読切小説
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物乃怪複鳥草紙 ー蛸娘、壷娘乃巻ー
 「あーっ、これは駄目だ。」

 左で持った陶器の皿をそのまま地面に落とし、次のものに手を掛ける。

 「これは・・・、皹が深いな。駄目っ、と。」

 「おう、紅鳥。どうかの今回のは。」

 「三十ばかり焼かせてもらいましたが、今のところどうにも人様に出せるものは二、三品だけですね。」

 皹の入った土塊を落としながら様子を見に来てくれた人物に返事をした。
 この人はこの窯の持ち主であり俺の師でもある人だ。

 「ふむ、妥協を許さんお前さんらしいのう。ちいとふり幅を広げてやれば自分で窯も持てるだろうに。」

 「いえ、こればかりは人様に売るという時点で自分の納得したものしか出すことはできませんよ。師匠もそうでしょう?」

 「まあ、そうじゃな。ワシもここまでくるのに長かったからのう。」

 「でしょうね。」

 誰もが通る道の話しをしていると、弟弟子が師匠を呼ぶ声が聞こえてくる。

 「おぉ。今日は鬼の宴に甕を納品する日じゃったわい。」

 「手伝いましょか?」

 「いんや、お主も店の方があるじゃろ。他の弟子達も来る頃合いじゃから自分の事をやりんさい。」

 「わ、わかりました。」

 そういうと、師は手をひらひらと振りながら作業場へ帰っていった。

 「さてと、次を見ますかね。」

 後ろ姿を見送った後、また自分の作品との睨めっこを始めていく。
 結局、その窯から出して満足できたのは五つだけだった。
 店へと戻り、戸を引っ張り開けて持って帰ってきた器を棚へ並べ全体を見る。

