読切小説
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ご褒美は、はちみつ入りのバターロールで
貴族達の住む屋敷はいつ見ても豪華だ。
特にこの町において一番の権力者、『ラルカバーズ』家の屋敷は他の屋敷よりも一際豪華だった。
その屋根には本物の金が使われた鶏の飾りが幾つもあって、六角形の紋章が刻まれた門に毎日磨かれている屋敷の窓らは眩い光を放ち、レンガとセメントを折り合わせ建造された屋敷は貴族としての流儀だ。
加えてその広大な敷地には森林や花園があり、一般人は元より他の貴族から見ればまさに理想の豪邸だった。
そんな豪邸の一室、骨董品が置かれている展示室にてそれは巻き起こっていた。





















「エルフィア様〜〜!! それはお父様が大切にしている壺なのですよ!! どうかお離しを!!」








非常に切羽詰まった、というよりは絶叫にも似た声を挙げながら男は少女をなだめようとしていた。
というのも彼が迂闊に出れば、少女の持っている壺が割れそうだったからだ。








「べ〜だっ!! こんな薄汚い壺になんの価値あるっての!!」












そう言い少女は壺の入れ口を手で掴み、その薄汚い壺を振り回していた。
その少女はまだまだ幼く、歳に換算すれば11、12歳程度。
紫色のショートヘアーにその瞳は藍色。
そして見ての通り生意気で悪戯癖のある性格であった。
まだ分別の付かない少女であるからだろうか、兎に角こんな事をしでかすのだから使用人達にとっては溜まったものではない。
だがこちらが彼女を躾ける事など出来ないし、そもそも彼女には使用人を従える程の『力』があるのだから下手な事を言えないのだ。
だから使用人である男はこうして言葉で頼るしかないのだ。





「や〜い、バアル〜!! これが大事なら取って見なさいよぉ〜〜!!」





少女は勢いよく、持っていた壺を宙へと放り投げた。



「っ!!」



すぐに男こと、バアルは壺目掛けて飛び上がり、その手で壺を掴もうと腕を伸ばした。
床へと落ちる寸前、バアルはその手で壺を掴む事が出来た。
そのまま壺を胸元へと抱え込むと、バアルは安堵の息を吐いた。


「ふうっ・・・」


本当に寿命が縮まるかと思った、とバアルは壺が割れなかった事に心底安心していた。

「ちぇ〜、つまんない。どうせならそのまま割れちゃっても良かったのに」

面白くないと言わんばかりの表情を浮かべながら少女こと、エルフィアは呟いた。
それも凄く軽い口調で事の重さをまるで理解していないかの様に。
この態度にバアルは思わず口を荒げた。
「それは困ります!! これは貴方のお父様が大事にしているものですよ!! この壺が割れたとなれば・!」
「割れたらバアルがクビって事になるんでしょ? それは分かってるもの。だからエルフィアやったんだもの〜」
自分のやった事に悪びれもせずエルフィアは笑いながら告げてきた。
「わざとやったのですか!? こんな事をしてただで済むとでも・!」
「あら? エルフィアに文句言うの? バアル、いつからエルフィアに偉く言える立場になったの?」
歪んだ笑みを浮かばせながらエルフィアは挑発的な台詞をかけてきた。
それに対しバアルには返す言葉がなかった。


「バアル、分かる? エルフィアには力があるの。お父様やお母様に頼らなくてもエルフィアには魔術の才能もあるし、名前もあるの。だから貴方が逆らったら困るのは貴方でしょ〜?」


エルフィアは勝ち誇った様な歪んだ笑みを浮かべていた。
その姿はまるで小さな暴君者だ、と心の中でバアルは呟いた。
確かにエルフィアの言う通り、エルフィアには『力』がある。
癒しの魔術師(ヒーリング・マジシャン)という異名を持つ名家、『ラルカバーズ』家の血筋を引く者。
その幼さで習得するのが難しいとされている上級魔法を幾つも操れるという天性の才。
それがエルフィアの持つ『力』だ。
そんな実力も名誉もあるエルフィアの前に、一介の使用人であるバアルは何も言えないのだ。



「っ・・・!!」


歯ぎしりをしながらバアルは口を閉ざしていた。
「そうそう、大人しくエルフィアに従っていれば良いの。別に貴方に貴方をいたぶろうなんて事はしないし。ただの遊び相手になって・」
そうエルフィアが告げようとした時。











