読切小説
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ひねくれ蜘蛛は絡まった
 今日の私は、最高に不機嫌でした。
 「………チッ」
 舌打ちを一つ。ガジガジと爪を齧って、多重に張られた蜘蛛の巣に身体を沈めます。だらりと四肢……背中の脚も含めれば八肢ですか。それらを投げ出し、仰向けになって岩肌の天井を眺めます。
 「あの馬鹿、今日はなかなかに遅いですね…」
 首を回して暗い洞窟に空いた穴を睨みつけます。外へと通じる唯一の道です。
 いつもなら、このくらいの時間に間抜け面がのこのこと入口からやってくるのですが、この日は10分待っても一切来る気配がありませんでした。
 「………ま、あれが来ようが来まいがどうでもいいのですがね」
 十数日前に私の巣に迷い込んできた阿呆に思いを馳せる。ええ、毎日勝手に私の住処に邪魔してくる阿呆です。巣を広げるのに邪魔なので、もう一生来なくていいのですが……
 「…………癪です。あの男を待つことも、来ないことにイラつくのも」
 無性に腹が立ちます。さして興味もないはずの男のせいでこんなにも鬱屈した気分になってしまっているのが、どうしようもなく不快でした。

 「………………チッ。……来ましたね」
 しばらく苛立ちと戦っていると、遠くで足音が聞こえました。この聞くからに学の欠片もなさそうな足音。間違いなく、彼です。
 とくん。胸が高鳴りました。
 彼が近づいている。また、私のところを訪ねてきた。そう考えると、どうにも動機が激しくなり、顔が熱くなってしまいます。
 嗚呼、全く腹立たしい。これではまるで、恋する乙女のようではありませんか。
 「……反吐が出ます」
 背から生えた四本の蜘蛛の脚を使い身体を起こして、洞窟の入り口に背中を向けて糸を紡ぎ始めます。
 それから数分、無意味に長い洞窟の道から聞こえる足音が徐々に大きくなっていき、ついに私に会いに来た馬鹿者が現れました。
 「…………………………」
 出迎えることはしません。無視して、巣に糸を張るフリを続けます。
 しかし巣にやって来た馬鹿は、一見すると集中して作業をしている風に見える私のことなどお構いなしに、元気に声をかけてきました。
 「こんにちは、シオン!今日も遊びに来たよ!」
 優し気な少年に名前を呼ばれた瞬間、ぞくりと、甘い痺れが背筋に走りました。
 悪寒です。これは悪寒です。ずっと待ち望んだモノを与えられたような、渇きを潤すような、そういう陶酔感もありますが全て悪寒です。風邪をひきましたね、これは。そういうことにしましょう。
 「………喧しいです。頭に響くので黙ってくれませんか」
 このまま無視を続けても良かったのですが、冷たい女と思われるのもなんとなくムカつくので振り返って返事をしてやります。
 見たくもないのに私の両の目は勝手に彼を捉えます。私の名前を気安く呼んでくる馬鹿は、今日も今日とで幸せそうな表情をしていました。
 「……ぼーっと突っ立ってるだけなら邪魔でしかないので、帰ってくれませんか?」
 精一杯眉間にしわを寄せて睨んでやりましょう。
 その視線の先、鞄を持った制服の少年……榎戸宗弥は困ったような笑顔を浮かべました。





■■■■■■■■■■■■





 今日の僕はとっても上機嫌だった。まぁ、シオンと出会ってから毎日が楽しいんだけど。恋をすれば世界が変わるっていうのは間違いじゃなかったみたいだ。
 「………はあ…。貴方は年中幸せそうで羨ましいですね、宗弥」
 鞄を置いて地べたに座ろうとしたところで、蜘蛛の巣の中で糸を紡いでいた少女に嫌味の込められた溜め息をつかれた。

 彼女…シオンと出会ったのは十数日前。学校帰りにふらふらしてたら、いつの間にか洞窟に迷い込んでしまったのがきっかけだった。前人未到の洞窟を見つけてテンションが上がってしまったんだと思う。
 たぶん男って穴が好きなんだろうね。女の人の穴に挿れるんだし。ははは、最低の下ネタだ。シオンに披露したら氷の如く冷たい目で蔑まれたことだろう。
 そんなこんなでワクワクしながら洞窟を進んでいって、やがて体育館よりも広くて、四方八方に白い糸が張り巡らされた地下空間に行きついた。
 その広大さにしばらく呆然としていたところに、ふと蜘蛛糸の海の中に一人の少女がいることに気づいて、好奇心から声をかけてみたんだっけ。
 腰まで届く艶やかな黒髪に、背からは紫の脚を四つ。肌は白く、きめ細かく、小柄で胸も控えめなスレンダーな女の子。
 それが彼女、アトラク=ナクアのシオンだった。
 『………間抜け面が迷い込んで来ましたね。私は蜘蛛ですが、馬鹿を巣にかける趣味はありませんよ』
 鋭い目つきの少女の第一声は罵倒だった。苛立ちを隠そうともせず、露骨に舌打ちをして僕を睨みつけてきたのを覚えている。

 それが僕とシオンの出会い。それ以来僕は、高校の授業が終われば必ず彼女の巣に足を運ぶようになった。
 理由としては、まぁ……シオンに一目惚れしたというか……。
 クラスにも何人か魔物の子はいるけど、僕は一番シオンが可愛く見えた。
 鋭い雰囲気も、苛立った表情も、真剣に蜘蛛糸を紡ぐ横顔も、どれもたまらなく魅力的だった。
 だから僕は、邪険に扱われながらも彼女に逢うために此処を訪れている。ほんの少しでも、シオンの特別になりたいから。
 願わくは、恋人に。
 ……なんて、無理かもしれないけど。

