかもしれないけど、『虜の果実』の美容効果はすごい。

 ママもお姉ちゃんも私も、肌がつやつや!

 ママはパパに追加注文するようにお願いしている。もちろん、私たち娘コンビもおねだりした。

 なんとか、パパのおかげで定期的に購入できるようになった。持つべきものは権力だね。

 ほんと、どうしよう? 綺麗になっちゃった。

 明日、ちょっと勇気出してみようかな?

 これは神様のくれたチャンスに違いない。

 ありがとう! 神様。私、頑張ります。



5/24(月)曇り

 ついに、会話した!

 何年振り? 四年ぶりぐらい?

 話したのは「もうすぐ衣替え」「もうすぐ梅雨」

 ……季節の挨拶みたいだけど、人類には小さな一歩でも私には大きな飛躍です。

 しかも、それだけじゃない。

 並んだの。並んで歩いたの!

 すごくない? 私、すごくない?

 もう、心臓、ばくばく言ってた。

 あ、今日も『虜の果実』食べました。おいしかったー。

 髪の艶も出てきて、何、この果実? 化粧品もエステもいらなくなっちゃうよ?

 サキュバスさんたちはこんなのを食べているから、あんなに綺麗なんだ。

 だったら、私も食べ続ければ、あんなふうになれる?

 きゃー! そんなことになったら、シュウくんに告白しちゃう!



5/25(火)晴れ

 今日も会話して、隣に並んで歩いた。

 二日連続の快挙!

 中間テストの結果を聞いたけど、まあまあだったみたい。

 悪かったら、「しょうがないわねー。私が勉強教えてあげる」って言うつもりだったのに。世の中甘くないよね。勉強がまあまあできるシュウくんだもんね。どんな時も大崩れしないのは、本当にすごいと思う。

 今日も『虜の果実』食べました。

 そしたら、なんと!

 そばかすが消えた。

 果実食べて、薄くなっていたんだけど、今日見たら消えてた。

 私のコンプレックスの一つだったそばかすが消えてくれた。

 魔界の食べ物すごすぎ!



5/26(水)曇りのち雨

 そばかすが消えたから、ちょっと大胆になった。

 暑いねっていって、襟首を指で開けて、扇いでみたの。

 大胆! 我ながら思い切ったわ!

 で、それで失敗……

 シュウくんに心配させちゃった。熱があるんじゃない? 風邪じゃないかって。

 シュウくんの優しさを知ってるくせに、私のバカ。

 そばかす消えて浮かれている私に「無理しないでね」って、優しすぎるでしょう! 惚れてまうやろが!

 ああ、こんなシュウくんをみんなに紹介したい! でも、絶対モテモテになって、私の手の届かないところに行っちゃうのはイヤ!

 今日の『虜の果実』の効果は、昔の古傷が消えちゃった。

 イジメられた時に怪我した膝小僧の傷。じっと見ないとわからないぐらいにはしてもらったんだけど、気になって、短いスカートとか穿けなかった。

 それがきれいに消えていた。ママとお姉ちゃんにも確認してもらったけど、わからないって。

 三人で泣いちゃった。お姉ちゃんと、今度の日曜に買い物行くことにした。おしゃれな服買いに行こうって。パパ、ごめんね。蚊帳の外で。



5/27(木)曇り

 昨日心配してくれたことをシュウくんにお礼を言った。

 昨日の晩に、怪我か消えて、お姉ちゃんと泣いて、嬉しいことを嬉しいっていうのが大事って思ったから、素直に言えた。もう、目がうるっとなって、はずかしかった。

 でも、シュウくんは私の想像を超えてくる。

「僕なら、いつでも、相談に乗るから」

 もう、こんなこと言われたら、かっこよすぎてラブしかないじゃない!

 シュウくん、女子に気軽すぎ!

 で、食いつきすぎて引かれちゃった。

 ほんと、何やってんだか。だから、喪女なんだよ。

 謝ったら、逆に謝られて、謝りラリーが延々と続いた。ほんと、何やってんだ?

 それと、こっそり勇気出して、少し並んで歩く時に近づいて並んだ。手が触れるかと思って、心臓がやばかった。

 今日の『虜の果実』の効果は、いい匂いがするようになった。

 本当にこれ一つで何でもあり? 確かに、食べ物の匂いは体臭に影響するけど、虜の果実の香りがするようになった。

 ママもお姉ちゃんも同じだった。

 香水もいらないね。

 どるちぇあ〇どがっぱーなの香水のせいにできないよ。



5/28(金)晴れ

 今日はやられた。

 シュウくん、かわいすぎ! 反則!

