読切小説
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魔王交代の夜に
 階段を上って門をくぐる。そこはいつも通りの見慣れた場所だ。

ワアアァァァ

 歓声がコロシアムに響く。
 手に持つのは刃挽きされた大剣。いつのころからかこうなっていた。
「ぶもおぉぉぉぉ!」
 目の前にはモンスターが居る。牛頭人身の魔物、ミノタウロス。ただ、その 乳房は大きく膨れ上がって牝であることを主張していた。
「ぶもおぉぉぉ!」
 巨大な戦斧が振るわれる。当たれば一撃で人間などひき肉になるだろう。単なる大ぶりの牽制、それでも人間とモンスターの間には力の差がありすぎる。
「良いぞ」
「やっちまえ!」
 ミノタウロスにかけているだろう観客の声が聞こえる。俺は攻撃を避けながら相手の間合いから出ない。出れば闘う気がないともらえる金が減る。
「うおりゃあ!」
 振りぬこうとした斧に合わせて剣を斧に叩き込む。勢いに剣の衝撃が重なって、ミノタウロスは斧を取り落す。
「うおりゃ!」
落とした斧を蹴飛ばしてミノタウロスと武器の間を開ける。本来なら距離を取る所だが俺も武器を手放して素手になる。
「ヴモオォォォォ!」
 声が少し変わってミノタウロスが拳を振り下ろす。武器でなくても当たれば一撃で潰されるその攻撃をぎりぎりで躱す。さらに拳をミノタウロスの腹に叩き込むが筋肉が鉄よりも硬いその体は全くダメージを伝えない。
 いつ当たっても間違わない距離で肉弾戦は、端から見れば必死になって人間の男がミノタウロスの攻撃をかわし続けるというように見える。オーバーアクションで当たっていない攻撃に当たったように見えるほど体を揺らす。それでもミノタウロスとの距離は離さない、少しでもやられているように見せかける。
「ぶもぅ」
 一瞬、疲れかミノタウロスの拳が大振りになった。その攻撃を俺は大きくかわす。巨体が泳いで誰が見ても攻撃のチャンスに見える場面になる。それでも俺は攻撃しない。避けるのに力を使い果たしたようにふらっと体を揺らす。そうしてミノタウロスがこちらを真正面に見てもう一度その懐に入る。
 何度そんな攻防を繰り返したのか、俺もミノタウロスも荒い息をついている。とはいっても実際にはミノタウロスはいつも息が荒いのでその区別は周りにはつかないだろう。そんな状況まで来て、俺はまた拳を握って、今度は頭を狙ってかちあげる。ミノタウロスは反応が遅れて見事に拳が決まった。脳を揺らすために何度も頭を攻撃する。その攻撃はッ少しミノタウロスを揺らすものの傍目には効いているようにないので巨大な拳は俺を狙ってくる。それでもしつこく頭を揺らす。
 ついに攻撃の決まった時が来る。動きが目に見えて遅くなったミノタウロスを今度はこちらから攻撃する。
拳を握って攻撃するのは頭ではなく大きな乳房で、周りにもよく見えるように、跳ねるような動きが出るように殴る。細かく頭にも追加攻撃は続ける。

わあぁぁぁぁっ!

