連載小説
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黒槌と火蜥蜴
現在地-闘技場都市ソサエティ-とある武器屋

この街は世界一巨大な闘技場であるコロッセウムが建てられている街…名をソサエティ。

大陸のほぼ中央に存在し武器屋が立ち並ぶ巨大な街。

そんな武器屋にとあるサラマンダーが居た。

「ハァ!?此処でも駄目なのかよ!」

目を見開いてカウンターに両手を叩きつけるこのサラマンダー。

名をカレンと言い、信じられないといった表情でカウンターの向こう側にいるスキンヘッドの中年男性を見つめる。

「ああ、この折れた剣は家では打ち直せないな」

中年男性はその手に折れたサラマンダー製の片刃の剣を持っているが、申し訳無さそうな顔で告げる。

「この剣は殆ど寿命だよ…それにこの街の鍛冶屋は全部武器屋と一緒に経営していてな…この街は形に流し込んで作るからな…最近腕の良い鍛冶師が居なくなっちまったんだよ」

この街に立ち寄るのは腕に自信のある戦士ばかりで、武器屋で武器を次々に購入していく。

その需要に供給が追いつかず、形に流し込み量産する方式が取られたにだ。

「畜生…」

サラマンダーは剣を受け取ると折れた切っ先を腰の袋にしまい、剣を鞘に収めた。

ズーンと擬音が聞こえそうなほど落ち込むサラマンダーを見て、中年男性は益々申し訳の無い気持ちになる。

心なしか尻尾の炎も弱々しくなっている。

「なんだい…その剣、そんなに大切な物だったのかい?」

「ああ…これはアタシのお袋の形見なんだ」

剣を大切そうに見つめる彼女に、中年男性は更に申し訳ない気持ちになる。

そして中年男性は店の奥から一本の剣を持ってきた。

「お嬢ちゃん、こりゃあ何の変哲も無い唯の長剣だがもし良かったら暫くの間使ってやってくれ…」

確かに何の魔力も無い長剣だが、その心遣いが嬉しかったのかサラマンダーは嬉しそうにそれを受け取った。

「おっさん…ありがとな!大切に使わせてもらうよ!」

少しだけ元気になったサラマンダーは、長剣を腰に下げて店を出た。

彼女の名はカレン。

自分の夫になる男を探すための旅の途中でこの街に立ち寄ったのだが、闘技場の戦いで強者と戦い、辛くも勝利したものの剣が折れてしまったのだ。

「くっそー…目ぼしい武器屋はもう回っちまったし…しかたねぇな」

少し諦めたように足を進めると、その先には酒場があった。

カレンは酒場に入りカウンターに座るとマスターに酒を注文した。

「…お袋」

剣の柄を握り既に亡き母を思い浮かべる。

魔物限定の流行病にかかってしまい父の奮闘虚しく逝ってしまった。

そして父はカレンに自分の夫を探す旅に出るように言ったのだ。

そんな母の形見をこのまま折れたままなどと言うのはカレンは許せなかった。

「絶対に直してやる」

そう呟いたと同時にマスターが酒を持ってきてくれた。

カレンは剣を打ち直せ鍛冶師の情報を、このマスターから聞くことにした。

酒を喉に通すと顔をマスターに向ける。

「なぁ、折れた剣を打ち直せるような腕の良い鍛冶師を知らないか?」

酒を置いた後、グラスを磨いていたマスターは若干目を細めると、グラスを置いてゆっくりこう言った。

「南の森に一人の男が居る…その男はかつてブラックハンマーと呼ばれドワーフとサイクロプスの鍛冶技術を持っているらしい…」

「…そっか、なら早速行ってみるとするか。あんがとな」

酒を仰いで一気に飲み込むとカウンターに酒代と情報料を置いて店を出た。

南にある森は穏やかな森だが、大した木の実や薬草も無いので人々は殆ど立ち寄らない。

そのブラックハンマーと呼ばれる男を尋ねて極稀に立ち寄る者がいる程度だ。

大通りを歩いて行くと、カレンは妙に視線を感じる。

これはどの街でもそうだ。

褐色の肌に腕と足には赤い鱗に、赤い髪を黒い布で束ねており、目が釣りあがっていて勝気そうで綺麗な顔立ち、胸は鱗で覆われておりビキニパンツをはいているその姿はかなりの美人だ。