「エルフィア、それぐらいにして・・・」








エルフィアとは違う、また別の声が聞こえた。
バアルが後ろを振り向くと扉の近くで立っていたのは幼い少女だった。
エルフィアと同じ年頃で、エルフィアと同じ紫色のショートヘアーに藍色の瞳を持っていた。
まるでエルフィアと瓜二つみたいな容姿だった。
ただその顔の筋肉はエルフィアと比べて硬く、笑顔を見せられそうにない顔だった。 
「何よ、エルヴィア。こんな遊び相手にもならない奴を庇うっていうの?」
少しだけ不満げにエルフィアはそう口にした。
エルヴィアと呼ばれた少女は、それでもエルフィアに臆する事無く言葉を返した。
「でも困らせているのはエルフィアの方・・。その壺を守るのは、バアルさんの役目・・・。だからもう止めて・・・」
エルヴィアは目を細め、その少しだけ潤んだ瞳でエルフィアへと訴えてきた。
するとさっきまで勝ち誇った笑みを浮かべていたエルフィアが急に気まずそうな顔となった。
それもやってはいけない事をやってしまったと言わんばかりの不味いという表情で。



「ふ、ふ〜んだ!! エルヴィアが言うならいいもん。それにバアルで遊ぶのも、もう飽きちゃったからね〜〜!!」



顔をぷいっと向き、エルフィアはそのまま走り去っていった。
その姿を見届けたエルヴィアはバアルに近寄り頭を下げた。


「・・・ごめんなさい。エルフィアが勝手にやって・・・」

「い、いえ。これも自分の務めですゆえ・・」



エルヴィアの誠意にバアルの怒りは静まった。
エルフィアと同じ『ラルカバーズ』家の血を引き、エルフィアと同じ上級魔法を幾つも操れる天性の才。
エルフィアの双子の姉妹―――どちらが姉で妹なのか新米のバアルには分からなかったが―――それがエルヴィアだ。
エルヴィアはエルフィアと違い大人しく、それでいて悪戯もせず力を振りかざすという事はしなかった。
加えてこうしてバアルを助けるといった優しさを持ち合わせていたから、使用人の間ではもしどちらか一方で世話をするのであればエルヴィア様の元でやりたい、という話が多い。
かく言うバアルも世話をするのであればエルヴィアの方が良いと思っていた。



(けれど、お家の為となるとエルフィア様の方が適任なんだよな・・・)



あんなに生意気で悪戯癖はあるが、一応は明るく人と接する事が出来るエルフィアはラルカバーズ家の広告塔としてうってつけだ。
それに比べて、優しいが内気で一人でいる事を好むエルヴィアではラルカバーズ家を背負うには厳し過ぎる。
名家たるもの他家との交流は必要不可欠であり、社交的な人間が好まれるのは世の常だ。
そしていずれ近い将来、彼女達はお家の為に離れ離れになるかも知れない。
折角、双子の姉妹として産まれ同じ魔術の才を持ちながらもお家の為に選別される二人。
そう考えてみると何だか二人が哀れに見えてきた。




(ほんと、エルヴィア様は辛い立場だよな・・・。それにエルフィア様も・・・)




だが二人は仲良しであり、喧嘩している所など見た事ない。
先程の様にエルフィアが悪戯を働き、使用人の小言には耳も貸さないがエルヴィアに対しては耳を貸していた。
それは姉妹としてせめてもの優しさだとバアルは考えていた。
それが嬉しい事であり、それが少しだけ悲しい事であった。






♢♢♢♢♢♢♢♢♢





それから数日後の昼前だ。
「バアルさん・・・」
「は、はい。エルヴィア様」


廊下を歩いていたバアルに対し、エルヴィアは呼び止めた。


「買い物に行きたいから・・・。お願い、一緒に来て欲しいの・・・」


エルヴィアがそうバアルに頼んできた。
勿論、エルヴィア派であるバアルは快く引き受けた。
「わ、分かりました。ではもう一人連れて行きましょう。私一人だと心もとないですよね?」
「うん、それで良い・・・」
それで移動は馬車で時間はどれぐらいかとバアルはあれこれ段取りを考えていた。
すると突如エルフィアが現れ、エルヴィアとバアルの元へ近づいてきた。


「ねえねえ。買い物に行くの? ならエルフィアも行くよ〜。どうせ暇だからねぇ〜」


どうやら買い物に行くという話を聞いていた様だ。
ニコニコとしながらエルフィアが言うが、バアルはニコニコする事など出来なかった。
すぐに適当な理由を付けて来ない様にしなければとバアルは考えたが、これといった理由が思い浮かばなかった。
「うん、分かった・・・。エルフィアも一緒に行こう」
バアルが考えている間にエルヴィアは勝手に決めてしまった。
こうなればもうエルフィアを買い物に連れていくのを阻止出来ない。
「えへ〜、楽しみ。お買い物〜」
ウキウキとしながらエルフィアは呟いていた。
せめて悪戯はしないで欲しいです、とバアルは心の中で願っていた。






