連載小説
[TOP][目次]
第四章 メープル
 メープルはイルトスト王国のそれなりに名のしれた魔術師の子どもとして双子の姉のアンバーとともに生まれた。両親ともに優秀な魔法使いゆえ、メープルもアンバーも多大な期待を受けていた。アンバーの方は魔術の才はなかったが、メープルの方はその期待通り、優秀な魔術師として成長していった。
 しかし親や周囲が望むような子に育ったかとなると、それは違っていた。
「メープル! 貴女はまた……!」
 屋敷に帰ってきた娘を見て母親が眉を釣り上げる。帰宅したメープルのドレスは泥まみれであり、手には大事そうに棒切れを括って作られた剣が握られていた。
 魔術に恵まれたメープルであったが、それ以上に身体を動かすのが好きであった。決して運動神経は良い方ではなかったが、それでも野山を駆け回ることを楽しんでいた。これが、母親や父親が気に入らない。魔法使いは勉学に勤しみ理知的であることを良しとしているからだ。
「身体を動かすことは下品だといつも言っているでしょう!」
「うるさい! メープルのやりたいことをなにもわかってくれないんだから!」
「貴女は魔法使いでさらに女の子なんです! そんな野蛮なことをしてはいけません! まったく、デキの悪いあのアンバーですら本を読んで勉強すると言うのに……」
「おねえちゃんをわるくいうなぁああ!」
 自分だけならともかく、双子の姉を蔑んでいる様子を子どもながらに敏感に感じ取り、メープルは怒りの咆哮を上げる。メープルはアンバーと違って魔法の才能があったが、それを鼻にかけたり姉を嘲笑ったりすることがなかった。むしろ姉のことが大好きだった。
「はぁ……品性もダメ、言葉使いもダメ、精神もダメ……これでは、どんなに魔術ができても先が思いやられるわ……」
 癇癪を起こすメープルに母親は嘆息する。ひょいっと彼女は手を振ると、魔法を使ってメープルを転ばせた。そして母親は炎の魔法を放ち、娘が持ち帰った棒きれの剣を燃やす。
「ああああっ!?」
 せっかくのお気に入りの手作り玩具を燃やされ、絶望の声をメープルは上げる。そんなメープルを母親は冷たく見下ろすのであった。
 
 そんな両親の魔力の才を引き継ぎながらも快く思われていなかったメープルの遊び相手であり心の癒し手であったのが、彼女がお兄ちゃんと呼ぶセインであった。
「いやー、ほんとうにママはひどいよ! がんばって作ったけんなのに!」
 そう言って、メープルは自分の不出来な剣を燃やしてしまった母親に対して憤慨していた。
「うん、がんばって作ったよね」
 セインは、母親の非道な行いに怒るメープルの頭を優しく撫でながら相槌を打つ。しかし、彼女の母親を悪くは言わない。彼女の努力とその結果の喪失にのみ言及して寄り添う。
「それにお外でからだをうごかしてあそぶのがヤバンっていうんだよ!」
「それだとボクもヤバンになるなぁ」
「でしょ〜? ひどいでしょ? でもいいもん! メープルはお外であそびたいからあそぶんだもん! なにがしたいかだよ!」
 このような調子でメープルは親や周囲に"魔法使いらしさ"を強いられていることの不満をぶちまける。セインはそれを彼女が満足するまで聞く。そしてメープルがすっきりしたところでまた遊ぶ……この流れがお約束であった。
 外で遊ぶことが好きなメープルであったが自分の使命とも言える、魔術の勉強に関しては求められたとおりに修めた。セインも勇者候補から勇者へと認められつつあり、魔王討伐の旅を命じられていた。その旅の同行にメープルは自ら志願した。
「い、いいのメープル?」
 驚くセインにメープルは笑って言った。
「外で遊ぶいいチャンスだよ! それに……何をしたいかだよ、お兄ちゃん!」



「んんっ! あっ、あんっ! やめてぇええ……」
 三体のダークスライムに絡みつかれて、帽子以外のすべて剥ぎ取られたメープルは嬌声を上げていた。その身体は双子だけあってアンバーに似て、幼げな顔つきに似合わず胸元はふっくらと膨らんでいる。
 その肢体に、後ろからプラムに組み付かれて丸い尻を撫で回され、左からフランに組み付かれて左胸や背中を撫で回される。そして右からは双子の姉で人間をやめてダークスライムになったアンバーに組み付かれて右胸をもみしだかれていた。