肌の露出も多いので道行く男共がカレンを見ていくのだ。

そんな視線は何時もの事なのでカレンは全く気にせず街の南門を目指した。

南門に到着し、門を通り抜ける。

暫くは街に出たり入ったりする人間や魔物が行き交っていたが、森を目指すために街道から逸れるとすぐに誰も居なくなってしまった。

暫く草原が続き、自分の足音だけを聞きながら進んでいくと、緑が生い茂る森が見えてきた。

「お、見えてきた」

剣が直せるかもしれないという期待に思わず口からそうこぼれると、自然と足も軽くなり森を目指して早歩きする。

森に入ると小動物がちょこちょこ見られ、どこかで見たことのあるような珍しくもない花や草が見られる。

草木を掻き分けて進んでいくと少し開けた場所に出た。

「…なんだコリャ?」

その開けた場所には何故か分からないが二メートル近くはある巨大な黒いハンマーが置かれていた。

先の部分を地面に叩きつけられているようで地面には亀裂が入り柄はまっすぐ空に向いている。

「…黒いハンマーって事はこれがブラックハンマーか?」

こんな場所に置かれているハンマーを不思議に思い近づいてみるとその重量感が伺える。

カレンの身長を越えるハンマーを試しに持ち上げようとしてみる。

「うぬぬぬぬぬぅ…!ぬぉおおおおおおおおおおおっ!」

武闘派の魔物であるサラマンダーの本気の腕力で持ち上げようとしてみるが、ハンマーは持ち上がる所かピクリとも動かなかった。

「ハァ…ハァ…ハァ…このアタシの全力でも全く動かないなんてな…」

カレンはその場に座り込むと後ろの草むらがガサガサと揺れる。

それに素早く反応したカレンは腰の長剣を引き抜いて構えを取る。

そこから現れたのは唯の野栗鼠だった。

「なんだ…栗鼠か」

剣を鞘に収めてふぅと息を吐く…。

「おい」

「うひゃあっ!?」

突如として背後から声をかけられ、らしくない悲鳴を出してその場で飛び上がるカレン。

恐る恐る後ろを見るとそこには百八十センチは超えている長身でがたいも結構良く、短い茶髪の男がいた。

服装はジパング風の着物に下にはズボンをはいている。

しかし目を引くのは着物の隙間や顔に刻まれた異様な黒き刺青だった。

着物の袖から出ている指先や腕にも刻まれており男の姿は異様を通り越して禍々しいと言えるほどだった。

「あ、あんたは…?」

男を警戒して剣の柄を握り締めて何時でも攻勢に出れるように身構えるカレンに対し、問いにも答えずにカレンをマジマジと見続ける男。

暫くしてカレンから視線を外した男は、黒いハンマーをに近づいて柄を握り締めた。

「おいアンタ、そのハンマーはアタシにも持ち上げるどころか動かす事すらできなかったんだ…止めとけよ」

カレンは男に忠告するが、意に介さない男は腕に力を込める。

するとどうだろうか、魔物の腕力で持ち上がらなかったハンマーは、男によって簡単に持ち上げられてしまい、男はそのままそれを右肩に担いだ。

その信じられない光景にカレンはあんぐりと口を開けて見入ってしまった。

ハンマーを担いだ男が一歩大地を踏みしめる毎にズシン…と鈍い音が辺りに聞こえる。

男は再びカレンを見つめるが、すぐに視線を逸らして森の奥へと歩いていく。

その様子を見て、フリーズしていたカレンはハッと我に返った。

「お、おい!ちょっと待ってくれ!アンタに聞きたい事があるんだ!」

背に向けてそう叫ぶと、ピタリと足を止めて顔だけカレンに向ける男。

「…何だ?」

先ほどと同じ声だが妙に威圧感のある声に聞こえたカレンは少し怯んでしまうが、すぐに二の句を繋いだ。

「アンタがブラックハンマーなのか?」

その問いに男は僅かに顔を顰めるが、溜息を吐いてすぐにもとの無表情になりカレンに向き直った。

「その号はとうの昔に捨てたんだ…今はしがない森の住人だ」

光を宿さない目を見て、カレンはこの男の過去に何かがあた事を悟った。

しかし同時に肯定されたと分かり期待に胸を膨らませた。

「凄腕の鍛冶師なんだろ?なら俺アタシの剣を直して欲しいんだ」

母の形見の剣を抜いて男に見せ付ける。

「お袋の形見の剣なんだ…でもここらの鍛冶師の腕じゃ直せないって言われて…凄腕のアンタなら直せないか!?」

此処で直せなかったらもう直せないかもしれない。

だが本当に大切な物なのでそう簡単に割り切る事も出来ない。

縋る様な思いで頼み込み、頭を下げるカレンだが、男は静かにカレンを見ているだけだ。

「だ、駄目か…?」

上目遣いで男の顔を覗き込むが、相変わらずの無表情だった。

そしてまた暫く待つと男が口を開いた。

「随分と使い込まれているな…一目見ただけでも持ち主の愛が感じられる」

「そ、そうか!?そうなんだ!親父が集めた鉱石とお袋の鱗と爪を使って作られた思い出の品なんだ!頼む!」

褒められた事で希望が湧き出てきたのかもう一押しと頭を下げる。

「だが無理だ」

淡い希望は一瞬で打ち砕かれた。

上げて落とすとは正にこの事だろう。

カレンの脳内は告げられた言葉を拒否するかのように暫く思考を停止させた。

「その剣は寿命だ、生き返らせたいなら溶かして新たに剣として造り出すしかない。どんな武器にも寿命はあるからな」

淡々と告げられる事実を一つ一つゆっくりと処理していくがまだ思考が追いつかない。

「それに第一…」

なんだ、まだ何かあるってのか…と思いながら最後の言葉を聞き漏らさないようにする。

