読切小説
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嫌われ者の為の歌
怖いから殻に篭ってた、都合が悪くなれば逃げていって、黙って何も言わなかった。昔から進歩できないで、ずっといいように皆に使われてた。

そんな俺でも、憧れぐらいは抱いても良いよね。眩しい位に輝いてて、皆が憧れている、そんな彼女のラヴ・ソングみたいに彼女に、恋焦がれていたって。

俺は皆の嫌われ者で、彼女は皆の人気者。叶うはずの無い恋だから、憧れるだけで、想うだけで十分だったよ。俺の汚れた手で触れてしまうと貴女を汚してしまうって、悲劇のヒーローを演じながら。



あの時も、皆が嫌がった事を断らずに黙ってたら、いつの間にか押し付けられていた。そこまでは何時もの事だったし、諦めていた。

全員と仲良くしたかったキミが、俺にも近付いてきたこと。その時は手伝いをしてくれるキミの事が鬱陶しくて、黙ってれば他の人と同じように離れていくと思ってた。

話しかけてくれるキミを無視しても、諦めずに俺に話してきてくれた。諦めてくれなかった、いつの間にかキミは自分の夢を語りだした。

「ボクの夢はね、歌手になってどんなに落ち込んでたりする人も、笑顔を作らせてあげたい。笑顔は素敵なものだよって伝えたいんだ。その為に歌うんだ。」

そういって、無表情に聞いてる俺の前で、キミは歌いだした。





息を大きく吸い込んで 息を大きく吐き出した 君に声が届くように

当たり前なんて 誰が決めたんだろう? 人には出来ないことなんて沢山ある それが普通なのに誰でも出来ること思い込んで 人を縛り付ける

出来ないからって馬鹿にして まるで怖がるように言い訳してる 悪いことってわかってるのに馬鹿にしてる そこに自分がいたら怖いから馬鹿にしてる

大丈夫 アナタは人より少し我が侭なだけ みんなより我が侭なだけ それで十分だよ 自分を見下す必要なんか無い アナタは強いから そこに居れる

当たり前なんかより アナタらしくて良いから 傷つくことなんて無いよ それがアナタらしくて堂々としてればいいの それを馬鹿にする人なんて

自分が弱いから馬鹿にする そっちの方が格好悪いよ 文句を言わないから 全部押し付ける そんな当たり前なんて 絶対に要らないから

大丈夫 アナタは人より少し弱いだけ みんなより少し弱かっただけ それで十分だよ 人を傷つける強さなんか要らない アナタは優しいから そこに居れる

皆が嫌がる事を 押し付けられたって 嫌な顔をしないで ただ黙々としかっりこなす 嫌われてても ボクにとってそんな人が一番格好いいよ

嫌われ者の為に ボクは歌うよ 当たり前の様に 人に媚びて生きてる人よりも 誰も知らない所で 一番頑張っている 大好きな嫌われ者の為に歌うよ

大丈夫 アナタが少し辛くなったら ボクがそばに居て守ってあげる……





俺はキミの歌を聞いて笑わなかった、それどころか涙を流してた。キミの歌は俺に笑いを与える、内容じゃないよ。俺は泣きながら、キミにそう言った。

「あれれ、違ったかな?次に聞かせるときには、笑える歌を作ってくるね。」

キミは笑顔で言って、俺の涙を拭いてくれた。この時、俺は誓ったよ、俺は君に触れられないけど影から応援していこうと。

俺以外に歌った事の無い、歌を胸に刻んで。
14/09/17 08:45更新 / アンノウン

■作者メッセージ
なんかセイレーンの短編が書きたかった、それだけです。

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