読切小説
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鳴かぬ蛍が身を焦がす。
俺の通う高校は、人間だけでなく様々な種族が通っている。殆どの魔物の種族は通えるようになっている、魔物が人間と普通に暮らすようになった今でも珍しい学校だ。

まぁ、そんなことはどうでもいいか。アレだ、本題へ移ろう。俺にはケンタウロスの幼馴染がいるんだが、そいつが俺みたいな落ちこぼれと違ってパ−フェクト超人なんだ、パーフェクト超人って言っても腕から磁力が発生するわけじゃないよ。

頭が良くて、運動神経も良くて、ついでに家事全般もこなせるの、唯一の欠点が魔物にとって最も重要な恋愛に疎いことなんだよ。

この前なんかさ、サキュバス種の奴にからかわれるからって俺の事を彼氏だって言い張ったらしいの。「ボクには幼少の頃から結婚すると約束した人がいる」とか言って。どんだけ昔の話だよ、保育園の頃の話じゃねーか。

でね、俺はそのことに文句を言いに行ったわけ、そしたら真顔で「約束はできる限り守らなければいけないだろう?」だって、どんだけ堅物なのかと。保育園の頃の約束だぜ、そんなもんとっくに時効だっての。

そこで俺は勘が良いからピンと来たね、サキュバス種の奴とグルになって俺の事を騙そうとしてるんだろって問い詰めたね。そしたらさ「キミはボクのことが嫌いだったのか?だとしたら申し訳なかった、ボクの勘違いで君に迷惑をかけてしまった」だって、抱きしめて俺もお前のことが好きだって言いそうになったよ。

俺はそんな想いをこらえたよ、危うく騙されそうになったね。もうアイツの演技はアカデミー賞ものだよ、だって物凄く悲しそうな顔をして泣いてたんだよ、まるで大好きな人に振られたかのように。俺じゃなかったら騙されてたね、全くアイツは油断も隙もあったもんじゃないね。



ゴメン、強がっててもカッコ悪いものはカッコ悪いよな。正直に話すことにするよ。



本当はさ、俺はアイツのこと凄く好きだったんだ。俺みたいな落ちこぼれにも優しくしてくれたし、勉強だって教えてくれた。俺にとって憧れだったし、なによりアイツの幼馴染だってことが嬉しかった。

この前、サキュバス種の奴にアイツが俺と付き合ってるって噂が本当かどうか聞かれたんだ、俺はそんな噂を初めて聞いたし誰かが流したデマの情報だと思ってた。でアイツにそんな噂が流れてるから気をつけろよって言いに行ったら「その噂を流したのはボクだ」って暴露されたの。

何でそんなことしたのか聞いたら「噂が広まればボクとキミの関係がハッキリすると思ってた」だって、意味わからなかったね。なんで俺との関係をハッキリさせるのかわからなかった。そしたらアイツは俺の心を読み取ったかのように「昔、ボクはキミのお嫁さんになるって約束しただろ、ボクの想いはあの時から変わってないんだ」って言ってきたんだ。

そりゃ、俺だってアイツのことが好きだから嬉しかったよ、そんな昔から両想いだったことも嬉しかったよ。でも、ダメなんだよ、俺は落ちこぼれで、アイツは超が付くほどの優等生。俺と付き合ってもアイツが得することなんて、何にもないの。それに俺なんかよりもアイツに似合う男は沢山いる訳で。だから俺はアイツのことを嫌いだって言った。

自分の心に嘘をついて悔しくなった、アイツの悲しそうな顔を見て泣きそうになった、嘘吐きな俺に謝るアイツを見て自分が憎くてたまらなくなった。本当は後悔でいっぱいで、それがアイツのためだって嘘で自分を封じ込んで、アイツが立ち去った後に一人で泣いてた。

悪いな、こんな話につき合わせちまって。代わりに何かして欲しいことがあったらしてやるよ。

えっ!今からでもアイツに謝って来いって?……できるわけ無いだろ、俺はアイツを傷つけた、本来ならアイツに殴られてもいいことをしたんだぞ。それなのに会えるかよ……

だったら、殴られて来いって?そうかもしれないな、それすらも出来ないのは本当に落ちこぼれになっちまうもんな。ありがとう、今からアイツに会いに行って謝ってくる。それでもってアイツの気が済むまで殴られてくる。





おっ!あの時は、ありがとうな。お前に言われなかったら俺はずっと後悔してたと思う、あの後アイツに謝って、殴られに行ったよ。でもさ、俺が謝ったらアイツ泣き崩れちゃって。あんなに弱いアイツを見たのは初めてだった。

その後、自分の正直な気持ちも伝えて俺はアイツと付き合うことになったよ。本当にありがとうな。

って、おい。なんで嫌そうな顔するんだよ。自慢なら他所でやれ?いや、自慢じゃないって。本当にお前にも感謝してるんだって、俺はお前にも素敵な彼女が出来るように祈ってるからな。
14/09/17 08:45更新 / アンノウン

■作者メッセージ
なんか勢いだけで書いてしまった。
反省はしている、後悔はしてない。

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