「今俺は武器作りの依頼は請け負っていない。俺が打つのは鍋や装飾品だけだ」

最後に告げられた言葉はあまりにも身勝手な言葉だった。

いや、個人の理由で請け負わない事になんの身勝手があろうか。

それより勝手に押しかけて急に剣を打ち直してくれと言う自分の方が身勝手じゃないか。

そう頭では理解しているが体が、感情が、心がそれを受け入れない。

婿探しの旅に出る前に父が母の形見と言って渡された命と同じくらい、いや下手をすると命よりも大切な剣を諦める事は、カレンには出来なかった。

「じゃあな…」

男は森の奥へと去っていったが、カレンはその場に立ち尽くしたままだ。

握った拳がプルプルと震える。

怒りか、悲しみか、諦めきれない願望か、様々な感情が入り混じった事で、彼女は膝を着いて地面を思い切り殴るのだった。



現在地-ソサエティ南部の森-鍛冶小屋

巨大なハンマーを小屋の外に下ろす。

ゆっくりと置いたつもりなのだがズドンと強烈な音が出て地面に亀裂が入る。

かつてブラックハンマーと呼ばれた男は、久々の来客相手を思い返していた。

今回は魔物のサラマンダーだった。

母親の形見の剣を打ち直して欲しいと頼まれたが幾らサイクロプスやドワーフの鍛冶後術でも寿命の来た武器は直せない。

彼の師であるサイクロプスとドワーフでも不可能だ。

男は火打石で藁に着火して息を吹き込んで火を大きくしていく。

そしてある程度大きくなった所で薪を次ぎ込んでいき火を保つ。

炎を見るとあのサラマンダーの尻尾の炎を思い出す。

悪い事をしたとも思っているが、男にはそれでも武器を打たない理由があった。

「…ハァ」

傍に降ろした巨大なハンマーを見下ろす。

あの頃の男はまだ若かった。

二人の師に鍛冶技術を教わり魔王軍や教団を初め各国の軍にも武器を売っていた。

だが、若さ故に愚かで、愚か故に騙された。

まぁ、若いと言っても男の年齢は今年で二十一になるのだが。

あの事件以来、男はブラックハンマーの号を捨てて責任を取り、その後こうして身を隠した。

しかし情報は漏れるもので、時々武器を打って欲しいと来客もあるのだが。

全て断っているが稀に力尽くで作らせようとしてくるので全員強制退場をお願いしたのだった。

今回のサラマンダーも怒らせてしまったらカッとなって此処を襲撃してくるかもしれない…そう思い今日は少し気を張り巡らせる事にした。

すると近くの茂みが音を立てて揺れる。

そこから現れたのは男の予想通り、あの時のサラマンダー…カレンだ。

「まだ何か用か?」

その手に握られている折れた剣を見て警戒し、ハンマーに手をかける。

するとカレンは剣を置いて、ジパングにおける誤り方の土下座をした。

「頼む!本当に大切な物なんだ!報酬は何であろうと払う!金でも物でも…なんならアタシの身体で払ってもいい!剣を打ち直してくれ!」

カレンの土下座と言葉には少々驚かされたようだが、男は首を横に振った。

「その剣を打ち直さないのは物理的に無理だ。報酬にしても俺は金は求めていないし欲しい物も無い…アンタの身体には興味あるが修理も出来ないのに報酬を受け取りたいとも思わない」

その言葉を聞いてもカレンは頭を下げ続ける。

だが男も頑なに請け負ってくれない。

「どうしても駄目か…?」

何時までも返事が返ってこないのを感じて再度カレンは男にそう問うと、男ははっきりと首を縦に振った。

「どうしてだよ…もうアンタしか頼みの綱がないんだよ…頼むよ」

「いい加減帰れ…これ以上面倒させるなら力尽くで追い払うぞ」

男はハンマーを手に取って持ち上げるとその先をカレンに向けた。

「…上等だ、此処まで頼んでも引き受けてくれないならこっちこそ力尽くだ!」

「…やれやれだ」

カレンは折れた剣を鞘に戻してもう一つの長剣を引き抜いた。

剣を振りかぶって男に突進するかのように向かっていく。

「だりゃああああああっ!」

乱暴だが良い太刀筋で長剣を振り回すカレンだが、男は必要最小限の動きで避けていく。

だがカレンの剣も、力だけではなく速度までかなりの物であり男の頬にかすり傷を作った。

内心、良し!このまま押し切ってやる!と思ったカレンだが一瞬寒気を感じて大股で二歩後ろに下がる。

すると下から黒い巨大なハンマーが振り上げられた。

あの巨大なハンマーをもろに受ければ、骨折は免れないだろう。

無論、常人ならば即死だ。

だが避けた事であのハンマーの重量から二撃目に移るより此方が首に剣を当てる方が早いと判断したカレンは再び踏み込む。

だが同時に言い表せぬ恐怖が全身を襲い、完全には踏み込まずに素早くバックステップで後ろに跳んだ。

直後、地震と勘違いしてしまう程地面に衝撃が叩き込まれ、地面には叩きつけられたハンマーを中心に三メートルは地面に亀裂が入っていた。

「とんでもねぇな…」

カレンは思わずそう呟くが、未だ空気に違和感を感じた。

「随分悠長だな」

「なに…?」

次の瞬間、ハンマーを中心に三百六十度全方向に空気が震える。

その空気波の衝撃は、カレンに襲い掛かり吹き飛ばした。

「がはっ!?」

吹き飛んでしまったカレンは木に激突して漸く止まった。

「な、何だ今の…」

ボゴン…と音を立てて地面にめり込んだハンマーを引き上げて再び肩に担ぐ男…。

「今のを喰らってまだ意識があるとはな…。今のは超重量と超速度によって引き起こされた空気の衝撃波…このハンマーはその衝撃波をコントロールできる魔力を秘めているんだ…」