♢♢♢♢♢♢♢♢♢







商店街というものはいつもにぎやかだ。
店の宣伝をする者や、路上でパフォーマンスを披露する者。
更に主婦達が集まって井戸端会議を開いていた。
馬車を走らせたどり着いた商店街の風景にバアルは少し興奮していた。
「活気がありますね。やはり商店街というものはその地域の色が現れると言いましょうか」
「小難しい事言ってないで、ほらついてきなさいよ。エルヴィア、また後でね〜」
エルフィアがそう急かすと人ごみの中へと走っていった。
「ああ、お待ちを!!」
すぐにバアルはその後を追いかけていった。
その姿に対して、一緒に来ていたメイドが哀れんでいた。


(振り回されて大変ですね、バアル・・・)


新人ではあるがエルフィアに振り回されるとなると同情もしたくなる。
だが今はエルヴィアの世話が大事だった。
「ではこちらも参りましょうか?」
メイドが軽く頷くとエルヴィアも軽く頷いた。
「うん、お願い・・・」









♢♢♢♢♢♢♢♢♢







「ありがとうございました〜」



店主からの感謝の言葉と共にエルヴィアとメイドは店から出た。
エルヴィアのその両手には一つの紙袋を携えていて、中を覗けば焼きたてのバターロールが沢山詰められていた。
「パン屋に入るとは、珍しいですね。食するだけであれば私達がお作り致しますのに」
「ここのパン屋さん・・・。はちみつをたっぷり使ったバターロールが有名だから・・・」
確かに、とメイドは頷いた。
普通バターロールであればバターを生地に混ぜて焼き上げるのだが、ここのパン屋はバターに加え、はちみつを入れて甘い香りと風味を出している。
素朴な味が好きなエルヴィアにとってその味は格別なものだろう。
「では早速、帰りましたら紅茶をお入れしますね。今日は香りが良い品を使用しますね」
「うん、ありがとう・・・」
「では馬車を用意してきますゆえ、少々ここでお待ち下さいませ。エルフィア様達も、そろそろ合流しますと思いますので」

そう言いメイドは馬車が置かれている場所へと行ってしまった。
エルヴィアは噴水の段差に腰かけ、メイドの帰りを待つ事にした。
周りの大人達はエルヴィアに見向きせず自分達の時間を楽しんでいた。
暇つぶしにエルヴィアはそんな大人達や商店街を見渡してみた。
あちこちで会話が聞こえてくるがどれも大人の会話でエルヴィアにはよく分からなかった。
そしてエルヴィアの目線は明るい商店街とは正反対の暗い路地裏へと向けた。
薄暗く、ジメジメとした感じが如何にも路地裏といった感じだった。
そこでエルヴィアは気づいた。



「ん・・・・・・・?」





路地裏の、ずっと奥の方に人がうずくまっていたのを。
見間違いかとエルヴィアは目をパチパチさせてみたが見間違いではない。
―――路地裏に人がいた。
人がいたとなれば、賢い人間は見なかった事にするか、もしくはすぐに忘れるかの二択だった。
誰だって厄介事には首を突っ込みたくないのだから。
だが何の気の迷いか、エルヴィアはその人に近づいてみようと思った。
そこに特別な理由はなかった。
それこそ、変わった石を見つけたから拾ってみようかという程度でしかなかった。
恐る恐るエルヴィアは路地裏の方へとやってきた。
そして奥へと行ってみるとうずくまっていた者は、男である事が分かった。




「・・・・・・・・」




その男は自分よりずっと背が高い。
銀髪でオオカミの様に、もしゃもしゃとした髪型。
歳は・・・恐らく成人になったばかりなのではないか。
服装はボロボロで破れ破れの短シャツに汚れや染みが付いた短パン。
スラムの人間か、とエルヴィアは思ったがそれにしてはあまり臭くない。
手足もそこまで汚れていないからスラムの人間じゃなさそうだ。
とすればこの男は何者だろうか。




「・・・・・・・・」




エルヴィアはじっとその男を眺めた。
だが当の本人は動かない。
死んでいるのか、とエルヴィアは思ったがよく見れば男は呼吸している。
生きている証だ。
そしたら何故動かないのかとエルヴィアは考え始めた。
・・・生きているのに動かない、いやもしや『動けない』のではないか。
そう考えたエルヴィアはふと思いついた。
エルヴィアは先程のパン屋で買ったバターロールの袋を開き、その中の一つを手に取った。


「ん・・・・・・」


タコ糸での魚釣りみたいに親指と人差し指でバターロールを挟み下へと垂らし、男の前でバターロールをゆらゆらと揺らしてみた。
すると男は顔をゆっくりと挙げ、その両目でバターロールを見つめ始めた。