 すでにダークスライムによる媚薬に侵されてメープルの身体は発情しており、触れられていない秘所はほぐれて濡れていた。
「あぁああ……いやぁああ……お、お姉ちゃぁん……や、やめてよぉお……あああっ!」
 喘ぎ声の下でメープルはアンバーに乞う。しかしアンバーは笑うばかりでやめなかった。
 メープルは歯噛みする。人間の女を魔物娘に変える存在がいるのは聞いてはいた。実際、レスカティエでは勇者ウィルマリナがサキュバスになったし、フランツィスカはクイーンローパーになった。しかし、ダークスライムもそのような能力を持っていたとは知らなかったのだ。知っていたら先のアンバーの自己犠牲を止めていただろう。悔恨の涙をメープルは流す。
「ふふ、泣くほど気持ちいいの?」
「……そうじゃないですよ、フラン」
 挑発的に言おうとしたフランにぴしゃりとアンバーは言う。そして優しい声でメープルに話しかけた。
「メープル……悔やんでいるんですよね? ダークスライムに魔物化する能力があるんだったらさっきの私の行動を止めたのにと思っているんですよね?」
 言い当てられてメープルは涙に濡れた目を見開いて右手に絡みついているダークスライムを見た。そこには人間をやめてはいるが確かに双子の姉がいた。
「大丈夫ですよメープル……ダークスライムになってとても気が楽になったんです。後悔なんてしてませんよ……セインとも一緒になれますし」
「えっ!?」
 突然の姉の言葉にメープルは今度は驚きに目を見開く。この姉もセインに気があったのか。
 しかしよく考えたらそれもそうだ。何度も裏山に迎えに行ったのだから良く分かる。自分の悩みや苦しみをあのように何度も受け止めてもらえたら、それは好きにならない人が少ないだろう。
 そして……
「貴女だってそうでしょう、メープル?」
 双子の姉の指摘に、メープルは頬を快感以外で染めた。幼いころから一緒に遊び、悩みも癇癪も受け止めてくれていたセインはメープルにとって気持ちを寄せる対象だったのだ。
 妹の反応にアンバーはにっこりと笑いながら、メープルの秘所にスライムの手を伸ばした。少し触っただけで指にぬるりと愛液が絡みついてきた。
「そして……セインのことを考えたらもっと濡れてきたでしょう?」
「う、うぅう……」
 メープルから否定の言葉が来ない。セインのことを考えると子宮が疼き、とろりと膣壁を愛液がさらに垂れたのを感じ取っていた。アンバーはその様子を見て、ゆっくりと指を動かし始めた。最初は中指一本で入り口付近を刺激し、徐々に広げていく。
「それから私は知っているんですよ? メープルがよくオナニーをしていたこと……」
「〜〜〜〜ッ!?」
 これはセインへの気持ちを言い当てられるより、そして今、裸を晒していることより恥ずかしかった。そうだ。アンバー以上に「自分がやりたいことをやる」という奔放な性格であったメープルは、教団が否定していた自慰行為をしていた。さすがにバレると大目玉を喰らうのでこっそりとしていたのだが……双子の姉は知っていたようだ。
「だから知っているでしょう? こうすると気持ちいいって……」
「ふわああ……おねぇちゃぁん……」
 膣をくちゅくちゅといじられ、胸をむにゅむにゅともみしだかれてメープルは湯にでもつかったような間延びした声を上げる。
「でもオナニーはここまでできないでしょー?」
「女の子は全身が性感帯だからね」
 忘れてもらっては困るとばかりにプラムとフランはメープルの肌を撫で回す。その愛撫にメープルはすでに身体を任せてしまっていた。直前まで怒りに狂って今一緒に愛撫をしているプラムやフランに炎や吹雪の魔法を浴びせていた魔法使いとは思えない。
 三人のダークスライムの愛撫にメープルの身体はどんどん高みへと押し上げられていく。
「アッ、だめっ! イクっ、イッちゃう!」
 突然切羽詰まった声をメープルは上げる。自慰も嗜んでいた彼女はオーガズムの感覚も、そしてその名称も知っていた。
 追い込まれた獲物を見て三人のダークスライムはにんまりと笑う。
「いいわよ、そのまま身を任せて……」
「イッちゃえイッちゃえ〜♪」
 後ろから横から、プラムとフランが煽るようにささやく。さらに、アンバーが囁いた。
「ほら、セインのことを考えてイきましょう?」
