連載小説
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あの日、彼は一日だけだった約束を無期限に延ばしてくれた、ボクが一泊するだけだったのを住まわせてもらえるように。彼の両親はそれを快く了承してくれた、そしてボクを家族として扱ってくれた。その温かさが嬉しかった、大切にされることが嬉しかった、家族と離れてチキュウに一人で来たときからずっと寂しいと思っていた。
居場所があることが嬉しかった、ボクの居場所を作ってくれた彼を、より助けたくなった、支えてあげたくなった。でもそれが間違いだった事に気付けなかった。
彼はあの日以来より厳重に心に鍵を掛けたようだった。あの時のようにボクに笑顔は見せてくれる、だけどそれ以上ボクが彼の心に踏み入ろうとすると、その分離れる。一定の距離感を保ったままだった、近付こうとしても近付けない、何とも言えないもどかしさが広がった。触れることは出来るのに、感じることは出来ない。
ボクは彼の心に触れられたはずだった、いや触れられただけだったのか。それでいい気になって心に干渉できると思った、でもそれは簡単に出来ることじゃなかった。よく考えて見ろ、その道のプロだって心に干渉するのは長い時間がかかるんだ、素人のボクが意図も簡単に出来るわけ無かった。それなのに、自分が彼に触れたことで何もかもが出来ると思っていた。
むしろ、彼の心に触れた所為でボクは彼にとって特別な存在になってしまった、だからこそ彼は余計に心の奥に干渉させないようにしてたんだと思う。多分、心の奥には誰にも触れて欲しくないものがあって、必死に隠してることで余計に触れて欲しくないものが増えて、そんな悪循環。それの所為で彼は独りになって、寂しくなって、潰れてしまいそうになってしまう。
やっぱり、彼を救いたい、そうしてあげないと本当に彼は潰れてしまう。でも、どうやって彼を救う?歌だと心に触れるのが精一杯だ、それに彼はボクに心の奥を覗かせてくれる筈が無い。考えれば考えるほど無理に近いことだと思えてくる、でもどうにかして解決方法を見つけなければ。
焦る気持ちが判断力を失わせた、自分ひとりの判断で彼を救おうとした。時間が必要なのにボクは時間を使わずに彼を救おうとしてしまった。それが間違いであることも気付けなかった。
これが、どれだけ愚かな判断でボク一人が満足しようとしているだけの行為なのかの判断も出来なくなっていた。よく考えれば回避できたはずなのに、ボクは自分からもっとも険しい道を選んでしまったのだ。
10/11/17 02:02更新 / アンノウン
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■作者メッセージ
ボクがしようとしている事が彼を苦しめるなんて、このときのボクは思ってもしなかった。
いい事が必ずいい結果を呼ぶなんて限らないのだから。

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