読切小説
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Sucking Breasts
「参ったな……」
「参りましたね……」
 夜空の下で穏やかな空気と緑の大地が広がる、とある農場。育てた家畜からの恵みで生計を立てているその家の寝室で、男とその妻であるホルスタウロスが向かい合っていた。
「俺がろくに調べもしなかったせいで……すまない」
「あなたのせいじゃありませんよ。よく確かめもせず飲んだ私も悪いんですから」
 心底申し訳なさそうにうなだれる男を『見上げ』ながら、ホルスタウロスが困り顔に笑みを浮かべる。というより、今の彼女にはそうすることしか出来なかった。
「『授乳期およびホルスタウロスの方が服用すると、著しく効果が現れることがあります』とは書いているが、まさかここまで……」
「ええ、本当……」
 驚き呆れ果てながら二人が下ろした視線の先には、ホルスタウロスの上半身が乗って少し潰れた巨大な球体が二つ並んでいた。鎮座、という言葉が似合う重量感のあるそれは、ホルスタウロスの胸。服を破り、片方の乳房だけで成人女性ぐらいの重さはありそうな程異常な大きさになった原因は、男の持つ薬にあった。
「雑誌見直したら『あのバフォメットがあっという間にムチムチに!?』とは書いてあったけどさあ……飲んで十分もしない内にこれって」
「ここまで効果があるんなら、もうちょっとカタログの番号離してほしかったですよね……もう遅いですけど」
 ほぼ同時に二人が溜め息を吐く。文句を言っても無意味なのは分かっているが、どうしても言いたくなるぐらいの出来事であった。
「とにかく、だ……この胸をどうにかしないと何も始まらないな」
「せめて身動き出来るようには……でも、どうやって?」
「それなんだよなあ……」
 片膝をついて彼女の乳房をそっと撫でると、母乳で張っている時と似た感触が男の手に伝わる。と、その時男の視界に、体勢の関係で突き出ている妻の尻が入った。
「よし……搾るぞ」
「え? でも、お薬で大きくなってるから意味は無いんじゃ……?」
「いや。本格的に薬が効いているんなら尻や太股も大きくなっているはずなのに、お前の場合そのままだ。もしかしたら、一旦胸の方に薬が回ってそんなにでかくなったのかもしれない」
 と、妻の返事も聞かないまま部屋の隅にあるタンスに向かうと、男はそこから何かを取り出した。透明なカップに管を付けたようなそれを見た途端、ホルスタウロスは露骨に嫌そうな顔をした。
「……あなたの言うことは、分からなくはないです……でも、だからといって道具でお乳を搾られるなんて絶対に嫌です!」
「安心しろ。搾るのはあくまで俺で――」
「嫌! 私に内緒でそんなの買うような人となんて、口もききたくない!」
 怒りに任せて一気にぶちまけると、ホルスタウロスはつんと男から顔を背けた。正論だが一方的な物言いに、男の頭に血が上る――が、彼の口から出たのは、怒声ではなく溜め息だった。
「こそこそとした真似をしてすまない……でも、これはお前のために買ったものなんだ」
「…………」
 返事は無い。それでも男は、宥めるような落ち着いた声でゆっくりと話し出した。
「実はこれ、胸に吸い付くだけで搾る機能は一切無いんだ」
「…………へ? 嘘……」
「本当だ。そもそもこれはホルスタウロス向けに作られた品で、ホースが缶に届く範囲ならどこでも気兼ねなく搾乳出来るんだ」
「…………」
 男の説明を聞いて沈黙するホルスタウロスであったが、それが拒絶でなく迷いであることは、一定の間を置いて振れる尻尾を見れば明らかであった。
「………………です」
「うん?」
「今回だけ、って言ったんです……もし、あなたがおっしゃることが本当なら……」
 その言葉は尻すぼみに声量が小さくなっていったが、男の耳に確かに届いた。彼女の中でどう天秤にかけられたのかは分からないが、最終的に自分が選ばれたことに、男は思わず喜色で顔を染めた。
