読切小説
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翼をください
リリムは相手の話を聞いていた。
「私、子供の時から鳥にあこがれていたのです。自由な空へ翼はためかせて行きたいって」
話は続いた。
「重力に縛られて生きるのはもうこりごりなのです、この大空に翼を広げて飛んでいきたいのです、この背中に鳥のように白い翼つけてください!」
リリムは頭痛をこらえるような表情で答えた。
「あなたの言いたいことは良く分ったわ」
「ほんとですか!ではお願いします!」
「無理よ」
「何故ですか!!」
相手は絶望的な表情をした。
「それはね、あなたがマーメイドだからよ」

「それは…大変な話だったな」
リリムは友人のデュラハンに一連の経過を話した。
「小さいころから翼がほしいと言いだして両親を困らせていたらしいのよ、シー・ビショップに頼んでもだめだったからポセイドン様に直訴したそうよ」
「いくらポセイドン様でもそれは無理だろう」
「その通り、無理だと言われたから『うわあ、使えないやつ』と言い残してその場から立ち去ったんだって」
「ポセイドン様もお心が広いな、それで魔王城に来たわけか」
「私に頼んでも駄目だったから、今度はお母様に」
「魔王様もさぞ困ったろうな」
「お母様でも駄目だったから『じゃあ主神に頼んでみる』と言いだして、みんなで必死に止めたのよ」
リリムはそのことを思い出して心底疲れ果てた顔をした。
「お疲れ様、それで結局どうなったんだ?」
「落ちついて考えてみたら、彼女の本当の希望は『翼がほしい』じゃなくて『空が飛びたい』だから知り合いのバフォメットのサバトを紹介したのよ」
「そっか、魔女は箒で空を飛ぶからな…、だけどマーメイドの下半身では箒に乗れないんじゃないか?」
デュラハンの脳内に、必死になって箒に乗ろうとするマーメイドの姿が浮かんだ。
「人化の術を使えば大丈夫よ」
「なるほど、それで一件落着か、御苦労さま」
「お母様も『何で最近はわけのわからない願い事が次から次へと』と愚痴っていたわ」
「他にもあったか」
「詳しいことは知らないけど、こないだドラゴニアのデオノーラ様が来てお母様に願い事をしたけど、お母様にも無理な話だったからできないと言ったら『そんなはずはないです、魔王様にできないことなぞないはずです』と、さんざん食い下がったそうよ。何とか言いくるめて帰ってもらうのにとても苦労したって」
「魔王様を尊敬している人ほど、むちゃくちゃなお願いをするからな『魔王様は全知全能からほど遠い存在です』って宣伝した方がいいんじゃない?」
「考えておくわ」

17/02/12 14:49更新 / キープ

■作者メッセージ
カラオケで「翼をください」を歌った時に思いついたネタです。
デオノーラのお願いについては、私の作品「竜騎士への道」をご覧ください(宣伝)

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