連載小説
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第二話
1


「ユートの精液を、分けて欲しいんだ...。」
俺の親友がそう言って近づいてくる。
魔物娘なんていう存在になってしまったユキ、泉雪弥がこれから生きていくためには男の精気が必要になる…?だから俺の精液を分けてほしい…?
「ちょっと待て!急に精液をよこせって、他になんか方法があるだろ!そもそも男の精気が必要ってなら別に俺じゃなくても!」
近づいてくるユキを静止させそう叫ぶ。
「そうねぇ、一番効率がいいのは精液ってだけで他にも方法はあるわよ。」
「変身するだけなら、ディープキスを10分続けるとか、一晩中抱き合って眠るとかでも必要な量の精気を補えるかもね。」
「でも今のユキくんの角や尻尾を隠すのには早急に魔力が必要でしょう?、それに私達魔物娘にとって精気が0の状態が続くのは辛いことなののよ」
目の前に立つ異形の美女、異世界からやってきた魔物だというリリムさんが話を続ける。
「それに、ユートくんだってユキくんがどこの誰とも分からない男とそういう行為をするのは嫌でしょう、ユキくんだってそう思ったから勇気を出して貴方のところに来たのよ。」
ユキが見知らぬ男と…?それは確かに嫌かもしれない。それにユキだっていきなり誰かの精液を貰いにいけなんて言われても嫌に決まってるだろう。
そこでハッと気付く。
そうだ、いきなりのことに戸惑っているのは俺だけじゃない。
ユキだって今日朝起きたら急に体が女に変わっていて、それで今日から生きていくのには男の精気が必要ですなんてことを言われたんだ。
今朝だって風邪を引いたなんて嘘をついて、困って、悩んでそうやって俺を頼りに来たんだ。
少しだけ冷静になってユキの顔を見る。
俺に拒絶され、悲しそうな、申し訳なさそうな顔をして目には涙を浮かべている。よく見ると顔は普段よりも青ざめ、体調も悪そうに見える。
「…。」
「悪かったよユキ、おまえだって急にこんなことになってるのに突き放す様なこと言って、俺が助けになれるなら力を貸すよ。」
気付けばそう言い、ユキの手をとっていた。
「ユート…、ありがとう…!」
彼、いや彼女は笑顔を浮かべそう言った。


2
「ーそれで、精を分けるってどうやってやるんだよ…。」
「えっとね…、とりあえずは口で精液を受けとればいいんだって。」
「あっ、大丈夫!この体なら美味しく感じるってリリムさんが言ってたから!」
平気な顔をしてとんでもないことを言う。
「じゃあ、始めるね。」
そう言ってベルトに手をかけるユキはなぜか嬉しそうだった。
「ちょっと待てって!なんでそんなノリノリなんだよ…。それにここは屋上だぞ、誰か来たらやばいだろ!」
迫ってきたユキをなだめながら言う。
「そうねぇ、そしたら私に任せてちょうだい」
リリムさんがそうって指を鳴らす。
すると、周りの会式が球状に歪んでいく。
俺たち3人は、水の玉のようなものの中に閉じ込められたような形になった。
「こ…これは…?」
「これも魔法の一つよ、いわゆる結界みたいなものね。これで周りからは私たちのことは見えないし、声も聞こえないわ。」
これが魔法か…、壁に触ってみるとぷよぷよとした不思議な弾力がある。
今までに見たことも感じたこともない不思議な感触が、彼女の魔法が本物であることを伝えてくる。
おそらく周りから認識されなくなると言うのも本当なんだろう…。
「これなら安心してできるでしょ?」
「もし良ければ、私が手伝ってあげてもいいのよ♡ユキくんは今まで男の子だったわけだから初めては不安でしょう?」
リリムさんがそう言う。
「ダメ!!」
ユキが叫ぶ。
「だめだよリリムさん、これはちゃんと僕がやらないと…」
「それに、僕たちは別に初めてってわけでもないんだよ。」
「そうでしょ?ユート。」

その言葉に一つの記憶が呼び覚まされる。
忘れていた、無かったことにしてしまったあの日の記憶をー。


3
ーあれは確か小学校5年性の頃だった。
クラスのお調子者がエロ本を拾ってきたと騒いでいた。
子供には見てはいけないものとはわかっていても、やはり気になってしまい、俺もユキも見に行ってしまった。
当時まだ子供だった俺たちにとっては初めてみる過激な性描写に今まで感じたことのない不思議な興奮を覚えたのだった。
その中で、なぜか俺とユキに一番衝撃を与えたのが、女性が勃起した男性機を手で扱き口で咥えるところを写したページだった。
「こうやってちんこを口でしゃぶるのを“フェラ“って、めちゃめちゃ気持ちいんだって!おれの兄ちゃんの先輩が言ってたって!」
お調子者のクラスメイトが恥ずかしげもなく大声でそんなことを叫ぶ。
「「フェラ…」」
なぜか俺とユキは同時にそう呟ていた。