 「まだ、これだけなんだよな。」

 商品として扱っている作品を見て溜め息が出そうになり、それを押し込めた。
 二十作品、これだけしかないのだ。

 「目下の課題は質の向上ってところか。」

 そう呟き、顎を摩りながら店の中へと入っていく。
 今日も焼き物屋「鳥」の主としての時間が始まっていった。



 「兄さん。これどれくらいなの?」

 「こいつはこれ程かな。」

 算盤を弾き、値を提示してやると小鬼の少女は顰め面をする。

 「ちいと高くないかい?二つでこれなら買わせてもらうけど。」

 「おいおい、これがいい値だぜ?嫌なら師匠のところへ行くといい。安上がりで済むぞ。」

 「私はこれが気に入ったんだ。なあ、兄さんもう少しなんとかしてよ。」

 必死に訴えてくる少女の顔。
 こういうのに弱いんだよな。

 「はぁ・・・、今回限りだぞ。」

 提示額より一割五分程引いて、再度見せてやると。

 「兄さんあんた良い人だよ。ここのこと仲間にも宣伝しとくよ。」

 「ははは、よろしくな。」

 茶碗を抱きかかえ、嬉しそうにくるくると回ると銭を払い。
 壊れ物を扱う様に自分の頭陀袋に入れて去っていった。

 「また値引きなんかして、おまんま食えんこうなっても知らんよ?」

 少女を見送り、後ろ姿に軽く手を振っていると不意に声をかけられる。

 「売れん方がよっぽどおまんま食えんだろう。ほっとけ。」

 声の主へ顔を向け、自分がしたことへの弁解を吐く。
 立っていたのは小袖を着た俺より少し若い女。
 だがこいつは只の女じゃない。

 「それに人化してるってことは仕事中だろ?いいのか油売ってて。」

 「いけずやね。せっかくええ巻物手に入ったから持ってきたのに。」

 丸い尾をポロリと覗かせ、人化の術を解きその姿を露わにしていき。耳と目の辺りに浮かび上がる黒い模様。
 本来の刑部狸としての姿へ戻ったようだ。

 「ほれ、この格好ならええやろ?これで今は休息時ってことで。」

 「勝手にしてくれ。で、その巻物が何だって?春画か?」

 呆れ、頭を掻きながらこいつが持ってきそうな品物を上げてみる。

 「阿呆!うちが年がら年中そんなもん売りつけに来るか!」

 「前は来てただろうが・・・。」

 この助平狸は所帯持ちの人妻の癖に商うものは張り形や春画、大陸由来の虜の実等。
 好色物しか扱っていない。
 まあ、独り身としては世話になりはしたがな。

 「!!ま、前は前!今は今!これを見てから言ってもらおうやないかい!」

 帯を解き、巻物を広げていく。
 その中身は普通に文字が列なっているだけだが、何が書いてあるかが重要だった。

 「ふむ・・・。牡蠣殻の粉末、・・・を砕いたもの、松脂。読めない部分もあるが、藁灰が最後にあるところ見ると、これは釉薬の処方か。」

 「そうや!紅鳥もそう思うやろ?」

 「そう思う?知らずに持ってきてええ物とか言って売りつけようとしてたのか。」

 「は・・・、あはははぁ・・・。」

 図星だったらしく乾いた笑いを浮かべている。
 まあこいつらしいか。

 「で、幾らなんだ?」

 「へっ?」

 笑いの後は素っ頓狂な声を上げて何か驚いて表情を隠しきれていない。
 ころころと忙しい奴だ。

 「へっ?じゃない。こいつは勉強に使えるから買うと言ってるんだ。何か不満があるのかよ?」

 「ないない!それなら元がこれで手間賃がこれで・・・。これでどうや?」

 見せられた額はそこらの古物市で置かれている在庫品と同じような値だ。

 「安くないか?」

 「元が元だからねぇ。色付けても欲しくないやろ?」

 「まあな。」

 先程の売買で出た金子から必要分を渡してやり、取引が成立する。

 「毎度。じゃあ、また何かあったらくるわ。」

 「程ほどにな。」

 煙を起こし、人化の術を纏い仕事用の姿に戻ると、あいつは帰っていった。

 「さてさて、客はあれで最後か。他の客が来るまで目でも通しておくかね。」

 買い取った巻物を巻き取り、店の奥へと引っ込もうとすると再び背に声をかけられる。

 「ちょっといいかしら?」

 「はい?どうしました?」

 踵を返してみると珍しい魔物娘がそこに立っていた。
 無数の脚を生わせ少し乾いているが艶のある肌を持ち、豊満な胸や妖艶な尻を布だけで覆っているその姿は陸にいるのが似つかわしくない蛸娘ことスキュラだ。
 あまりの珍しさにジッと見ていると、少し苛立った顔と共に脚が一本ほど頬を突いてきて、俺を我に帰らせる。

 「何をじろじろ見てるのよ?この胸?それとも私の顔?」

 「いやいや、申し訳ない。海からの客は初めてだったんでね。ついつい見入ってしまったんだよ。」

 「ふぅん・・・。まあいいわ、それより聞きたい事があるんだけどさ。」

 「なんなりと。」

 「髪留め用の壷ってないかしら?」

 「髪留め・・・、用?」

 「やっぱりないわよね。こんなので綺麗な奴が欲しいのよ。」

 そういうと彼女は後ろを向き、自分が髪留めとして使っているものを見せてくれた。
 素焼きで出来ていて、色は土をそのまま貼り付けた地味なもの。
 それに穴が開けられており、通すことで髪を纏めているようだ。

 「ふむ、うちにあるものはそちらにとって規格外だし、色も代わり映えしないものばかりだからなあ。」

 「そう・・・。」

 溜め息を吐く音が聞こえてくる。
 簪を挿すわけでもなく、櫛で止めるでもない。
 壷を使うと言う所に俺の声が洩れ。

 「一月・・・。」

 「えっ?」

 「一月待ってくれないか?あんたが気に入るかわからないが作ってみるよ。」

 「作るって、これを?」

 「ああ、ここは海から近くはない。なのにこの店まで来てくれたあんたの気持ちに応えたい。」

 「あ、ありがとう。えーっと・・・。」

 「紅鳥だ。」

 「紅鳥・・・。私はクリマタリヤよ。じゃあ、お願いするわね。」

 「任せてくれ。」

 その日から、新しい種類の焼き物を作ることとなった。
 店を閉めた後は師匠の元へ行き、基礎を固めるために土を捏ねていく。
 目測で焼き付けたものを再現して形を作り、寝かせる。
 そして十分寝かせたものを窯で焼き、後は待つだけだ。
 番を変わりながらその火を絶やさないように見つめ続け、出来上がりを待つ。
 作り始めて何度目かの陽に照らされ、試作品は焼きあがった。
 店で出しているものと同じ製法だが、寸法も違い釉薬を使っていない素焼きなのでどれも土より濃いかそのままの色をしている。

