連載小説
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竜の秘宝 2
夜。大会を目前に控えたドラゴニア領内は昼はその準備で動き回り夜はその疲れで就寝するかまたは疲れを癒やす為に夫婦で夜の営みが交わされる。
なので割と静かではない。街のあちこちにでは今宵も嬌声が上がる。そんな中、ドラゴニア領の霊峰の山頂部に竜の王国を治める女王の居城がある。

「「遠い!!」」
「登山でござったな」

そしてその城の元に快盗たちはいた。

「軽〜く下見でもしようかな〜と思ったらめっちゃ山の上にあって登るのに手間取って着いた頃にはもう夜じゃねえか!人間に優しくねえぞぅ!」
「ドラゴンは飛べるでござるからな」
「立地案件で起訴も辞さねえ!」
「そもそも通るか怪しいぜ。で、どうすんだ?今日は止めとくか?」
「いんや予定通りこのまま決行だ。出来るだけ今日のうちに片付けてえ」
「ハッ予定なんて既に狂ってるようなもんだがな」
「して、どのようにして忍び込む?」
「しゃあねえな。一先ずこれに頼るとすっか」

そう言ってヌパンが懐から取り出したのはドラゴニアのパンフレットだった。

「城の間取りがこいつに載ってる。取り敢えずはそれに従うとしようぜ」
「よくそんなもん売ってんな。信用できんのか?」
「まあトラップでもある。隠し通路や部屋、その他記載されてない秘密なんてわんさかあるだろうぜ。バカな泥棒釣るための餌みたいなもんさ」
「お、割と賢いムーブするじゃねえか。普段ポンコツのくせに」
「誰がポンコツだ!どっからどう見てもスマート一色だろうが!」
「既にポンコツ臭が隠し切れてねえんだよお前は!」
「落ち着けお主ら。そんなに騒ぐと気づかれるぞ」

口論になりかける2人を土ェ門がすかさず制する。その言葉に2人は一旦は収まる。

「しかし何故そのような事をする?余程防犯に自信があるのか?」
「あん?……ああ、まあ竜種だからそれもあんだろうぜ」
「つうことは他に理由があるってことか?」
「ああ。この国を治める女王は独り身で有名なんだよ」
「ってことはつまり……」
「体のいい夫ホイホイか」

二元と土ェ門は一気に女王が残念系であることを理解した。

「まあ全て女王の一存ってわけでもねえだろうが……城には一定数の独り身のドラゴンがいるだろうし」
「それでも普通そこまでして得ようと思うか?」
「或いはそこまで追い詰められているとも言える」
「誇りで夫は食えねえってわけか」
「まあそもそもこんなドラゴンだらけの城に忍び込もうとする奴なんて余程の酔狂か勇者ぐらいだろうしな」
「竜は勇気ある者を好む。成る程、理には適ってるな」
「ハハッじゃあこれから忍び込む俺らは勇者ってか?」
「或いはただの酔狂か」
「何言ってんだお前ら俺たちゃただの泥棒さ。よっしゃそんじゃ取り掛かるとしましょう!」

そう言ってヌパンたちは潜入の準備に取り掛かった。

「いいかお前ら俺たちゃ泥棒だ。お宝を盗むのが目的であって殺しが目的じゃあねえ。そこんとこ忘れんなよ」
「本家はバンバン殺しまくってるけどな」
「本家とかわけわからん単語出すんじゃねえ二元!そういう発言はいろんな意味で控えろ!」
「とは言っても拙者の刀も二元の銃弾も魔界銀製ゆえ殺傷はできん。杞憂ではないか?」
「心構えだよ心構え。大抵のことはノリが大事なんだよ」
「そもそも手に入る銃弾が魔界銀製しかねえしな」
「拙者もまさか鉄をも斬り裂く刀が魔界銀製だったとはあの時は思いもよらなかった」
「ハイハイ愚痴と思い出話はそこまでな。無線を人数分渡しとくぜ何かあったらこれで連絡な。土ェ門、使い方は分かるよな?」
「……善処する」
「オイオイ頼むぜ……」
「つか世界観的に大丈夫かこれ?」
「大丈夫だよ天才発明家のヌパン様だぞ?こんぐらい朝飯前よ。てか困ったらグレムリンがなんやかんやした世界って設定しときゃなんとかなるだろ」
「お前さっきそういう発言は控えろって言ってなかったか?」
「お前が言い出したんだろ二元」

