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第五話 大教会の地下牢獄
グリウス大教会は、主神騎士にとっての誇りである。
魔王軍を相手に奮闘した主神騎士団に、その活躍の褒美として与えられた拠点であり、彼らの強い信仰を捧げる場である。
教会の荘厳さと騎士団の威圧感を両立させた大教会は、信仰を誇示するが如く街の中心にそびえ立っている。
偉大なる主神の力を纏ったかのような巨大な教会は、人々を見守り続け、魔物を監視している。
だが、街のシンボルともいえるその聖なる建物にも、暗部はある。
ステンドグラスに彩られた大聖堂の端にある、不吉な雰囲気を纏った扉の鍵を開け、深淵に降りるが如く階段を下ってみるといい。
冷たい石の壁、魔法で強化された鉄の牢獄。
そこは魔物の絶望。グリウス大教会の地下牢獄である。
その看守室に、五人の主神騎士が集まっていた。
主神騎士の鎧を纏った者が四人。そして、その前に立っているのは主神騎士団長、青騎士ガレスである。
齢31の若さにして、主神騎士団長を務める男は、鬼気迫る雰囲気を纏って立っている。
狭い看守室の中は、緊張で満たされていた。それは、青騎士ガレスの放つ鬼気によるものだけではなかった。
「お前たちが密告した魔物が、この奥にいる」
ガレスは、牢獄に通じる扉を指さして言った。
「知り合い、友人、家族。関係はどうであれ、お前たちに自分が魔物になったことを告白できるくらいに親しい者たちだ。その信頼をお前たちは裏切った。お前たちは主神騎士でいるために、愛するものたちの尊い信頼を売り渡したのだ」
そして、冷たく言い放った。
「お前たちは最高の主神騎士だが、最低の人間だ」
看守室の中に、重々しい沈黙が横たわる。誰も抗弁できない。
「団長」
怒りで震えた声で騎士の一人が言った。新米のアランだ。
「なら、どうすれば良かったんです?ある日突然、自分は魔物になってしまったと告げられて、あんな欲情したような目で見られて。その場で斬り殺せば良かったんですか?たった一人の家族を……妹を……!」
アランの目に涙が浮かぶ。怒りと後悔。それに同調して、他の騎士たちは口をぐっと引き結んで、こらえるように顔をうつむかせる。愛するものを売り渡した責任が、彼らを苦しめていた。
しかし、ガレスの口元は緩んでいた。狂気を孕んだ目が騎士たちに注がれる。
「どうすればよかった、だと?それを今から教えてやる。お前たちをここに呼んだのは、始末をつけてもらうためだ」
騎士たちの間に広がる戦慄を無視して、ガレスは牢の入り口に進む。
「ついてこい。お前たちに拒否する権利は無い」



牢獄の中は寒かった。
春が訪れてしばらく経ったとはいえ、地下牢獄の寒気は囚人の意志をくじくのに不足は無い。
三歩先を見通せぬ冷たい闇が横たわる中、かすかに女性の息遣いが聞こえる。
ガレスは松明に火を点けると、騎士たちを引き連れて牢の廊下を進む
そして、最初の牢屋の前で止まった。
ガレスが松明を近づけると、牢屋の中でうずくまる少女の姿が露になる。
頭から生えた角、腰の後ろから伸びる尻尾。間違いなくサキュバスである。
「エマ!」
アランが牢屋の檻を掴んで、少女に声をかける。
「お……兄ちゃん……?」
「そうだ、俺だ。エマ、大丈夫かい?」
「うん……少し、寒いけど……大丈夫だよ」
魔物の身体とは言え、この寒さの中で無事でいられるはずがない。
兄を心配させまいという少女の気遣いに、騎士たちは閉口するしかない。
「お兄ちゃんは……騎士団のおしごと……がんばって……せっかく、あんなにがんばって、騎士になったんだから……」
「ああ……!ああ……!」
アランは檻の前で泣き崩れながら、ガレスの方を見た。
「団長……!お願いです。この子だけは許してやってください。俺はどうなってもいい……エマだけは……!」