 「塩を入れるのに丁度よさそうじゃの。」

 「蓋がないですよ。師匠・・・。」

 壷を一つ持ち飄々と笑いながら横に立つ師。
 用途が違うので取り合えず突っ込みを入れる俺。

 「それはなんとかなるじゃろう。しかし、お前さんが皿と椀以外を作るとは珍しいもんじゃ。」

 「ええ、ちょっとお客の要望に応えようと思いまして。」

 「それがこの壷か。」

 「はい、まだ試作で不恰好ですが、自分の中で描いた通りには一応できてます。」

 「そうかそうか。なら何も言うことはないじゃろ。」

 何かに満足したのか師は窯から離れて寝床へ庵へ戻っていく。
 片手に俺の壷を持って。

 「ちょっと何勝手に持っていってるんですか。」

 「一つくらいええじゃろが。塩入れが欠けてしもうて丁度作ろうかと思っとったんじゃ。」

 豪快に笑いながら中へと入って行き、中々出てこない。
 どうやら本当に塩の詰め替えをしているようだ。

 「しょうがない。出すだけだしとくか・」

 戻ってこないのならしょうがない、俺は窯で焼かれた作品を作り手別に並べていき自分のものも一つずつ点検していった。

 「これが最後っと。」

 土に還る音と共に粉々になる器。
 失敗と言えるものを処理していくが今日はその数が少ない。
 目線の先を棚の上に向け顔を綻ばせる。
 そう、髪留め用の壷以外に数十個ものものが残っていたからだ。
 商品が増えるというよりも少しは安定して腕前が上がったと思え、頬が緩んでしまう。