4
その日の帰り道、家に荷物を置いてから、いつものように隣のユキ家に行きゲームの続きでもしようと思っていたのだが、
「あのさ、ユート…。今日見たあれやってみない?」
そんなふうにユキが言った。
遊びのつもりだったのか、ただの興味本位だったのか今となってはもう思い出せない。
だがあの日俺とユキは、お互いのものを手で触り合い、扱きあった。
小学5年生、11歳の子供だった俺たちにはまだ精通を迎えていない奴もいたのだろう。
そのせいもあってお互いに触り合った結果、勃起したのは俺のモノだけだった。
「ユートのおっきくなってるね、気持ちいいの?」
「いや、よくわかんない。変な感じ。」
「そうなの?それじゃああの本みたいに続きやってみようよ」
そう言ってユキは少しためらったのち、俺のモノを咥え込んだ。
なんだこれは…?熱い…?
柔らかくてぬるぬるしていて…。
「ん…ちょっとしょっぱい…?」
「どう?気持ちいい?」
ユキが俺のモノを咥えたままモゴモゴと喋る。
「気持ちいい…のかな?熱くて柔らかい」
「じゃあもっと動いてみるね」
そう言ってユキは顔を上下に、舌を使いながら動かし始めた。
その時の俺は股間で上下に動くユキの頭を、無意識のうちに撫でていた。
頭を撫でられどこか嬉しそうなユキを見て、なんだか犬みたいだなんて思っていると、股間の奥から何かが込み上げてくる!
「ユキ待って!!何かでる!」
急いでユキの顔を引き離す。
「うあっ!」「あっ!」
精液が飛び出る。ユキの顔にかかるのはなんと避けることができたが、根本を掴んでいたユキの手と服にベッタリと精液がついてしまう。
「あったかい…それに変ない匂い…。」
そんなふうに手についたものを眺めるユキを見てなぜかどうしようもなく悪いことをしたような気持ちになった。
「ごめんっ!」
そう言ってユキの家を飛び出し、自室に逃げ込んだのだったー。

5
翌朝、俺はユキに謝ろうと家を訪ねた。
「あれ、どうしたの?怖い顔してるよ?」
「昨日悪い夢でも見たんじゃない?」
そんなふうにユキは笑っていた。
きっと彼なりの気遣いだったのだろう。
昨日のことははっきりと覚えている、夢なんかじゃない、謝らなければいけないんだ。
そう思っていたはずなのに、俺はユキの優しさに甘えてしまった。
そうして俺たちの中で“無かったこと“になってしまった思い出は、こうしてユキに言われるまで俺の記憶から消えてしまっていたのであった。


6
「ーユートのおっきくなってる、気持ちいい?」

昔の記憶を辿っていると、いつの間にかユキが俺のズボンを下ろし股間を触っている。
いつの間にこんなことに?いやそれよりも股間が今までにないくらいギンギンに勃起している!

「あらあら♡手伝う必要なんて無かったみたいね」
そんなリリムさんの声もどこか遠い世界の音にきこえる。それくらい目の前のユキに目が離せなくなっていた。
いつも見ているユキの顔のはずなのに、魔物のツノが生えた彼女の嬉しそうな表情が、俺を見つめる目が、熱い吐息が俺を魅了する。
「じゃあ…いただきます♪」
「ユキ!ちょっと待っ」
俺の声も聞かずユキが一気に咥え込む。
「うわぁ!」
情けない声が出る。
なんだこれ。あの時のとは比べ物にならない熱さ、まるで別の生き物のように口の中が絡み付いてくる
オナニーなんかとままるで違う、異次元の快感に襲われている!
「ユキ!!一旦抜いてっー…あぐっ!」
あまりの快感にユキの頭を引き離そうとしたとき、彼女の魔物の舌がカリをすくい上げるように舐めとる。
下半身全体にぞわりとした感覚と電流のような快感が流れ腰が砕けてしまう。
思わず後ろに倒れると、リリムさんが作った結界のぷよぷよした壁に受け止められる。
かべによりかかるように崩れ落ちた俺にユキが覆いかぶさってきた。
「ごめんね、ユート…僕もう我慢できないんだ♡」
そう言ってフェラを続ける。
口いっぱいに頬張りながら、裏筋を、カリを、亀頭を舌で舐め取り激しく動いている。
「うぐっ、あっ!」
思わず声が出る。
なりたてとはいえ魔物娘の本気の吸精、そんなものに長く耐えられるはずもなくすぐに射精しそうになる。
気付けば俺はあのときと同じようにユキの頭を撫でていた。さらさらとした髪の毛の感触としっとりとしてつるつる角の感触が心地良い。ユキも頭を撫でられ顔を綻ばせ、腰から生えた小さなしっぽも嬉しそうにパタパタと揺れている。
なんだか犬みたいだな、当時と同じ感想をいだき、俺もユキもあの頃から変わっていないことに不思議な安心と心地よさを覚えた。
そのまま頭をなでているとすぐに限界が訪れる。
「ユキっ!もう出るっ!!」
「いいよっ!そのままっ!出してっ♡」
俺のモノを咥えこんだまま腰に抱きついてくる。
「うぁっー!」
ビュルビュルと音を立て、今までに経験のないほどの大量の精液がユキの口に注がれる。
「っっ〜〜♡♡!!」
口で精液を受けたユキの体がビクビクと震える。
口で受け止めきれなかった分も手のひらにしっかりと受け止める。
「んっ♡ちゅ♡美味しい…♡」
そうしてユキは幸せそうに体を震わせ、すべての精液を飲み干したのだった。