「剣を抜け」
無慈悲な命令だった。
「でも……!」
「剣を抜け。二度目は無いぞ」
アランは涙も拭わず、剣を抜いた。
松明の明かりが届けば、他の騎士たちも同様に涙を流しているのが見えたはずだ。
「誓え」
「何を……?」
「これから手にする力の全てを、信仰に捧げるとな」
ガレスの言葉を理解できず、アランの体が固まる。
「え……?」
「誓え。『我が得たりし力は、全て信仰に捧げる』」
アランは剣を胸の前に捧げ、誓いの言葉を唱えた。
「『我が得たりし力は、全て信仰に捧げる』」
それを見届けると、ガレスは牢屋の鍵を開けた。
「お前の一存で、この娘を好きにしていい。ただし、剣を持ち込むのは許さん」
この言葉に、騎士たちは驚愕した。団長の目的はいったい何なのか。
「は、はい!」
ただ一人、アランは嬉しそうに声を上げ、剣を置いて牢屋の中に飛び込んだ。
「エマ!」
「お兄……ちゃん……」
兄妹はしっかりと抱き合い、再会を喜んだ。
「エマ、ごめんな。もう二度と離れないから」
「うん。私も、お兄ちゃんと離れたくないよ」
固い抱擁だった。しかし、次第に抱擁は乱れていく。
寄せ合った頬は、貪り合うようなキスに変わり、互いを離すまいとしていた腕は、互いの敏感な所を探る愛撫に変わる。
牢屋の中で行われつつある近親相姦の禁忌を、騎士たちはただ見ていることしかできない。
やがて、当然の帰結の如く、アランとエマは性交を始めた。
相手の事しか目に入っていないのか、獣のごとく乱れる兄妹。
やがて、アランが身体を震わせて絶頂に至ると、何度か荒い息が牢屋に響き、再び性交が始まる。
「行くぞ、次だ」
動揺する騎士たちに声をかけ、ガレスは次の牢に進んだ。
次の牢屋には、若い美女がうずくまっていた。
少女と同じく、角と尻尾を生やしたサキュバスだ。
少女の時と違うのは、女性はうずくまりながらも荒い息をついていることだろう。明らかに発情していた。
「レイラ……」
騎士の一人が檻に近づくと、美女は騎士を睨んだ。
「あなた……私をこんなところに閉じ込めて、その上生殺しにする気?」
「レイラ……すまない……本当に」
「許さない。入ってきてよ、まだ私を愛してるなら、ここに一緒に入ってよ」
騎士がガレスの方を見ると、ガレスは頷いた。
誓いの言葉が牢に響き、檻の鍵が開く。
騎士は瞬く間に押し倒され、口づけの音が響き、夫婦は情熱的な性交を始めた。
「次だ」
残るは、幼馴染を密告した騎士、行きつけの花屋の看板娘を密告した騎士。
先の二人に続いて、彼らも誓いを立てて、それぞれの牢屋に入り、サキュバスに変貌した愛する者たちと性交を始めた。
ガレスはそれを見届けると、牢の最奥に向かった。



最奥の檻は強大な魔物を幽閉するために作られた、特別のものだ。
何十もの魔法が結界を構成し、魔物を繋ぐための鎖はドラゴンでさえ引きちぎれない。
その牢屋の中に、一人の少女が捕らわれている。
天井から垂れる鎖を腕に繋がれ、牢屋の中央に吊るされており、気を失っているのかぴくりとも動かない。
透き通るような銀色の髪、闇の中でさえ白く浮かぶ柔肌、それを縛りつける何本もの鎖。
古い聖書に描かれた、傲慢な人間によって捕らえられた熾天使の姿さえ、この少女の倒錯的な美しさには及ばないだろう。
だが、少女の頭にサキュバスの証である角は無く、尻尾も生えていない。一体どういうことなのか。
ガレスは檻の前に立ち、少女の名前を呼んだ。
「サリア」
少女の顔が上がり、長い髪の間からのぞく鋭い目が、檻の向こうの騎士を捉えた。
「ガレス坊か……」
「この状況で、俺を坊や扱いするとはな。大したものだ」
「ふふ、当然だろう。こんな大仰なもので私を閉じ込めておくなんて。そんなに私が怖いのかい?」