「あっ…♡」
 そのアンバーの言葉が引き金になったかのように絶頂が始まった。身体がびくびくと震え、どぷりと愛液があふれてアンバーの手を汚す。
「あっ、あっ、ああああ〜〜〜っ!」
 甘く甲高い声をメープルが上げる。自慰はバレるわけには行かないのでオーガズムのときはいつも声が出ないように口を固く閉じるようにしていたのだが、ダークスライムの人外の愛撫はそれを許さないくらいの強烈な快感をメープルの身体に教え込んでいた。
 ぐんにゃりとメープルはダークスライムたちに囲まれたまま脱力する。だいたいメープルはオナニーで一度達したら満足してそのまま後始末をして眠りにつくのだが……今回はそうはいかなかった。
「まだまだだよ、メープル♪ もう何回かイッて……」
「一緒にとろとろになりましょう?」
「あぅう……だめぇ……」
 快感やセインのことで流されかけたが、今自分がされそうになっているのは、ダークスライムに変えられることだ。再び始まったプラムとフランの愛撫にメープルは恐怖も混じった声を上げる。
 しかし身体は正直だ。尻を撫で回され、胸をもまれるだけでぞわぞわとした快感が、身体の官能の炎を煽る。吹きこぼれる鍋のように、メープルの口から嬌声が上がり、性器から愛液があふれる。
 よだれをこぼして物欲しそうなメープルの膣口にアンバーが指を押し当てた。その指にも愛液がからみつく。
「大丈夫ですよ、メープル……」
 何が大丈夫なんだと濡れた目で若き魔女は姉の元聖女を睨む。そんなメープルにダークスライムとなったアンバーは、囁いた。
「人間をやめたら……もう冒険なんかやめてセインと一緒になれますよ?」
 メープルの目の色が変わった。それはあまりにも魅力的な言葉であった。アンバーの言葉が続く。
「このとろとろの身体でセインに絡みついて、じゅるじゅるとおちんちんを包み込んで、何回もセインをイカせて、自分も気持ちよくイッて……」
「〜〜〜〜っ!」
 アンバーの言霊に誘われるかのように、官能の炎が燃え盛っていたメープルの身体は再びオーガズムに達した。しかしダークスライム達は攻めの手を緩めない。快感で考える間も力も与えず、とろかしていく。
『ああ、そっか……この先がんばっても……お兄ちゃんが手に入らないかもしれないしね……』
 冒険しているといつ不幸が起きて離れ離れになってしまうかも分からない。今回はダークスライムに捕まったが、あるいはセインが一人別の魔物娘に捕まって自分の手の届かないところに行くかもしれない。あるいは冒険の果に別の女性と恋に落ちてしまうかもしれない。ならば……
「メープル……あなたもダークスライムになりましょう?」
「うんっ……! なる、なるぅう!」
 メープルの精神は、人外による快感と希望に甘く崩れていった。自ら姉の指に性器をこすりつけるよう、腰を振る。自分の身体のどこをどういじったら気持ちよくなれるかを知っていたその動きは、とてもなめらかであった。
「お姉ちゃん、またイッちゃう……イッちゃうよぉお!」
「うん、いいですよメープル……何回もイッてとろとろになりましょうね」
 姉の言葉を聞きながらメープルは何度目か分からないアクメを迎えた。ダークスライムに包まれているその身体の境界線がぼやけていく。
『お兄ちゃん……メープルがしたいことはね……』
 意識を失い人間をやめる直前にメープルは思う。自慰も嗜んでいた彼女がしたかったことは
『人間も冒険もやめて、お兄ちゃんといっぱいエッチすることなんだ♡』
22/04/03 22:26更新 / 三鯖アキラ(旧:沈黙の天使)
戻る 次へ

■作者メッセージ
はい、そんなわけで二番手は女魔法使いのメープルさんでした。
 ヒロインとして考えついたのは実は最初の子です。双子というコンセプトも割りと最初の方に考えついたし、背負わせる過去に関しても、オナニストであることもすぐに決まってすんなりと書けました。むしろ、前の章のバトルの方が苦労したくらいでした。いかがだったでしょうか? オカズになりましたら幸いです。
 さて、残るはサフィです。次回はエロシーンなしの章ですが、お楽しみにしていただけましたら幸いです。

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33