マルガちゃんとハリシャちゃんは色々教えてくれた。単に『魔法使い』と言った場合、魔法を使える人間も含まれる。けど魔女とダークメイジはもう人間辞めてて、魔物の類なんだってさ。まあ二人を見る限り、そこは大した問題じゃないような気がしたな。異世界で育った人にはどうなんだか分からないけど。

　あと、二人のお菓子を食べても太らない理由。それは食べても栄養にはならないで、魔力として体に蓄積されるからだった。体の調子が良いのも変な高揚感もその魔力のせいで、私はもうただの人間より上の存在に片足突っ込んでたみたい。嫌いな教師が取るに足らないヤツに思えたのはそのせいってわけ。

　そうすると、もう一つピンと来たことがあったわ。逆に私が「この人は怒らせたくない」と思った相手は、もしかしたら……

「もしかして、小宮山先生も魔女なの？」
「ああ、あの人はヴァンパイアよ」

　ハリシャちゃんがさらっと教えてくれた。ヴァンパイア……吸血鬼。
　紫外線に弱い体質って聞いたけど、そういうことかって納得した。

「あの人、ミオちゃんの血を狙ってたよ」
「え!?　こわっ。私って美味しそうなの？」
「というより、眷族したかったみたいよ。まあ貴女は今からダークメイジになるわけだから、もう他の魔物にはなれないわね」

　あとで知ったんだけど、ヴァンパイアが眷族にするのは魔界の貴族に相応しい、立派な精神を持った女性だけなんだって。私としては吸血鬼より魔女の方がいいけど、選んでもらえたことはちょっと嬉しい。

　さて。この時点で私はただ中途半端に魔力を溜めている人間。その力を呼び覚まし、ダークメイジとして覚醒するための儀式をやってもらうわけだけど……

「このシャンプー、良い匂いでしょ？」
「うん。これも魔法で作ったの？」
「魔法じゃないけど、故郷のハーブを使ってるんだー。ミオちゃんもそのうちおいでよ、ドラゴニア」

　なんか、お風呂で体を洗ってもらってた。ああ、さすがにお風呂場とトイレはお菓子じゃなかったわ。壁と床は良い匂いのする木でできてた。

「いつか行ってみたいな……ところでこれって、儀式の前に体を清めて、とかそういうやつ？」
「ううん。体触ったりするから、お風呂でやった方が抵抗ないかなって」
「あ、じゃあこのまま儀式に入るわけね……」

　心の準備ができてない、ってわけじゃなかった。ただ、二人に言おうかどうか迷ってることがあったのよ。
　目の前にある鏡には、いつも通りの私の姿が映ってた。マルガちゃんとハリシャちゃんは優しい手つきで髪を洗ってくれているけど、ある部分が私の体に当たっていたのね。私とは明らかに差のある部分が。

「あー、あのさ。できれば、その、お願いがあって」
「え？　何？」
「えー、笑わないで聞いて欲しいんだけど……」

　口に出すのは恥ずかしいけど、どうせ人間じゃなくなるんだし。あとから「あれは人の弱さ故に」みたいなこと言っとけば恥ずかしくないだろ、なんて思った。

「魔物になるついでに、その……胸、あなたたちくらい大きくしてもらうとか、できないかなって……」
「ぷっっはははははは！」

　マルガちゃんが盛大に吹き出した。顔から火が出そうだった。

「ふひっ、うっははははは！」
「そ、そんなに笑わなくても！」
「多分、笑わないでって言われたときから笑う準備してたわね、この子」

　ハリシャちゃんは冷静。対照的な二人だな、って思った。マルガちゃんはそのまま笑い続けて、胸についた二つのミルクプリンがぷるんぷるん揺れてた。

「あはっ、うわっはっはっはっ！」
「とにかく、そうして欲しいならできるわよ。貴女は今のままでも綺麗な胸だと思うけど」
「いや、そりゃ、ぺたんこってわけじゃないけど。でも二人のを見ると……なんか羨ましいなって」
「ふっはっは、はっはひゃひゃひゃ！」
「まあ確かに、わたしも魔女になるとき、体の……」
「ひゃーっはっはっはっはっは！」
「うるさい！」