 「ここで満足ってわけじゃないからな。精進精進。」

 気を引き締め、器を組み箱へと移して店の方へと持っていく。
 開店中も客が来ていない時を見計らって巻物に目を通したり、髪留めに使う釉薬のことを考えていた。

 「彼女の髪は栗色だったから近い色の赤か・・・。逆に緑をつかって映えさせるのも・・・。」

 「・・・ん。・・・さん。」

 あれに書いてあったことも試してみたい。
 この釉薬だとどうだろうか、等と考えていると。

 「お兄さん。」

 「ん?」

 頬に何か柔らかなものが当たる触感。
 何か当たったのかと顔を向ける。
 そこには。

 「ごきげんよう。おにいさん。」

 下半身に壷を纏い、笑顔でこちらの顔の側に少女がいた。

 「うおっ!?」

 驚いてすぐさま距離をとると彼女の全様が見えた。

 「壷に・・・、少女?」

 「はい。壷魔人のトゥリパと申します。」

 「・・・で、その壷魔人のトゥリパがどうしてここに?」

 「実はですね。髪留め用の壷を探してまして・・・、ありますか?」

 「髪留め用・・?」

 「そうですそうです。」

 「残念だが、ここの壷は規格外だと思うぞ?だけど・・・。」

 「だけど?」

 「さっき来た客に同じようなものを作る事を約束したら待ってくれれば商品として並ぶよ。」

 「へぇ、私以外にも壷で髪留めを。どんな方なんですか?」

 「ああ、スキュラの娘でね。彼女がその品を探してて。ないなら作ろうかって話になったんだけど・・・。」

 「・・・。スキュラ。・・・どうやって。でも、先は・・・。」

 蛸娘の単語が出た途端なにやら呟き始めたが、どうかしたのだろうか。

 「おーい、トゥリパ。」

 「ひゃぁい!?」

 「どうした急にブツブツと。」

 「な、なんでもないですよ。」

 「そうか、ものが出来るのは半月先だからそのときに来るといい。」

 「そうですか・・・、わかりました。改めてまたきます!」

 「えっ?」

 「先は越させませんから!」

 何か目を滾らせ、彼女は去っていった。

 「なんだったんだあの娘は・・・。まあ、一種類の数は増やしておくか。」

 新たな客と認識し、日常へと戻っていき焼き物を作っていく。
 釉薬と土の相性や液の配分を師に相談しつつ髪留め用の壷を完成させていくのだが、少し困ったことが起きた。

 「紅鳥ーっ。」

 「お兄さーん。」

 『陣中見舞い』

 「よ。」

 「ですよーっ。」

 半月の折り返し、壷娘が来た後からだろうか。
 クリマタリヤとトゥリパが頻繁に顔を出すようになったのだ。

 「ほら紅鳥。魚採ってきたから食べなさいよ。」

 「珍しい果実摘んできました。お兄さん食べてください。」

 しかも来る時は同時で。

 『むっ!』

 「私は先に来たのよ!」

 「いいえ私です!」

 騒がしくも賑やかな光景が俺の日常に入り込み。

 「紅鳥にどっちが食べたいかきめてもらいましょ。」

 「いいですよ。」

 「おいおい、三人で仲良く食おうぜ。もうすぐ昼食だろ?」

 それは溶け込んでいった。
 残りの日々等あっという間に過ぎていき、期限の日がやってくる。
 その日は店を閉め、二人に品を見てもらい気に入ってもらえたか確認してもらう。

 「おーっ・・・。」

 「はぁ・・・。」

 鮮やかな紅や蒼、翠の色をした壷を前に感嘆の息を漏らして見つめており。
 手に取り、互いに似合う色や髪形を確かめ合いだした。

 「綺麗な栗色・・・、紅色?・・・、白もいいかも。」

 「淡い蒼ね・・・。白や緑が似合うかしら。」

 髪を解き、櫛を通して長く川のようにしなやかな毛を手入れし新しい髪留めを手に取り結っていく。

 「どうかしら?紅鳥。」

 「お兄さん似合いますか?」

 今までの土色の壷と違い乳白色のものをつけたクリマタリヤと灰色に近かったものから淡い緑色のものをつけたトゥリパがこちらを見て感想を聞いてくる。

 「おぉ、良いんじゃないか?」

 「本当?よく見てる?」

 身を乗り出して俺に近付いてくるクリマタリヤ。

 「近いって、そんなに寄って来なくても見えてるよ。」

 甘い香りが鼻を擽り、豊満な胸が押し付けられ柔らかい感触が胸板に伝わってきた。

 「もっと見て、私だけを・・・。」

 顔が迫ってきて唇が近くなる。
 背けて避けようとするが後ろからガッシリと掴まれて動かすことが出来ない。

 「駄目ですよお兄さん、ちゃんと見なきゃ。クリマさんの次は私も見てくださいね。」

 いつの間にか背後に回られたトゥリパに顔を固定されて、クリマタリヤと口付けを交わしてしまった。

 「んっ・・・。」

 押し付けるだけの軽いものだが、うっとりとした表情をして背中に腕を、下半身に脚達を回してくる。
 そして只重ねているだけで満足しなかったのか隙間から暖かいものが口内へと侵入してきた。
 上唇を舐め、歯をこそぐり、歯茎を這い、水の滴る音をさせながら味わうように貪られていき、解放される。

 「はぁ・・・、はぁ・・・。」

 「好きなの、貴方だけよ。親身になってくれたの・・・。だから、上げるわ。私を・・・。」

 ぼんやりとなった思考、甘い香りは人間の理性を麻痺させて雄を呼び起こす。
 そして目の前にいる女、いや雌は俺を求めている。
 腕を伸ばし、頭を捕まえて引き寄せまた口付けを、口内を貪られたいと貪りあいたいと思っていると不意に紐を解く音が耳に入ってきた。
 そちらに目を向けると着ていた作務衣がはだけ、肌が空気に触れている。

 「お兄さんの匂い・・・、素敵・・・。」

 先程まで頭を固定していたはずのトゥリパが服に手を掛けて脱がそうとしていたのだ。
 だが、回らない頭ではそれが何を意味してるか考える余裕はなく。
 クリマタリヤの顔を引き寄せて、口付けを再開したいという欲望だけが先走っていた。

