読切小説
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私の主夫になりなさい。
・・・

波の音が、響き渡る。
ここに来たのは、本当はただのヤケだった。
適当に叫んで暴れて疲れたら、もう帰るつもりだった。

しかし、考えれば考えるほど自分が嫌になってくる。
対人関係ではいつもどこかで嫌われて、気が付くといつもハブられている。
就職なんて夢のまた夢、バイトにさえ蹴られ続けている。
特に特技があるわけでもないし、見た目もだ。

「はぁ、何で生まれて来ちゃったんだろう。」

正直、もうこれ以上生きていてはいけないんじゃないかと思った。
目の前には崖がある。その下は海。波打ち際は岩が剥き出しになっている。

そして、気が付くと・・・ガードレールに手を掛けていた。
その次の瞬間・・・

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誰かに、後ろから抱きかかえられた。
背中に当たる柔らかな丸い感触とその匂いが、その相手は女である事を認識させる。

・・・なでなで。

後から抱きかかえられ、頭を撫でられる。
「さぁ。力を抜いて、楽にしてくださいねー・・・。」
優しい、低くて落ち着きのある声で、そっと囁く。
「いいですかー、あなたは自分の魅力に気づいてないだけなんですよー。」

その二言目で、ハッと我に返る。
あまりにあり得ない言葉だったからだ。
抱きかかえていた腕をふりほどき、対面して距離を取る。

「危ない危ない。つい騙されるところだったぜ。」

一方、彼女はきょとんとしている。
一体何がカンに障ったのかわからない、そんな表情だ。

「俺なんかに魅力があるだなんてあり得ない事言われなきゃ、騙されてただろうがな。墓穴掘ったな。 何が望みだ。」

そして間合いを取って、初めて気づく。
彼女はただの人間ではない。理性ではなく感覚が、そう言っている。

「はじめまして。私はエイント・エクゼディール・イェンモア、通称・池本 詠歌。種族としてはアマゾネスに属するわ。もっとも、私自身はそれっぽい生活をしてる訳じゃないけど。」

話を聞くところ、彼女たちの世界では男女のジェンダーが逆転しているらしい。
彼女も一応は人間界の生活に合わせているが、それでも主夫タイプの方がいいらしい。
そして・・・夜は結構激しいなんていう噂も聞いた。

「なんだ、俺の精力が望みか?やめとけ。こんな汚いの受け取ったら、お前が苦労するぞ。」

だが、こんな腐った役立たずのモノをばらまくわけにはいかない。
だからこう言ったのだが、彼女の反応は予想とは全然違っていた。

「・・・あなた、今自殺しようと考えたでしょ。」
確かに、もうちょっとでやっていた。実際問題、自分が生まれてこなかったらみんな楽だったのにと思っている。

「・・・邪魔の入らないところでゆっくりと、お話ししましょ。」

そう言われ、エイントの車のリアシートに押し込められてしまった。
それは一瞬のこと。さすがはアマゾネスだと言うだけある。

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僕はエイントのクルマのリアシートに押し込められた。
彼女もそれを追うように入ってきて、身体を密着させた。
ところが、その次の瞬間から彼女の様子がおかしい。

「だ、だめ・・・もう・・・ガマンできない・・・」

そう言うと、右手をぱんつの中に滑り込ませ、左手は胸を触っていた。
僕は目の前で突然女がオナっているという状況に唖然としていた。

「ご、ごめんね・・・話の途中なのに・・・でも、えーくんの近くにいるってだけで・・・もうガマンできないのぉ!はぁっ、あぁっ、ああああーっ・・・!」

次第に指の動きが激しくなり、ぐちょぐちょと水音がよく聞こえてくる。
そして・・・イった。
異様な雰囲気にビビって逃げようとする。しかし、ドアが開かない。
ロックは解除されている。
そうか、チャイルドプロテクターだ。ご丁寧に、パワーウィンドーもロックされている。
もう逃げられないと悟り、うなだれる。

そして、すっかり上気したエイントがこういう。
「大丈夫よ。私がきみの魅力、最大限まで引き出してあげる。」
「!?」
そう言われるや否や、またもガバッと抱きかかえられてしまった。
そしてその顔は・・・胸の谷間に埋まっていた。

