連載小説
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第一話
1

世の中には唐突にとんでもない出来事が起こることがある。突然の事故や病気、宝くじの一等が当たるなんてこともそうだろう。
そんな冗談みたいな出来事が自分の身に降りかかるだなんて…、いや、今俺の目の前で起きていることは夢なんじゃないか?そうだ、冷静に考えればこんなことが現実にある訳ないじゃないかー
そんなふうに混乱した頭で考えていると、目の前の人物が話の続きをするために口を開いた。
「−だからね、ユートの精液を、分けて欲しいんだ...。」
5月の屋上。まだ少し風が肌寒い中、夕日に照らされらたユキは恥ずかしそうに顔を赤らめながらそう言った。その頭には小ぶりな角が、そのお尻には紫色の光沢のある尻尾が生えていた...。

端的に言おう。俺の身に起きたとんでもない出来事...。それは幼馴染が悪魔になってしまったということだ。それもただの悪魔ではない、男の精を養分とする淫らな淫魔、サキュバスというものになったらしい。そんな状況男としては最高じゃないかという輩もいるかも知れない。
だがしかし、今俺の目の前で精液を欲している幼馴染のユキは...泉 雪弥(いずみ ゆきや)は男だったのだからー。



2

5月の初旬、とんでもない出来事が起きた日。
その日は俺、大月 優斗(おおつき ゆうと)にとってはいつもと変わらない日常が流れたいた。
朝起きてリビングに向かうと母親はもう朝食を終え、出かける準備をしていた。
「おはよー、母さん」
「おはよう優斗、お母さん今日も帰り遅くなるから、夕ご飯はユキくんと一緒に適当に食べておいてね!」
そう言って足早に会社へと向かう母親。
共働きの母親と一年前から単身赴任中の父親がいる大月家ではよくあることだ。
ユキというのは俺のアパートの隣の部屋に住んでいる幼稚園からの幼馴染のことだ。
そう聞くとまるでラブコメの主人公のようだと羨ましがられるかもしれないが、俺の幼馴染、泉雪弥は男である。
小柄な体型と童顔のせいで、学校の女子からは「ユキくん女の子みたいで可愛いよね〜」などと言われているが、長年一緒にいた俺からすればれっきとした男に違いない。
ちなみにユキの両親はというと、トレジャーハンター?冒険家?のような嘘か本当かわからない仕事をしている。なので基本的に一年中両親はどこかへ飛び出しており、ほとんど我が家の家族のようなものだ。つまり俺とユキは幼馴染と言ってもほとんど兄弟のようなものなのである。


3

話を戻そう。
母さんは今夜は遅くなるから夕飯ユキと食べろと言っていた。どこか新しいラーメン屋でも開拓してみようかななんて考えながら朝食を食べていると、携帯にユキからメッセージが届いた。
『ごめん風邪ひいちゃったみたいで...先に学校行ってて!』
「風邪...?」
昨日は具合が悪そうな素振りはなかったし、咳やくしゃみもしてなかったけどな...まあ急に体調が悪くなることもあるんだろう。
そう思い、『大丈夫か?何か欲しいものあれば買ってくるけど』とメッセージを送り、朝食を食べおえ学校に行く支度をする。
15分後、制服に着替え終わり玄関の外に出る。
携帯を確認するとユキからの返信は来ていない。
少しだけ心配になり隣の部屋のインターホンを鳴らしてみる。
「ユキー、大丈夫かー具合悪いなら何か買ってきてやろうかー?」
しばらく返事がなかったが、バタバタと音がしたあとインターホンに応答があった。
「ユート!ひゃ!」
なんだ?妙に甲高い悲鳴が聞こえたが...
「ユキ?大丈夫かー?」
もう一度呼びかけてみる。すると携帯の方にメッセージが送られてきた。
『だいじぃいぶ』
『大丈夫!!』
『本当に大丈夫だから!!うつしたら悪いし買い物も自分でするよ!!』
焦ったようにメッセージが送られてくる。
「わかったよ、じゃあなにか欲しいものあったらメッセージくれよなー」
そう言い残して学校へと向かうことにした。