「っ・・・・・・・」


男が気づいた事でエルヴィアは少しだけ後ずさりした。
男は涎を垂らしながら、エルヴィアの持つバターロールを見つめていた。
それも目の前のバターロールにしか目がないと言わんばかりの眼差しで。
そんな目で見つめられると、エルヴィアは思わず呟いてしまった。



「・・・・食べたい・・・?」



エルヴィアの言葉に男は首を低く頷けた。
それを見たエルヴィアはもう一度呟いた。



「・・・・・・・食べたい?」


それに対し男は二度、首を頷けた。
そんなに欲しいのならやろうかな、とエルヴィアは思った。
一つやってもまだバターロールは沢山あるのだから減るものではないし、ここは自分の気まぐれという事で渡してしまえば・・。








「お、俺によこせ!!! 」

「っ!?」




突然の事でエルヴィアは身をすくめた。
見ればエルヴィアの後ろにはエルヴィアよりもずっと大きい男がいた。
そのボロボロな身なりから恐らくスラムの者か、もしくは裏の人間だろうか。
その男はエルヴィアの持つバターロールを奪おうとその手でエルヴィアの腕を力強く掴んでいた。
すぐにエルヴィアは振りほどこうとするが力では向こうが圧倒的だ。
それに突然の事だからエルヴィアは気が動転して、魔法で撃退するという手段が思いつかず、ただ手をバタバタさせるしかなかった。



「い、いやっ・・・!!」



男の手を振りほどけない。
このままではバターロールが奪われる。
いや、それだけならまだいい。
もしかして自分はこのまま連れ去られて売られるのではないか。
そんなのは絶対に嫌だ。



「よ、寄こせ!!」



男はエルヴィアの体を押し倒そうとしてきた。
そうなればエルヴィアはもう抵抗できない。
押し倒され、あの男にされるがまま。
そうなったらもうエルヴィアはたまらず叫んだ。



「いやっ!! 助けてっ!!」


エルヴィアがそう叫んだ時だ。
















『ドスッ!!』




「えっ・・・・?」

一瞬だったがエルヴィアは見た。
倒れていたあの男が薄汚い男の腹へと拳を一撃入れ込んだのを。
拳を入れ込まれた薄汚い男は地面へと仰向けになって倒れ込んだ。


「あ、あがっ・・・・・!」


ピクピクと薄汚い男は体を痙攣させながら、うめき声を挙げていた。
これでは暫く立ちあがれそうにない。
なんて強い人なのだろう、とエルヴィアは大変驚いた。
大の大人を、それも拳の一発で倒すなんて並みの腕力ではない。




























「大、丈ブ・・・。か・・・・・」











男が口を開いた。
片言で途切れ途切れの言葉だったが、その声色からエルヴィアを本当に心配している事が分かる。
それに男はその黒く優しい瞳でじっとエルヴィアを見つめていた。
その瞳にエルヴィアは安心できた。


「う、ん・・・・」
「あ、ア・・。良カった・・・ゾ・・!」


ホントに良かった、と言わんばかりの声色で男は呟いた。
それでエルヴィアは確信した。
この人は自分を守ってくれた優しい人である、と。
自然とエルヴィアはその男の頬へ手を伸ばした。
指先を使ってその頬を何度も撫でた。


「助けて、くれて・・・ありがとう・・・」
「う、ウん・・・・!!」


嬉しそうに男は頷いた。
こう撫でていると何かが芽生えてくる。
そう、例えるなら犬を撫でている時に感じてくる温かさだ。
お利口で主人思いの犬は身を挺して主人を守る。
そして主人は犬に感謝を示す為、何度も何度も犬を撫でるのだ。
とそこでエルヴィアは思い出した。


「あ・・・。その、ね・・・。食べる・・・?」


そう言いエルヴィアは彼にバターロールを差し出した。
そう、エルヴィアはバターロールを彼に挙げようとしていたのだ。


「ア・・・、お、おオ・・・。ホしい、ぞ・・・」
「じゃ挙げる・・・はい」


彼は少しだけ迷った様な素振りを見せると、その手でバターロールを受け取った。
そして両手でバターロールを掴むと、大きく口を開き、バターロールにぱくついた。


「っん・・・。っン・・・・」


バターロールを口いっぱいに頬張り、彼は美味しそうに食べていた。
その姿は無邪気な子供そのものだ。
とても青年とは思えない優しい子だ。
エルヴィアは彼のその食べる姿を暖かい目で見つめていた。



「お、おい君・・・大丈夫か?」
「一体何が、あったんだ?」



エルヴィアの悲鳴を聞きつけたであろう警備兵らが今頃になって駆けつけてきた。
その後、エルヴィアは警備兵らに起きた事を話した。
彼が自分を助けた事。
そして彼にバターロールを挙げた事を。