長剣を杖にして何とか立ち上がるカレンだが、その足はガクガクと震えている。

どうやら立つのもやっとな様だ。

だがその口元は吊り上り、愉しそうな笑顔を浮かべている。

「…何が可笑しい?」

流石に男もそれを怪訝に思ったようで、眉を顰めて問う。

「フフ…アンタ、本当に最高さ…!」

よろめきながら、しかし笑いながらそう言うと、長剣を正眼に構える。

「アタシ達サラマンダーは…生粋の戦士なんだ……剣を直すとか直さないとか…そんな事は全部無視して…強いアンタとやり合えるのが堪らなく愉しいのさ!」

興奮すると燃え上がるサラマンダーの尻尾の炎だが、カレンの尻尾は業火の如く燃え上がっていた。

「…馬鹿かお前…もう動ける体じゃないだろ。寝てろ」

殺すのは気が退けるのか、男は説得するかのようにカレンにそう言うが、今度はカレンがはっきりと首を横に振った。

その答えに男はハァ、と一息吐いて巨大なハンマーを構えた。

「行くぜ…!」

その一言と共にカレンは地を蹴って走り出した。

手に握る長剣に全ての想いと力を乗せて。

「ハァアアアアアアアアアアアアッ!」

振り上げた長剣は男を捕らえている。

圧倒的で、唯それを振り下ろす。

カレンの剣は完全に振り下ろされた…しかし、僅かな金属音が響いただけで男は避けた様子すら見せていない。

男は、両手を交差させた状態で固まっている。

そしてカレンの握る長剣は、半ばから先が無くなっていた。

男は剣に斬られる直前に掌と拳に構えた両手で長剣を挟み込み、叩き折ったのだった。

「す、素手で剣を…!?」

驚き、動きが止まっているカレンの脇腹に男の拳が入ると、カレンは糸の切れた人形の様にその場に倒れそうになるが、男はそれをそっと受け止めた。

「…やれやれだ」

面倒だ…と思いながらも、男はカレンを抱えて街の方向へと足を進めた。



現在地-ソサエティ-宿屋ミルクハウス

「…ウウ…ムニャ……うぅ〜…!」

少しばかり時が流れ此処はソサエティにある宿屋。

その一室で寝ているのは赤い鱗を持つ蜥蜴戦士、サラマンダーのカレンだ。

「うん…にゅふふふふふ…!」

気持ちの悪い笑い声と共にカレンの顔がにやけていく…。

「にひ…ザーメンおいひぃ…」

一体なんの夢を見ているのだろうか…唯一つ言える事は十八歳以下の方々にはお見せできない内容である事は間違いない。

更にニヤける顔は、突然目が開くと共に元に戻る。

「あれ…アタシ如何したんだっけ?」

カレンは無い頭を振り絞って昨日あった事を思い返す…そしてハッとなったと同時に部屋を見渡すと、壁には二本の剣が立てかけられていた。

片方は折れているサラマンダー製の母の形見の剣。

もう一本は昨日とは違い、ジパングで言う刀と呼ばれる片刃で細身の剣だった。

「こりゃ…」

ベッドから立つと、刀の所まで歩み寄り鞘から引き抜く。

ギラリと禍々しく輝いて窓の隙間から入ってくる太陽の光を反射した。

すると鍔に紙が挟まっている事に気が付いた。

そこにはこう記されていた。

「お前が気絶した後、その宿屋に連れて行った…安心しろ、宿代は俺が払った。これに懲りたらもう俺に剣の修理の依頼は持ってくるな。その刀は俺が作った作品の一つだが唯の刀だから耐久性は低い…。剣の事は諦めた方が良い」