そんなこんなしながらも一味は忍び込む準備を整える。

「準備OK!俺と二元は潜入、土ェ門先生は指定したポイントで脱出ルートの確保。なんか他に意見あるか?」
「ねえ」
「ない」
「よぉし!じゃあ始めるとすっか。待ってなさぁ〜いお宝ちゃ〜ん♪」

こうして一味は竜の秘宝を求めて動き出す。



城内は明日のこともあってか侵入は容易であった。しかし疲れのせいもあってか城内のあちこちから嬌声が聞こえてくる。二元は堪らず耳を押さえるがあまり効果はなかった。

「ったく人の気も知らねえでよくやるぜ」
「だがそのおかげで仕事が楽に済みそうだぜ」
「みんな番に夢中ってわけだ。ハッ新魔王様々だな」
「そうは言うがよ二元、お前は女作んねえのか?」
「俺が女を追いかけんじゃねえ、女が俺を追いかけるのさ」
「ヒュー!女泣かせだね〜」
「ハードボイルドと言え」
「俺なんてサキュバスのカワイコちゃんを見かけた瞬間にゃあ即ピョーンだぜ」
「毎度思うがあのダイブどうやってんだ?関節外してもあんなスルリとはいかねえぜ?」
「まあちょっとコツがあるんだよ」
「つーかそういう女好きのお前こそ真の意味で女泣かせなんじゃねえのか?」
「そうさなぁ、俺ってば遍く女性に優しいからハーレムどころか取り合いになっちゃうぜ。いや〜モテる男は辛いね〜全く!」
「その内お前後ろから刺されるんじゃねえのか?」

などと気楽に駄弁りながらヌパンと二元は嬌声が響く廊下を歩く。時々巡回する兵士に最初こそ身構えてはいたがすぐさま人目を物陰で性交しだし、寧ろ相手の方が隠れ出すので段々と隠れるのが馬鹿らしくなってきた。

そしていよいよ通りがかりに尋ねても、

「いよっ!盛ってるねえ!子供は何人の予定?」

「アァン❤そ、そうだな…おい、子供はどれくらい作る?」
「い、いっぱい欲しいれすうううう!」
「そうだな❤私もいっぱい欲しい!だからいっぱい出せ!」
「はいいいいいいい!」
「ハアアアアン❤❤❤❤❤」

「ごゆっくり〜」

この始末である。

「デンデンデデーデン デンデデデーン デンデデデン♪×2」
「チャララ〜♪チャララ〜♪テロ♪」

※ミッションインポッシブルのアレ

などと鼻歌を歌い始めたりもしだした。(音痴)

「ったく、泥棒が入ってるってのにザル警備もいいとこだな」
「まあ良いじゃねえか二元、そんだけこの国が平和ってこったろ。平和ボケは泥棒にゃ好都合さ」
「悪党の発言だな」
「悪党さ」

そして2人は一つの部屋の前に辿り着く。小一時間ほど城の中を調べ回り隠し通路や隠し部屋などを発見したが目的の竜の秘宝は見つからない。

「美品展示室か。結局はそれなりの場所に収まるってことか」
「ま、城内の間取りを穴埋めしたっつーことにしようぜ。それによってこれからの侵入も脱出も更にちょちょいのちょ〜い!」
「ヘッそういうことにしといてやるよ。あのザル警備じゃそれも意味あったのか怪しいがな」
「二元ちゅわぁ〜ん、そりは言わない約束でしょ〜よ」
「約束した覚えはねえ」
「いけずぅ〜!」
「その気持ち悪ぃ動き止めろ」