 今日、シュウくんが私に笑顔を向けてくれました。四年ぶりと思う。

 私、シュウくんの彼女になれなくても、幼馴染でよかったと思う。シュウくんにはきっと、私なんかより似合いの女の子がいるはず。私はそれを応援しようと思う。

 でも、笑顔の破壊力がすごすぎて、赤面隠すのにバスまで走っちゃった。

 今日も手が触れそうなほど接近したし、幼馴染の友達に戻る日も近いかも。

 今日の『虜の果実』の効果は、信じられないことにスタイルがよくなった。

 もう、何でもあり? 美容業界がこの果実で崩壊決定だよね。

 ママとお姉ちゃんも別人ぐらいに綺麗になってる。二人に言わせれば、私もだって。

 もう、勘違いするようなこと言わないで。



5/29(土)雨

 今日はシュウくんはいない。雨も降ってて、学校行きたくないけど、しょうがない。

 特に書くことがないから、晩御飯のことを書く。お刺身と大根の千切り、ジャガイモのおつゆでした。

 今日の『虜の果実』の効果は、昨日と同じでスタイルがよくなっている。

 明日の買い物でブラの買わなきゃ。

 あ、あと……ああ、日記だけど恥ずかしい!

 感度が上がってる気がする。

 きゃー! もう、何言ってるの?って感じ。

 久しぶりに触ってみたんだけど、いつもより気持ちよかった。

 これも肌がすべすべしてきた効果?

 まあ、気持ちいいのは嬉しいから、シュウくんで妄想して……

 ここからは、乙女の極秘事項です。



5/30(日)曇り

 今日はお姉ちゃんと買い物。

 スタイルがよくなっているのを見越して、ちょっと上のブラにした。

 シュウくんが好きそうな清楚系。見せる機会はないだろうけど、万が一に備えるのが乙女って、お姉ちゃんに教えてもらった。

 服もコーディネートしてもらって、眼鏡はコンタクトに挑戦したらって、眼鏡屋さんにもつれていかれた。

 お姉ちゃん、大張り切りだった。

 びっくりしたことに、ナンパされた。まあ、お姉ちゃんはもともと美人だし、果実効果で芸能人並みになってるから当然。昔も二人で出かけているときにナンパされるのはよくあったけど、お姉ちゃんだけ連れて行こうとするのがパターンなのに、私まで誘われた。

 お姉ちゃんは「ね? だから、自信もって大丈夫って言ったでしょう?」とか言ってくれた。嬉しかった。また、勇気出せそう。

 ちなみに、ナンパはきっぱり断りました。

 だって、シュウくん以外はノーサンキューだもん。

 今日もシュウくんでしちゃった……

 私、溜まってるのかな? 最近、なんだかエッチになってる気がする。シュウくんと話せるようになったからかな?



5/31(月)晴れ

 今日、持っていく本はシュウくんの趣味のファンタジーライトノベルにした。

 シュウくんが買っているのを見て、私も同じのを買ったやつ。

 主人公がシュウくんに似て、優しくてかっこいいので、私もお気に入り。でも、この話でも幼馴染のヒロインは振られてしまうから、それは嫌い。

 あーあ、この選ばれたヒロインみたいにされてみたい。ほんと、幼馴染って損。

 今日の私は、日曜日のお買い物で自信がついたからか、すごく積極的になれた。

 いつもは小さく背中を丸めていたのに、今日は胸を張っていられる。

 それで、今日は気になっていたシュウくんの交友関係を訊いてみた。

 加藤君と佐藤君というお友達がいるみたい。名前だけだとわからなかったから、女子かもと不安になって訊いたら――きゃー! もう、私の心臓を止める気?

「僕が女子と仲良くなるなんて、岡村さん以外では絶対ないよ」

 だって! だって! だってばよ!

 ああ、ここで心停止して死ねたら、どんだけ幸せか……。青空に笑顔を浮かべる自信あったのに。

 でも、現実は鼻血が出そうで、顔を背けちゃった。今でも、鼻血出そう。

 中学からずっと、シュウくんとの朝の会話を隠し撮り続けている三代目ICレコーダー壊れそうなぐらい再生しちゃってる。

 今日のは永久保存版にして、バックアップを百個ぐらい作っておかなくちゃ。

 それはそれとして、今日はそれだけじゃないの。もう、私、どれだけ頑張るのよ?

 なんと、今日、シュウくんに触れました!

 ああ、私、一生、この手を洗わない。

 今まではバスの中では、シュウくんが近すぎて、匂いとか嗅ぎたくてしょうがなくなるから、少し離れていたけど、今日は勇気出して、バスでも隣に並んだの。

 シュウくんはそんな私を嫌がりもせず、隣に立たせてくれた。優しい。大好き。

 持って行った本を開いたら、ヒロインが出ていくのを主人公が止めるシーン。ちょっと感動的なところ。それで、ちょっと力が入っちゃったみたいで、シュウくんの手の甲に私の手が触れちゃったの!