…これは恐らく昨日の森にいた男…ブラックハンマーが書いたのだろう。

形見の剣を鞘から抜くと、相変わらず折れていた。

そしてカレンは昨日の事を思い出す。

すると少しずつ顔に赤みが差してきて、尻尾の炎も強くなってきた。

「すげぇ強くて…すげぇ逞しくて…すげぇ格好良くて…」

カレンの顔の赤みはどんどん濃くなっていき、炎もどんどん燃え上がっていく。

「それに…さっきの夢のアイツ…」

どうやらさっきの夢の中の登場人物にはあの男もいたらしい。

すると夢を思い返していると、カレンのビキニパンツに染みが出来ていく。

先ほどの夢は、昨日の男とヤっている夢だったようだ。

「…」

徐にビキニパンツをずらすと、その指先で秘部を弄り、自分を慰める。

彼女の秘部は既に愛液でドロドロになっていた。

「んぅっ…!あうぅっ!」

室内に淫らな水音が響き、カレンはより弄る指を激しくする。

「ふあっ!あぁん!な、なんでアタシ…きゅうんっ!」

最初は少しだけ声を抑えようとしていたが、今では全く抑えようとせずに喘ぎ声を出す。

「ひ、一人で…ふぅっ!こんな事っ…!」

そして指を弄る速度を段々と激しくして…。

「んっ!あっ!イ、イクぅううううううううううっ!」

そのまま絶頂を迎えたカレンは、目の端を下げ、口はだらしなく開いて涎まで垂らしている。

ビクンビクンッと体を痙攣させて暫く…漸く落ち着いたカレンは落ち着いて部屋を見渡す。

床にはカレンの愛液が垂れ流しとなっており、小さな水溜りが出来ていた。

そして、オナニーしている間は気が付かなかったが、扉の方の気配を感じ取って視線を向ける。

「…」

そこには、顔を真っ赤にしながらも僅かに扉を開けて此方を覗き見するホルスタウルスが居た。

「なっ…!?」

流石にオナニーを他人に見られているとは思わなかったらしく再び顔を真っ赤に染める。

そして恐る恐るホルスタウロスに問いかける。

「え…と、その…何時から見てたんだ…?」

「え………す、すいません…ビキニパンツをずらした辺りから…」

つまりは、殆ど初めからと言う訳だろう。

そしてカレンはまた茹蛸のように顔を真っ赤にすると、その場にへたりと座り込んだ。

「す、すいません!私はこの宿の経営者で…!気絶して運ばれてきた貴女の様子を見に来ただけで…す、すいませんでしたー!」

ホルスタウロスは、大声で謝ったと思ったら、脱兎の如くその場から走り去ってしまったのだった。

真っ赤な顔のまま、とりあえず床を掃除して宿を出ることにした。

街中を歩いていると、向こうの通りでお腹を膨らませたサキュバスと一人の男性が歩いていた。

「ねぇ、もうすぐ出産よ」

「そうだな…お前が身篭ったって聞いた時は責任もあるし若い頃に戻りたいって思ったけど…愛しいお前との愛の結晶なら受け入れるさ」

「ふふふっ、貴方のそういう所が好きなのよ♪」

その一部始終を見ていたカレンは色々と考えていた。

受け入れ難い事もあるが、それで何も出来ない事もある…前に進むためには受け入れるしかない。

しかし、唯で受け入れるのはやはり難しい…ならせめて愛する者と…。

「…よしっ!」

そこでカレンは、自分の気持ちに踏ん切りをつけ、そして新たに決意をしたのだった。

向かう先は勿論…



「よっ!」

「何の用だ…」

昨日と同じ、南の森の鍛冶小屋だった。

面倒そうな、とにかく嫌そうな顔をしてカレンを見る男。

「別に用って程の事じゃないんだけどな…」

少し顔を紅潮させて頬を掻くカレンを見て男は首を傾げる。

「なぁ、アンタの名前を教えてくれないか?」

そう、よくよく考えれば二人はまだお互いの名前も知らないのだった。

「…ジパング出身のタタラ・ヒトツメだ」

「タタラか…良い名前だ!アタシはカレン、よろしくな」

「何をよろしくするんだよ…?」

心底疑問に思っているような顔でそう尋ねるタタラだが、カレンは真剣な顔をしながら刀を引き抜く。

「タタラ!今からアタシともう一勝負しろ!」

抜いた刀をタタラに突きつけると、そう言い放った。

だがタタラはそれをまた変な物を見る目で見ている。

「何だよその目…」

「何故俺とお前がまた戦わなくちゃならないんだ?」

「いいから勝負しろ!折角だから闘技場で試合しようぜ!夕方なら自由試合時間に申し込めば出来る!因みに予約は無かったから今すぐ行けば間に合うぞ!」

面倒くさそうな目でカレンを見つめるタタラだが、カレンは刀を収めるとタタラの着物の襟を掴んで引っ張ろうとする。

しかし巨大なハンマーを背負ったタタラを引っ張れずにその場でぬぎぎ〜!と唸りながら着物を引いているだけだが。

はたから見ればかなり滑稽だ。

「放せ、何で俺が闘技場なんか行かなくちゃならないんだ」

「いいから来てくれよ!一試合だけしてくれ!」

両手を合わせて頭を下げて頼み込む。

「何故そんなに俺と戦いたいんだ?」

「戦ってくれたら教えるし戦ってくれないなら教えないししつこくするぞ」

その答えにタタラは眉を顰めるが、すぐに諦めた表情になり、自分で歩き出した。

「…やれやれだ」

「へへへっ!それじゃあ闘技場に行くか!」

嬉しそうに顔を緩ませると、街の方へと二人は歩き出した。



現在地-ソサエティ-大通り

「なぁタタラ、アンタは何で鍛冶師なのに武器の依頼は受け付けてねぇんだ?」

向こうに見える闘技場コロッセウムを目指しながら大通りを歩くカレンは、隣を歩いているタタラに問いかけた。

因みに、カレンは元よりタタラの刺青や巨大なハンマーを見て二人は更に視線を集めている。

「一つ昔話をしよう…俺はジパング出身だと言っていたが…故郷の記憶は嫌な事だらけだ」

その言葉で、カレンはタタラが以前見せたあの光の無い目を思い出した。

「戦場の傍の村で生まれた俺は、両親を失って…孤児の奴等と共に生きていたが…そんな場所で碌に行きられる筈もなく、仲間はどんどん死んでいった」

昨日まで隣で一緒にいた者達が死んでいく…それは想像もしたくない出来事だ。

「最後の一人として生き残った俺は生きる場を失い大陸に出た…十二歳の頃だったな…そしてそこでも孤児として育った俺を、師匠達が拾ってくれたんだ」

「師匠?達?」

「街の鍛冶屋のサイクロプスとドワーフだ…元々はあまり仲が良くなかったが共に俺に鍛冶技術を教えてくれている間に仲良くなっていた…まぁ性的な意味で襲われもしたが」

内心、タタラは童貞ではなかったのかと少し残念な感覚になるカレンだが、今は真面目な話の最中なので首を振ってその思いを振り払った。

「十六歳で独り立ちした俺は様々な武器を作り売っていた…サイクロプスとドワーフの鍛冶技術を同時に持つ人間なんてそう居ないから…武器の売れ行きは良好で俺は安心して暮らしていた」

あの日までは…と続けると、タタラは目を閉じた。

「俺の武器に目を付けた教団の過激派の連中が俺に大量の武器を作って欲しいと尋ねてきた…街を攻め落とそうとする魔王軍に対抗できる強い武器を…。魔物が悪でないとは分かっていたが、様々な嘘に騙された俺は魔物に効果のある武器を次々に生み出してしまった…」

「…そ、それで?」

「遂には俺も教団に無理矢理兵士にされて戦場に出された…そこで見たのは魔物や教団の兵士が俺の武器によって次々に倒れ伏していく姿…戦場から逃げ出した俺は教団の追っ手と戦う内に戦闘技術を身につけて今に至るって事だ」

かなり壮絶な過去だった。

カレンは、自分が想像しているよりも遥かに苦しい過去を辿ってきていたタタラに思わず唖然としてしまった。

「だからもう武器は作らない…俺の武器で、もう誰も死んでほしくは無いんだよ」

目を開いて闘技場へと足を進めるタタラだが、カレンは悪い事を聞いてしまったかと自分の行動を後悔する。

「因みだが、この体中の刺青も好きで入れた訳じゃない、教団に無理矢理入れられた物だ。これ自体が特殊な術式になっていて肉体を異常な程強化するんだ…このハンマーを持てるのはこの術式のおかげでな…代わりに代謝が激しくてすぐに腹が減る…」