自らを抱いてクネクネ動くヌパンを吐き捨てる。

「ってのはこれくらいにしといて、んじゃ早速お宝ちゃんとご対面と行きまっしょい!」

そう意気込んで扉を開けるとそこにはいくつもの美術品が展示されていた。そのどれもが恐らく市場では出回らないであろうぐらい高価であるのは一目でわかった。竜の秘宝が目的では無かったらこれらを盗んでいただろうとヌパンは自信を持って言える。というかついでに盗もうかとすら考え始めた。しかし今は竜の秘宝が最優先、今すぐ手に取って盗みたい気持ちを抑えて部屋の奥へと進む。
すると部屋の奥に他とは違う雰囲気を放つように展示されている美品があった。

「ビンゴ!こいつに違いねえ」
「さすがは秘宝、特別扱いってか」
「それが逆に見つけてくれって言ってるようなもんだぜ♪」

そう言ってヌパンは懐からメカメカしいメガネと一対の手袋をする。お宝とはいえ魔界の物、素手で触れば即インキュバス化も有り得る。そういったことを防ぐためにこの手袋には魔術的にも機械的にも防護を施してあり、ヌパンの発明の一つである。メガネもまた同様でありいかに目に見えないレベルで微細であろうとも魔術的な反応を検知できる能力が機能の一つとして搭載されている。
それらを装備していざ手に取ろうとしたところでヌパンの手が止まる。

「……そう来たか」
「どうしたヌパン?」

いきなり神妙な顔つきをして手を止めた相棒に二元は思わず尋ねる。

「偽物だよ、それもかなり出来の良い。普通に出品しても大枚叩けるぐらいのな」
「なんだと?」
「魔力の反応が無い。秘宝といっても種類はドラゴンオーブ、なら少しでも魔力の反応があるはずだがこいつにはねえ。加えて魔術的トラップが仕込まれてやがる。少しでも動かせば城内に警報が鳴り響いてベッタベタのドラゴンちゃんたちが押し掛けてくるぜ」
「デカい釣り針ってのは本当だったようだな」

性根が悪いぜ、とヌパンはレプリカを見つめながら腕を組む。二元も同じく腕を組みだした。

「ここにねえっとなると本物はどこにあるんだ?」
「あと考えられる場所としては女王陛下の部屋だな」
「おいおい行き遅れの女の部屋に忍び込まなきゃなんねえのか?冗談キツいぜ」
「傍から見りゃただの夜這いだもんな」
「部屋にいるのバレたらどうなることやら」
「女王だかんなぁ……そりゃ大層お熱いのかまされるんだろうなぁ」
「快盗ヌパン灰燼に帰す。記事のタイトルはこれで決まりだな」
「洒落になんねえ冗談言うんじゃねえやい!」

と、そこまで言ってヌパンは大事なことに気がつく。

「ああーーっ!しまったーーー!」
「ど、どうしたヌパン!?」
「予告状出すの忘れた!」

二元はその場でおもいっきりズッコケた。

「しょうもねえことで大声出すんじゃねえ!」
「しょうもねえってどういう意味だこんにゃろう!快盗なんだから予告状出すのは当たり前だろうが!」
「ンなもん一々出さなくてもいいだろう!」
「ばっきゃろうぃ!ノリが大事っつったろうが!」

そう言ってヌパンはドン!っと机を叩く。するとトラップが仕掛けてあるレプリカがグラっとヨロけて倒れる。

「「あっ」」

ジリリリリリリ、と耳をつんざくような音が響き渡り侵入者のアナウンスが城全体に伝わる。

「やべっ」
「馬鹿野郎ーーー!!!」

と、やらかしたヌパンにマジギレしてると五秒も経たずに部屋にベッタベタのすっぽんぽんの兵士たちが押し掛けて来た。

「そこまでだ侵入者め!大人しくしろ!」
「私と夫による夜の営みを邪魔するとは良い度胸だな!」
「独り身で飢えまくっている同僚たちに突き出してくれる!」

と、こちらもマジギレのご様子。

「うわぁ〜お、怒り心頭!逃げるぞ二元!」
「言われなくてもわかってるよ!」

そう言ってヌパンは懐から赤い玉を出して入口の兵士たちに向けて投げると二元がそれを銃で撃ち抜く。撃ち抜かれた赤い玉は破裂すると赤い煙幕を入口付近に立ち籠める。

「な、なんだこの赤い煙は!?ってえっほ!あっふぁっ!か、辛っ!?えっほ!?」
「俺様特製唐辛子爆弾♪ そんじゃあ楽しい夫婦生活を〜〜〜♪」
「まっ待て! えっほ、あっほ、おっほ!?」