 思い出しただけで、キュンキュンしちゃう! ああ、また、ショーツ着替えなきゃ。もう、いっそ履かないほうがいいかも。どうせ、あとでするし。

 それで嫌がるかなって思ったけど、シュウくんは気づかないふりをしてくれた。もう、どんだけ優しいの?

 シュウくんのたくましい手に触れちゃった。そのあとも、わざと気づいてないふりして触れちゃった。

 今日のおかずはこれで決定!

 虜の果実を食べるようになってから、身体がすごく敏感になって、すごく気持ちいいから、我慢できなくなっちゃった。もう、エッチでも何でもいい。気持ちいいのを我慢するのは体に良くない。

 あっ! シュウくんの手が触れた、私の手で私のを触れるって、これって、間接愛撫ぅあsdfghjklくぇrちゅいおpzxcvbんm
(注:何かの液体により文字が滲んで判別不能)


6/1(火)晴れ

 今日から衣替え。薄着になって、シュウくんに女子力をアピールするチャンス!

 シュウくんに(間接)愛撫された私に怖いものはない!

 いえ、ごめんなさい。シュウくんに嫌われるのコワイです。そうなったら、リアルに死にます。

 それはそうと、パパとママも昨日から寝室にこもりっきりで、私の妹を作ってるみたい。お姉ちゃんも好きな人を誘惑しに行くって張り切ってた。

 ママもお姉ちゃんも虜の果実ですごくエロい美人になっちゃったから、好きな人を誘惑し放題だよね。うらやましい。

 でも、私だって虜の果実を毎日食べているんだから。魅力的になってきているって、言われたし、このままいけば、シュウくんを誘惑することも夢じゃない。ワンチャンある。

 ママやお姉ちゃんに負けない。私もシュウくんと一緒に、一つになるんだ。

 朝の挨拶の時に、くるって回ってみた。ふわって、スカートが上がって、見えそうだったけど、シュウくんになら見てほしい。むしろ、見て。ああ、スカートたくし上げたかったの我慢するの、すごく大変。

 シュウくんはそんな私に顔を真っ赤にして、かわいいかった。かっこよくて、優しくて、たくましくて、賢くて、この上、かわいいだと? けしからん! 私の婿になれ!

 もう、私も興奮で赤面しちゃった。下のお口なんて、よだれ垂らしちゃったよ。

 それで、今日も同じ本。昨日のラッキースケベが忘れられなくてじゃなくて、したまま寝ちゃったから、本を入れ替える暇がなかったの。女の子は回数制限がないからエンドレスなのよね。

 で、今日もシュウくんの隣。ここは私の指定席です。今決めました。愛は憲法よりも強いのです。

 本を開くと、ヒロインをかばって主人公が怪我をするシーン。もう、これは昨日の再現をしろという神の啓示?

 肌のしっとり感は虜の果実を食べれば食べるほど上がっている気がするし、もう、学校一の美肌は私と言い切れるぐらい。私の手の甲でもシュウくんがちょっとでも気持ちよくなってくれるといいな?

 それで、今日一番の成果!

 なんと、シュウくんが、あのシュウくんが、私のオッパイをガン見してくれました!

 きゃー! もう、エッチ! 触っていいんですよ? むしろ揉んで。いじって。吸って!

 私のオッパイは虜の果実のおかげで成長中。日曜日に、「これは大きすぎでしょう」って思いながらも買ったやつが今日はぴったり。ああ、成長期って素晴らしい! それも形も感度もばっちり! 乳首の色も桜色で、清潔感あるエッチになったし、いつ見せても大丈夫!

 私、虜の果実なしには生きていけないかもしれない。



6/2(水)曇りのち晴れ

 今日はシュウくんが「いつもと感じが違うね?」って聞かれちゃった。

 え? それって、私のことが気になるってことでOK? つまり、嫁にしたいって、プロポーズ? 大丈夫! 今のシュウくんは収入ないから、給料三か月分は0円、ハンバーガー屋さんのスマイルと同じ値段でプライスレス。ジュースのプルトップでも条件成立よ!

 興奮しすぎちゃったけど、今日はリサーチする日。

 私、気づいたの。待っているだけじゃ、シュウくんは私のものにならない。あの小説の幼馴染ヒロインは主人公を待っていた。選ばれたヒロインは行動した。主人公に迷惑かけても何しても。主人公の目に留まらないと、気に止まらないと、選んでもらえない。幼馴染は負け属性じゃない。幼馴染に胡坐をかいているのが負け属性なんだって。

 だから、私はシュウくんの好みをリサーチすることにした。

 まずは、眼鏡から。

 日曜日にお姉ちゃんとコンタクトを買ったけど、考えてみれば、シュウくんがメガネスキー粒子で出来ている可能性もある。もし、そうだった場合、私が眼鏡をはずせば、私はシュウくんお嫁さん争奪杯戦争のエントリーもできない。

 定番の「友達の話」にしたので、隠ぺいは完璧……だったけど、導入が唐突過ぎて、不審がられちゃった。慌てて、フォローしたけど、ちょっと苦しい。

 でも、友達の話にしたせいで、一般論を話されちゃった。私が聞きたいのはシュウくんの性癖! もう、鈍感。そういうところも、好き!