気にもしていないようにそう告げるとタタラはもう何も言わずに闘技場の門を潜った。

気づかない内に足取りが遅くなってしまっていたカレンはその後を追う。

闘技場の受付カウンターには魔女が座っており、暇そうに欠伸をしている。

この昼過ぎの時間帯は自由時間の受付のみで、闘技場自体は休憩なので闘技場の従業員は暇なのだ。

「自由時間帯に闘技場の使用許可を貰いたい」

「ふえっ!?あっ、はい!ではお名前と希望する使用時間帯を此方にご記入下さい」

台帳には自由時間帯の希望使用時間があり、その場所に名前を書き込めば良い。

夕方前は殆ど埋まっていたので、夕方の頃に予約したようだ。

それまでは二人とも各々好きな方法で時間を潰す…筈だったのだが…

「何故俺の隣に来るんだ」

「いいだろ別に♪」

タタラは闘技場の客席に座り、自由時間の戦いを観戦している。

此処で行われる戦いは、月に一度ある闘技大会のトーナメントと、公式日の公式時間に申し込まれた公式試合と自由時間に申し込まれた自由試合の三種類がある。

トーナメントは言うまでもなく、優勝者には栄光と賞金が与えられ、特に世界各国から強者が集う、年末に行われる大闘技祭で優勝すれば大陸中に名が轟くであろう。

公式試合は、事前に予約をすることですることができ、事前に何時やるかも決まっているので観客が多く集まる。

以上の二つの試合には賭け事が絡む上に貴族などが汚い裏取引をする場としても有名で、貴族お抱えの罪人、奴隷、魔物が参加する。

本日タタラとカレンが行うのは自由試合で、これは公式試合の無い日の経営中の闘技場に申し込めば簡単に参加できる。

しかし何時誰が参加するか分からないので闘技大会や公式試合よりは人が集まらない。

しかし闘技場都市のソサエティ、毎日満杯とまではいかないが予約が入る。

それを見に街の人々が集まり、こういった人々は個人でしけた金を友人などと賭けたりする。

本日の観客席は七割がたは埋まっており、真ん中では石のハンマーを持ったオークと、自らの鎌を駆使するマンティスが戦っていた。

客席はどちらかを応援する声で響き渡り、かなり騒がしい。

しかし時折声を増大させる魔水晶を通して司会の声が聞こえる。

暫く戦いは続いたが、ハンマーの柄を斬り落とされてしまったオークは隙を見せてしまい、そこをマンティスの鎌の峰打ちを喰らって倒れた。

マンティスの勝利を、席から立ち上がって喜ぶ観客や、ぐったりとオークの敗北に意気消沈する観客も居た。

この街で暮らす人々の約三割がこうして闘技場の賭け事で稼いでいる者だ。

大会等で行われる闘技場主催の賭け事で闘技場はボロ儲けしており、それがこの街の重要な収入源になっている。

時々八百長も有るらしいが、そんな物は本当に稀にしかない。

遥か西にある砂漠に面した街であるスーダンのような小規模の闘技場ならまだしも、この世界最大の闘技場で八百長などして、ばれたら観客から蛸殴りにされてしまうだろう。

次の試合が始まり、時間は徐々に過ぎていく…。

日が暮れ始めた頃に、漸く二人の予約した時間になった。

東口にはカレンが、西口にはタタラが待機し、観客は今までの試合でテンションが上がりボルテージマックスだ。

「さぁ!今日の試合も後半に入って参りました!次の試合の東口にはぁ…サラマンダーのカレンだぁああああああああああっ!」

司会の呼び声と共に、まずはカレンが刀を抜いて会場に入った。

大きな歓声と共に口笛も聞こえる。

この組み合わせはサラマンダーVS人間なので皆がカレンに賭けていることだろう。

多くの魔物は身体能力が人間を上回っており、賭けの倍率は低くなるが圧倒的に勝率が高いのだ。

「西口には人間の戦士!タタラだぁあああああああああああっ!」

タタラが入場すると、先ほどよりは小さいが歓声が聞こえる。

大番狂わせや一発勝負、はたまた分の悪い勝負に出た奴等だろう…先ほども言ったがこの街の人口の三割はこの賭けで稼いでいるので彼らにとっては生活がかかっている。

それは真剣にもなる。

タタラは背負っていた巨大なハンマーを手に持ち、右肩に担ぐ。

「それでは試合開始ィ!」

司会の声と共に、カレンは刀を構えてタタラに突っ込む。

「行くぜタタラ!真正面から正々堂々!」

「昨日の敗北から何も学んでいないな」

嬉しそうな笑顔で突っ込んでくるカレンにタタラは呆れてそう告げる。

振り回される刀を最小限の動きで避け続けると、カレンは身を屈めて足払いをかけてくる。

タタラはハンマーの先を地面に落とすとジャンプして回避する。

「へへへっ!空中じゃ避けられないだろ!」

そう言ってカレンは刀を振り上げる。

確かに足払いを避けるために跳び上がったタタラは回避できない。

普通ならだが。

タタラはハンマーの柄を引いて自分の身をハンマーの方へ逸らして振り上げられる刀を回避する。

「流石!」

着地したタタラはハンマーを持ち上げて、半身になって振りかぶる。

「今だっ!」

カレンはそれが振り切られる前にタタラの懐に飛び込もうとする。

しかしタタラはハンマーを振ると見せかけて曲げている肘をカレンに叩き込んだ。