 「よくもまぁ、毎日飽きもせずにここに来るものです。なにが楽しくてこの殺風景極まる巣に足を運ぶのだか」
 なんて考えていると、糸を編んでいたシオンが呆れ返った声を薄暗い洞窟に響かせた。
 「シオンがいるからね。キミを見てると楽しいから」
 本当は、“キミと少しでも一緒にいたいから”って言いたかったけど、恥ずかしさからそこまでは言えなかった。
 「ここは昆虫館ではありませんよ。見世物扱いされるのは不快です」
 機嫌を損ねたらしく、そっぽを向かれてしまった。
 彼女は魔物にしては珍しく、他人に優しくない。本気で罵倒してくる魔物なんて彼女くらいのものじゃないだろうか。
 「……………………チッ。どうにも調子が悪いですね」
 憎たらし気に舌打ちをして、紡いでいた巣の一部を切り落とした。詳しくは分からないけど、なにやら糸を張る箇所を間違えたみたいだ。
 「……気が散ります。舐め回すように見ているのが丸分かりなんですよ、宗弥」
 今度は振り返って、僕に苛立ちをぶつけてくる。彼女は神経質な性格だから、視線一つでも気になって作業が上手くできないみたいだ。
 ……まぁ、実際に彼女の背中を凝視していたので何も言い返せないんだけど。
 「そんなに気になりますか?これだから童貞は。ちょっと露出の高い服を着れば、あらぬところが見えないかと躍起になって目を凝らすのですから。度し難い変態です。」
 シオンは胸と腰回りを隠せる程度にしか布の無い服を着用しているので、脇から太腿、可愛らしいおへそまで全部見えてしまう。こんな風に惜しげもなく身体を見せつけられたら、むしろ気にしないほうが難しい。
 「えーと、ごめん。その……キミは可愛いから、つい…」
 「『可愛いから』などとよく言えたものです。もう少しマシな言い訳はなかったのですか?あるいは、貴方は容姿に優れた者であれば誰であろうと邪な目で見るのですか?」
 口調は丁寧ながら、内容は棘だらけ。単に罵倒されるより地味にキツイ、ネチネチとした文句だ。
 「まったく、男は馬鹿です。私のような貧相な女でもちょっと肌を晒せば簡単に欲情するのですから。」
 「………十分、魅力的だと思うけど」
 彼女に聞こえるか聞こえないかの小さな声で呟く。
 確かに胸とかは小さいけど、決してスタイルが悪いというわけではない。すらりとしたシルエットは他の魔物にも負けていないくらい綺麗だし、僕は彼女くらいの大きさの胸が好きだ。
 かなり色眼鏡で見ている自覚はあるけど、それでも“貧相な女”という評価はシオンに相応しくないと思う。
 「………………………褒めるつもりなら、もっと声を張ってください。」
 聞こえていたらしく、彼女は再び僕に背を向ける。黒髪から覗く耳が赤いような気がしたけど……気のせいだろうか。
 「まったく、邪魔が極まります。無言で見られるのは不愉快です。早く帰ってはくれませんか?」
 拗ねたのかな。腹を立てた、とはまた違った感じの悪感情を叩きつけてくる。
 「帰る気がないなら、ちょっとは巣の主である私を楽しませようとしてください。本当に気が利かないですね、宗弥は。」
 ……要約すると、“暇してるから何かしろ。しないなら帰れ”ということだろうか。なにせシオンはひねくれているから、真意を読むのは容易じゃない。
 「えー……じゃあ、何か話でもしようか?」
 さて、当たりか外れか。外れなら、それはそれは酷い暴言が返ってくるだろうけど……
 「………………つまらない話は無視します」
 どうやら当たりだったみたいだ。背中を向けたままだから彼女の表情はうかがえないが、そこまで嫌って感じじゃない。
 「そうだね、これは僕のとっておきの面白話なんだけど……」
 気難しい彼女だけど、こうやってお喋りできるのは楽しい。シオンが笑っているところなんて見たことないから、僕が楽しいだけなんじゃないかってかなり不安になるけど。
 たぶん、その通りなんだろうな。でも、好きな人と一緒の時間を共有できることは幸せなことだ。
 せめて彼女も楽しんでもらえるように、色んな話をしてみることにした。

 それからしばらくは、シオンに話しかけて無視されたり、数回話が続いたりを繰り返した。返ってくる言葉や、たまに投げかけられる彼女からの言葉には毒が含まれていたけど、それでも好きな人との会話は楽しくて、時間を忘れて話し込んでしまった。
 「……あっ、もうこんな時間だ。キミと話してると、あっという間に時間が経つね」
 腕時計の短針は8を指していた。午後8時。外はもう真っ暗だろう。
 立ち上がって伸びをする。その様子を、つまらなさそうにシオンが見ていた。
 「帰るのですか?いい判断とは言えませんね。貴方のような間抜けが夜闇の中で無事に帰路につけると思っているのですか?正気ですか?」
 さっきまで帰れ帰れと急かしてたのに、いざ帰るとなると難色を示してくる。ひねくれ者なシオンだが、こういうときは本当に彼女のことがよく分からなくなる。
 「宗弥は鈍臭くて思慮が浅く愚かで察しが悪い救えない馬鹿ですから」
 「えっ、そこまで言う?」
 畳みかけるような暴言が心を抉ってくる。ここまで言われる所以があっただろうか。
 「……ですから、暗夜を行くなどと馬鹿な真似はせず、一晩ここで明かすというのが賢明な判断です。そんなことも分かりませんか?分からないから馬鹿なのでしょうが」
 わりと本気で凹んでいたところに、かなり早口で捲し立ててきた。
 「それってつまり、泊まっていけってこと?」
 読解力はないほうだが、おそらくシオンはそういうことが言いたいのだろう。
 珍しい。帰る際に文句を言ってくることは今までにもあったけど、ここまで露骨に引き留めようとしてきたのは初めてだった。
 「……まあ、そうですね。たまらなく不愉快ですがこうなっては仕方がありません。泊めてあげましょう。ええ、邪魔でしかありませんが私は寛大な心を持つ女なのでどうしようもない貴方を一晩止めるのは嫌ではありますが仕方ないので泊めてあげましょう。
 もっともこの虚無を集めたような蜘蛛の巣には娯楽は皆無なので延々とくだらない話を私とするハメになるでしょうし、お腹が空いたとしても貴方のような愚鈍な男に出す食事などないので私の残飯を食らうことになるでしょうが。
 ベッドは私の物しかないので貴方は地面で寝てくださいね。洞窟の夜は冷えるので凍えながら眠ればいいのです。寒さに震えて『どうにかしてください』と這いつくばってみっともなく懇願することになるでしょう。ま、まぁ、私は寛大なのであまりに貴方が情けなく喚くのでしたらベッドの半分くらいは貸してあげますよ。
 ということなので、馬鹿な貴方は馬鹿らしく巣で夜を過ごし、馬鹿みたいな様子を私に見せればいいのです。はい、泊まりますね?宗弥?」
 「いや、帰るよ?」
 「……………………………………………」
 絶句された。
 シオンのお家にお泊り、というのはとても魅力的な提案だけど、別に僕は家に帰れないわけではないし。最近は毎日これくらいの時間に帰っているのだから、今日もいつも通りに帰路につくだけだ。
 そもそも、ここにお邪魔すること自体がシオンの迷惑になるのだから、泊まったりしてこれ以上彼女に負担をかけるわけにはいかない。
 「心配してくれてありがとうね。でも、僕は大丈夫だから。」
 「………………………心配などしていません」
 今まで聞いたこともないような低い声がした。
 あっ、これは不味い。これ、本気で怒っているやつだ!
 「もういいです、さっさと帰ってください。顔も見たくありません。存在が不快です。早急に消えてください。早く!今すぐに!」
 さっきまでとは一変して、鬼の形相で怒声を張り上げてくる。
 なんで怒っているのかはさっぱり分からないけど、なにやら僕の回答は間違いだったようだ。
 「な、なんかゴメン!今度お詫びにケーキでも持ってくるよ!」
 「いりません!二度と来なくていいです!」
 キレたシオンがあまりにも怖かったので、逃げるように洞窟を後にする。
 何がいけなかったのか。泊まるべきだったのだろうか?でも迷惑になるしなあ…。
 暗い洞窟を駆けながら考えるが、正解はとんと分からなかった。

 「………あっ、鞄置いたままだ…」
 代わりに思い出すのは、そんなことだけ。
 取りに戻るのは得策ではない。宿題のプリントとか全部入れてるからちょっと困るけど、今はシオンが怒ってる。
 宿題を忘れて先生に怒られるか、シオンに怒られるかなら、前者のほうが断然マシだ。
 「はぁ…上手くいかないなぁ…」
 シオンと笑いあってみたいのに、どうにもままならない。
 恋人になるのはやはり無理なのかな。
 肩を落として、ため息をついた。





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 私は、酷く怒っていました。
 理由は簡単、あの馬鹿が私の提案をあっさりと断ったからです。
 「…私がっ…どれだけの、勇気を振り絞ったとっ………んっ♡」
 下腹部が甘く痺れる。蜘蛛糸のベッドに横たわり、濡れた割れ目を指でなぞれば、脳髄を恍惚が駆け抜けます。
 「最っ悪です…っ!なんで、アレがいなくなった途端にぃ……♡」
 どうしようもなく怒っているのに、宗弥がいなくなった途端に私の子宮は寂しさを訴えてきました。
 イライラと切なさが同時に襲ってきて、このストレスを発散させるために、私は一心不乱に自慰に耽ります。
 「クッソむかつきます…くっ♡……あの男が来てから、疼くのがっ、止まらな、ひゃっ♡」
 感じ入った女の声が巣に反響します。それが私のものだと理解すると、羞恥より先に怒気が湧き上がってきました。