「分かった……ちょっと準備するから待っててくれ」
 そう言って、男は管付きのカップを持ったまま寝室から出て行った。後に残されたホルスタウロスは、厩舎の方に向かう夫の足音を聞きながらぼそっと呟いた。
「……せめて、『俺が吸い出してやる』ぐらいは言ってほしかったな……」
『よし……ちょっとそっちに放り込むぞ』
 開いた窓を通じて、遠くからの男の声が届く。ホルスタウロスがそれに返事をすると、一拍強の間を置いて、二つの透明なカップが管を携えて放り込まれた。それから徐々に大きくなる足音を挟んで、少し息の荒くなった男が戻ってくる。
「はあ、はあ……待たせてごめん」
「良いですよ。それで、これからどうするんですか?」
「ああ。まずはこれを胸に着けるんだ……」
 窓枠に引っ掛かったカップを持って妻に近づくと、乳首を覆うようにカップを被せた。掌大に広くなった乳輪の七割程しかないカップの口の狭さに、ホルスタウロスは思わず疑わしい目を向けるが、遅れて縁の触れた部分に走った感触に身を震わせた。
「んん……!? い、今のは……?」
「動いても取れないように魔法でくっついた、んだと思う……ちょっと持ち上げるぞ」
 膝と胸で四つん這いのような体勢になっている妻の右側面に移動すると、男が右の乳房だけを抱えるように腕を回した。重心が寄ったせいで更に潰れ、より強い快感が左の乳房から伝わって目をつぶるホルスタウロスだったが、直後、それとは比べものにならない強い感覚が右乳房に走った。
「ひゃっ!? な、なにを」
「決まってるだろ。全身に回らない内に、胸に溜まってる豊満薬を搾り出すんだ」
 そう言うと男は、右乳を抱える両腕を根本から乳首の方へゆっくりと移動させた。動きは緩慢なものの、文字通り搾り出すようなその動きは普段ホルスタウロスが世話になっている男の握力の比ではなかった。
「あ、あ、おっぱいが……出ちゃう……!」
 と、堪えるような間を置いて、肥大化した右乳首から大量の母乳が噴き出した。カップが受け止めてから管へと送り込まれるその量と勢いは、ホルスタウロスであることを差し引いても異常な程である。しかし、母乳を出した当の本人はそれを気にかけられる状態ではなかった。
「あ、す、すごいぃ! おっぱい、が、びゅるびゅるってぇ!」
「くっ……思ったよりきついな、これ」
 乳房の根本で腕を組み直し、乳首の方へ扱くように動かす。中では凄まじい勢いで母乳が作り出されているのだろう、二度三度と繰り返す内に徐々に胸が熱を帯びていき、母乳を受けるカップの内側が湯気で曇るのが分かった。
「どこか痛くなったりしてないか?」
「は、はいぃ……」
 五回目の搾り出しが終わると、大量に搾乳されて疲れたのか、ホルスタウロスの息は激しい運動をしたように上がっていた。普段のセックスの時以上に顔も赤紅潮しているので、心配になった男は中止しようかと聞こうとするが、それより先に彼女は右に重心を移した。
「そんなことより、早くこっちも……! お乳で破裂しちゃいそう……!」
 右乳を搾られている内に張ってきたのか、涙目でホルスタウロスは懇願してきた。左のカップの中には自然に噴き出た母乳が溜まっているが、作り出される速度に追いついてないのだ。
「わ、分かった。すぐ行く」
 早く痛みの原因を取り除いてやりたく、男は慌てて彼女の左側面に回る。そのまま右と同様に搾ろうとし――ふと思い止まった。
(この張り方だと、本当に破裂しそうだな……)
 薬の影響なのか、乳房と比べて乳首はそれほど肥大化していない。そこに大量の母乳が一気にくれば、裂けるまではいかずともかなりの苦痛を与えることになってしまう。
 しばらく考えた末、男は乳房の根本で組んでいた腕を解く。そしておもむろに、両手で胸を鷲掴みした。
「こ、今度はなにを」
「このまま一度に搾ると危ないから、ひとまず張りをほぐすんだ」
 そう言うと、男は母乳を乳首へ送るように、乳房を掴む指に順繰りに力を入れていく。それは胸の大きさと比べると小さな動きであったが、中では確かな動きがあった。