4

うちから俺たちが通う秋津高校(あきつこうこう)までは徒歩でおよそ20分程度。進学重視の特進科、スポーツ推薦の生徒が通う体育科とその他大勢が所属する普通科がある至って普通に学校だ。
俺もユキも、家から近くて楽という理由でこの学校を選んでいる。
珍しくユキがいない一人の通学路を歩きながら、運動部が朝練をしているグランド横をとおり、いつもと変わらない時間に教室についた。
「よっ!大月!今日は珍しく泉と一緒じゃないんだな?」
クラスメイトに声をかけられる。
「別にいつも一緒にいるわけじゃないだろ、今日ユキは体調不良で学校休むって。」
そんな他愛のないやり取りをしていつもどおりの学校生活が始まった。


5

昼食を食べ、午後の授業を受けているとユキからメッセージが届いた。
『今日の放課後、屋上に来てほしい』
『大事な話があるんだ』
大事な話…?いやそもそも屋上…?
そんな疑問をそのままメッセージで送る。
「屋上って学校の屋上か?今日は体調崩して休むんじゃなかったのか?」
ユキからの返信はすぐにきた。
『学校の屋上でいいよ』
『僕ともう一人、二人で行くから待ってて欲しいんだ』
二人で行く…?誰が…?大事な話って一体?
聞きたいことが山ほどある。疑問のメッセージ送ろうとしたその時、
「大月、どこ見てるんだ!ちゃんと話を聞いとけ!」
教師からのお叱りを受けてしまった。
まああ仕方ない、この授業が終わればもう放課後だ。ユキが学校に来るというなら、疑問はその時に聞けばいい。謎は残ったまま残りの授業が終わり、放課後となった。


6

「屋上の入り口は確か…」
実習棟の階段を登り、屋上を目指す。
階段を登りきり、扉を開けると屋上はつよめの風が吹いていた。日も傾き始めており、少し肌寒い。
あたりを見渡すがユキの姿はない。
「屋上で待ってろって…風が強いし結構寒いぞここ…」
独り言を呟いているとユキからのメッセージが届く。
『屋上についた?すぐに行くから待ってて』
あいつほんとに学校に来るのか…。体調不良で学校休んで、大事な話があるからってわざわざ学校の屋上に来るって、改めて考えるとよくわからない話だ。
そんな考え事をしているとユキともう一人、二人の訪問者が現れた。彼らが、いや彼女たちを見た時にはもうそんな疑問はどうでもよくなっていた。
なぜなら彼女たちは俺が今歩いてきた階段のドアからではなく、大空を飛んできたのだからー。


7

初めそれは大きな鳥か何かだと思った。
黒い大きな影が夕暮れ時の空を飛んでいる、そんなふうに思っていると、その影は徐々に近づき、大きくなってくる。
その影はそのまままっすぐ俺のいる屋上へと降り立ったのだった。
「えっ?」
初めに出たのは驚きの声だった。現状が全く理解できない。

空から舞い降りてきたのは二人、一人は約束通りやってきたユキ だった。学校の制服を着て、なぜか季節外れの毛糸のニット帽をかぶっている。
そしてもう一人長身の美しい女性がいた。
透き通るような純白の長髪、ほとんどん裸のような格好、AVでも見たことがないような豊満な肢体。
絶世の美女という言葉がそのまま形になったような美しい女性。だがしかし、彼女にはヤギのような角が、尻尾が、そしてこの場所までユキを連れて空を飛んできた、大きな翼が生えていた。
艶やかに光沢を放ち、彼女の動きに合わせてゆらゆらと動くその部位からは、コスプレやドッキリなんかじゃない、本物の生き物の一部であることが伝わってくる。
呆気に取られ、動けなくなっている俺に彼女は笑みを浮かべながら話しかけてきた。
「あなたがユートくんね」
「ユキちゃんのいう通りなかなかいい男じゃないの?」
その声色は優しく、妖艶で、聞いてるだけで頭が蕩けてしまいそうになる。目の前の美しい女性に全てを捧げたてしまいたい、声を聞いただけでそんな衝動が湧いてくるようだった。
「ユート、こんなところに呼び出してごめんね、聞いて欲しいお願いがあったんだ。」
ユキの声を聞きはっと我に帰る。
「この人はリリムさん、困ってたボクのことを助けてくれたんだ」
「色々聞きたことはあると思うけど、まずはリリムさんがどんな人でどこから来たのかを話すよ」
異形の美女、リリムさん?の後ろから顔を出したユキがそういった。
「あ…ああ、わかったよ…」
わからないことだらけで頭が混乱している、とにかくここはユキの話を聞くことにするしかないだろう。