「えーくん・・・抱いて?」

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「はぁ!?」

いきなり突拍子もない頼みに、思いっきり戸惑った。

「わたし、えーくんが欲しいの・・・思いっきり濡れた私の中に・・・来て。」

「大丈夫、わたしが欲しいって言ってるんだから・・・」
それではもう即物主義と言う事で、エイントのぱんつに手を掛ける。
そして紐と股布を繋いでいたスナップを外し、股布をめくる。
「す、凄い・・・何だかヒクついてるよ・・・
「お、お願い・・・私のおまんこがえーくんのおちんぽしゃぶりたがってるのよ!焦らさないで、早く・・・!」
「ぼ、僕も限界です・・・エイントさんの中に、失礼しますっ!」

そう言い、エイントの中に侵入。
一度亀頭が入ってしまうと、文字通り吸い込まれるように奥まで入っていった。

「うぅ・・・くううっ!!!まずい・・・これは・・・」
「ふふ・・・我慢しないで。」

挿入した途端、エイントのヒダがモノを優しく、しかし強く刺激する。
挿入しているだけでかなり気持ちよかった。これで動いたら、瞬殺は間違いない。
そこで上気した、とても嬉しそうな表情でエイントがおねだりしてくる。

「限界なんでしょ?私のおま○こで扱いて、全部残さず中出ししなさい?」

衛司は最後に残った僅かな理性で、挿入したモノを引き抜こうとする。
しかし、エイントはあと少しで抜けるといったところで器用に足を使い、僕の腰をたぐり寄せる。
図らずもピストン運動を繰り返す事になって焦り、そして快感に堪える。
そして数回目の脱出を試みたとき・・・エイントの目が一瞬、睨みをきかせた。

「イきなさい。」

それまでにない力で、脚で腰をガッチリとホールドし続ける。
挿入時のスピードも締め付けも半端なく、まさに渾身の力を込めて僕をイかせようとしていた。

そして・・・堕ちてしまった。



身体の力は抜け、快感と恐怖の入り交じった感情に襲われる。
そして、端末を見てエイントが放った一言がとどめを刺す。

「あらら、もう契約が成立しちゃったみたいね。」

僕は顔面蒼白になる。当たり前だ。ノープランで結婚したも同然なのだから。
ところが、エイントはまるで狙い通りと言わんばかりの表情だった。

「私が、えーくんの面倒見てあげる。つべこべ言わず、堕ちちゃいなさい。」

この「面倒を見る」とは、何も性的な意味だけではなかった。生活の何から何まで、それこそ扶養義務だって負ってかまわない、そう言う意味だった。

「えーくんさえ良ければ、今すぐにでもうちに転がり込んでね。」

それはつまり、エイントはもう僕を離す気などさらさら無いと言うことだった・・・。

・・・

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数日後。
もうダメだと思っていた採用試験。
・・・やはりダメだった。

それに関連する書類を何度も確認していると、その中に一つのメモ書きが入っていた。

「えーくんへ。
不合格、残念でしたね。心中お察しします。

今、私の想いを単刀直入に言います。

迷わず私の家に転がりこんで、夫になりなさい。以上。

今回の件、一見残念なことに思えるでしょう、
しかし優しすぎるあなたは、戦いには向いていません。
コンクリートジャングルでの狩りは、私に任せてください。
あなたは、私のために家で待っていてください。
 変な世間体は忘れて、互いの持っている能力を存分に発揮しましょう。
 
 私は2週間以内にあなたの家に行き、ご両親とお話をさせていただきます。
 それは、あなたを迎えに行くのと同義です。
 説得をする自信はありますので、今から荷物をまとめた方がいいと思います。

 この気持ちに応えていただけるならば、私は徳山衛司を一生大切にすることをここに誓います。
池本 詠歌、本名:エイント・エクゼディール・イェンモア。」

そして宣言通り、エイントはうちにやってきた。

彼女が僕に迫ったこと。
生活費は彼女が稼ぎ、僕が専業主夫になること。
安定した収入基盤や住居があること。
僕がこの家を出ると言うこと。
この提案が、僕にとって有益であること。