自分の突っ込んでいた勢いも相まってかなりの威力の肘を受けたカレンは五メートルは吹き飛んだ。

なんとか立ち上がり刀を構える。

「ゲホッゲホッ…くぅ〜、効いたぜ」

「俺の弱点は巨大な武器による攻撃速度の遅さ…そこを突かれた事は何度もあるからな。対策も万全だ」

タタラもハンマーを構えなおすと、カレンは刀を握り締めてまた突っ込む。

「馬鹿の一つ覚えか…」

「タタラァ!アンタに言っておきたい事がある!」

突然何だと思いながらも正面から迫ってくるカレンに警戒する。

「アタシは…アンタが好きだぁああああああああああっ!アタシが勝ったら結婚を前提に付き合ってくれぇえええええええええっ!」

ゴウッと尻尾の炎を最高潮に燃え上がらせて迫ってくるカレンの言葉に、タタラも一瞬言葉を失い、会場も静かになる。

「隙ありっ!」

峰で隙だらけのタタラの頭を叩くと、鈍い音と共にタタラが倒れる。

狙った作戦なのか、それともノリと流れだけなのかは分からないがとにかく恐ろしい事だ。

「今日はアタシの勝ちだな」

へへっと笑いながら鼻を擦るカレンだが、タタラはのそりと起き上がる。

その光景にカレンは驚き、刀を構える。

「おかしいな…今ので気絶すると思ったんだけどな」

「ああ、危うく気絶する所だったが…反射的にな」

そう言って口を開けると血がダラダラとあふれ出ていた。

「っ!?」

「教団に追われていた頃に奇襲や不意打ちで気絶しかけた事も何度か有るが…気付けとして舌を噛んだだけだ」

唯の試合で此処までするとは思わなかったらしく、カレンは唖然とする。

だがタタラは何の問題も無さそうに振舞っている。

「…癖みたいなモンで、条件反射だ。お前が気にする必要は無い」

「で、でもっ!」

「お喋りはもう終わりだ…ラアッ!」

ハンマーを振り上げて叩き落すと、空気が震えだす。

カレンは昨日の事を思い出してその場から離れると、僅かに衝撃の余波を感じた。

「くっ…やっぱすげぇ衝撃波だ…!」

「まだだ!」

タタラは床を砕いているハンマーをそのまま引きずるように振り回し、思い切り振り切った。

すると衝撃波は床の石畳を砕きながらカレンに向かってきた。

「なんだぁっ!?」

かなりの速度と威力をカレンは感じ取って、回避は間に合わないと思ったのか刀を横に構えて防御の姿勢を取る。

瞬間、カレンの体に凄まじい衝撃と痛みが襲い掛かりカレンは闘技場の壁まで吹き飛ばされてしまった。

防いだ瞬間にあまりの衝撃に刀は、刀身も鍔も粉々に砕け散ってしまった。

「かっ…!」

骨が幾つか折れた感覚を感じながら、カレンは自分の意識が遠のいていくのを感じた。

だが同時にこれ異常ないほどの喜びと興奮を感じて、意識を闇へと落としていった。



現在地-ソサエティ-闘技場休憩所

「むにゃむにゃ…にひひひひひ…!」

此処は闘技場の試合で怪我をした人々が運び込まれている場所で、簡易のベッドが幾つも並んでいる。

因みに今の声はカレンであり、簡易ベッドで寝ながら再び気持ちの悪い笑いを浮かべている。

その傍の椅子に座っているのは先ほどカレンと戦ったタタラであり、壁にはハンマーが立てかけられている。

「むふふ……ふぁ…あれ?此処は…?」

のそりと起き上がるカレンはまず辺りを見渡すとタタラが目に入る。

「んあ…タタラ?此処何処だ?」

「闘技場内の休憩所だ…もう夜遅いから誰も居ないぞ」

「そか」

カレンはベッドに座ると骨が折れた筈の腹を擦るが痛みは殆ど無かった。

不思議がっているカレンの様子を悟ったのか、答えてやる。

「傷は俺が金を払って魔法と秘薬で回復させた…まだ治りたてだからほんの少し痛むかもしれないがな。俺の舌も然り」

闘技場で負った傷は金を払えば魔女の魔法と常備されている秘薬で治療してくれるのだ。

どうだ?と効いてくるタタラにカレンは腕を振り回し、首を動かして確認するがにししと笑う。

「そんなヤワな体してるつもりはねぇよ」

どうやら完全に大丈夫なようだ。

「そうか、なら俺は帰るから…」

そう言って椅子から立ち上がろうとするタタラの手をカレンが掴んで放さない。

「…どうした?」

「放さねぇ」

訳の分からないような顔をするタタラに対し、カレンは顔を少し赤くして引き止める…尻尾の炎もゴウゴウと燃えている。

タタラも少し冷や汗を流している。

「おい…放せ…!」

「タタラ、さっき言っただろ?もう夜遅いから誰も居ないって…なら此処でアタシと…エッチしてくれよ…!」

顔を赤く染めながら勇気を振り絞って言う。

ウルルっと少し涙目になっている彼女の上目遣いに、一瞬気が眩むタタラだったが何とか踏みとどまる。

「やめておけ!一時の気の迷いで…」

「気の迷いなんかじゃないっ!」

普段から声の大きいカレンだが、今のは真剣そのものの叫び声だった。

「アタシ、昨日アンタに負けた時に惚れたんだ!凄く強くて!凄く格好良くて!凄く優しい!そんなアンタが大好きなんだ!試合には負けたけど、アタシがタタラを好きなのは変わらないんだ!今日は危険日じゃないし…責任取れなんて言わないから…アタシがタタラを自力で振り向かせてみせるから!」