 あの馬鹿面と初めて会った日から、私はずっと発情したような状態なのです。アレを待つ間に何度もムラムラして、今では一日の半分をオナニーで潰している始末です。
 今日だって宗弥が来るまでに何時間もシたのに、全然収まってくれません。アイツのせいで巣が全く広がらなくなってしまいました。糸を張る時間が、快楽に耽溺する時間に代わってしまったからです。
 「来たら、来たでっ……落ち着かないしぃ…♡」
 左の中指で乳首を転がしつつ、愛液を漏らす密壺の入り口を執拗に撫でる。甘く、粘りつくような快感に、身体中がぞわぞわします。
 「宗弥に見られてるだけでっ♡お腹の奥が、切なくなってぇ♡…んぁっ♡」
 あの少年の視線を感じては気が散り、蜘蛛の糸を上手く編めなくなります。何度も糸を張る箇所を間違えてしまうのです。
 単調な作業なんかせずに、もっと彼の視線を感じたい、もっと彼に見てほしい、もっと彼に視姦されたい。そんなはしたない想いに心を埋め尽くされるのです。
 「むかつく…っ♡宗弥にぃ、恋してるみたいではっ、ありませんかぁ…っ♡」
 そんなわけがないのに。なのに彼を想って性感帯を責めると、感度が比べ物にならないほどに上がってしまう。
 「んひゃぁっ♡なんで、気持ちよくなるんですかぁっ♡嫌、なのにぃ…♡」
 自分の指に宗弥を重ね、彼に犯されているという妄想の中でする自慰は、憎たらしいくらい気持ちがいい。
 彼に優しく女性器を触られてると思うと軽くイキそうになる。彼に勃起した乳首を弄られていると思うと、もっと弄り回して欲しいと懇願しそうになる。
 それが、なによりも腹立たしい。
 「そもそもっ、アイツが悪いんですっ…!私を犯すくらいの、気概はないのですか、あっ♡」
 一応は魔物である私からすれば、煮え切らない態度ばかりの宗弥には怒りを覚えます。暗に、魅力に欠くと言われている気さえします。
 もちろん、彼に犯されるなど不快でしかない………
 「……ひゃぁぁぁぁっ!?」
 “彼に犯される”。それを妄想した瞬間、鋭い快感に襲われ抵抗することもできずに果ててしましました。
 もしも、彼の勃起した男性器で、私のナカを突かれたら…♡
 「ひぃっ♡なん、でぇ…♡イッったのに、指、止まらないぃぃ♡」
 気づくと私は、潤んだ秘裂に中指を滑り込ませ、指先で肉壁を擦りつけていました。
 興奮が止まらない。空想が止まらない。
 この瞬間において、私の膣内を虐めているのは私の指ではなく、彼の肉棒なのです。
 「あぁっ♡そこっ、そこは駄目ですっ♡やらっ、気持ちよくならないでぇぇぇぇっ♡」
 アイツと交わるなんて嫌なはずなのに、あんな馬鹿なんて、私の好みじゃないはずなのに。
 むかつく。何もかもが腹立たしい。
 「なんでっ、私が寂しい思いをっ、んひゃぁ♡…しなきゃ、ならないのっ、ですかぁっ♡」
 もう一本指を挿れて、寂しい寂しいと喚く肉壁を慰める。怒りをぶつけるようにGスポットを重点的に刺激して、快感を高めていきます。
 それでも心は埋まらない。どれだけ快楽に身を任せても、心に穴が空いたような寂寥感が収まらない。
 「だから今夜は、一緒にいたかったのに……っ♡」
 なけなしの勇気を奮い立たせ、宗弥に泊まるように誘ったのに。
 「あの、馬鹿がぁ…っ♡私を、こんなにしてっ、へらへらしてんじゃないですよ…っ!」
 プランは完璧でした。
 彼と下らない話に興じ、一緒に食事をする。当然、私一人分の食事しかありません。そこで彼はお腹が空いたと言ってくるから、仕方なく私のご飯を食べさせてあげます。食器は一つしかないので、俗にいう『あーん』というやつをする予定でした。
 寝るときは彼を地面に寝かせてやる。私のベッドは一人用ですからね。しばらくすると、彼は地面が固いだの寒いだのと喚いてくることでしょう。なので、しょうがなく私のベッドに招いて、添い寝してあげる……予定でした。
 まぁ、彼も性欲に支配されたケダモノです。間近に感じる私の体温や匂い、柔らかい肌の感触に劣情を催し、私に襲い掛かってくることでしょう。
 ええ、そうなれば結婚するしかありません。あとは一生、宗弥をいびり倒して暮らすだけ。実に素晴らしい計画でした。
 「なのに、なのにぃ…っ♡あっさり帰って…っ!信じ、られません…っ!」
 そんなに私といるのが嫌なのでしょうか。毎日邪険にされても遊びに来るくせに。
 ……いえ、邪険にされているから、でしょう。誰だって罵倒されれば嫌にもなります。口を開けば悪態が出てくる私に今まで付き合っていたことのほうが異常なのです。
 「っ…離れるのは、嫌です…っ」
 宗弥がいなくなる。それを考えると、途端に怖くなる。
 たった数時間会えないだけで気が狂いそうになっているのに、もしも一生会えなくなったら……
 「やっ、いやですっ!寂しいのは、もういやぁぁぁぁっ!」
 独りは嫌です、彼に会えないのは嫌です!だって、こんなにも寂しくて切ないのです!
 ああ、宗弥は最低のクズです。貴方を想って震えているのに、どうして迎えにも来ないのですか!
 「あぁっ♡助けてっ、助けてよぉぉっ♡もっとここにいてっ、くださいぃぃ♡」
 助けてくれない薄情な彼に腹が立つ。願ったって彼が来ない現実に泣きたくなる。頭がおかしくなりそうです。
 せめて幻想の中だけでも彼を感じたくて、ぐちゅぐちゅと激しくナカをかき回す。
 「はぁぁ♡でも、足りないっ♡もっと、もっとしてぇ…っ♡」
 彼に小ぶりな胸を犯されたい。
 指で乳首をねっとりとこね回し、もう片方は蜘蛛脚の先端でカリカリと引っ掻く。宗弥にこうやって、優しく虐めて欲しい。
 「ちくびっ、いいですぅ…♡ひゃぁっ♡」
 でも、彼に激しく責められたい。感じるところを思いっきり摘んで欲しい。
 さらに蜘蛛の脚を二本ほど動かし、ぷっくりと勃ったクリトリスを挟む。ぎゅうっと摘まめば、身体の芯が痺れるような快感に襲われる。
 「んひぃぃぃっ♡らめぇっ♡クリよわいんですぅぅっ♡」
 もっと、もっと、宗弥には私の全てを愛してほしい。
 はしたなく股を開き、四本目の脚を……後ろの穴にあてがう。
 「あっ♡はあぁぁぁぁぁぁっ♡そこもっ、してぇぇ……♡」
 尻穴に浅く出し入れすれば、なんとも言えないもどかしい快楽に包まれました。実際に、彼に汚いところまで責め立てられたら、どれだけ気持ちのいいことでしょうか。
 「きもちいっ♡きもちいいですぅぅぅぅぅっ♡」
 感じるところ全てを弄り倒し、スパートをかける。頭に浮かぶのは、宗弥のことだけ。
 私の貧相な身体も、鋭い目つきも、悪い口も、常に不機嫌な性格も、全部認めてほしい。全部、彼に受け入れてほしい。
 ………私を、抱きしめて…♡
 「ひゃっ、イクッ♡イキますぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ♡♡」
 弓なりにのけ反り、潮は吹いて絶頂する。
 ひゅー、ひゅーと擦れた息をして、気怠い肢体をベッドに投げ出します。
 甘くて、けれど決して満たされない悦楽。どれだけ大きく果てても、どれだけ長く絶頂の余韻が身体に残っても、私の心は乾いたままでした。
 「……………最低、です…」
 みっともなく恋する少女のように宗弥を想ってオナニーしたことも、微塵も収まらない子宮の疼きも、何もかもが最悪でした。
 心の奥が満たされない。何かが致命的に欠けている感覚。己の半分を失ったような、あるいはご馳走を前におあずけを食らっているような、そんな耐えがたい苦痛に苛まれます。
 「ああ、クソっ…!どいつもこいつも…!」
 腹が立つ。腹が立つ!
 私を助けない宗弥が憎くて仕方がない!
 宗弥に素直にできない私に腹が立つ!
 むしゃくしゃして蜘蛛の巣を殴りつけます。せっかく編んだ糸がバラバラになりますが、最早そんなことはどうでもいい。気が狂いそうな激情が収まるなら、安い代償です。