 だから、女の武器を使っちゃった。小首をかしげて質問。

 まさか私がこの技を使えるようになるとは思わなかった。あんなかわいい仕草、前の私ならロボットみたいになっていたはず。

 でも、今は体が自然にかわいい仕草を、色っぽいしゃべり方を、そそる動きができる。私の女子力がスーパーサイヤ人している。スカウターが煙を吐いて壊れちゃうよ。言ってっみようかな? 私の女子力は53万です。あ、だめだ。それ負ける方だ。

 それはともかく、小首をかしげたおかげで、シュウくんがいろいろと話してくれた。

 眼鏡をはずした特別感。眼鏡をはずすと美少女。

 つまり、眼鏡をはずした姿を見せて特別感をだして、しかも美少女になればOKってことだよね!

 お姉ちゃんとママにお願いしてイメチェンした。

 髪は下ろして、栗色に染めて軽くして、ハーフアップにして、毛先は軽く巻いてくれた。前髪もちょっと整えて可愛くなった。眼鏡をコンタクトにして、鏡に映る自分は別人ぐらいにかわいかった。本当に誰?って感じ。アイドルとか勝っちゃってるかも。

 シュウくんみたいな童貞っぽい子を狙うなら、お化粧は逆にするとダメらしい。するなら軽くナチュラルに。

 でも、私たちは虜の果実で素が良くなりすぎて、普通の化粧品だと化粧が負けるんだって。おそるべし、虜の果実。

 実を言うと、イメチェンをお願いするのは、本当は気が引けた。

 だって、ママはパパと、お姉ちゃんは憧れの人と愛し合っているところだったから。けど、二人とも「リカちゃんが幸せになるのに協力するなら、ダーリンたちも我慢してくれる」って、私をかわいく変身させてくれた。本当にありがとう。家族っていいよね。私もいつかシュウくんと……きゃー! 気が早いって、まだ赤ちゃんもできてないのに!

 えーと、ついでだけど、ママもお姉ちゃんもレッサーサキュバスっていう、サキュバス見習みたいな魔物娘になっちゃったみたい。

 頭に小さいけど角があって、腰のあたりからピンクの半透明の蝙蝠みたいな羽根が小さく生えて、お尻からも短い尻尾が生えているの。身体はレオタードみたいな感じで薄い体毛が生えてるけど、エッチするのに邪魔にならないんだって。

 二人とも、私と違って、もともと美人だったけど、芸能人も裸足で逃げだすぐらい美人になって、うらやましい。私も、シュウくんのお嫁さんになったら、なれるかな? レッサーサキュバスに。

 そのためにも、行動!

 私、頑張りましたよ。バスで、シュウくんの腕に掴まらせてもらいました!

 勇気を出すために、あの本を持って、シュウくんの腕に掴まって、ヒロインが告白しているシーンを開きました。

 もう、頭が沸騰して、湯気が出てるような気がした。もう、意識がなかった。好きがあふれ出して、止まらなかった。

 ああ、私の思いがテレパシーになって届けばいいのに。虜の果実で超能力に目覚めたりしないかな?

 シュウくんの腕、たくましかった。この腕に抱きしめられたら、きっと、私は蕩けてスライムになって、シュウくんを襲っちゃうと思う。ううん、今のままでも襲える。襲いたい。シュウくんのすべてを私のものにしたい。

 もう、最近は、寝る時に下着をつけれない。いくら自分で慰めても、全然熱が引かないの。隣ではお姉ちゃんが、下でママが、私を応援するようにいやらしい声を上げているから。

 明日は、イメチェン大作戦、頑張ります!



6/3(木)晴れ

 今日は記念日です。国民の休日にすべきです。

 ママ、お姉ちゃん。私、頑張ったよ。

 シュウくんを、シュウくんと呼びました!

 ああ、四年ぶり。四年ぶりに、シュウくんをシュウくんと呼べました。

 しかも! それだけじゃありません。

 なんと!

 シュウくんが、私のことを、リカちゃんと呼んでくれました!