この時が何か男の声が特に大きいような気がする。ぶるんぶるんと揺れるミノタウロスの乳房は、褐色の山が震えるという言葉そのままの様だ。個人的にはやはり柔らかい分山よりもボールとおもっている。
「ヴォウゥゥ」
 大きな音をミノタウロスは仰向けに倒れ、乳房が大きく揺れると今度はこれから起こる事への期待で大きな歓声がおこる。
 コロシアムの中央に鎖付きの手かせ足かせが付いている台が運ばれてきた。俺はミノタウロスを乗せて手かせ足かせをつける。大きく大の字に広げられた体が目立つように調整される。
 俺はズボンを脱いで、既にそそり立っている自分のイチモツを表に出した。黄色い悲鳴が聞こえる。それをゆっくり見えるように、ミノタウロスの穴へと突きこむ。
「ブモウッ」
 今までとは違う声がミノタウロスから上がりぎゅうとその膣が締まる。人間と牛巨人という差があっても快感があるのかないのか。
ミノタウロスの褐色の巨乳が大きく跳ねるように体を動かして突き続ける。その内ミノタウロスの乳房にも変化があった。ぷっくり膨れ上がった乳首から白い物が溢れだす。母乳だ。このミノタウロスは孕んだことがあるらしい。しかしこちらは気持ちよくはあっても心は仕事だからとあまり興奮はない。
「うっ」
 俺が限界を迎えて精液を出すのと同時にミノタウロスも痙攣して震える。声にならない声が響き母乳が噴き上げた。
 イチモツを引き抜くとどろりと白い精液がこぼれてくる。それが見えるように俺は体を動かしておく。歓声が上がる中やって来た案内係に連れられて俺は牢屋に戻る。
「調子はどうですかな?」
「さあな」
 俺と並んでこのコロシアムの戦いをしきる男が話しかけてきた。
「やはり皆さんそろそろ飽きが来ている様子。武器をなくして全裸というのはどうですかな?」
「そうか」
「いやいや武器を持たないのでは今も変わりませんか。そうですな、それではその上で2対1というのが良いですな」
「そうか」
 俺が適当な相槌を打つ間に話したい事だけを話して男が離れていく。いつもと変わらない流れだ。今度の戦いはミノタウロスが2匹になって無手での戦いになるかもしれない。
 俺がコロシアムで戦うのは、俺の父親がこの国と戦って負けた敗戦国の将軍だったという理由である。国が吸収された後敗戦国の住人は戦勝国の住人から多くの要求を受けた。コロシアムに戦士を出すというのもその一つ。そしてこのコロシアムには一つ別の目的もあった。兵士としてモンスターの血を引く兵士を作るという事だ、そのために俺は多くの兵と同じく連れて来られた。モンスターは比較的捕まえやすい、それでいて戦争に特に力になるだろう巨体のモンスターが主で、モンスターに勝って種付けする事で優れた戦士としての才能を区別する。そんな理由で多くの男が戦っては死んでいった。今まで種付けは何度もしたが、子供がどうなったのかは分かっていない。俺が生きているのはいつもぎりぎりの場所で踏みとどまって戦うから周りが喜ぶというだけの話。距離をどのくらいなら観客が喜ぶのか見分けられたのが幸運だ。そして、さっきの男がどのような組み合わせで戦わせるかを決めていく。かつて英雄と呼ばれた人は10体のオーガと素手で戦わせられて死んだという。俺もそろそろかもしれない。
 死にたいという気はない。しかし生きていく未来は読めない。考える事の出来ない環境で、それは鉄格子つきの牢の中でただどうやれば生き残れるかだけを考える。そんな毎日だった。

 夜。どこかで何かが響き渡る。俺は寝床の中でそれを感じた。それが何か分からない。それでもここから動いてどうなる物でもない。寝続けていると何か騒がしくなった。男の悲鳴と女の嬌声があちこちから聞こえる。
「何があったのやら」
 このコロシアムの守りはそれなりに堅い。モンスターの搬送や有事には砦になるために兵士が詰めている。さらに奴隷闘士の扱いで俺のような人間が定期的に送られてくる。そんな場所に攻めてくるのはこの国の反抗勢力ぐらいなものだ。どこの勢力だとしても俺は動かないでおこう。