 「はぁ…!はぁ…!…………あ?」
 息を荒げて蜘蛛糸を壊していると、視界になにか、見慣れない物が映りました。目を凝らせば、そこには宗弥の鞄が落ちていました。
 彼は慌てて帰ってしまいましたから、忘れていったのでしょう。本当に愚鈍です。馬鹿です。なぜ取りに戻ってこないのか。とても困るでしょうに。
 クソが。取りに帰ってきたらいいのに。来ないのでしょうね。いい加減にしてほしい。
 「そもそも、なんで私がこんな思いをせねばならないのですか…」
 そうです。私が彼のために心を乱すのはおかしいではありませんか。宗弥のほうが、気が狂うような恋情に悩むべきなのです。アイツが私を遮二無二求めるべきなのです。
 「………頭にきました。もう我慢がなりません」
 鞄を拾って、ふらふらと洞窟の外を目指す。

 犯す。
 榎戸宗弥を、魔物らしいやり方で調教してやる。
 あの馬鹿野郎にはお仕置きが必要ですから。
 「地獄を見せてやります。私の苦しみを味わえばいいのです…!」
 奴の自宅など知りませんが、無問題です。魔物は男を逃さない。何処にいようが、何処へ逃げようが、必ず見つけ出します。
 「蜘蛛の巣にかかっておいて、無事でいられると思わないことです」
 宗弥は私のモノです。私の巣にノコノコ迷い込んだのですから。
 怒れるままに、糸にかかった獲物の元へと。
 私は静かに足を進めたのでした。