美人な女に此処まで言われて、応えない男など居ようか?いや、居ない。

タタラはカレンをベッドに押し倒すと、カレンのビキニパンツに指を突っ込んで指で弄り始めた。

「んひゃ…!」

小さな悲鳴を出すカレンだが、その顔は赤く染まり頬を緩ませたこれ以上無いほど幸せそうな顔だった。

マンコからはドロドロと淫らな液体があふれ出ており、タタラは指を抜くととろりとベッドの上に落ちた。

「たったこれだけでこんなにも感じたのかお前?」

「お前じゃなくて…カレンって呼んでぇ…!」

幸せそうにそう言うと、タタラはカレンの耳元に顔を持ってくると、情熱的にこう呟いた。

「カレン…」

「タタラァ…!タタラタタラタタラァ…!!!」

名前を情熱的に呼ばれたのがそんなにも嬉しかったのか、カレンはより一層タタラを求めるようにその名を呼ぶ。

タタラは手で、その大きさも形も悪くないカレンの胸を揉み扱く。

「んあっ!ひゃうぅぅ…!」

まだあまり強く揉んでいないと言うのに、カレンの口からは喘ぎ声が漏れてしまう。

どうやら胸が弱いようだ。

タタラは黙ってカレンの胸の鱗を掴むと、ゆっくりと引き剥がした。

「んはぁ…♪」

褐色の胸の中央にある乳首は既に堅くなっており、ピンと立っていた。

そのまま更にタタラは胸を揉んでいく。

「あふぁ!んにゃあ!ああぁん!」

最早ベッドで胸を揉まれているカレンに何時もの強気な性格の面影は無く、唯愛する男が与える快楽に酔いしれる雌火蜥蜴になっていた。

だが揉まれている内にある事に気が付いた。

乳首に刺激が与えられない。

ムズムズする感覚の乳首を早く責めて欲しいと思いながらも、この胸揉みの快楽に舌が上手く回らない。

「あひゃっ!たた…ひゃいっ!たたりゃぁ…!」

弱弱しい声でタタラの名を呼ぶが、先が続けられない。

「くひぃっ!たたりゃ…ちくひぃ…!ちくひもせめてぇ…!」

やっとの思いで搾り出す声も、呂律が回らずに聞き取り辛くなっている。

その様子を見てタタラはニヤリと笑い顔をカレンの目の前に持ってくる。

「どうした?聞こえないぞ?言いたい事ははっきり言わないとな?」

嘲笑うかのようにそう言うと、カレンは更にうっとりと酔いしれてしまう…。

言いたいのに、言えない…カレンのマンコは既に愛液でドロドロのグチョグチョになっており、ビキニパンツも濡れ濡れで、ベッドにも染みが出来ている。

「ひぎゅぅ…!ち、ちくびぃ…!ちくびもせめてほしいにょぅっ!」

「良く…言えました…」

カレンの言葉を聞き届けると、タタラは人差し指でピンッとカレンの乳首を弾いた。

「にゃぁあああああっ!」

余りの快感に酔いしれ、一瞬何も考えられなくなる。

「あうっ!ひくびぃ…ひくびはじかれてきもちひいのぉ…!」

完全に緩みきった表情のカレンのマンコは既にジンジンに疼いていた。

「たたりゃぁ…みゃんこも…おかひてぇ…!」

最早おねだりするだけの淫乱雌蜥蜴だ。

おねだりを聞き届けたタタラはズボンを下ろして臨戦態勢のペニスを取り出す。

「ひゃぁぁ…おっきいぃ」

そのペニスに思わず見とれるカレンだが、タタラはもう既にカレンからビキニパンツを脱がせてしまった。

そしてドロドロマンコを指で広げると、くぱぁと奥が見える。

「へぇ…胸と乳首弄っただけなのにこんなになってるのか?随分と変態なんだな、カレンは」

「そ、そうにゃのぉ!あたひ、おっぱいとひくびいじりゃれただけで濡れちゃう変態にゃのおっ!」

ハァハァと荒い息でそう応えるカレンは必死にマンコを押し付けようとする。

「だかりゃ…だかりゃ挿入れてぇ…!たたりゃのおちんぽであたしのおまんこの中ぐちゃぐちゃにしてぇっ!」

次の瞬間、ぬめりとしたカレンのマンコにタタラのペニスが突き刺さった。

「んきゅぅうううううううううっ!」

処女膜を破られた痛みと共に強烈な快楽がカレンの全身を駆け抜ける。

「さぁ、動くぞ…?」

タタラはまずはゆっくりと腰を上下に動かす。

奥まで届き、子宮を持ち上げる。

「んぁあああああっ!とどいりゃ!おくまれ届いてりゅうううっ!」

舌を突き出して、快楽に酔いしれるカレンだが、徐々にタタラは腰のスピードを速めていく。

そして動くたびに、ゴッゴッと子宮に亀頭がぶつけられる。

「あぁあああぁあああっ!?きてりゅう!きてりゅぅうううううう!あらしの変態おまんこに!タタラのおちんぽぶつかって…はぅあぁああぁああ!?」

あまりの叫び声に、タタラは再びカレンの顔の目の前に自分の顔を持ってくる。

そしてキスをした。

しかもディープ。

その瞬間に、カレンの中で何かが壊れ、カレンはイってしまった。

「んんぅううううう!んひぃいいいいいいっ!」

タタラに口内を犯されている間に、くぐもった声が休憩室に響く。

「ぢゅ、ちゅぱ、れろ、じゅるる」

「んく、ぢゅる、ちゅぱぁ…」

その間、ずっと口内を占領するタタラの舌に、カレンは必死に自分の舌を絡ませていた。

そして唇が離れると、タタラはまたニヤリと笑ってカレンに告げる。

「一人で勝手にイっちゃうような奴にはお仕置きが必要だよな…?」

「はいぃぃぃ…!わらしをぉ…わらしを罰してくりゃひゃいぃいい!」

タタラは腰を動かす速度を更に速める。

「んはぁっ!いいっ!いいのぉっ!たたりゃあ!たたりゃあ!じぇんぶきもちいいにょおおおおおっ!」

「くっ…!締め付けがキツク…射精るぞっ!」

「んはぁあああぁぁああぁあああああ…!」

ビュル、ビュルルルルルルルッ!

カレンとタタラはほぼ同じタイミングでイってしまった。

タタラの精子は、カレンのマンコには収まりきらずに溢れ出てしまう。

「ああぁ…!もっとぉ…シてぇ…!」

「ああ、勿論だ」

この後、タタラは四回、カレンは七回もイってしまったのだった。



現在地-ソサエティ南部の森-鍛冶小屋

数日後、タタラの家である鍛冶小屋からは鉄を打つ音が聞こえていたが、漸く鳴り止んだ。

鍛冶小屋の外で、まるで遠足の前日の少年のようにワクワクしながら待っているカレン。

鍛冶小屋の中から、汗だくで上半身裸のタタラが出てくると、カレンはタタラに近寄って抱きついた。

「タタラ〜!」

「離れろ…汗臭いだろ?」

「いんや、タタラの匂いがする」

顔をタタラの体にこすり付けて息を吸う…それをむず痒く思ったタタラはカレンを引き剥がした。

若干名残惜しそうな顔をするカレンだが、今はタタラが右手に持っている布で包まれた剣に釘付けになる。

「そ、それが…!」

「ああ、刀身を一度完全に溶かして新たに打ち直したお前の剣…封炎剣だ」

剣を受け取って布を剥ぎ取ったカレンは、その剣に見とれてしまう。

片刃で、刀身には赤みがかかっており、白銀の刃は光を受けて輝いた。

鍔の部分にはサラマンダーの鱗を使用してあり、見た目も美しい。

カレンの持っていた母親の形見の折れた剣を使って生まれ変わらせる事に成功したのだった。

「この剣には火の魔力を持った鉱石を使用しているからお前の魔力を消費する事で刀身にある程度の炎を纏う事も可能だ」

「すっげぇ…!」

キラキラした目で封炎剣を見つめるカレンを見て、タタラは思い出す。

「久しぶりに武器を打って思い出したが…受け取ってくれる人はそんな風に喜んでくれたな…」

「なら、また武器の依頼があれば打ったらどうだ?」

「…ま、顧客によるな。所で、本当にそれで良いのか?」

数日前、タタラとカレンは交わったまま眠ってしまい、起きた瞬間にタタラは土下座をした。

こうなってしまったからには責任は取ると言ったのだが、カレンは孕んだ訳でも無いので責任は取らなくていいと言った。

その代わり、剣を溶かして打ち直して欲しいと頼んできたのだ。

タタラはそれを受け入れて、剣を新たに打ったのだった。

「ああ!こんな事じゃなくて、今度はタタラがアタシを求めるようにしてやるさ!だからそれまで何度でも此処に来るからな♪」

勝気そうな顔でにぱっと笑うとタタラに口づけをした。

唇が離れると、タタラは面倒くさそうな、だが嬉しそうな顔でこう言った。

「…やれやれだ」
11/09/06 22:07更新 / ハーレム好きな奴
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■作者メッセージ
性懲りも無くやっちまってます…皆さんスンマセンっした!

次回はホルスタウロスで3pな予定。

では皆さんご期待(笑)してお待ち下さい。

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