・・・そして彼女が、求婚に応じてくれるなら僕を一生愛し続けると誓ったこと。

それを敏腕営業スタッフならではのトークで巧みに伝えていた。
とはいえさすがにいきなりの求婚に両親も引くだろう・・・

と思っていたのだが、

二 つ 返 事 で ア ッ サ リ 承 諾 。

いったいどんなマジックを使ったんだ、と思ったのは事実だ。
しかしその美しく、しかし力強い・・・彼女を飛び越し妻となることが確定したエイントの笑顔がそんな疑問を一瞬で吹っ飛ばし、ハグされた瞬間これからの生活への期待で胸がいっぱいになってしまった。即物的すぎて自分でも嫌になる。

「それでは池本さん、こんな奴ですが宜しくお願いいたします。」
「衛司、お前の将来は決まったな。」

そして快諾した後両親は、それだけ言って話を終わらせてしまった。

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数ヶ月後。

あれから式までは恐ろしく早かった。出会ってからひと月も経っていない。
エイントには引っ越しの予定などなかったので、中古の一軒家を既に購入していた。
そのローンももうすぐ終わる。そして家財道具も改めて揃える必要がなかった。
数年前に一気に壊れて買い換えたという白物家電群は結婚後の生活を想定してファミリーサイズのモノを購入していたからだ。

「えーくん、たっだいま〜っ♪」
エイントは、出会った頃には既に会社の稼ぎ頭と言ってもいい存在だった。
僕が家にやってきてからも、バリバリと仕事をこなしている。
その手腕は、何度も表彰されるほど。僕なんか、とても敵いっこない。
そしてそんな僕は、慣れない家事に戸惑っている。情けないことに、ついサボってしまうことさえある。特に・・・掃除関係は苦手分野で、彼女の負担を軽減できているかは甚だ謎だ。
いくら姐さん女房とはいえ、3つしか違わないのにこの差は何なんだ。

ただ、「安いモノをめざとく見つけてくる」事に関しては僕に一日の長があるようだ。
と言うか、本能に刻み込まれているといった方がいいかもしれない。大学時代に自炊をしていただけあってか、だいたいのモノの底値は頭に入っていたりする。店によって値引きの法則があると言うことも知っている。勿論財布の中身はポイントカードだらけで、財布の中身だけ見れば「いったいどこの主婦だよ!」ってな様相を呈している。
精神構造が20代の男というよりはオバちゃんに近い気がするのも否定しない。
実際、同年代よりもスーパーで並んでるオバちゃんと話が合うことの方が多い。

「やっぱり、えーくんは私と結婚して正解だったのよ。」

もしかしたら、エイントは本能でそれを見抜いたのかもしれない。

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「ねぇ、今から一番重要な家事をしてくれないかしら。」
おい、エイント。ハンターの目になってるぞ。
あ・・・先が読めた。
「お願い。私、もう堪えられない。えーくんが近くにいるってだけで・・・もう、凄く濡れちゃってるの。」
そして僕をゆっくり抱きしめてきた。そう、夜のお誘いだ。

「明日は休みだし、もうこのままやっちゃいましょ!」
そしてエイントは、僕を激しく求めてきた。
「おち○ぽちょうだい♪ザーメンちょうだい♪パンストもぱんつも破っていいから♪スーツ汚してもしわにしてもいいわよ♪」
スーツ姿のままベッドに寝転がり、脚を広げて誘っている。
こんな露骨な誘い方をしているエロ妻の誘惑に耐えられるほど、僕は人間できてない。
字義通りにぱんつとパンストを破り、その穴から快楽の壺へと侵入する。

「いいわぁ。えーくんが夢中で腰を振ってくれてるの嬉しいわ。もっとよ、もっと気持ちよくなってぇ!」

・・・

正直、未だに僕はイきやすい。
だが、それで手加減すると絶対に怒られてしまう。
「変に強がらない。私は、そのままのえーくんを見ていたいの。」
どうも、情けなくイッてしまう姿がとてもかわいく、快楽と本能と欲望のまま彼女を求める姿が愛おしく見えるらしい。
かわいいとか言われるのは男としては複雑な気分だが、元々ジェンダーが逆転していることを考えればそれも些末な問題かもしれない。
となれば、彼女が喜び僕も本能のまま気持ちよくなれるこの要求に刃向かう理由はない。