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 「こ、こんばんはだね、シオン……」
 僕はだいぶ困惑していた。呑気に挨拶なんてしてみたけど、ありえないくらいに怒っている彼女の雰囲気から察するに、そんなことをしている場合ではなさそうだ。
 23時46分。自室の明かりを消して寝ようとした直後、暗くなった部屋にシオンが現れた。
 僕の鞄を持っていたから、最初は「届けてくれたんだ!ありがとう!」なんて思ったんだけど、あっという間にベッドに押し倒されたことから考えるに、なにやら只事ではなさそうだ。
 「えーと、その……なんかごめん?」
 とりあえず謝ってみる。しかし、僕の上に佇むシオンは、氷河もかくやといった冷たい目で見下ろしたままだ。
 僕は今、手足を彼女の背中から生えている蜘蛛の脚で押さえつけられているので、一切身動きが取れない。今の僕にできる事といえば、服の隙間から見えそうになるシオンの際どい所から目を逸らすことだけだ。
 「人の気も知らないで、貴方はぐっすり朝まで寝ようとしていたわけですか。そうですか」
 拘束はしたまま、僕の上に覆いかぶさってくる。
 間近に迫ったシオンに、心臓が早鐘を打つ。思えば、彼女に触れたのは初めてだ。
 「……随分と心拍が早いですね。何か、期待しているのですか?」
 耳元で囁かれて背筋がぞくぞくっと震えた。
 期待。そんな風に言われると、嫌でも邪なことを思い描いてしまう。
 魔物である彼女とこんなに密着しているということは…やっぱり「そういうこと」なんじゃないかって。
 「ハッ、冗談じゃありません」
 鼻で笑い、シオンの唇がゆっくりと首筋に近づいてきて……
 「………がっ!?」
 なにか、首に突き立てられた。
 痛みはない。その代わり、熱い液体が注がれていく感覚がする。
 体が熱くなっていく。体温が上がるにつれて、情欲も燃え上がっていく。
 間違いない。毒だ。それも、媚薬に近い物。
 シオンを犯したくて仕方がない。両手足が動かせたなら、今すぐに彼女を押し倒して勃起した逸物を突っ込んでいたことだろう。
 「まさか、私が貴方とイチャイチャ甘々な交わりをする、だなんて思っていませんよね?するわけないでしょう。私をほったらかしにした貴方には、毒液漬けで頭が壊れるような惨めなセックスがお似合いです」
 冷たく言い放ちながら、申し訳程度に恥部を隠していた布を脱ぎ捨て生まれたままの姿になるシオン。
 その光景だけで、僕の分身は痛いくらいに反り勃ってしまった。
 「本当に、最低の変態ですね。私の裸体がそんなにいいんですか?そんなに私を犯したいんですか?」
 見せつけるかのように細い指で小さな胸を揉みしだくシオンに対して、僕は荒い息しか吐けなかった。
 一刻も早くシオンの膣内に男性器をねじ込んで、思い切り精を放ちたい。彼女の言う通り、今や僕には性衝動しか存在しない。
 「あぁ、残念でしたね。貴方の好きなようにはできません。宗弥は今、身動きが取れませんものね」
 焦らすみたいにゆっくりとズボンが下ろされていく。外気に触れた僕のソレは、快楽を期待して震えていた。
 嗜虐的な笑みを浮かべ、白い指が僕のモノに触れてくる。彼女につうっとなぞられただけで、思わず息が漏れてしまった。
 「これだけで射精しそうですね。あーあ、これじゃあ本当に駄目になるかもですね」
 先端が割れ目に触れた。暖かくて、ぬるぬるしてる。
 彼女はもう準備が出来ていたらしく、入口で擦られるたびに僕と彼女の間に愛液の糸が引かれる。
 「そろそろ、んっ♡……シましょうか…♡」
 「っ!ま、待ってシオン!」
 「待つわけ、ないでしょう…………んあぁぁぁっ♡」
 静止の声は届かず、シオンが一気に腰を沈めた。
 食べられた。そう錯覚するほどの快感。
 小柄な彼女の狭い密壺に締め付けられ、肉棒全体を襞が包み込むように撫でまわす。
 熱くて、溶けそうで。なにより、ずっと思い焦がれたシオンと繋がっているという事実が、気持ちよさを際限なく煽っていく。
 「ふーっ♡ふーっ♡……これがっ、宗弥の…っ♡」
 シオンはというと、歯を食いしばって小さく震えていた。目を凝らせば、結合部から血が流れているのが見えた。
 「シオンっ!?血が出て……」
 「喧しいです…!痛いわけ、ないでしょう…!」
 紅潮した顔の彼女と、目が合う。
 それは、痛みに耐える目じゃなくて、悦びに震え愛欲に染まった瞳だった。
 「…………むかつくことに、気持ちよかっただけです…」
 もの凄く小さな声だったけど、確かに聞こえた。余りにストレートな言葉に、思わず僕も赤面してしまう。
 「ああもう!動きますよ!さっさと射精してください!」
 「ちょっ、待っ……ぐっ!」
 言うや否や、腰の上のシオンが激しく跳ねた。上下するごとに膣壁が絡みつき、毒に侵された身体を責め立てていく。
 すごい。気持ちいい。気を抜けば射精しそうだ。
 だけど彼女は、そんなの関係ないとばかりに一方的かつ暴力的に腰を振る。
 「は、ははっ、んぁっ♡みっともない、ですねっ…ぃひっ♡私を放ったから、あん♡そうなるん、ですよっ!」
 ぬちゃっぬちゃっ、と粘質な音と共に、激しく腰を振るう彼女が怒りをぶつけてくる。
 「ほらっ壊れてください!とっとと私に依存すればいいんですよ!馬鹿な貴方は、一生を穴倉で消費するのがお似合いなんですっ!」
 僕の身体を掴んで、縋りつくように。そうされたら、いくら馬鹿でも彼女がどうして怒っているのかは察しがつく。
 「………僕が帰ったのを、怒ってる?」
 舌打ちが聞こえた。図星だったみたいで、シオンは顔を歪ませてひたすらに僕を睨みつけてくる。
 「なんでっ、こういうときだけ察しがいいんですか!私が寂しい思いをしてることくらい、分かってくださいよ!だから貴方は馬鹿なんです!」
 より一層動きを激しくして、激情を吐き出す。押さえつける蜘蛛の脚にも力が入り、ぎしりとベッドが軋んだ。
 「ずるい、ずるいです!私ばっかり、おかしくなりそうなのにっ!宗弥は全然平気そうにしてぇっ!」
 髪を振り乱し、子供みたいに泣き叫んで。
 依存、激怒、愛欲、寂寥、憎悪、恋情…。おそらくは女性が持ちうる情念の全てをぶつけてくる。
 「どうせ、私なんてどうでもいいんでしょうっ!?なのに、私をこんなにして!いい加減に、してください!どうだっていいならっ、貴方になんて出会いたくなかったです!」
 唾液を飛ばしながら、奥の方をグリグリと押しつけてくる。
 癇癪を起したシオンが吐き出した本音は、縋るような想いで溢れかえっていた。
 「…なにさ、どうでもいいって」
 流し込まれた毒液のせいだろうか。どうにも気分が悪い。
 勝手なことばかりな彼女に、少しだけカチンときた。
 「どうでもよかったら、毎日足を運ばないんだよ!
  キミに会いたいから、キミと一緒にいたいから、邪険にされても遊びに行ってたんだよッ!」
 思い返せば腹が立ってくる。なんだって僕が怒られなければいけないのか。そもそもは彼女がひねくれて天邪鬼な言動しかしないのがダメなんじゃないのか。
 「寂しいなら、素直に『寂しい』って言ってよ!そしたら僕はいつだって傍にいてあげたさ!」
 「なんですか逆ギレですか!言わずとも理解してくださいよ!それくらいできるでしょう!?多少なりとも認めてやってるんですからっ!」
 「この…ッ!」
 傲慢な物言いに堪忍袋の緒が切れた。
 もういい、泣かす。性感を虐めて喘ぎ声しか出ないようにしてやる。
 完っ全に頭にきた僕は、跨る彼女に向けて、思いっきり腰を打ち上げてやった。
 「ひゃあぁぁんっ♡やっ、勝手にぃ…♡動いてるんじゃっ♡あんっ♡」
 「かわいい声も出せるじゃん…!そっちのほうが、いつもよりいいね…っ!」
 その言葉に一瞬蕩けたシオンが、いつも鋭い表情に戻る。彼女の癇に障ったのか、締めつけを強くしてきた。
 「なんですか、いつもの…ひぁっ♡私はっ、可愛くないとでも!?」
 「そこまで言ってないだろ!せっかく愛らしいんだから、眉間にシワを寄せてばっかじゃ、勿体ないって言ってんるだよッ!」
 そろそろ僕もキツくなってきたが……どうでもいいか。今はそんなことより、シオンをはしたなく鳴かせたい。
 彼女の最奥に強めに亀頭を押し込んでやり、子宮口と先端がくっつけばシオンの身体が大きく震える。
 「あひゃっ♡この、生意気です…っ!いつもは受け身のくせにぃ…あぁっ♡宗弥は大人しく、気持ちよくされてればいいんです…っ!」
 「うるさいな…!キミの方こそ、いつもは強気なのに、ちょっと突かれただけで気持ちよさそうに鳴くじゃないか…!」
 「貴方のが、気持ちいいってっ♡くひぃっ♡分からないんですかっ?宗弥は、一生、ひゃっ♡私に囚われてっ、生きるんですよぉっ♡」
 身体が熱い。内側から熱に焼かれているみたいだ。その熱さが、シオンに向けられる性欲となって燃え上がる。
 生意気な口を黙らせたい。素直になるまで犯し抜きたい。頭が僕一色に染まるまで、快楽に沈めたい。
 ああダメだ、足りない。手足が足りない。彼女と繋がれるモノが一つじゃ足りない。
 人間の体じゃ、全く足りやしない。
 「ああぁぁぁぁっ♡いきなりっ、激しくぅっ♡私で、興奮してるん、あひっ♡ですかぁっ♡」
 「そうだね…!だから、離せッ!キミを抱きしめられないだろうがッ!」
 「駄目ですっ!ひっ♡私が犯してるんですっ!私が、貴方を気持ちよくしてるんですっ!勝手に、動くなぁぁっ♡」
 押さえつけられている腕に力を込めて彼女の脚を退けようとしたが、無情にも拘束を解くことは叶わなかった。
 シオンをぎゅっと抱きしめて、キスがしたかった。シオンの身体をもっと堪能したかった。
 口惜しい。散々だ。こんなにも愛おしいのに。あんなにも寂しそうなシオンを安心させたいのに。それが叶わないことが悔しかった。
 「はぁっ♡宗弥ぁっ♡くぅっ♡顔、下げなさいっ♡」
 「なんで……んぐっ!?」
 切羽詰まったシオンに、強引に唇を奪われる。
 柔らかい。ぷるぷるした唇の感触を楽しんでいると、口の中に彼女の舌が潜り込んでくる。
 「ちゅっ♡……んっ♡…んむぅ…♡」
 舌を絡めて貪るように。唾液が混ざる水音と共に彼女を味わう。
 ふと、ゼロ距離のシオンと目が合った。必死そうな、そして縋るような目だ。
 『離れないで』
 そう訴えかけてくるかのように、僕に抱き着いてくる。
 『離さないよ』
 伝わるかは分からないけど、伝わって欲しくて。一時も目を離さず、彼女の舌を受け入れる。
 「ぷはっ!私も、そろそろ……っ♡」
 息が続かなくなって、絡み合うような口づけが終わる。それでも互いの顔は近いまま。僕もシオンも、ほんの少しだって離れたくなかった。
 「さっさとっ、出してくださいっ!早く!なんですか、私が気持ち良くないんですかっ!」
 「そんなわけないだろ…ッ!こんなにも好きな人と繋がってるんだ、気持ちいいに決まってるだろうッ!」
 ああもう、本当になんなんだ彼女は!卑屈で好き勝手決めつけてきて!
 上下する胸が視界に映るたびに性欲が高まるのに!強気な態度で快楽に耐える姿が可愛いいのに!
 全部、全部、愛してるのに!!
 「シオンが大好きなんだよ!誰よりも愛してる!」
 分からないならば、はっきりと言ってやろう。僕がシオンのことが好きだって。
 「……っ!」
 シオンの身体が震える。
 ……熱い。ぶちぶちと肉体が鳴る。
 彼女もそろそろイキそうだ
 ……何かが弾けそう。内側から、作り変えられていく。
 「ほら、射精しなさい!惨めに!射精してください!私で、絶頂してくださいっ!」
 叫ぶと同時に腰を深く下ろす。それに合わせて、力強く肉棒を突き込む。
 ぐちゅり、とシオンの奥に触れた瞬間、白濁が堰を切って噴き出した。
 「ひゃあぁぁぁぁああぁぁぁっ♡♡」
 尿道から精液が駆け上がり、のけ反る彼女に注ぎ込まれていく。
 身体が弾けるような悦楽。愛欲と熱に焼き尽くされたような、清々しい解放感。
 最高だった。
 でも、物足りない。まだまだ、シオンを味わいたい。
 だってそうだ、見下ろす彼女の姿はとっても淫らで、綺麗で…………