7

「ありがと、ユート。美味しかったよ。」
そうって俺の手を取り、助け起こしてくれる。
足元がおぼつかない。下半身に力が入らない。
リリムさんの結界に寄りかかってなんとか立てる状態だ。
「初めて魔物の吸精を受けたんだものそうなってもしょうがないわ」
「しばらくそうやって休んでなさい。」
リリムさんがもう一度指を鳴らすと、結界が椅子のように形を変え、俺の体を包み込む。
ぷよぷよとした感触が心地いい。お言葉に甘えて休ませてもらおう。
「それにしてもよかったわよ、あなたたち♡私も疼いてきちゃった♡」
体をくねらせながらリリムさんが俺に微笑むかける。
「だっ…ダメだよリリムさん!それに、これで元の姿に変身できるようになるんでしょ!」
そう言って二人の間にユキが割って入ってくる。
「あらら、嫉妬しちゃって。かわいいわねぇ」
「でもそうね、魔力の補給はできたし変身の仕方、教えてあげるわよ。」
「じゃあまずユートくん、ユキくん二人は手を繋いで。」
リリムさんの言う通り手を繋ぐ。
「そしたらユートくんは昨日までの、男だった頃のユキくんの姿と声をイメージしてみて。できるだけ鮮明に思い出してね。」
言われた通り、昨日までの男だったユキの姿を思い浮かべる。
「一人でもできるんだけど、こうやってと近い立場の人の力を借りた方がうまくいくの」
「そしたらユキくんは彼のイメージを受け取って、それをそのまま自分の魔力で形にするの。」
「体の内側に今までなかった不思議な力がある感じがするでしょ?それを自分の体の周りに纏う感じね。」
「それがうまくいけば、あとはユートくんのイメージが勝手に形を作ってくれるわ。」
そんなふうにざっくりと説明をしてくれる。
「むむむ…」
手を繋いだユキが難しそうな顔をしながら唸っていると、突然虹色の光がユキの内側から現れ、体を包み込んだ。
それは形をかえ、光が収まった時にはユキの姿は昨日までのもの、男だった泉雪弥の姿に戻っていた。
「おおー戻ってる!」
「すごいな、声もちゃんと元に戻ってる!」
二人で手を繋いだまま元の姿に戻れたことを喜びあったのだった。

8
「じゃあ私はこれで失礼するわ。」
「そうだユキちゃん、これあげるね。」
そう言ってリリムさんはユキに何かを渡す。
それは小さな宝石のようなものだった。
「これに魔力を込めて念じれば、離れていても私とお話しできるわよ。何か困ったことがあった時には呼んでね。慣れれば私だけじゃなくユートくんも話せるようになると思うわ。」
そう言ってリリムさんは大きな翼を広げる。
ここへ来た時のように飛んで帰るのだろう。
「あっそうだ、一回の吸精でまかなえるのは変身だと大体半日分くらいだから、定期的に補給してあげてね♡」
最後にそんなことを言い残し、空へはばたくリリムさん。
「ちょっと待て!半日?聞いてないぞ!!」
「おい待てって!!」
「あら?言ってなかったかしら?まあ今日のラブラブ具合なら大丈夫よ♡頑張ってねユートくん♡」
そう言って彼女は夕暮れの空に消えて言った。


9
「なんだか大変なことになっちゃったね」
リリムさんが飛び立ったあと、他人事のようにユキが言う。
「お前他人事みたいに…これからあの魔物、最後にとんでもないこと言い残していったぞ…。」
「変身を保つためにはまた吸精しないといけないんだぞ、いいのかよ…。」
「大丈夫だよ。ユートの美味しかったし。」
「明日からも頑張っていこうよ!」
そう言って屋上から帰ろうとするユキ。
「そう言う問題じゃないだろ!」
「待てって!それに明日もってまた俺がするのか!?」
「そんなんことよりもうこんな時間だしさ、ラーメン食べて帰ろうよ、駅の近くに新しいお店見つけたんだ!」
そう言言いながら屋上の階段を降りていくユキ。
その姿は昨日までのユキと変わらない、いつも通りの姿であった。
そうだな…。たとえ姿が、環境が変わってしまったとしてもユキはユキなんだ。
そう思い階段を降りる彼女の背中を追いかける。
少し変わってしまった日常に戻るのであった。
21/01/11 15:58更新 / ヤマイシスイ
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