・・・

「うわっ!エイントっ!今日はやたら締め付けるね!」
「だって、欲求不満なんだもんっ!」
「でも、そんなコトされたら・・・あぁっ!」

・・・

「あぁ ・・・き、気持ちいい・・・」
「ね? 素直に中出しするの気持ちいいでしょ? 」

・・・

初めて会った時、僕は彼女にこう言われた。
「他の人がどう思うかは知らないけれど、私から見ればあなたは魅力のカタマリよ。あなたに必要なのは精神修復と自己肯定力の強化、そして魅力を理解し使いこなせるパートナーの存在。それだけよ。私にはその自信・・・もっと言えば勝算があるわ。
お膳立ては出来てるのよ?それともなーに?こんなオバサン目前の年上じゃ嫌?」
「いえいえ、凄く魅力的です!でも・・・責任、持てません。」
「・・・責任を持つのは私よ。このことだけに限らず、えーくんの将来全てに責任を持つ事になってるわ。現状については調べ付いてるわよ。・・・」

・・・

「・・・えーくん?ねぇったら。どうしたの?」
「あぁ、ごめん。エイントと会った時のことを思い出してたんだよ。」

・・・

初めて会ってから数日後。
「僕とつきあうなんて正気かい?こんな失敗だらけの奴となんて・・・」
「そんなダメな奴には到底見えないわ。えーくんは自分の失敗は絶対許さないし、軽率な行動も律してる。いい事よ。ただ、それがちょっと行き過ぎてるだけ。だから今は私を信じて、欲望のまま犯しなさい。」
「どうなっても知らないですよ、エ、エィ・・・すみません。名前、何でしたっけ。」
「エイント・エクゼディール・イェンモア。でも私も通称の詠歌で通してるわ、面倒だからね。私にとって、えーくんはそこまでする存在なんですよ。」
「そこまでの存在なら、尚更本名で呼ばないと。エイントさん、宜しくお願いします。 出来るだけ早く、覚えられるよう善処します。」
「えぇ、嬉しいわ。それじゃ前戯はなしで、いきなりハメてくださいね。」

・・・そして、町はずれ、海辺の公園の公衆トイレで激しく求め合った。

・・・

「エイント。君は、僕と結婚して幸せかい?」
「えぇ、勿論。えーくんはどうなの?」
「嬉しいけれど、何だか申し訳ないな。凄く負担ばっかりかけて・・・」
「確かにそれなりに負担はあるわ。だけどね、孤独が辛かった私はそれと引き替えにえーくんが待ってくれているという大きな幸せを手に入れた。それだけで、十分な報酬よ。」
「うぅん、あの時エイントがいなかったら、僕はもうこの世にいなかったかもしれない。それがいきなりこんな展開になったんだ。まだまだ返し足りないよ。もしかしたら、一生かかっても返せないかもしれない。」
「だったら、返し終わるまでここにいなさい。もっとも、私はその分をえーくんに与えて一生ここにとどまってもらうつもりだけど。」

長い間、僕は道に迷っていた。
自分の存在意義を、見つけられなかった。
でも、今はその心配をしなくていい。
なぜなら、僕がここにいること自体が存在意義だといってくれる、強く、優しく、美しい妻がそこにいるのだから。
一度道を見つけてしまえば、あとはもうこっちのもの。
彼女に喜んでもらうべく、試行錯誤をするだけだ。

「私はえーくんの為にいる。えーくんは私の為にいる。だから、私は絶対にえーくんを手放さないし、手放されないように全力で尽くす。それを、よく覚えておいてくださいね。」
11/12/23 13:51更新 / ぜろトラ!

■作者メッセージ
アマゾネスというと山奥の集落に連れて行かれるとかが一般的ですが、現代社会で山奥に連れて行かれるとかはさすがにきつすぎる・・・と言うことで敢えてその常識を無視してみたらこうなりました。

ある意味、専業主夫を持つキャリアウーマンは現代社会のアマゾネスなのかもしれません。

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