 私の下の名前なんて忘れていると思っていたのに、シュウくん、頭よすぎ、すごい。誰か、シュウくんにノーベル性行為賞を差し上げて。

 リカちゃんと呼ばれて、軽くイッちゃった。嬉しすぎて、おしっこ漏れそうだった。学校について下着を着替えちゃった。お姉ちゃんが「絶対に数枚は持っていくように」って念を押された意味が分かった。ありがとう、お姉ちゃん。

 それで、シュウくんと手も繋いじゃいました。

 女の子と手を繋いだりなんかしたら、責任取ってくれないと困ります。もう、嫁確定ですね。嫌がっても押しかけます。なんせ、隣だから逃がさないです。

 ということで、学校なんて行ってられないから、お昼休みに早引きして、シュウくんの部屋に忍び込みました。

 うちのベランダからシュウくんの部屋のベランダまで結構、距離あるけど、運動苦手なはずの私なのに、側溝の溝ぐらいの幅に感じちゃう。愛の力が二人の距離を縮めているのね? 愛は物理を超える。だって、愛ザック・ニュートン、愛ンシュタイン、有名物理学者に愛があるから。

 シュウくんは、昔からベランダの鍵を閉めないの。これって、誘ってるよね? いつでもOKだぜってことでしょう? シュウくん、ワイルドー。

 シュウくんのお部屋にお邪魔して、私はシュウくんの仕掛けたトラップに引っかかった。

 シュウくんのお部屋に充満するオスの香りで、私は絶頂した。ああ、証拠を残さないために、大人用紙オムツをしてなかったら、きっと、カーペットに恥ずかしいシミができていたと思う。

 シュウくん、私が忍び込むのを予測して、こんな罠を仕掛けておくなんて、諸葛孔明? 三媚びの礼をもって、シュウくんのおちんちんをお迎えしないといけないわ。

 まずは、シュウくんの布団の匂いを嗅ぎまくることね。匂いは大事。あーん、もう、布団に入っちゃう!

 そこでオナニーしなかった私を私は褒めたい。

 次は情報収集です。シュウくんの好みを知って、そんな女の子を目指すのです。ということで、エッチな本を探します。

 ……一冊しか見当たりません。シュウくんは妄想をおかずにするスタイルでしょうか? それとも、これがバイブル? だとすると、内容を把握しないと。

 トイレで処女をささげるって……こういう、女の子が好きなの?

 ああ、でも、すごく気持ちよさそう。おチンポを入れられて、激しく犯されて、汚されてる。汚されてるって、イイかも……

 それにここのページから、シュウくんの匂いがする。他の人の匂いもするけど、中古買ったの? もう、新品買ってよ。匂い混じって気持ち悪いじゃない。

 シュウくんに意地悪されるなら、どんなことでもうれしい。私のオマンコを好きに使って、欲望のはけ口にして、精液を注ぎ込んでもらってぇ……♥♥♥

 シュウくんの部屋で二度目の絶頂をしちゃった。

 日本の誇る高性能紙オムツの吸水限界が来ちゃうので、名残惜しいけど、シュウくんの部屋から自分の家に戻った。また、いつでも来れるしね。

 とりあえず、シュウくんの部屋から回収した使用済みのティッシュはジップロックに個別に包装して、その中に顔を突っ込んで匂いを堪能した。まだ湿気が残っているのを舐めたら、全神経に雷が落ちた。

 この世で虜の果実が一番おいしいと思っていたのに、それをぶっちぎったおいしさ! もう、美味とか言葉が追い付かない。虜の果実が音速だったら、シュウくんの精液は光速。私の心と体を拘束してぇ!

 シュウくん、あなたはいったい何者なの? もしかして神様じゃないかしら? それなら、納得できる。むしろ、それ以外が納得できない。

 とにかく、今日以上の記念日はそうそうないでしょう。だから、今日はシュウくん神記念日に制定します。



6/4(金)雨

 どうしよう? 今日もシュウくん記念日だ。

 今日は雨で手を繋げないってしょんぼり思ってたけど、意外と傘を差してても距離が近いからダメもとで手を差し出したら、シュウくんが手を繋いでくれました。

 しかも、恋人つなぎ。恋人つなぎですよ! 恋人ぉ!

 もう、これって、襲っていいですよね? 襲えってサインですよね? プロレスラーの力比べじゃないですよね?

 これだけでも衝撃的なのに、今日は私は死ぬかもしれないと思いました。

 バスに乗り込むと、雨だから混んでいて、私はシュウくんの前に立つような形になりました。そう! 主人公がヒロインを抱きしめて守る立ち位置。

 これだけで、私の乳首はフル勃起で、オマンコ濡れ濡れですよ。それなのに、シュウくんは意地悪にも、私に勃起して、ズボンの中で窮屈にしているおチンポを……♥

 ズボンのシルエット越しに推測すると長さ16.4cm、竿径3,5cm、カリ最大径4.5cmのおチンポ。工作は苦手だけど、100円ショップでお湯まる買って、自作しなくちゃ。

 私で興奮してくれてるのがうれしくて、その場でズボンのチャックを下ろして、お口でしてあげようと思ったけど、シュウくんが恥ずかしそうにしていたから、思いとどまった。もう。照れ屋さんなんだから♥

 でも、私のせいでおチンポが窮屈な目にあっているのが申し訳なくて、謝っておいた。

 そこで私の無駄にいい頭が働いたの。オッパイを押し当てて、興奮して発射すれば収まると。私が勉強得意なのはこの日のためだったのね。

 で、オッパイマッサージをしてあげた。あんっ。これ、わたしもいいっ♥ ってなったのは秘密♥

 でね、シュウくんが「大丈夫だよ。僕だって、男なんだから少しは力があるよ」なんて強がり言うの。もう、かわいい! 超かわいい!