♢♢♢♢♢♢♢♢♢








命の恩人を家に招き入れるという事はままよくある話だ。
されどエルヴィアの場合、その恩人が身元不明であっても馬車に乗せ屋敷へと招き入れてしまった。
それも助けて貰ったお礼と称し、彼を屋敷の使用人として雇いたいと。


「・・・何でそんな奴を招いたの?」


そう言いエルフィアは男を指さした。
エルフィアに指を刺された男は首を傾げ、どんな反応を見せればと言いたげな表情を見せていた。
警備兵らにあの薄汚い男を渡した後、メイドやエルフィア達がやってきてエルヴィアは彼が助けてくれたという話をした。
それを聞いたエルフィア達は最初、助けてくれた彼にお礼を言えば良いかなどと思っていたが、まさかエルヴィアが彼を招き入れるとは考えていなかった。
そして当のエルヴィアは彼に少なからず好意的だった。
「エルヴィアを守ったから・・・」
「だから連れてきたっての。そんな何処の誰かも分からない奴を連れてくるなんて危ないでしょ? もしエルフィアを襲ったら・・・エルヴィアはすぐにそいつを八つ裂きにするんだから!」
そう言いエルフィアは鋭い目で男を睨みつけた。
その男を警戒するのはエルヴィアの姉妹として当然の反応だった。
また同席していたバアルもメイドもその男を警戒していた。
「私も同じです。その方を使用人として迎え入れるのは出来ません。幾らエルヴィア様でも、身元が分からない人間を屋敷に入れるのは不用心かと・・・」
「バアルと同意見です。使用人として身元をはっきりさせておかないと彼を信頼出来ません」
決してエルフィアの肩を持つ訳ではないが、この男を入れたくないのはバアルもメイドも同じだ。
もしこの男が狼藉を働いてエルヴィアの身に何かあったりしたら大問題だ。
エルヴィアの身を案じ、だからこそ二人は反対しているのだ。
「お願い、エルヴィアの我がまま・・・。聞いて欲しいの・・・。この人は、エルヴィアの恩人なの・・・」
そう言いエルヴィアは頭を下げた。
元々エルヴィアに対して好意的かつ、そんな彼女が頭を下げたとなればバアルもメイドも悩んでしまった。
「う、うーん・・・。ですが身元をはっきりしなければ私はともかく、他の人間からどう思われるのか・・・」
「それは・・・困りますね・・・」
悩み込む二人だがエルフィアは悩もうとしなかった。
「兎に角あんた、名前教えてよ」
そう言いエルフィアが顔を男の方へと向けた。
「名・・・マエ・・・?」
「そうでしょ。いつまでもアンタって呼ぶのは困るんだから。名前ぐらいあるでしょ?」
すると彼はぼそりと呟いた。




「オレ・・・、無イ・・・・名マエ・・・。分かラ、なイ・・・」




それを聞いたエルフィアとバアル、そしてメイドは耳を疑った。

「名前すらないの!?  じゃどうやって生きてきたのよ!!」

自分の存在意義当然の名前を知らないなど信じられない話だ。
知らないとなるとますます怪しい。
こんな奴をエルヴィアの傍に置かせる訳にはいかない。
すぐに屋敷から放り出して、とバアルとメイドに命令しようとしたエルフィアだったが。

「なら名前、付けてあげる・・・・。そう、リキヤ・・・・リキヤで、いいよね?」

エルヴィアがすかさず彼に名前を付けてきた。

「リキ・・・ヤ・・?」

その言葉に彼は、不思議そうな表情をしていた。

「ジパングっていう国での言葉で、リキは『力』っていう文字・・・・。男の人をぶっとばしたらから力持ちで・・・。だからリキヤ・・・」
エルフィアよりも本を読むのが好きなエルヴィアはエルフィアの知らない知識を持っていた。
外国の言葉も多少知っていたからそう名付けたのも納得だ。
「ねえ、そしたら『ヤ』はどんな意味になるの?」
「・・・その場で思いついたから、深い意味はないの・・・」
それを聞いたエルフィアはやれやれと首を横に振った。


「リキ、ヤ・・・・? オレ、リキヤ・・・・」


そう呟いた男、改めリキヤは何だか不思議な気持ちになった。
自分だけの名前。
他人からリキヤと呼ばれ、自分は『オレ』と呼ぶ。
それが何ともおかしくて心くすぐる事だ。