　怒声の直後、お風呂場は静かになった。ハリシャちゃんがマルガちゃんのうなじに、恐ろしく速い手刀を打ち込んで気絶させたから。漫画だとちょくちょくあるシーンだけど、実際に見るのは初めてだったわ。しかも全裸の美少女同士なんて。

「……わたしもね、体のコンプレックスを消してもらったの」
「え？　ハリシャちゃんが？」

　すると、ハリシャちゃんは鏡に手を伸ばした。鏡の中の自分と指を触れ合わせる。

「これが、人間の頃のわたし」
「え……？」

　鏡に映るあの子の姿がガラッと変わった。間違いなくハリシャちゃんだし、胸のチョコプリンも今よりちょっと小さい程度。でも、他の体つきが違ったの。手脚とか、女の子としてはかなり筋肉ついててさ。お腹に至っては……割れてた。腹筋。
　ハリシャちゃんは恥ずかしいからと言って、鏡をすぐ元に戻しちゃった。なんか魔法使いというより、戦士？　みたいな体つきだったわ。

「……まあ、貴女からすれば想像できないような生い立ちだった。マルガのお母様に、青春をやり直す機会をいただいたのよ」

　ハリシャちゃんは詳しく話さなかったし、私も訊かないことにした。さっき見たワイバーンにさなった女の子もそうだけど、別の世界にだって想像もつかないくらい辛いことがあるだろうし。
　正直、昔のハリシャちゃんの姿もあれはあれでカッコいいとは思ったけど、多分好きで鍛えたわけじゃないんだろうな、とは察しがついたわ。青春をやり直したかったわけだし。ついでにさっきの恐ろしく速い手刀はきっと、昔取った杵柄なんだろうと思ったり。

　けど一つ、気になることはあった。外国人の歳って分かりにくいけど、さっき鏡に映ったハリシャちゃんの姿……今より若くは見えなかったんだよね。

「……今のって、何歳の頃？」
「人間を辞めたとき20歳、その頃マルガは5歳。わたしもお師匠様の魔法で5歳に戻されて、今が18歳……」

　ハリシャちゃんは淡々と答えながら、お風呂場の隅にある棚から石鹸を取り出してた。ピンク色の綺麗なやつ。

「生きた年数を足せば、28歳かしら」
「はえー……」
「おばさん、って呼んでもいいわよ？」
「呼ばないって！　ってか呼べない！」

　魔物になったら歳とかどうでもよくなりそう、って思った。で、そうやって話している間に石鹸は泡だてられて、私の胸に塗りたくられた。ハリシャちゃんになら胸触られても嫌じゃなかったけど、手つきは……すごくエッチだった。

「弾力がある……良い胸ね。大きくなっても、きっと魅力的よ」

　そんなことを言いながら、乳首を指先でクニクニしてきて。ピンクの石鹸も、なんか肌にじわじわ染み込んでくる感じがした。これで胸がふくらむのかなー、なんて思ってると、マルガちゃんがむっくり起き上がった。

「んぅ……ハリシャ、容赦なさすぎ」
「貴女が調子に乗るからでしょ。ほら、進めるわよ」

　後は二人して私の体を手で洗ってくれた。洗って……というより、明らかにエロいことをしてる手つきだったわね。私にそっち系の趣味は無いけど、あの二人なら嫌な気分にはならなかった。むしろ綺麗な手で撫で回されるのは凄く良い気分で、石鹸の香りも良くて。
　だんだん、体が熱くなってきた。

「脚、ちょっと開いて」

　指先が股に伸びてきて、私は言われるままに脚を開いた。アソコをこじ開けられて、感じるところを触られて。それから二人は私の手を取って、自分たちの股間へ持っていった。二人ともアソコは毛がなくてツルツル。