いつの間にかゴーグルを装備して間を抜ける2人を追おうにも唐辛子の煙が痛くてまともに動けず取り逃がすのだった。

「オウオウうじゃうじゃとお出でなすったぜ!構わずイチャイチャしときゃいいってのによ!」
「そこは腐っても兵士ってわけだ!とりあえず服を着ろって言いてえがな!」

次々と襲い来る竜騎士たちを躱しながら廊下を走るヌパンと二元。四方八方から飛んでくる刃を紙一重で避けて心が休まらない。

「ドラゴニア竜騎士団・団長 アルトイーリス参上!賊を討伐する!」
「うひゃあっ!とうとう騎士団長のお出ましだぁ!」
「我が剣を受け我らの家族になるがいい!」
「なんかイかれたこと言ってんぞこの女!?」
「ここの騎士たち脳みそピンクすぎぃ!」
「ええい避けるな!お前も家族だ!」
「もう一周回って怖ぇっ!?」

そんなこんなしながらもなんとか逃げ惑う2人。だがついに壁際に追い詰められてしまう。

「まずい追い詰められたぜ」
「どうする?このままだと家族にされちまうぞ」
「その前に取って食われるな」

「ほう此奴らか、我が城に忍び込んだという賊は?」

どう切り抜けようか考えていると竜騎士たちが道を開けて1人の人物をヌパンたちの前に通す。

「二元、ご登場だぜ」
「! ってことはこいつが……」

「まさかその様な勇気ある者が現れようとはな。あのパンフレットも役に立ったということか」

それは赤く、紅く、朱い竜。この国では知らぬ者は存在しない頂点たる者。

「歓迎しよう、盛大にな」

竜皇国ドラゴニア女王 デオノーラである。

「女王陛下の自ら謁見とは感謝感激恐悦至極でござい」
「よい。忍び込んだ賊がどの様な者か興味が湧いただけだ」
「とか言ってホントはいい男だったら先越される前に今度こそ夫にするとかそんな気だったりして?」
「ああ、そう言えばこの国の女王は未だに独り身の行き遅れだって言ってたな」
「だ、誰がそんなことを!そのような気で来たわけではないわ!ホ、ホントだ!絶対!うむ! というか誰が行き遅れだ!まだイケるわ!イケるはずだ!」
(あ、こいつ案外チョロいぞ二元)
(行き遅れってのを余程気にしてるようだな。こりゃ残念系ってのも本当らしいな)

なんだか一気に肩の力が抜けたような気がした2人だった。

「し、して!今宵は何用で参ったのだ?まさか私の夫になるために夜這いに来たとかそんなか?そうなのか?そ、それだったら私も悪い気は」
「(なんか一気にめんどくさい感じになったな……)いえいえ、私めは泥棒にございます。今宵この城には代々伝わるという『竜の秘宝』を頂戴しに参りました」

ヌパンは恭しく礼をして目的をデオノーラに伝える。

「あ、うん。そ、そうか……遠路遥々よく来たな。うん、お疲れ」
「おいヌパン、なんか露骨にテンション下がりだしたぞ」
「どんだけ期待してたんだよ。自意識過剰だぜ」
「フン、だがお前たちは信じられんようなおっちょこちょいの3枚目だな。結果失敗してこのように追い詰められている」

今更凛としても色々手遅れだと言いたかったが、2人は言わないでおいた。

「正に飛んで火に入る夏の虫、いや忍んで竜の城に入る男の泥棒!」
「いや上手かねえよ」
「フフ、この城から出られるとは思わぬことだ。そう!そもそもその気がなくてもこちらが夫にしてしまえば全て丸っと解決!」
「いや何のこと言ってんのアンタ?」
「冥土の土産だ。これがお前たちの探していた『竜の秘宝』だ」