幼い外見とはミスマッチな嘲り口調で、サリアはけらけらと笑う。
挑発じみた笑い声を無視して、ガレスは檻の鍵を開けて中に入った。
吊るされたサリアと、三歩の距離で向かい合う。
「あんたの部下、今頃魔物になってるよ。お前さんらしくもない」
サリアが言った。
魔物と交わった男は、その際に発生する高濃度の魔力を浴びることでインキュバスと呼ばれる魔物になる。
主神教会の中でも、その認識は広く知られている。
「いや、全て計画の内だ」
ガレスは笑みを浮かべると、剣を抜いて一閃した。
金属音が響き、鎖が断ち切られ、サリアは床に倒れこむ。
特注の魔物拘束鎖を一撃で断ち切るとは、なんたる壮絶な剣技か。
ガレスは剣を納めて、サリアを見下ろす。
「力とは、方向だ」
「なんの話だい?」
サリアはガレスを見上げる。主神騎士団長は笑っていた。
「人間がなぜ、魔物にここまで追い詰められたか。なぜ、魔物に敵わぬのか。一矢報いる機会すらなく蹂躙されるのか。それは、魔力の差だ。魔物の持つ圧倒的な魔力には、人間では到底及ばないからだ」
ガレスはサリアの腕を掴んで立たせる。胸ほどの高さしかない幼き少女の顔を覗き込む。
「ならば、その魔力をモノにすればいい。主神への信仰を失う事無く、圧倒的な魔力を持つ騎士となればいい。その魔力で得た力を人間に対してではなく、魔王軍に向ければいい」
「まさか……あんた……」
「主神騎士団は生まれ変わる」
ガレスはサリアの口を貪った。唇を吸い、舌を絡め合う。
ぐちゅぐちゅと、よだれをすする音が響く。
ぷはあ、と口を離した時には、サリアの白い顔が赤く惚けていた。
それと共に、サリアの頭から角が生え、腰から尻尾が伸び始める。天使が悪魔に堕ちる。
「くくっ、ようやく本性を現したか。主神騎士の母と呼ばれ、高潔な魂を持っていた貴様も所詮、魔物に堕ちた身よ」
「何とでも言え、誇りは15年前に捨て去った」
「15年前。確かにそうだ。お前が主神騎士の地位をドブ底の腐れ溜まりに落としてから、お前は既に堕ちていた」
腕を掴む手に力が入り、サリアは呻く。
「い、痛い……やめろ……」
「痛い?俺の痛みはさらに深いぞ!」
ガレスの目が血走る。
「貴様が去ってから、俺がどれだけの泥をすすって主神騎士の地位を取り戻したと思う!?どんな汚れ仕事でもやった。どんな不名誉でも背負った。魔物を倒すことが出来ぬ出来損ない呼ばわりされても、あらゆる方法で魔物を街から追放してきた。奴らから、この街を守り続けてきた!」
「どんな手を使ってでもか……しまいには魔物の力に手を出そうというのか」
「そうだ。魔物の力を手にした主神騎士が、純粋な人間を守り続ける。主神の祝福を受けるに値する、純粋な人間を!そして、魔物どもを駆逐し、この世界を変えて見せる!」
信念のこもった声を、サリアは一笑に付す。
「……だがね、一つだけ問題があるよ。あんたはこの体に興奮できるのかい?」
サリアは自らの身体を見下ろした。幼女とさえ言っても過言ではない幼き身体である。
常人にとっては、興奮するにあまりに未成熟すぎる。
しかし、ガレスは勃起した肉棒を露出させると、サリアの腹に押し付けた。
「これで問題あるまい」
「ああ、忘れてたよ。あんたはよく幼い娘を目で追っていたっけ。だから顔がよくても、その年で一人身なわけだ」
「その余裕もここまでだ」
ガレスは肉棒を下にずらしていき、既に濡れそぼった膣口に、肉棒の先端をこすり合わせる。
「はー……はー……」
くちゅくちゅと音が立ち、サリアの呼吸が荒くなっていく。
少しでも力が加われば、肉棒を呑み込める体勢。寸止めの状態でおあずけを食らっている状態だ。
肉棒を欲するあまり、膣口から垂れる愛液が飢えた獣のよだれのように増していく。
「俺の女になれ、サリア」
ガレスは言った。
「あんたの女に……?」