　いつの間にか三人で輪になって、互いのアソコをいじり合ってたわ。自分でするよりずっと気持ちよくて、あの子たちも私の指で感じてくれて……なんか嬉しかったな。

「ん……上手ね」
「そのまま……気持ちよくなって……」

　両側から囁かれ、なんかゾクゾクしてさ。ってか間近でみると、本当に二人とも肌キレイだし、体のラインもまるで彫刻みたい。そんな魔女たちのアソコを私がいじって感じさせてることに、なんか興奮した。でも、あの子たちの方が上手かったな。

　お風呂場にクチュクチュって音が響いて、どんどん気持ちよくなって。ああ、やっぱり魔女だから背徳的なんだなー、なんて思いながら受け入れてた。私の指も二人の汁でヌルヌルになったけど、私のアソコからはもっとたくさん出てた。
　で、そのうち……

「あ、イクッ……ふあっ！」

　恥ずかしい声を出しながらイっちゃった。気持ちよかったけど、二人はその後も手を止めなくて、何度か立て続けにイかされたわ。
　それから耳元で、何か呪文を囁かれた。日本語じゃなかったのに、意味は分かったの。体に溜まった魔力のおかげでね。

「……我ら、昼にして夜」
「夜にして、昼」
「善にして、悪」
「悪にして、善」
「火にして、水」
「水にして、火」
「万象は我らと共に」
「我らは万象と共に」





「今ここに、新たな同胞を迎えん」





　じわっと、体が熱くなった。何か未知の力が流れ込んできたのが分かったけど、それだけじゃない。私の内側から、それに応えるみたいに力が沸き起こってきた。

　そこからは……よく覚えてない。頭が真っ白になるくらい、ただひたすら気持ちよかっただけ。ワイバーンにされた異世界の女の子みたいに、おしっこ漏らしちゃったかも。
　気がついたら二人に抱きかかえられるようにして、完全に脱力してた。

「……成功ね」
「うん、これでミオちゃんも仲間だね」

　そんな言葉を聞いて、ゆっくり体を起こした。「これで終わったの？」って聞こうとしたとき、自分の体の異変に気づいたわ。簡単に言っちゃうと、望みが一つ叶ってたわけよ。

「うわぁ……！」

　大盛りになった胸を、そっと触ってみた。で、揉んでみた。指がむにゅって沈んで、なんか気持ちいい。ずしっと量感はあるけど、重すぎることもなく。いやあ、感動したなー。ケンちゃんが見たらどんな顔するかなー、とか思ったっけ。
　で、もう三つだけ見た目の変化があった。一つは、アソコの毛がなくなってたってこと。マルガちゃん、ハリシャちゃんと同じく、ツルツルのワレメになってたの。
　もう一つは鏡を見て気づいた。瞳の色が灰色になってたの。こっちも二人と同じに、ね。あと、いくつかあったニキビが消えてた。

「魔法、さっそく試してみる？」

　マルガちゃんが胸の前に手をかざすと、空中からパッと物体が現れた。真鍮とガラスでできた、丸い形のランプ。それまでなら怪現象だと思うけど、そのときの私にはそれがどういう仕組みなのか理解できたの。五感の他にもう一つ、新しい感覚が備わっていたわけ。魔力、ってやつがね。

「受け取って」

　宙に浮くランプが、すーっと私の方へ寄せられる。私も手から同じようにその力を出して、それを受け取った。手を触れず、宙に浮かせたまま。

「今度は火を点けてみて」

　言われるまま、ランプに点火した。やり方を教わったわけじゃないけど、その力でできるって分かってた。ポッとオレンジ色の火が点って、ランプの中でユラユラと揺れた。

「火の色を変えてみて」
「……こう？」

　何となく、青くなれって念じてみたら、本当に火が青くなった。緑、黄色、ピンク、紫……自在に色を変えられたわ。黒い火なんて初めて見たな。

「うん、おめでとう。ミオちゃんは今日からダークメイジだよ」
「後は貴女の修行次第で、どんな魔女にだってなれるわ」

　左右からほっぺにキスで祝われちゃった。人間を辞めた……あのときの気持ち良さと感動は多分、一生忘れないと思う。内から湧き起こってくる力を感じて、自覚したの。

　私の人生は、人でなくなった今から始まるんだって。