 「紅鳥・・・。」

 「クリマ・・・。」

 再び重なり合う唇、今度はこちらから彼女の口内へと侵入し、出迎えてくれた舌に絡みつきながら唾液を交換して、互いの肉を舌で楽しみ合う。
 洩れて端を伝っていき零れる口液。
 優しく舐めとっていく中で身体を這う感触が感じられる。
 唇を離し、そちらに顔を向けるとトゥリパが献身的に脇や背中を舐めていた。
 クリマタリヤとの行為ばかりに夢中になり、彼女にはこちらから何もしていない。
 申し訳ない気持ちになっていると。

 「貴方優しいのね。」

 「ん?」

 「なんでもないわ。ほら。」

 「えっ!?」

 寄り添っていたトゥリパを持ち上げて二人の間に割って入れると、脚を使い彼女を覆っていた布を剥ぎ取っていく。

 「口付け、まだでしょ?してあげて。」

 「あ・・・、ああ。」

 「お兄さん・・・。」

 匂いと汗で興奮したのか上気した顔が近付いてきて、そのまま合わさっていく。
 少し塩気があり、クリマタリヤと違い柑橘系の香りが鼻へ入ってくる。

 「お兄さん、私も。私も貴方が大好きです。」

 小さな唇、細い舌、重ねるたびにその愛くるしさに魅了されていき。

 「仕事をしてるときの顔、素敵でした。ずっと見ていたくなるくら・・・。ひゃい!?」

 それは彼女も同じなようで、支えていたはずの脚が胸の方へと移動して、しなやかな触手の部分は乳房を優しく締め上げ、吸盤は乳首へ吸い付いて愛撫をしていた。

 「うっ・・・、んっ!!」

 「可愛い・・・。」

 足を動かすと殻だが震え、息も荒くなる。
 それに呼応しこちらも興奮して更に上を求めたくなり二人の顔を見た。

 「ね、ねぇ・・・。」

 「んぅ・・・、ちゅぷぅ。もう・・・、ですか?」

 頬が赤く染まり、我慢が出来ないらしくトゥリパは俺の身体に股を擦りつけ。
 クリマタリヤも自らの触手で秘所を弄って慰めていた。
 準備はもう万全のようで、濡れそぼった割れ目から汁が滴り床に染みが出来ている。

 「・・・んっ。」

 寝転がり、穴をこちらに見せて肉棒をせがむ表情に喉を鳴らしてどちらから入れるか迷っていると。

 「紅鳥ぃー!おらんのか?」

 不意に戸を叩かれ、あの助平狸が大声を上げて俺の名を叫んでいるのが聞こえてきた。

 「・・・、あの狸が・・・。」

 いいところで邪魔をされたことに腹が立ち、文句を言いに立ち上がろうとしたら。

 「邪魔が入らないところへいきましょうか。」

 トゥリパがどこからか自分の履いていた壷を取り出してブツブツと何かを唱えだし。
 気がつくと薄暗い空間に三人は来ていた。

 「壷魔人の亜空間ね。私まで連れて着てよかったの?」

 「いいですよ。仲間外れなんてしたらお兄さんに嫌われちゃいますからね。」

 「貴女も優しいのね・・・。さあ、続きをしましょう。」

 そういうと、俺とトゥリパを脚で捕まえて自分の方へと引き寄せ。
 座位の体位になったが彼女の秘所が俺のイチモツに宛がわれることはなく、代わりにトゥリパが間へと入れられ肉棒の上に置かれている。

 「クリマ?」

 「ほら。色々と手伝ってあげるわ。」

 二本の触手で持ち上げられた華奢な身体、イチモツに巻きついて刺激を与え続けてくれるもう一本の脚。
 俺という土台の上にいるクリマタリヤは楽しそうに蜜壷に肉棒を宛がい擦り合わせていき。