そう言ってデオノーラの懐から取り出されたのは一つのドラゴンオーブ。しかしただのドラゴンオーブではないことはメガネをしなくてもそれ自体が放つ異様な雰囲気で一目でわかった。間違いなく本物だろう。

「おっ優しぃ〜!まさか本物を見せてくれるとはな」
「やっぱり女王が持っていたのか。ま、国で一番強い奴がが持ってりゃそれが一番の防犯ってわけか」
「その通り。だがもうお前たちには必要ない。番の竜が一番の宝物となるからだ!」
「へぇ〜そりゃ泣かせるこって。だがよぉ女王陛下、この城から脱出できたらその限りじゃねえってことだろう?」
「……何が言いたい?」

デオノーラはこの逃げられない状況ですら笑ってみせるヌパンに警戒心を抱く。

「宣言するぜドラゴニア女王。この俺ヌパン三世は狙った獲物は逃がさない。必ずこの城から脱出して再び『竜の秘宝』を頂きに参上するぜ」
「お前三世だったんだな」
「コラァ〜!かっこいい台詞に水を差すんじゃありません!」

「フッ、よかろう。盗めるものならば盗んでみるがいい。逃げれればの話だがな!掛かれ!」

女王の号令と共に竜騎士たちが一斉に襲い掛かる。

「その言葉忘れんなよ?」

そう言ってニヤリ、と笑いかけるとヌパンは勢いよく叫んだ。

「というわけでよろしくお願いしま〜す土ェ門先生!」

「承知!」

そう応える声が聞こえてきてヌパンたちの後ろの壁がバラバラに切り裂かれると、そこにはフィアットの上で胡座かく土ェ門が現れた。

『おおっ!?』

「それでは皆さんさよ〜なら〜!」

そう言ってヌパンは煙幕をボンっと張ると素早く車に乗り込みアクセル全開で車を走らせた。

「ゲホッゲホッ、逃げたぞぉ!追えー!」
「第一空挺部隊を出せ!」
「駄目だ煙幕が濃くて見えない!」
「ぐえっ、えっほ、あっほ、あっふぁ!?唐辛子の匂いと痛さで動けん!」

「まさかこの状況から逃げ果せるとは……フフフ、おもしろい。ここで退けば竜の名折れ!その挑戦受けて立とうではないか!」

既に見えなくなった快盗たちに向けてデオノーラは不敵に笑うのだった。



夜の山を一台の車が猛スピードで走り抜ける。運転手の気分が余程良いのかその走行は所々危なっかしい。

「ヒュー!やっぱりフィアットちゃんは最高だぜ〜!」
「しかしまさか車を持って来てたとはな」
「先程まで拙者の掌の大きさだった」
「グッドタイミングだったぜ土ェ門ちゃ〜ん♪お前なら俺たちの居場所をすぐに見つけてくれると信じてたぜ」
「ヘッ、アドリブにしちゃ上出来だぜ。縁の下の力持ちってわけだ」
「しかしヌパン、貴殿の言う通り、逃走時に袋から取り出して投げたが……面妖な」
「どういう理屈だ?」
「なぁになに〜俺様の超天才的頭脳に掛かればなんでもござれ、質量保存の法則なんざ魔術でぶっ壊して車ぐらいちょちょいっと拡大縮小朝飯前よ!」
「ハッ、魔術様々だな」
「そういうこと♪一先ず宿に戻って作戦の練り直しだ。急──」

急ぐぜ、と言おうとした時タイヤが大きな石を撥ねたのか大きく体制を崩して車体が不安定になり、ハンドルが効かず大きく蛇行する。

「あららららららららら?!」

そして車は木々を掻き分けて大木へと追突し、大破した。

「俺のフィアットちゃんがああああああああ!?」
「どんまい」
「南無」

お亡くなりになったフィアットを見てヌパンはがっくりと肩を落とした。
18/09/06 00:42更新 / ウルトラ自爆マン
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■作者メッセージ
世界観ガバガバやんけ!

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