どんっ

 派手な音が牢の入り口側から聞こえた。ここにまで来るとは何者だろう。上の管理者たちの部屋の方が宝はある。

「えっ」
「はあ?」
 俺より入り口に近い場所にいる男達が声を上げている。本当に誰が入って来た?
「見つけた」
 俺の牢の前に立って誰かが声を出した。誰が来たのかと体を起こせば鉄格子越しに見えるのは上半身裸の女だ。
「誰だ?」
「すぐに出してやる」
 俺の言葉に答えずに女は鉄格子を掴む。それは飴細工の様にあっさりと曲げられた。
「いったいなんだ?」
「さあ、行こう」
 俺がやや身構えているのに構わず俺を抱え込んだ。
「ちょっと待て」
 俗にいうお姫様抱っこで抱えあげられて流石に慌てる。その動きに関わらず女はずんずんと歩いて行きコロシアムに出た。
「さあ着いた」
「おっと」
 投げ出された俺は受け身を取って立ち上がる。
「さあ、やろうぜ」
「やろう?何を?」
「え、ここでやるんじゃないのか?」
 どうも話がかみ合わない。
「まず、アンタは誰だ。俺に何の用だ」
 気になっていた事を口にすると女はうろたえる。
「あたしが分からないのか?」
 酷くショックを受けているようだ。さっきは暗い牢屋への通路の中、上半身半裸の女、としか分からなかった。
 よく見れば頭には角が生えている。つま先は蹄になっていて、人ではないと告げていた。背中には巨大戦斧を背負っている。
「もしかして、今日戦ったミノタウロスか?」
 上半身で主張している褐色の巨乳が目に入って何故か思いついた。
「ちゃんと覚えててくれたんだな。そうだよ。あたしの名前はカーネリア」
 笑う女、カーネリアは嬉しそうに俺に近づいてくる。
「それで、何の様だ。また挑戦してくるつもりか?」
 何故ミノタウロスが美女になったのかは知らない。それでもこの場に連れて来たのは戦うためだと思う。
「何って、あの、その」
 何故か急に言葉を濁しだすカーネリアに、可愛いと思ってしまったとこは置いておいて
「だって、あたしたち番じゃないか」
「は?」
 その言葉に頭が追いつかなかった。番、つがい、人間で言えば夫婦。
「いっつも、ここで腕がなまってないか戦ってさ、その後見せびらかしながらやってるだろ」
 そういう見解だったのか。俺は物凄く苦労してたんだが。
「子供だって、何人も産んでるし、もう体がお前専用になってるんだから」
「いや、闘っているのは俺だけじゃないはずだ」
 ミノタウロスと戦うのは何人もいた。俺の子でない可能性もある。
「あたしはあんたとしかやってない。その為に相手を倒した」
 モンスターに感情があるかないか知らなかったが、少なくともカーネリアには俺に対して思う所はあった様だ。
「さあ、やろう。すぐやろう」
「待て、今何が起こってるのか分からないぞ、良いのか?」
「気にするな、魔王様が世代交代して、人間と一緒になれるようになっただけだ」
 何かさらりと凄い事を言われたような気がする。
「だから、気にせずやろう」
 驚いて理解が追いついていない俺の顔に、カーネリアはその巨乳を押し付けてくる。柔らかい。戦っている間はそんな事を考えていなかったのに、今はそれを強く感じる。このまま犯されるのか、と思っていた時、別の方から声が聞こえた。
「ちょっとかーちゃん、こんな所にいた」
「あーっ。とーちゃんだ」
「独り占めは駄目だぞ、あたい達にも」
 何かぞろぞろと似たような角、乳、筋肉の娘達が出てきた。
「もう、あたしが母親なんだから、一番はあたしだろ!」
「何言ってるんだ。とーちゃんの子供ならアタシも生んだぞ」
「そう、ちゃんととーちゃんと戦って、負けて、犯されたんだから」
「子供も大きいし、とうちゃんとやりたいって言ってる子がいるんだし」
 カーネリアの子供らしいミノタウロス達が現れた。頭が追いつかない。カーネリアは俺としかやっていないと言うならこのカーネリアは俺の子供という事で、子供を産んだという事は俺が倒したミノタウロスの中に実の子が混ざっていたという事で。
「あ、あんた」
「「「とーちゃん!」」」
 俺の頭は容量オーバーで、意識が途絶えた。
18/09/03 22:21更新 / 夜矢也

■作者メッセージ
「まあ、何とかなるもんで、ミノタウロスのミルクを特徴に牧場を開いたらなんだかんだと今まで続いている」
「それで、お父さん、私への返事は?」
「時代が違うから娘との結婚は避けたい。というか増やしたくない」
「じゃあ決闘だ、表に出ろ!」
「懐かしいな、ああやって娘が挑んで、負けると逆にとーちゃんの凄さを身を持って知って逆に夢中になるんだよ」
「別に娘と結婚するなんて珍しくないのにね」

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