 「…………あれ?」
 なにか違和感がある。
 視点が高くなったというか、身体の感覚がいつもと違うような…?
 さっきまでシオンに押さえつけられていたのに、今はその感触がない。手足が自由になっている。
 「…嘘でしょ……」
 部屋に置かれていた姿見に映った自分の姿に驚く。
 そこにあったのは、いつもの僕じゃなかった。四本の脚に、頭の下辺りに無数の触手を持つ、大きな蜘蛛が……化け蜘蛛になった僕が、そこにいた。
 「なんてこった」
 粘液で濡れた触手を軽く動かしてみる。一本一本が擦れると、どうにも言い表せない感じがした。どことなく、性器を弄ったときの感覚に似ている。なるほど、この触手は生殖器官らしい。

 「もしやこれは………最高では?」
 手を叩いて喜びたい気分だ。まぁ、僕には手がないんですけどね!
 ちょうど人間のカタチじゃシオンと愛し合うのに限界があると思っていたところだ。これで思いっきり犯してみたら……彼女はどんな風になるだろうか?
 そう考えただけで触手が疼く。一回じゃ満足できない。それもそうだ。あんなにも魅力的な女の子なんだから、何度だって味わいたいに決まっている。
 「………随分と…まぁ……大きくなりましたね…」
 ベッドに倒れたシオンは息も絶え絶えで、呆然と僕を眺めていた。
 いつもとは違って弱々しい姿に嗜虐的な欲望が鎌首をもたげる。
 「……っ♡…あぁ、そんなにして…♡さっきシたのに…もう…♡」
 粘ついた音を鳴らしながら、触手を伸ばして彼女を捕らえる。怯えた風ではあるが、もじもじと内股を擦り合わせているところから察するにシオンもまだまだ物足りないみたいだ。
 現に、手足に這う触手に対して彼女は無抵抗だ。期待してるのか、どこか夢見心地に僕を見つめてくる。
 「あぁ…♡嫌ぁ……ぬるぬる、しないでください…♡」
 優しく体を抱えて、ゆっくりと触手溜まりに沈めていく。膝立ちにさせて、逃げられないように両足と背中の脚を縛りつけてみた。さっきまで自由に出来なかった仕返しだ。
 さて、これで彼女はなされるまま。ようやく僕の好きにできる。
 「ジロジロ、見ないでください…。やるなら、さっさと……♡」
 「そっか。じゃあ、やらせてもらおうかな」
 僕も焦らすつもりはない。正直、そんな余裕はこっちだってないから。
 頭を近づけ、シオンの白くて細い首筋を軽く噛む。
 「ひゃっ♡な、噛んじゃ駄目ですっ、んっ♡」
 甘く、優しく、ついばむように。キスマークをつける感じで。
 悶える彼女の姿を楽しみながら、ふにふにと痛くないように気をつけて噛み跡を残してく。
 「あっ」
 がじり。ちょっとヤバい感じの音がした。加減を間違えて牙が刺さったぽい。
 ドクドクと牙の先から何か液体が漏れ出して、シオンの中へ注がれていく。
 「あっ♡あぁ…♡ひっ……ああああああぁぁああああああああぁぁぁぁぁあぁっ♡♡♡」
 絶叫。そして、激しい痙攣。身体を抑えていなければのたうち回っていたっておかしくないくらいに、ガクガクとシオンの身体が震え始める。
 「っ!?シオン!?大丈夫!?」
 聞いたこともないような、ともすれば壊れてしまいそうなほどに激しい嬌声に驚き、慌てて牙を抜く。が、その衝撃さえも性感になったのか、シオンは股から潮を吹いて大きく背を反らした。
 「いやあぁぁぁあああぁっ♡いぃ、イって、ひゃあぁぁっ♡らめらめらめぇぇっ♡あたまおかしくなるぅぅっ♡」
 許容量の超えた快楽に翻弄されて、涙さえ流しながらよがり狂うシオンは、酷く淫らで、そしてなによりも可愛かった。
 「シオン……!」
 こんな扇情的な光景を前にして、ただ指を咥えてるだけなんて無理だ。
 触手の一本を彼女の入り口に近づけて、浅く先端を潜り込ませる。イキまくって敏感な彼女にとってはそれだけでも十分過ぎたらしく、シオンはまたも絶頂を重ねた。
 「好きだよ、シオン」
 再度、告白する。これは、ずっと言いたかった言葉だから。何度だって伝えたい言葉だから。
 そして、身体でも伝える。「好き」って感情を、思いっきり。
 彼女と繋がるべく、割れ目に添えた触手に力を込める。
 「待って、待ってください!」
 挿入しようとした瞬間、シオンが必死に静止をかけてきた。
 「貴方が、好きだと言うのなら……答えないのは、嘘です……っ!」
 今だってイったままなはずなのに、本当なら呂律が回らないくらいの法悦に内側から責められているはずなのに。
 それでも、彼女は言葉を紡ぐ。
 「私は、ろくな女じゃありません…!口は悪いし、性格もひねくれてます…!何度も、貴方に嫌な思いをさせたことでしょう…!」
 「そんなこと……!」
 そんなことない!そう叫ぶ前に、口に手を当てられた。
 『私が先に言うから。これだけは絶対に伝えたいから。』
 そう言うかのような、強い意志の灯った瞳に射抜かれたら、続きを静かに待つしかない。
 「それでもっ!私も貴方が好きなのです……!
  もう貴方が傍にいなければどうにもならないほどに……貴方を、愛しています…♡」
 このときのシオンを、僕は一生忘れないだろう。
 はじめて見た彼女の笑顔は、涙と涎に塗れて緩んでいたけれど……この世の誰よりも、何よりも綺麗だった。
 「こんな私ですが……どうか、一緒にいてくれませんか…?」
 落ちた。恋に、奈落の底まで。
 二度と抜け出せないほどに、シオンに絡めとられた。
 「……ありがとう、シオン。どんなキミであったとしても、僕もキミを愛してる」
 誠意と、最大限の愛情を込めて答える。
 ずっと恋焦がれた彼女からの告白だ。こんなの、断れるはずがない。
 「あぁ……嬉しい…!ふふっ…両想い、でしたね…」
 「そう、だね…。あはは、お互いに遠回りをしてたみたいだね…」
 笑いあって、この幸せを分かち合う。
 胸が暖かい。愛し合う喜びに満たされていく。