「なんか、奥から……ああ!」
 彼女の声に合わせるように、左の乳首から母乳が噴き出す。右の時のような勢いと量ではなかったが、次第に水が湧くように絶え間無く出るようになり、次々と管の方へ送り込まれていった。
「んっ……すごい量……」
 先程と違って刺激が弱いため、カップを満たしていく自分の母乳にホルスタウロスは感心したように息を吐く。その姿が微笑ましく、男はこのまま見続けたいと思ったが、すぐに頭を振ってその考えを振り払った。
「……少し、やり方を変えるぞ」
「え……? っ、ひゃあ!?」
 それまでの指だけの動きから一転して、男は乳房の上部を平たくするように撫で始めた。指の時よりも広い範囲から母乳がかき集められ、乳首から噴き出る量が少しずつ増えていく。
(あ……これもこれで……)
 右乳を扱かれている時と比べて程良い刺激に、ホルスタウロスはマッサージをされているような気分になる。力強く搾乳された疲労感も手伝い、左乳に伝わる心地良さに目をつぶって身を委ねる――と、不意に左右から押し潰されるような感覚が彼女の左胸を襲った。
「うわっ!? こ、今度はなにが!?」
「言っただろ。やり方を変えるって」
 そう言って男は手を擦り合わせるように、乳房を左右から挟む両腕を交互に動かす。腕の動きに合わせて大きく形を変える自分の胸を目の当たりにし、ホルスタウロスは恥ずかしさのあまり目を背ける。が、男はそれに構わず、今度は乳房を伸ばすように転がし始めた。
「あ、あまり私のおっぱいで遊ばないで……んうっ!」
「ん? 何か言ったか?」
 乳房の先の方を脇に抱え、吸い付いているカップをぐりぐりと傾けながら男が問い返す。まるで故意に邪魔したような男の動きにむっとし、文句を言おうとするホルスタウロスだったが、左胸の異変に気づいたのもその時であった。
「ん、く……!」
「ど、どうした?」
「なんか、急にお乳が張って……ああ!」
 叫び声を上げた瞬間、彼女の左乳首から堰を切ったように母乳が噴き出した。両腕で扱いていた時と勝るとも劣らない勢いに、男はカップが吹き飛ばないよう慌てて押さえ込む。
「あちち……!」
 カップを介して母乳の熱が男の掌に伝わる。あまりの熱さに手放したくなる衝動を男は歯を食いしばって堪えるが、噴乳の勢いが弱まるにつれ、熱も引いていった。
「ふう……大丈夫か?」
「あえ…………」
 蕩け切った顔で、言葉になってない返事が返る。大規模な射精を胸で味わったようなものだから当然だろうと思い、男はそれ以上尋ねるのは止めた。
「にしても、缶じゃなくてタンクの方にしておいて正解だったなあ」
 両方の胸から噴き出た母乳の量を思い出し、男はほっと息をつく。
 二人の営む農場は町から離れているので、搾った母乳は業者に定期的に引き取ってもらっている。業者が来るまでの間の搾乳量は一定ではなく、常備している貯蔵用の缶一ダースに入り切らない程多く出る時もある。そういう時のために、この家では貯水タンクを改造した母乳タンクを設置しており、そこに流れ込むように男は管を伸ばしていた。
「まさかこんな形で使うことになるとはなあ……」
「はあ……はあ……ふう」
 休んでいる内に落ち着いてきたのか、ホルスタウロスの呼吸が徐々にゆっくりになっていく。彼女と連れ添うようになって既に何年か経つが、その回復速度の速さに男は改めて舌を巻いた。
「具合はどうだ? 目眩がするとかだるいとか」
「大丈夫、です……ただ、その、言いづらいんですが……」
「どうした? 遠慮せずに何でも言ってくれ」
「実は……また、お乳が張ってきて……両方とも」
「…………マジか」
 先程搾乳した量を思い出し、男は妻の言葉に絶句する。豊満薬の作用によるものなのかもう彼には判断すらつかないが、ここまで生成される速度が速いのも考え物だ。
「あの……大丈夫ですか?」
「……あ、ああ! 平気だとも! ちょっと胸も小さくなったようだし、また搾るぐらいわけないさ!」