「リキヤ・・!! オレ、リキヤ!! リキヤッ!!」

そう言いリキヤは自分の名前を何度も叫んだ。
何度も叫ぶと自分が自分であるという証明にもなるし、面白いのだ。
「ねえ、これで良いよね・・・。名前もあるし・・・。私が見るから・・・」
そう言いエルヴィアはエルフィアの手を取り懇願してきた。
その姿にエルフィアはため息を吐いた。
根負けという訳ではないがエルヴィアがそこまで頼むのであれば姉妹として聞き入れない訳にはいかなかった。
「・・・分かった。エルヴィアがそう言うなら、エルヴィアの好きにして」
「何をおっしゃいますか!! エルヴィア様に何かあったら問題なんですよ!!」
堪らず抗議の声を挙げたバアルにエルフィアは首を振った。
「勿論、そのままでという訳にはいかないからね。ちょっと待ってて」
するとエルフィアはポケットから犬の首輪を取り出した。
よく犬や猫の首元に付ける、飾り気のない革製のベルトだ。
そのままエルフィアは有無を言わず、リキヤの首元にその首輪を取り付けた。
「良い? エルヴィアが言うなら仕方ないけど、もしエルヴィアを痛めようとしたらその首輪から強い電撃が走るから覚悟してね」
それに、とエルフィアは更に付け足した。
「貴方は今から『ペット』だからね。薄汚いあんたを拾って、エルヴィアのペットにして挙げるんだから感謝しなさいよ」
「ペットですか!? 彼をペットと呼ぶなど!?」
信じられないと言わんばかりにメイドは声を挙げていた。
「俺、ペット・・・?」
リキヤは不思議そうに首を傾げた。
それがどういう意味を示しているのか分かっていないみたいだ。
本当に貴方は今までどう生きてきたのか、バアルは問いかけてみたかった。
「うん、そうでしょ。ペットなら四つん這いになってワンワンと泣いてみなさいよ」
またエルフィアの悪癖が始まったか、とバアルは呆れていた。
確かに身元不明で怪しさ満点の男だが、一応の人権はある彼に対してそんな事を命令するなど。
されど逆らったらエルフィアの思うつぼだ。
理由を付けて屋敷からつまみ出される事になるだろう。
こんな事を言われてリキヤという男は黙っていないだろうとバアルは心配した。


(でも返ってこれがいいかも知れないな・・・。エルフィア様に付き合うのは苦労するからな・・・)



そう考えていたバアルだが。

































「ワン、ワン・・・・・」












リキヤはエルヴィアの言う通り、両手と両膝を床へと付け四つん這いになりその口からワンワン、と叫んだ。
その光景にエルフィアもバアルも、メイドも口をポカンと開けていた。
そして指示したエルヴィアもまさか本当にやるとは思っていなかった様で、エルフィア達と同じく口をポカンと開けていた。


「な、何でやっちゃうのよ?!」


思わずエルフィアが問いかけた。
「ワン、ワン・・・。やル・・・・。そウしろ・・・っテ」
自分のした事に何も疑問すら持たずにリキヤは呟いた。
「簡単にやる馬鹿が何処にいるの!! どうしてそんな馬鹿正直にやるなんて、ホントのアホでしょ!!」
命令した本人であるはずなのに、さも自分事の様に顔を真っ赤にしながらエルヴィアは叫んだ。
「う、ウうッ・・・・!」
リキヤは少しだけ悲しそうな表情を浮かべた。
「ああ、大丈夫・・・。エルフィア、どうして良いか分からないだけだから・・」
すかさずエルヴィアが慰めながらリキヤの頭を撫でた。
エルヴィアがリキヤを慰めている事、そしてエルヴィアに自身の本心が知られている事にエルフィアはもう居ても立っても居られなかった

「もう良い!! 勝手にやっちゃってよ!! エルヴィアを傷つけなきゃ良いんだからね!!」

そう言い残してエルフィアは去っていた。
それも何故か恥ずかしそうな顔をしながら。
何でそんな顔をしていたのかエルヴィアには薄々分かる。
だからエルヴィアは場の空気を切り変えようとしたのだ。

「えっと、リキヤ・・・。まずはバアルさんに指導を受けて・・・。お願いします、バアルさん」
「は、はい。エルヴィア様・・」


我に返ったバアルは首を頷いた。
そしてメイドはどう反応すれば良いか、困った表情をしていた。
先ほどまでこの者を屋敷に入れるのには難色であったが、彼のあんな光景を見てはそれも薄れてしまった。
エルフィアの命令に素直に聞いてしまう者に、エルヴィアに狼藉など働ける訳がない。







一方、屋敷の廊下ではエルフィアが大きな足音を立てながら歩いていた。


「もう・・・!! 何で、素直に従っちゃうのよ・・!」


エルフィアは何度も何度もその台詞を呟いていた。
怒りとも鬱憤とも違う、初めて生まれた『戸惑い』という感情を吐き出すかの様に。






♢♢♢♢♢♢♢♢♢






その後エルヴィアとバアルは他の使用人達やその長に、更にはエルヴィアとエルフィアの両親にも彼を紹介した。
概ね、首輪が付けられていて狼藉を働かねばそれで良し、という意見で一致し彼を使用人として迎え入れる事を認めた。
これもまたエルヴィアの人望ゆえか、とバアルは思っていた。
そして迎えた使用人となる初日。
使用人達の部屋にてリキヤはバアルによって支度をさせられていた。