8

ユキが一通り目の前の美女、リリムさんのことを話してくれた。どうやら彼女たちは異世界から来た魔物娘というらしい。彼女たちは皆人間の女性のような姿をしており、男性の精を糧に生きている…、そういうことのようだ…。
「こんな話、急にしても信じられないよね…」
ユキが困ったような笑顔を浮かべそう言った。
「いや…目の前にこんなはっきりとした証拠を見せられたんだ…信じるしかないだろ」
「でもなんで…そんな人がユキと一緒に…?」
異形の体を持つ彼女、リリムさんに目をやる。
「それはねぇ、ユキちゃんがね…ユートくんの精液をいーっぱい欲しいんだって♡」
「リ、リリムさん!ちゃんと順を追って話すから!」
楽しそうに話すリリムさんをユキが慌てて遮る。
「信じられないかも知れないけど経緯を一からちゃんと話すから、聞いてくれる…?」
そう言ってユキは話し始めた。


9

「昨日ね、お父さんから手紙が届いたんだ。」
「お父さん今はアフリカの方に行ってるみたいでね、近況報告の手紙と一緒にネックレスが同封されていたんだ。」
「つけると願いが叶う異世界の秘宝だー!なんて手紙に書かれていて、最初はいつもの大袈裟な内容だなと思ったんだけど…」
「なんだか不思議な魅力に惹かれて首にかけてみたんだ、そしたらなんだかすごい肌に馴染む感じがして、体があったかくなってふわふわしてきて、そのまま昨日は寝ちゃったんだ…。」
「それで…今日目が覚めたら… こんな体になってたんだ。」
そう言ってユキは帽子を脱ぐ、制服のシャツを胸元まで捲り上げた。
その頭にはリリムさんと同じ、小ぶりな角が、背中には小さな翼が、腰からは可愛らしい尻尾が、そしてその胸はいままでの雪とは明らかに違う小ぶりでぷっくりとしたおっぱいがあった。
「僕も…リリムさんと同じ魔物娘になっちゃたみたいなんだ…。」


10

リリムさんとユキが今の状況を話してくれた。
ユキが父親からもらったネックレスはリリムさんの世界のもので魔力がこもったものらしい。
それを一晩つけた続けたことでユキの体はこうなってしまったということだ。
「本来このネックレスは魅了の魔力込められているもので、男の子がつけた場合は周りの女の子にモテモテのなったり、好きな女の子が発情して迫ってきたりするんだけど…。」
「男の子でもたまーにこんな風に女の子になっちゃう子がいるのよね♡」
「大抵そういう子は心の中に特殊な思いがあるんだけど…。」
リリムさんは楽しそうに微笑みながらそう言った。

「と…とにかく!今の状況はわかりました、それでどうして二人はここに来たんですか!?」
「なんで俺をここに呼び出したんですか?」
これ以上新しい話を聞くと頭がおかしくなってしまいそうだ、とにかく本題を聞くことにする。

「あららせっかちねぇ、ここからが面白い話だったのに。」
リリムさんが話し始めた。
「まあいいわ、本題に入りましょ。」
「ユキくんが魔物娘になっちゃった話はしてでしょ。つまり彼がこれから生活するには男性の精が必要ってわけ。」
「もちろん普通に生きていく分には普通の食事で十分なんだけど…、魔法とか魔力を使う場合にはどうしても濃厚な精が必要になってくるのよ♡」
「例えば…、ユキくんの角とか翼を隠したり、女の子になって高くなっちゃった声を戻したりとかね。」
「今のユキくんは魔物娘になったばっかりだから、まだ精気が足りずに変身もできないから、こうやって私が連れてきてあげたってわけ。」

するとユキが一歩前に出てきてこう言った。
「ーだからね、ユートの精液を、分けて欲しいんだ...。」
彼、いや彼女は顔を赤らめながらそう言ったー。
21/01/11 15:57更新 / ヤマイシスイ
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