 はははと乾いた笑い声を上げ、男は見た目にはさほど変化の無いホルスタウロスの胸を軽く撫でる。そんなあらゆる感覚を通じて伝わる空元気具合に触発されたわけではないが、ホルスタウロスが意を決して口を開いた。
「一つ、お願いがあります」
「んーなんだー? お前のためなら何でも聞いちゃうぞー」
「でしたら……」
 胸に体重をかけたまま、ホルスタウロスは両腕だけで器用に服を脱いでいく。ズボンを足元に落とし、透明な汁で染みたパンツをどうにか膝までずらすと、ぬらぬらと妖しく濡れた女性器をそっと開いた。
「後ろから体重を乗せるように、ヤって下さい……私の胸のことは一切気にせず、思い切り」
「……本気か?」
 ふざけたような口調から一転し、男はその一言以上言葉を発そうとしない。しばらく沈黙が続いた後、ホルスタウロスが唾を飲み込む音が彼の耳に届いた。
「はい……このままちまちま搾ったんじゃあなたが疲れるばかりですし、さっきので結構大丈夫だって分かりましたから。それに……」
 指先に力が入り、更に女性器が広がる。すると、それまで何かにせき止められていたかのように愛液が溢れ出し、内股を伝って垂れていった。
「揉まれている内になんだか、ムラムラしちゃって……」
「……そこまで言われちゃ、断るわけにはいかないな」
 そう言いながらベルトを外すと、男はパンツごと掴んでズボンを下ろした。姿を現した男根は既にはちきれんばかりにそそり立ち、亀頭を透明な液体で湿らせていた。
「ふふ……かっこつけた割に、もう準備万端じゃないですか、変態さん?」
「あんな姿目の前にしたんだ。仕方が無い……それじゃあ、いくぞ」
 後ろに回り、背中越しに妻が頷いたのを確認すると、男は男根を彼女の中に入れた。
「ん、あ……!」
 亀頭が肉を掻き分け、少しずつ奥へ進んでいく。初めはその感触だけを愉しむホルスタウロスであったが、問題は男根が根本まで埋まってからだった。
「痛かったらすぐ言えよ?」
「はい……う……あ、ああ……!」
 男がゆっくりと体重をかけ、根本まで埋まった男根を更に奥へと進ませた。すると男の腰に押されてホルスタウロスの身体も動き、巨大化した胸に彼女の上半身が沈み込んでいく。幾度もの噴乳を許した乳首からはすぐに母乳が噴き出し、乳房全体にかかる圧力に比例するように勢いと量を増した。
「あ、ああ……! おっぱい、つぶれちゃう……!」
「っと、ごめん……ここか」
 妻の悲鳴からかける体重の限界を大体把握すると、男は彼女の腰を掴んで持ち上げた。大半が乳房に埋まっていた上半身が引っ張り出され、それに合わせるように噴乳量も減っていく。
 胸を潰す圧力から解放され、ホルスタウロスはほっと息を吐き出す。しかし、それもほんのつかの間のことで、わずかながら胸が張りつつあるのを感じた。
「ああ、もう溜まって……! もっと激しく突いて下さい!」
「わ、分かった」
 妻に言われるがまま男は腰を押し付け、再度彼女を胸の中に押し込んだ。そして限界まで体重をかけたらそのままの体勢をしばらく維持し、母乳がある程度出たところでまた彼女を引っ張り出す。動きだけ見ればその繰り返しだったが、互いに気分が高揚してきたせいか、そのうち胸で跳ねるようにペースを上げていった。
「や、は、あひ、ひゃ、あ!」
 嬌声に混じってびゅーびゅーとカップに当たる母乳の音が、次第に小さくなっていく。噴乳量が減ったからではない。母乳が出る量が管に流れ込む量を上回り、カップの中に溜まっているのだ。
「き、気分はどうだ?」
「しゅ、しゅごい、のぉっ! おっぱいとおまんこが、熱くてぇ!」
「そりゃ良かっ……ん?」
 そろそろ射精時かと頭の片隅で考えたちょうどその時、男の鼻を強烈な匂いがついた。
(これは……)
 普段搾ったり吸ったりしているホルスタウロスの母乳の香りを、何倍も濃くしたような甘ったるさ。急に辺りに漂い出したそれに戸惑う男だったが、肉棒を膣の奥へ押し込んだ瞬間、匂いの出所に気づいた。
(も、漏れてやがる……!?)