 でも、オッパイ当たっただけで射精しちゃったら、男として尊厳が損なわれるかもしれないって気づいたの。でも、私もオッパイ押し当てたい。そこで、セックスあんっ♥じゃなくて、折衷案。射精するのをぎりぎりで止める力加減でオッパイ押し当て。我ながら名案。

 大丈夫か聞いたけど、シュウくんも気持ちよさそうな顔だったから、大丈夫。ちゃんと気持ちよくて射精も抑えているみたい。

 二人で楽しい時間を過ごしていたら、中年の大柄なサラリーマンが私たちに文句を言ってきた。

「いちゃつくんじゃねー」って。

 こんなの、いちゃつくなんていわない。いちゃつくっていうのは、おチンポくわえたり、オッパイ吸われたりすることなんだから。

 でも、反論する前にシュウくんに抱きしめられて、シュウくんが言い返してくれたんです!

 ここにヒーローがいます! 主人公様です! かっこよすぎで、まぶしい! こんなの他の女の子が見たら、シュウくん好きになっちゃう。一緒に好きになって愛してもらうのもいいかも。シュウくんはみんなのヒーローだもん。

 でも、今は私だけを守ってくれている。あの小説のあのシーンみたいに。

 もう、興奮して、イッちゃいました。たぶん、表情とか、やばかったんだろうけど、うつむいてごまかした。

 多分、雨じゃなければ、垂れた愛液が床を汚したの、バレてた。あー、今日はショーツはいてなっくてよかった。

 そのあと、私たちに文句を言ったサラリーマンは綺麗なお姉さんが小脇に抱えて、バスの窓から飛び降りていった。あんな綺麗な彼女がいるのに嫉妬なんてするから、お仕置きされるのよ。

 まあ、そのおかげで、私は小説のヒロイン気分をシュウくんにしてもらえたから、ご馳走様。この記憶だけで、百回はできるわ。脱水症状にならないように気をつけよう。

 とにかく、今日こそ今日以上の記念日はそうそうないでしょう。だから、今日はシュウくん英雄記念日に制定します。



6/5(土)晴れ

 謝るべきことが二つあります。

 一つは、この日記を書いているのは6/5ではなく、たぶん6/7ぐらいです。もしかしたら、6/10かも。

 そして、もう一つは、今日はシュウくん童貞記念日に制定します。

 6/5は私の長い一日です。

 実は、昨日の日記を書いた後、パパとママ、お姉ちゃんと彼氏さん、私とで家族会議を開きました。

 ママもお姉ちゃんも、すごい美人になってました。魔物娘化すれば、愛した人とセックスすればするほど美人になれるそうです。うらやましい。

 それで、魔物娘になってしまったら、こっちの世界で暮らすのは今は法整備とか整ってないから難しいんだとか。だから、魔界に移住すると決めたそうです。

 パパも彼氏さんも仕事は退職したそうです。ママやお姉ちゃんとのセックス以外をする気になれないって。愛されてるー。

 生活はどうするのか聞いたら、魔物娘とその伴侶はセックスしていれば、おなかが空かないから生活には困らないし、魔界はそれを推奨しているから世間体も問題ないんだって。どうしても気になるなら、万魔殿というところにいけば、他のみんなもそれだから、問題ないそうです。

 それで、私はどうするか聞かれました。

 こっちの世界に残るなら、今ある貯金をすべて渡してくれるし、魔界からも補助金を出してくれるんだとか。

 ママもお姉ちゃんも、私がシュウくん一筋で、オマンコ売約済みなのを知っているから、今から襲うのなら協力するって言ってくれました。

 でも、私は断りました。

 私は犯すより、犯されたい。受け身と言われても、最初はシュウくんに犯されたい。

 そんな告白をしたら、お姉ちゃんが誘い受けという技を教えてくれました。相手を誘惑して、一線を越えさせる。お姉ちゃん、天才ですか?