「そうすれば、お前の飢えを満たしてやる。お前の腹を精で満たし、溢れんばかりの快楽を与えてやる」
「そして……得た魔力で、魔物を殺すと?虐殺者め」
サキュバスにとって、焦熱地獄のような状態の中、サリアは笑いを浮かべて見せる。
「おねだりなんて、死んでもごめんだね。どうしてもというなら、無理やりやってみせな」
「……さすがだ」
ガレスはサリアの腕から手を離し、その小さな身体を抱きしめた。
予想だにしていなかった行動に、サリアの目が見開かれる。
「あんたを愛している」
「……なに?」
「15年前。母として、師として、あんたを愛していた。そして今、あんたのその姿がどうしようもなく愛おしい」
ガレスの言葉が頭に染みこんでいく。
そのたびに、きゅんきゅんと、腹の奥のうずきが増していき、それが耐えられないくらい大きくなる。
「あんたの力が欲しい」
「やめな」
「あんたが受けた苦しみを埋めてやりたい」
「やめてくれ……」
「あんたが欲しい」
その一言で、サリアを支えていたものが折れた。
魔物を完全に排除しようという思想への疑問、魔物への敵意で狂った人々への哀れみ、そして、あのパピヨンと男の姿。
それらが、ガレスへの恭順とサキュバスの肉欲で押し流され、跡形もなく粉々になっていく。
「サリア」
ガレスの声。それに含まれた感情はあまりに真っ直ぐだった。
「もう一度、俺と同じ道を、主神騎士として共に歩んでくれ」
「……ああ、仕方ないね。ガレス坊――」
肉棒が幼き肢体を貫いた。
サリアの頭に、快感が電撃の杭となって突き刺さる。
待ちわびていたものを受け入れたのだ。破瓜の痛みなどあるはずがない。
「あっ、はあ……!!!」
「ぐっ、呑み込まれ……!?」
ガレスもまた同じだった。肉棒を通じて、理性も本能も溺れさせるような快感が押し寄せてくる。
膣内は縄で縛ったように狭いのに、柔らかいひだが絶え間なく蠢き、肉棒から精を搾り取ろうとしてくるのだ。
耐えきれず、ガレスは射精した。
激しい息遣いと共に濃厚な精液が、子宮を満たしていく。
「はあ……」
恍惚のため息と共に、子宮が脈動し、得た精液を魔力に変換すると、ガレスの体内に還元していく。
搾精と魔力還元のサイクルが、ガレスとサリアの間で結ばれた瞬間だ。
「サリア……!」
ガレスはサリアの身体を床に寝かせると、肉棒を打ち込むように腰を動かす。
「ああっ……ガレス!ガレス!」
サリアは快感で気をやるまいと、手足でガレスの身体にしがみつく。
一突きごとに二人の頭に、快感の波が押し寄せて、あらゆる思考をめちゃくちゃにしていく。
暗闇の中、闇によって黒々と染まったガレスのマントがサリアの身体を包む姿は、悪魔が天使を食らっているかのようだ。
しかし実際は、サリアのサキュバスの身体が、人間であるガレスの身体を貪っているとは誰が知り得ようか。
「サリア!」
「ガレス!」
申し合わせるまでもなく、互いの名前を呼んだ瞬間。
二人の身体を絶頂が包み込んでいた。
びくびくと身体を震わせながら、二人はさらに深く混ざりたいとばかりに、唇を貪り合う。
貪欲に蠢く膣穴は、ガレスの精液を一滴たりとも漏らすことなく吸い取り、肉棒を刺激してさらなる勃起を促していく。
再びガレスの腰が動き始め、牢屋の中をサリアの喘ぎ声と、淫靡な水音が満たしていく。
この日、大教会の地下牢獄は悪徳な淫行の場となり、5人の主神騎士は魔の者となった。
主神騎士の戦力に、強大なる魔力が組み合わさる。それが魔王軍に向けられた時、多大な被害が魔王軍に及ぶことは間違いないだろう。
果たして、いかなる存在が彼らを止められるというのか。世界の変革は目の前に迫っていた。

20/10/13 03:33更新 / KSニンジャ
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