 中を乳白色で満たしたカップの容量がとうとう限界に達し、隙間から染み出た母乳が床に湯気を上げながら広がっている。嫌がるだろうと思って非吸引式にしたのが仇になったようだ。男はもうすぐで射精するところまで込み上げていたが、背に腹は変えられない。
「す、すまん。ちょっと休――」
「あ、や、またおっぱい張ってきたぁ!」
「えっ、ちょっと待っ」
「いやあ! 一緒にイくのお!」
 慌てて引き抜こうとした男根を、ホルスタウロスの括約筋が全力で締め付けてくる。夫だけを喜ばせるために発達した器官は肉棒を捉えて離さず、精をせっつくようにぐにぐにと刺激を与えてくる。不意打ちも同然の責めに射精寸前の肉棒が堪えられるはずもなく、男はあっさりと屈服した。
「ぐっ……!」
「ひゃぁああ! イくっ! イぐぅぅううう!」
 精液が彼女の中でほとばしった瞬間、それに押し出されるように起きた二度目の大噴乳が、既に限界を向かえていたカップを紙屑のように吹き飛ばす。
 乳首とカップ、両方から溢れ出る母乳が辺りの床一面に広がった。

 翌朝。
 カップが吹き飛ぶトラブルにもめげずカップを嵌めなおし、搾乳を再開した男の努力の甲斐あってか、ホルスタウロスの胸は何とか縮んだ。それでも元の二回りは大きいサイズになってしまったが、動けるようになっただけましと本格的な治療は後回しすることになった。
「さて、と」
 厩舎にある貯水、もとい母乳タンクの梯子を上った男が、中身を見て失笑する。その隣で腕を組み、新しいシャツがはちきれそうになる胸を下から支えているホルスタウロスも、眼下に広がる光景に目を丸くしていた。
「出たなあ……」
「ええ……出ましたね……」
 計算上、一日の半分を搾乳に費やす日々を、三ヶ月続けてようやく満杯になる容量のタンク。その七割を、わずか一晩で満たしてしまったという事実を、二人とも未だに夢心地で受け止めていた。
「匂い、は一応大丈夫……」
 長柄の杓で母乳を汲み、透明なコップに注ぐと、男は陽の光に透かすように色を確かめた。
「色も変わりは無いが……あの薬の成分が混じってそうで怖いな……」
「そうですか? これだけあるなら、薄まって問題なさそうですが」
「そういうもんかねえ」
 どこか脳天気な妻の言葉に、男は首を傾げる。豊満薬の効能を身を以って体験しているはずだろうに、さほど気にしていない様子だ。
(やっぱり、魔物の身体が丈夫だからかなあ?)
 そう思う男であったが、例え魔物相手でも、薬が混ざっているような品物を出すわけにはいかない。
 知り合いの魔女か誰かに相談して、薬だけを抽出してもらおう。そんなことを考えながら、男がコップの中身をタンクに戻そうとしたその瞬間、ホルスタウロスが横からコップを奪った。
「お、おい。何を――」
「んっ……」
 男が止める間も無く中身を飲み干し、ホルスタウロスは何かを待つように目をつぶる。すると、一晩かけて縮めた胸が再度膨らみ、シャツのちょうど谷間の部分が裂けた。
「な、何をしてんだ!?」
「あは……やっぱり思った通り」
 元の倍ぐらいのサイズになった胸を自分の手で揉みながら、ホルスタウロスは嬉しそうに男に向き直った。
「良いこと思い付きました。どうせ捨てるのももったいないですから、『胸が大きくなるミルク』って名前で売りませんか?」
「え? でも、薬が……」
「味は大丈夫でしたよ? それに、一旦私の身体を通ったせいか、元のより効果があるみたいですし」
「……まあ、確かに……」
 記憶を遡り、男は妻の言葉が正しいことを渋々認める。と、言質をとったと言わんばかりに、ホルスタウロスは笑顔を浮かべた。
「じゃ、問題無いですね。薬のことを隠しちゃうと後で面倒臭くなりますから、ちょっと製薬会社と衛生局の方に連絡してみましょう。うまくいけば長いスパンで商品化も……」
「おい、それじゃお前の身体が――」
「だいじょーぶですよ。搾られるのも胸が大きくなるのも慣れてますし。それに……」
 ぎゅっと、胸を押し付けるようにホルスタウロスが抱き着いてくる。大きくも張りと柔らかさを失っていない二つの弾力に男が戸惑っていると、とろんと発情した眼差しが男を見上げた。
「あんな気持ちいいことが一度きりなんて、もったいないでしょう?」
13/02/10 21:40更新 / 二束三文文士

■作者メッセージ
まおゆうで出ていた超乳牛娘さんに触発されて書いてみました。
個人的に超乳ものは好きなのですが、エロゲとかだと女の子がかわいそうな末路ばっかりなのが悩ましいところです。

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