「お、オお・・・? 苦シい・・・!! 首ガ・・・・」



そう言いリキヤは首元を指さしていた。


「窮屈ですが我慢して下さいね。執事服というものはネクタイを付けるのが礼儀ですよ」

バアルはネクタイの端を持って首元から下へと結ぼうとする。
その下には首輪が嵌められていたからネクタイを適度に緩めておいて、だ。
「はい、これでよろしいですよ」
手をパンパン、と叩きながらリキヤへの身支度をし終えたバアル。
「お、オ・・・。オ、お・・・?」
リキヤにとって初めてとなる執事服。
それを着るというのはどんな事かリキヤには分からなかった。
リキヤは試しとばかりに体を動かしてみた。
「動キ・・・に、くイ・・・・」
腕を伸ばしてみたり、膝を屈伸してみたりしてみたが窮屈だ。
何でこんな硬いものを着て働かなければならないのだろうか。
「執事服というのは動きにくい物ですよ・・・・。ですが公の場で働くには避けて通れないですから」
窮屈だというリキヤの気持ちは分かるが仕事をするのであれば仕方ないのだ。
自分もこうして給料を貰う為、窮屈なのを我慢してやっているのだから君も我慢して欲しいとバアルは思っていた。

「では行きますよ、リキヤ君。エルヴィア様の元へ」









バアルはリキヤを連れ、エルヴィアの部屋へとやってきた。
エルヴィアの部屋は本棚がずらっと並べられ、さながら小さな図書館となっていた。
そんな場所にてエルヴィアはじっとリキヤの顔を見つめていた。

「それじゃ、リキヤ。私の言う通りにして・・・」
「う、ン・・・」

ややこわばった表情でリキヤは頷いた。
まあ初めての仕事、と聞けば誰だってそんな顔になるだろう。
何を言われるのか本人でないバアルでさえも気になった。



「・・・一緒にいて、エルヴィアを守って・・・」
「ま、モル・・・? 何、スレば・・・?」
「エルヴィアが危なくなったら助けるの・・・。それでエルヴィアが頼んだら、動いて・・・」



つまりボディーガードになれという事なのだろう。
確かにそれならリキヤは十分務まるだろう。
何せ大の大人を一撃で倒したのだから。


「うン!! 分カっタ・・・!!」


目をキラキラとさせながらリキヤは頷いた。
子供の様に純粋で混じり気のない、キラキラとした目で。



「お願いね、リキヤ・・・」
「うン!!」


そう言いリキヤは何度も首を縦に振った。
その光景にバアルは見た事がある。



(何だか、親の言う事を素直に聞き入れる子供みたいだな・・・)



そう。
親であるお母さんが自身の子供にお母さんの傍から離れない様にと念押ししている光景。
その雰囲気と言い、その光景と言い、まさにそれだった。
だが実際は子供であるエルヴィアの言う事を大人のリキヤが聞いているという光景でしかない。
立場が逆転していて何とも奇妙な光景だな、とバアルは少しだけ首を傾げた。





♢♢♢♢♢♢♢♢♢






それからリキヤはエルヴィアの命令通り、エルヴィアの元から離れようとしなかった。
常にエルヴィアの後ろを付いていき、エルヴィアが棚の上にある本を取って欲しいと頼まれればその本を取ったりした。
また肩車して遊んでと頼まれれば、その肩にエルヴィアを乗せて遊んだりもしていた。
流石にエルヴィアが風呂に入る時やエルヴィアが寝る時は出来ないがそれ以外だったらリキヤはずっと付いていた。
その光景はまるで友達と遊んでいるか、はたまた忠実なペットとその飼い主との戯れみたいな光景だった。
そしてリキヤはエルヴィアの命令となれば絶対に実行するのだ。


例えばとある昼下がりの事だ。
ラルカバーズ家の広大な庭にある大木の一つ。
その枝先に猫がいて、身を縮めてうずくまっていた。
それを見たエルヴィアは可哀そうだと思いすぐリキヤに頼んだ。