 「ふぁ・・・、しゅ。しゅごいれしゅ。」

 「クリマ、勘弁してくれ。生殺しは・・・、き。きつい。」

 身体全体を彼女の脚に捕らえられ、痛みに近い快楽を与えられていた。
 トゥリパには先程より一本多く三本の触手が乳房に巻きつき、乳首を吸盤が吸い、淫核を扱いている。
 こちらも肉棒に巻きつかれて締め上げられながら吸い付かれて愛撫されていく。
 あまりの強さに二人とも達しそうになるが・・・。

 「あら一人でイクなんて良くないわ。」

 男根の根元を締められて不発に終わり、彼女の最後の一押しをお預けされて絶頂できないでいた。

 「あうぅ・・・、くりましゃん・・・。」

 「クリマァ・・・。」

 「そんな泣きそうな顔しないの、これでいいでしょ?」

 そういうとトゥリパの秘所を擦っていた脚が秘所の入り口を広げイチモツを立てて宛がうと。

 「ひぐぅ!?」

 「くっ・・・。」

 予告も無しにそのまま彼女の中に勢いよくというより半ば落とすと言う感じに近い状態で肉棒を入れたのだ。
 無論、突然の強い締め付けや解放されて歯止めが効かなくなった男根はすぐに果ててしまい彼女の中へ精をぶちまけてしまう。

 「うっ!おっ!?」

 「あひゅ!?あひゅいよ!あひゅいのがたくしゃん!たくひゃんんぅぅぅ!!」

 だが、子宮はそれを貪欲に飲み込み身体を絶頂に震わせながら奥へ奥へと精液を導いていくが。

 「すぐにいったら味わえないでしょ?もっとしてあげる。」

 最奥で果てているイチモツを抜いていき、ぎりぎりかさが引っかかるところでまた一気に奥へと押し込みそれを繰り返す。

 「いぎぃ!?」

 「あうぅ!?なにこりぇ!?なにこりぇ!?まひゃ!!しゅごいのが!!」

 「こっちもまだやってあげるわ。」

 「しゅご・・・、ちくびも・・・。おまめも・・・、どうにかなりゅ!!」

 「いいのよなって。」

 「あぐぅ!ク、クリマ・・・。」

 「射精そうなの?」

 「あぁ・・・。ああ!!」

 「ひゅう!?ちんほ!ちんほにおしひろへらりぇれれ!わたひ!わたひ!」

 目の前が真っ白になる感覚と共に二度目の精を吐き出して蜜壷の中を満たしてく。

 「あくぅぅぅ!!」

 口から涎を垂らし、白目を向けて絶頂するトゥリパ。
 全身の力が抜けて気絶したのか両手足が伸びきっている。

 「気持ちよかったかかしら?」

 「よ、良すぎだ。限度ってもんがあるだろ。」

 息を整えながらクリマタリヤを見つめて文句を言った。
 しかし・・・。

 「次はその限度を超えさせてあげるわ・・・。」

 優しく微笑むとトゥリパを引き抜いて地に寝かせ自分の腰を浮かせてくる。
 目の前にはたわわに実った果実が二つ揺れ、節操の無い息子はそれを見ただけで硬さを取り戻していく。