 こうして、私はシュウくんのお嫁さんにされてから、魔界に行くことにしました。ママとお姉ちゃんたちは先に行って、家とかを準備するそうです。

 私には後で追いかけれるように、使い捨ての転移魔法陣をくれました。

 誘い受け作戦をするにも、同伴登校のない土曜日曜は難しいから、週明けかなと考えてました。それまでに恋愛小説を読み返して、作戦を立てようと思っていました。

 夜が明けて、土曜日だけど、特進コースの補講に行く意味はもうないです。

 でも、一応は、学校に退学届けを出しに行くことにして制服を着ました。入学して二か月で高校中退なんて、二週間ぐらい前、虜の果実を食べるまでは想像もしてなかった。人生一寸先はバラ色だよね。

 そう。本当に予測不能なバラ色。シュウくんは常に私の予想外です。

 土曜日なのにシュウくんがいました。制服着て、眠そうにして、股間からオスの匂いさせて、それって、誘ってる?

 あ、誘い受けを先にやられた? これが諸葛孔明をもしのぐシュウくんの知略か! シュウくん、すごすぎ。私の痴略じゃ太刀打ちできないよ。

 ちょっとそっけない態度も作戦なのですね? 私が「変じゃない?」って言っても、さらっとかっこよく流されました。スタイリッシュすぎて、何も言えないじゃないですか。

 でも、シュウくんが誘い受けなら、こっちも誘い受けで対抗です。どっちの理性が先に蒸発するか勝負です。

 はい。勝負になりませんでした。

 バスの席は、シュウくんが逃げられないように窓際に座らせたまではよかったです。腕に抱きついてオッパイを押し当てたのも成功です。

 でも、シュウくんは、シュウくんの破邪の剣を天に向かって突き上げたんです。魔物娘になりかけている私にその攻撃は弱点属性をついた大ダメージ攻撃です。

 シュウくんのおチンポを見たくて仕方ありませんでした。乗客も少ないし、他人に見られないからシュウくんも恥ずかしくないはず。シュウくんのおチンポを……♥♥♥

 思い出し絶頂しちゃった。シュウくんのおチンポは最強だよね。いまだに、キュンキュンマックスだもん。

 おチンポ愛撫していると、シュウくんが私が経験あると勘違いしてきた。

 そんなわけない! 私はオマンコが筋だった時から、シュウくん一筋なんだから、他の男なんて視界からデリートなんだから! だから、私はシュウくんをちょっと意地悪してあげた。

 そしたら、私のチンポ扱いが上手すぎて気持ち良かったから勘違いしたって。もう、好きな相手のためなら、チンポ扱いなんて考えなくても身体が勝手に動くのが女の子なんだぞって、教えてあげた。

 よく考えたら、これって、告白しているも同然!

 そう思ったのも時すでに遅し。

 惚れた方が負け。最初から、私の負け。さすが、幼馴染。

 もう、告白しちゃったのは仕方ない。今すべきは、シュウくんの気持ちの確認。

 そしたら、なんと!

「好き! 大好き! すごく好き! リカちゃんのことがすごく大好きでたまりません!」

 だって!

 きゃー! もう、どうしよう? オマンコ、イキっぱなしよ? データ保存して、放送室占拠してエンドレス再生のヘビーローテーションよ!

 私も素直にもう一度告白したら、シュウくんは私の告白に射精で答えてくれた。

 シュウくんの精液を舐めたら、もう、脳内が幸せしかなくなっちゃった。

 美味とか快感とかもう、そういうのを超えて、幸せ。心が温かくなって、身体が熱くなって、子宮がうずいて、膣が痙攣して、愛液がにじみ出るの。何もかもが世界のすべてが愛に包まれている。

 今、私は悟りを啓きました。

 宇宙と一体となった私にはわかります。シュウくんはちょっと意地悪された方が燃えるタイプだと。

 名残惜しくもシュウくんのおチンポをしまって、女子トイレに入っててもらいました。

 その間に用事を済ませます。私の退学届けを提出して、シュウくんの分の退学届けの用紙をもらいました。

 教師の人から「よく考えて」とか「週明けにご両親と相談してから」とか色々と言われたけど、微笑みで返事しておきました。

 シュウくんとの愛に生きると決めたのに、いい大学に入って、いい会社に就職することに意味はないことを。

 シュウくんは私だけを愛し、私はシュウくんだけを愛する。二人の間には愛だけあれば、それで十分。他に何かがいるなら、その時に考えても、遅くはない。

 学歴なんて関係ない。夫婦の愛のみ価値がある。魔界はそういう場所だから。

 人をけなしている暇があるなら、自分が幸せになることをする。人の足を引っ張っている暇があるなら、伴侶を見つけて引っ張ってくる。それが魔界。それが魔物娘と伴侶の世界。