 「……さぁ、お待たせしました。宗弥も、我慢できませんよね…♡」
 シオンが指で自らの膣口を広げる。彼女も抑えきれないようで、押し広げられた秘所は愛液を滴らせ、挿入をねだるようにぱくぱくと開口を繰り返していた。
 「私を、いっぱい愛してください……♡」
 最愛の彼女の、媚びるようなお願い。そんな風にされたら、応えないわけにはいかない。
 「あはぁぁっ♡きたっ、しゅうやのっ♡おくまでぇぇぇぇっ♡」
 あてがった触手を一息に奥までねじ込むと、シオンがエビ反りになって挿入の快楽に酔いしれる。
 触手が一往復することに絶頂を重ねて、膣内は常に震えていた。きゅうきゅうときつく締めつけ、精を搾り取ろうと収縮している。
 「っ、すご……!奥にされるの、好き?」
 「ひゃいっ♡しきゅうのいりぐちっ♡コツコツされるのすきですぅぅぅぅぅっ♡」
 最奥をノックすると特に締まりが強くなる。なるほど、ここが一番気持ちいいんだ。
 「あひぃいっ♡おくをなでなでしちゃっ♡らめっ♡それらめぇっ♡すぐイっちゃいましゅうぅぅっ♡」
 性器と違って触手はかなり自由に動かせるから、先端の辺りを捩じって子宮口を集中的に撫でてあげる。奥の部分をぐちゅぐちゅと弄るたびに身悶えして、可愛らしい喘ぎ声が上がった。
 「きゃあっ♡ちくびっ、やっ♡それっ、いいですぅっ♡ひぃっ♡」
 触手はまだまだ余ってる。空いていたモノを使って、小さな胸の頂点をねっとりとこね回してみる。桜色の乳頭を転がせば、たまらないとばかりに熱っぽい息を漏らした。
 こうやって優しく虐めてみるのも愉しい。彼女も気に入ったみたいで、乳首をこりこりされては涎を垂らして感じ入ってる。
 「ひぃぃぃいぃぃぃっ♡あひゃっ♡クリらめぇぇっ♡そこよわいんれすぅうぅぅぅっ♡」
 だけどやっぱり、激しく責め立てて乱れる姿を堪能したい。一番敏感なところを、容赦なく弄ってみよう。
 すっかり勃った陰核に粘液でぬめる触手を滑らせれば、シオンの身体が小刻みに震える。イキ続けてる敏感な身体では、ほんのちょっと触れただけで絶頂するほど感じるみたいだ。
 「あんっ♡ま、まって♡そこっ、いれるところじゃ……」
 後ろの方………お尻の穴にも一本、触手をあてがう。
 菊門を触手で解して、粘液を十分に塗りたくって。
 一息に、奥の方まで挿れ込む。
 「ああぁぁぁぁぁっ♡おしりきもちいぃいぃぃぃいぃっ♡♡まえも、うしろもっ♡いっぱいしてぇぇぇぇぇっ♡」
 膣とはまた違った感じだ。男性を受け入れ精を絞ることに特化した膣内と、それに比べて締めつけの強い後ろの穴。どっちも、気持ちいい。シオンの全部が気持ちいい。
 シオンも感じているみたいで、肛門に挿入してから密壺のうねりが凄くなった。顔は悦楽で緩んで、いつもの剣呑な雰囲気は見る影もない。悪態ばっかりだった口からは、「気持ちいい」といった声しか出なくなっている。
 「はぁっ♡んっ、むっ♡ちゅっ♡」
 「わっ!?どうしたの、シオン?」
 身体中を触手で舐め回して味わっていたところで、シオンが動く。
 空いていた一本に手を添えて、その小さな口と舌で触手に奉仕し始めた。
 「ぐちゅっ♡わたしっ、ばっかり…ひっ♡きもちよくなってたら、あんっ♡……だめ、ですからぁ…♡」
 舌を這わせ、何度も口づけして、必死に気持ちよくしてくれる。
 「いっしょに、きもちよくっ、なりましょう…♡」
 数多の触手に犯されて、自らその身捧げて、安らかに微笑む。
 あまりに淫靡なその姿。あまりに愛おしい人。
 「わたしは、しあわせです♡♡」
 その言葉が聞こえた瞬間、気づけば彼女を犯す触手をより一層激しく動かしていた。
 最奥を撫でるモノはより陰湿に、ねっとりと。
 乳頭を責めるモノはより鋭く感じるように。
 陰核を虐めるモノは本数を増やして逃げられないように。
 後ろを弄るモノはストロークを長くして、長い時間快感を与えられるように。
 「ひゃああぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁっ♡♡きもちいいぃぃぃいぃっ♡♡」
 どれだけ身体中に暴れる快楽が大きくなっても、シオンは奉仕の手は止めない。丁寧な手つきで触手を擦って、喘ぐ口で愛してくれる。
 「すきっ♡しゅーやが、だいしゅきぃぃぃいいぃっ♡♡すきすきっ♡しゅきなのぉぉぉぉぉっ♡♡」
 持てる全てをもって愛を叫ぶシオン。それに応えたくて、持てる全てをもって絶頂に追い込んでいく。
 「ずっとっ♡わるくちいってごめんなしゃいぃぃぃぃっ♡だめだめなわたしにぃ♡おしおきしてぇっ♡あなただけの、メスくもにしてくだしゃいぃぃいいっ♡♡」
 最早、彼女は自分の力で立っていない。絶え間なく押し寄せる絶頂に震えて足腰が立たなくなってしまっている。僕が固定していなければ、そのまま触手溜まりに倒れてイキ狂うことになるだろう。
 「あひゃぁぁぁっ♡♡おしおきされてるのにぃっ♡きもちよくなちゃいますぅぅぅっ♡♡こーびっ♡しゅーやと、こーびするのっ♡しあわせですぅぅっ♡」
 触手に抱きかかえられ、あらゆる場所を犯しつくされてなお、幸せそうに身体をくねらせる。
 いつもの鬱屈とした表情は消え失せ、浅ましく喘ぎ散らすシオンは、本当にメス蜘蛛になったみたいだった。
 「してぇぇっ♡すなおになれるようにぃっ♡もう、わるくちっ、いえないようにぃ♡いっぱい♡してぇぇぇぇぇえぇぇぇっ♡♡」
 「シオン…ッ!いいよ、たくさんしよう。いつまでも一緒に…ッ!」
 身体も心も一つになって、二人一緒に高めていく。
 シオンは既に愛液や唾液や潮や粘液やらで全身がぬちゃぬちゃになって、だらしなく緩んだ顔で与えられる快楽を享受するだけになっていた。
 暗い部屋には互いへの愛の叫びだけが響き、際限なく幸福感が膨れ上がっていく。
 「…シオン、そろそろ…射精すよ…ッ」
 触手の疼きが強くなる。精液がギリギリまで溜まる、射精直前の感覚だ。
 「わたしも、イクぅぅうぅぅっ♡♡おっきいのっ♡きちゃいましゅぅぅぅぅぅうぅっ♡♡らひてぇっ♡せーえきっ♡わたしにっ♡♡いっぱいくださいいぃぃいぃぃぃぃっ♡♡」
 トドメに触手を口に咥え、しゅぶり啜ってくれる。暖かい口の中と、美味しそうに舐め回してくれる舌の感触がたまらなく心地いい。
 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ♡♡」
 それを引き金に、触手の一本一本から精液が噴き出した。二回目とは思えないほどのおびただしい量の欲望が、触手の中のシオンに降り注ぐ。
 シオンもまた、白濁を全身で浴びて、声にならない声で叫んで一際大きく絶頂する。
 内側も外側も白濁で染まり、与えられる限りの快楽を最大に享受しきった彼女は、粘液を滴らせながらも幸せそうな顔をしていた。