 「んっ・・・。」

 「やっぱり好きなのね。これ。いいわよ思う存分楽しんでも。」

 柔らかい感触が頬に当たり、また甘い香りが鼻腔を通り抜けて肺へと下りていき。

 「止まれんぞ?」

 「ええ。」

 支えにしていた両手で乳房を掴み、少し荒く揉み込み始める。
 指の間から零れ落ちそうな程のものを時に強く、優しく強弱をつけて堪能し。

 「あん!いやっ!そんなに強く吸っちゃ駄目!あふっ!ああん!」

 硬く張り上がった乳首に吸い付き、乳をせがむように甘噛みをして刺激を与えてやる。

 「そ、そんな!歯を立てちゃ!あふん!あああぁ!」

 先程のトゥリパと交わっていた時にいいように遊んでいたのを今度は逆にしてやり、高みまで導いていく。

 「す、凄いの!乳首だけで!吸われるだけで!おっぱいいっちゃう!いくの!いくぅ!いくぅ!」

 少しずつ強弱の間隔を狭めていくとクリマタリヤの反応も激しくなっていき、そして・

 「いっくぅぅぅぅ!!」

 身体を反らして絶頂をむかえ、力が抜けたのか俺の太股にへと崩れ落ち。
 その拍子に・・・。

 「んぅ!?」

 「くうぅん!はいって・・・、はいってきたぁ!!」

 いきり立った息子が彼女の膣内へと媚肉を掻き分け突き刺さってしまった。
 火照った淫肉に包まれて全体がまた締め上げられていく感覚がなんとも心地いい。
 急に肉棒を突っ込まれたとあって、歓喜の言葉を上げられそれに呼応するかのように再度付けられた欲望の炎によって理性が焼かれていき胸を弄っていた手が腰へと移り彼女を貫くことしか考えられなくなっていた。

 「あか、とり・・・。」

 「クリマ・・・。」

 一言だけ名前を呼び合い。

 「へぅ!?ああぁぁ・・・!抜けていく・・・、なんでぇ・・・。」

 乱暴に上へ持ち上げ、傘の端ぎりぎりのところまで上げて一気に下へと打ち付けていく。

 「はぁうぅ!ああ!きゅうん!ひぃううう!はぁうぅ!」

 何度も何度も行程を繰り返していき、射精感が高まると身体を引き寄せて肌の温もりを感じ合いながら細かく、だけど激しく動き媚肉を掻きまわして子宮の奥へと出す準備をする。

 「またきちゃう!いや!また一人でなんていや!」

 嫌と言う言葉に反応して、冷めた理性が呟いた。

 「俺も射精る・・・、膣内で・・・。」

 「・・・。うっ!ちゅむっ!」

 孕ませてと言わんばかりにきつく抱きしめられ、口付けをしながらクリマタリヤの一番奥で。

 「ふっう!!」

 「あひゅう!!」

 何かを噛み締めながら俺達は果てていった。





 あの行為の後、好意を受け取りしてしまった責任をとるために二人と婚姻を結んだ。
 なんだかんだあったとはいえ日常の中にクリマタリヤとトゥリパがいて。
 それが無くなって欲しくなかったからというのが強い。
 そして暫くのときが流れ・・・。

 「やっとお前さんも窯持ちか。」

 「ええ、時間がかかりましたが。」

 「まあ嫁さん二人食わすのには、それなりのものがいるからのう。時々こっちに顔を見せいよ。」

 「はい、長い間お世話になりました。」

 「ふん。一丁前じゃな。」

 「そう・・・、ですね。」

 店の売り上げが増えたお陰で窯持ちとなり、師の所から本格的に独立することとなった。

 「ほれ、湿っぽいのはきらいじゃ。さっさといけ。」

 「・・・。ありがとうございました。」

 居を構えた場所は海に近い場所、ここより離れた町だ。 

 「さあ、帰るか。」

 真摯に土を捏ね、人様の為に焼き上げた青年は少しばかりの富と生涯の伴侶を得た。
 声に答えできた壷は髪留めとしてのものとまた別の評価を貰い、花刺しや一品あるだけで風流が味わえるものとして様々な人魔が買い求める品となり店の看板商品となる。

 「ふう、ただいま。」

 「お帰りなさい。あなた。」

 「店にはクリマだけか。トゥリパは?」

 「焼き上がった作品を見て眉間に皺寄せてるわ。」

 「またか・・・。」

 貴方も欲しい焼き物があればここに足を運ぶといい。

 「これは駄目ですね・・・。」

 「まるで昔の俺だな・・・。」

 焼き物屋「鳥の蛸壺」に・・・。
12/05/05 23:45更新 / 朱色の羽

■作者メッセージ
復帰第二段でございます。
蛸と壷、あるようでなかった組み合わせ。
いかがだったでしょうか?

実はこれ、蓮華殿の作品。
魔物娘と結婚した皆さんへ、50の質問の中であった壷魔人の項目であったものを見ているときに思いついたものです。

この場を借りまして、蓮華殿に創作のイメージを与えてくださった事に感謝すると共にお礼を申し上げます。

感想をいただけると狂喜乱舞し、突っ込みをいただけると勉強になります。

次は何を書こうかな〜。

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