 私は柄にもなく、演説しちゃった。

 独身の女性の先生の一人が、私をすごくうらやましそうに見ていたから、虜の果実のことと購入方法を教えてあげました。

 いい感じで一限目が終わったので、シュウくんの元に向かいました。特進コースの補講に出ている同級生がいます。この女の子たちに見つかったら、シュウくんが退学になるから、ちょうどいいかな? と思ったけど、私以外の女の子に欲情したとかはイヤなので、助け船を出して、シュウくんが潜んでいるのをごまかしました。

 そこからは、思い出すと……くふぅんっ♥

 書こうとすると、思い出し絶頂がまだすごすぎて、だめぇ〜♥

 はぁはぁ……と、とにかく、女子トイレで、シュウくんに処女あげちゃった。もう、忘れられない思い出にできたね。

 でも、ここからは、賭けだった。

 もし、私とのセックスをもっとしたいと思ったら、私の家に来てくれるはず。一回すれば満足と思ったのなら、家には来ない。

 6/5の12時までにシュウくんが来なければ、私は一人で魔界に旅立つ予定でした。

 玄関で不安な気持ちを自分の指で慰めながら待っていました。ぜんぜんイケない。もう、シュウくんのおチンポなしじゃ、イケない身体になってます。

 そんな私のところに、シュウくんはやってきてくれました。それも、オスの顔で。

 もう、私は嬉しすぎて、子宮がオマンコから出そうなぐらいでした。

 しかも、お姫様抱っこで部屋まで運んでくれたんです。

 シュウくん、王子様。マジ王子。

 部屋に行くまでに何回イかせればいいんですか?

 そこから、無茶苦茶エッチした。

 もう、死んでもいいって思えるぐらい。

 もしかして、これが最後かもしれないから。

 セックスするのが落ち着いたのは、ちょうど、十二時ちょっと前。

 あはは。皮肉にも、ちょうど、シンデレラの魔法がきれる時間。

 シュウくんとエッチしてから、私の体の中で私が私のまま違うものになる感覚があった。きっと、ママやお姉ちゃんみたいなレッサーサキュバスになるんだろうなって、確信があった。

 でも、それをシュウくんに見せる戸惑いもあった。拒絶されたらどうしようと。

 だから、無理やり、抑え込んでいた。でも、セックスするたびに、変化は抑えられなくなって、もう限界ぽい状態だった。

 でも、もう、これで拒絶されても、私は満足だって言えないけど、我慢できる。シュウくんにたくさん愛してもらった思い出だけで、これからの魔物娘の人生を生きていける。

 だから、抑えていた力を抜いて、魔物娘に、レッサーサキュバスになった。

 魔物娘になった私を見て、シュウくんは驚いていた。

 嘘だと言ってくれた。本当だよと答えた。

 どうしてと聞かれた。虜の果実を食べてと答えた。

 シュウくんとのエッチのせいなんて思ってほしくない。責任感じるにきまってるから。きっとシュウくんはそう聞いたら、ついてくるというから。

 私はお別れの言葉を言った。

 涙がこぼれた。

 だって、お別れなんてしたくない。

 心のどこかで、シュウくんをす巻きにして魔界に連れて行って、セックスにおぼれさせろ、私に依存させろとささやく声がする。同意しかけて拒否する。その繰り返し。

 きっと、このままだと負けてしまう。その悪魔のささやきが勝ってしまう。

 そうなる前に、さよならしなきゃ。私が、人間の私である間に。

 私は幼馴染だから、あの小説のヒロインみたいに主人公に行くなと言ってもらえない。

 最初から分かっていたけど、この二週間は、幼馴染にしては、いい夢見れた。

 だから、ごめんね。さよなら。

 ――の、つもりだったのに!

「行くな! どうしても行くんなら、僕もつれていけ! 僕は、リカちゃんがいれば、何もいらない! 将来だって、未来だって、世界だって、リカちゃん一人に比べたら、ちっぽけで無価値なんだ! だから、僕を連れていけ! 連れて行かなくても、追いかけてやる。地の底だって、天の上だって!」

 ――ですって!

 聞いた? 聞きました?

 小説の主人公よりかっこよくないですか?

 シュウくん最高! もう、神! 主神クラス! むしろ、主神!

 それもですよ。その台詞を言いながら、後ろから挿入してくるなんて、並みの主人公にはできないことです。

 もう、私のオマンコはこのおチンポを離したりなんかしません!

 どんな障害も二人には愛のスパイスです。

 私たち、幸せになります。

 こうして、私とシュウくんは結ばれたまま、魔界へと旅立ったのです。

 ありがとう。虜の果実。

 きっとアレを食べてなければ、私はずっと死ぬまで下を向いていた。

 もし、私たちに娘ができたら、その子にもきっと虜の果実を食べさせます。

 パパとママの思い出の果物だよって。

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<了>
21/01/07 22:12更新 / 南文堂

■作者メッセージ
魔物化を女の子側から書いてみました。
……すごく変態ぽい気がするけど、きっと気のせいです。

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