 「はぁっ………♡しゅーやの、おいひぃれす……♡」
 長い髪や綺麗な肌にべっとりと着いた精液を両手で掬って、じゅるじゅると卑猥な音を立てて啜る。もったいない、ということなのかな。あるいは、僕の味を気に入ってくれたのか。
 なんだか嬉しくなって、触手で彼女の頭を撫でてあげる。
 「あっ………♡」
 優しく撫でられた彼女は、うっとりと目を細めて僕に委ねてくれた。穏やかに、交わりの余韻に浸っているみたい。
 「きもちよかったです……♡たくさん、あいされてしまいました…♡」
 触手の拘束を解いてあげると、彼女はそのまま触手の中に寝転んでしまった。いっぱいイッて疲れてしまったんだろう。僕の上のシオンは、恍惚としながらも眠たそうだった。
 「わたしのすべては、あなたのものです…♡どうか、これからも…いっしょに……♡」
 「うん、ずっと一緒にいる。愛してるよ、シオン」
 抱きしめるように触手を絡めて、よく眠れるようにトントンと優しく背中を叩く。たったこれだけで、安らかな幸福が胸いっぱいに広がった。
 「だいすき……♡」
 触手に絡めとられたシオンが、すうすうと寝息を立てる。
 「僕も大好きだよ。キミといられて、とっても嬉しい」
 寝ちゃった彼女には届かないかな。だけど、彼女は安らかに笑っていて。
 ……聞こえていたかは、今度聞こうかな。
 「おやすみなさい、シオン」
 僕もまた、眠りにつくとしよう。
 ああ、夢でもシオンと一緒にいられたらいいなぁ。





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 今日の私は、過去の不機嫌な日の全てを凌駕するレベルで不機嫌でした。
 「ほんっと…♡いいかげんにぃ…っ♡」
 暗い洞窟の中、何重にも張られた蜘蛛の巣に身体を沈めて、浅ましく自慰に耽る。
 頭を糸の床に擦りつけ、お尻を突き出し、指で秘所をむちゃくちゃにかき混ぜます。ぽたぽたと愛液が太腿を伝っていって、巣を濡らしてしまいました。
 「あの、馬鹿ぁ…っ!いつまで、待たせて……!」
 限界まで耳を澄ます。極限まで目を凝らして入口の方を睨む。
 ………最愛の彼の気配は、まだありません。


 あの日、私たちは交わり、晴れて結ばれました。
 永遠に一緒だと誓い、愛を叫んで、宗弥と私は一つになったのです。
 「なのにっ、なのにぃ……っ!」
 あの大馬鹿者は普通に今までの生活をしています。以前と同じように学校に通い、放課後になったら私の巣に足を運ぶ、結ばれる前と変わらない毎日です。
 なまじ蜘蛛から人へ戻れることが仇になりました。奴が永遠に蜘蛛のままならこの洞窟から出られなかったのに、人間のままでもいられるせいであの馬鹿は今ものうのうと社会で生きています。
 「何時間っ、私が待つことになると……っ!ふざけるのも、大概にぃ…っ!」
 一日の半分。それを私は無駄にすることになるのです。
 宗弥がいない時間ほど苦痛なものはありません。彼とたくさん話したいのに、抱き着きたいのに、見て欲しいのに、頭を撫でて欲しいのに、キスがしたいのに、繋がっていたいのに!
 「さみしいのにぃ……」
 愛欲を持て余し、自らを慰めても駄目なのです。私は、彼に愛される悦びを知ってしまいました。最も幸せで、最も気持ちいい、一番を知ってしまったからこそ、こんなお遊びでは全く満たされないのです。
 それどころか、オナニーすればするだけ、子宮が切なさを覚えてしまいます。宗弥が欲しいと、彼に愛されたいと喚き散らすのです。
 「こんなの、生殺しですぅ……」
 それでも指は止まらない。寂しさに泣きそうでも、止めたら本当に気が狂いそうになります。
 助けてとこの場にいない彼に叫びながら、自分で自分を虐める日々。地獄とはよく言ったものです。愛する彼のいない地底の蜘蛛の巣こそ、私の地獄でした。


 「こんにちは、シオン!待たせてごめんね!」
 「おっそいんですよ馬鹿が!」
 かつてないほどにキレた私は性感を弄るのをやめて、のこのこと現れた宗弥に俊敏な動作で迫ります。
 「貴方は『ずっと一緒』だと言いましたよね!?それがなんですか何時間ほったらかしにしてくれてるんですか!?放置プレイですか!?私は発狂しそうになってるんですよ!!」
 「ご、ごめんって…。でも勉強しなきゃ就職できないし……」
 「どうせ宗弥はこの洞窟に永久就職するんですからずっとここにいればいいでしょうが!」
 手足蜘蛛脚八本全てを使って宗弥に抱き着き、胸に顔を埋めて全身で彼を感じます。
 あぁ、久しぶりの彼です…♡宗弥の体温や匂いが気持ちいい…♡
 しかし、同時にこれが常に手元にないことに強い怒りが湧いてきます。
 「貴方だってこんなにしてるのに!ああもう!」
 下腹部に硬くて熱いモノを感じる。彼だって私と繋がりたくて仕方がないのでしょう。私に欲情し、遮二無二交尾を求めてくれるのは嬉しいのですが、それはそれとして人間社会などといった些細なことのために私との時間を後回しにするのは許せません。
 「今日は徹底的に犯します…!貴方にとって一番大事なことが何なのか、教えてあげましょう…!」
 「え、まっ、ちょっと……いっ!?」
 ズボンのチャックを下ろしながら、胸板に牙を突き立ててる。毒液を注がれた宗弥は、どんどん息が荒くなっていきます。彼のモノも湯気が立ちそうなほど熱く、大きくなりました。
 「んっ!……はぁ♡ちゅぅ…くちゅぅ♡」
 両手で頬を掴んで、強引に唇を奪います。人間の状態のいいところは、キスができることです。顔を間近で見て、唾液を舌で混ぜ合う。愛を伝えて貪る、この感触がたまらない。
 「はぁっ♡……ほら、早くきてくださいっ♡はやくっ、はやくぅっ♡」
 怒っているのに、どこか媚びたような甘えた声になってしまいました。
 背中を地面につけて、彼によく見えるよう股を開く。もう辛抱できません♡一秒でも早く、彼と一つになりたい♡彼に愛されたい♡
 「……今日は眠れないくらいたくさんするよ。僕も、ずっと我慢してたんだから」
 「ハッ、これに懲りたら学校なんて辞めることです」
 今度は宗弥のほうから抱きしめてくれます。
 頭と背中に腕を回してちょっとの隙間もないほどに密着する。
 今から交わる♡今日もたくさん精を注いでくれる♡宗弥のっ♡早く欲しいっ♡
 あぁ♡もうだめですっ♡全然待てません♡♡
 「…………私と一緒に、いつまでもここにいましょう…♡」
 耳元で囁き彼にせがみます。
 すると私の入口に熱いモノが触れて、甘い快楽に襲われました。



 私は、貴方が大好きです。
 私は、変にひねくれていますが、貴方を愛していることだけは確かなのです。
 私は、貴方に絡まってしまった雌蜘蛛なのです。
 「大好きです。もう逃げられない私を、どうか愛してください」
 身動きもできない私は、ただただ愛情を乞うのみです。
 そんな私に対する彼の答えは、幸福な快感と「愛してる」の言葉でした。
20/05/02 12:09更新 / めがめすそ

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