「ねえ、リキヤ。あそこにいる猫・・・。降りられないみたい・・・」
「分カ、った・・・!」


するとリキヤは木の表面に手を付き、皮靴を脱ぎ捨てると大木に登り始めた。
慣れた手付きでするすると登っていき、ものの数秒で猫がいる枝近くまで行くと。


「にゃア・・・! にゃ、ア・・・!」


リキヤは下手くそな猫の鳴き声と共にその手で猫を招いた。
こんな鳴き声で猫は寄ってくるのかとエルヴィアは思っていた。



「にゃ、あ・・・?」



だがリキヤの鳴き声に対し、猫はゆっくりと立ち上がった。



「にゃ、ア・・・。にゃ、ア・・・!!」


下手くそな鳴き声でリキヤは手招きし続ける。
それに釣られて、猫は枝を伝ってゆっくりとリキヤの方へと歩いていく。
そして遂に猫はリキヤのすぐ近くまでやって来た。
リキヤはそのまま猫を右腕で抱えこむと、また木の表面を伝って降りていく。
そして地面へと着くと抱えていた猫を降ろした。




「にゃ、ああ・・・!!」



まるで感謝しているかの様な鳴き声と共に猫は走り去っていった。
その光景をじっと見つめていたエルヴィアはたまらずリキヤに問いかけた。

「凄い・・・。猫と話せるの?」
「うン・・・。俺・・・。話セる・・・動ブつ、と・・・」

胸を張って眩いばかりの笑みで自慢してきたリキヤ。
その姿はまるで幼い子供が自分の母親へと自慢しているかの様だ。


「うんうん・・・!! それ凄いよ・・・!!」


珍しくエルヴィアは興奮気味でリキヤに問いかけてきた。
本当に話せるのかどうか実際のところ分からないが、エルヴィアにはどうでも良い。
それこそ産まれた赤ん坊がハイハイ出来る様になった時の親の興奮とほとんど変わらないのだ。



「それじゃ犬とかも・・・。話せるの・・?」
「うン・・!! 俺、話セる・・!!」
「すごい、すごい・・・!!」
「えっへン・・!! 俺、すゴい・・!!」


また胸を張って自慢してきたリキヤ。
嫌味など全くない、純粋で幼い子供みたいに威張っていた。
だがそこが可愛いのだ。
エルヴィアにとってリキヤは特別な存在なのだから。






♢♢♢♢♢♢♢♢♢






リキヤが使用人として雇われ、3週間が過ぎた。


「行くよ、リキヤ・・・」
「お、オお・・・!!」


今日もまたエルヴィアはリキヤを連れて廊下を歩いていく。
すっかり仲良くなったエルヴィアとエルヴィアは、今や使用人達の話題だ。


「いや〜、あいつ。変わり者だけど良い奴だな〜」
「あんなに幸せそうなエルヴィア様見られたの、初めてね」
「お付きというよりもペットみたいな感じだけど。それが良いかもね〜」


どの使用人達もリキヤを好意的に受け止め、エルヴィアの両親も彼の人柄を認めていた。
だがエルフィアはリキヤを快く思わなかった。
何しろ今まで仲良しだったエルヴィアが、今やリキヤに構ってばかりなのだから。
確かにエルヴィアからの頼みを聞き入れたのは自分だが、やっぱりエルヴィアとリキヤが仲良くしている所を見ると妬けてくる。
今まで仲良かったエルフィアがリキヤに取られた、と思えば腹が立って仕方ない。
だからエルフィアはリキヤに意地悪を仕掛けようと考えた。
ある日、エルフィアはリキヤを自分の部屋へと招き入れた。



「むう・・・・・」



エルフィアは不機嫌な顔をしながらリキヤを睨んでいた。


「いい、あんたはペットでしかないのよ。だからエルヴィアばかりに構っちゃ駄目なんだからね!!」
「う、ウん・・・・」


緊張した顔でリキヤは答えた。
初めてエルフィアに呼ばれどんな事を言われるのかと思っていたからだろう。
そんなリキヤに対しエルフィアは仕掛けた。


「ほらリキヤ。貴方、ペットなんだからエルフィアの靴を舐めなさいよ。犬の様にペロペロと舐めなさい!」


そう言いエルフィアは自身の足をリキヤの顔へと差し出した。
まさに舐めろと言わんばかりの体制で。
別にエルフィアは、リキヤが実際にやるとは到底思っていなかった。
だがそれがエルフィアの思惑なのだ。
流石にそんな事を要求されたならば、誰だって拒絶するし怒るだろうから。
リキヤとてそれは同じで、それで彼が舐めるのを拒絶したらエルフィアに逆らったという口実が出来上がる。
それを利用してリキヤをエルヴィアから遠ざけるのがエルフィアの目的だった。
エルフィアはどうせリキヤは拒否するだろう、と決めつけていたからやらないと思っていたが。

















「ンっ・・・・・・」



だがリキヤは這いつくばり、舌を垂らしエルフィアの靴を舐めようとしていた。
すぐにエルフィアは靴をずらし、後ずさりした。


「ば、バカっ!! 何やってるのよっ!!」


顔を真っ赤にしながらエルヴィアは怒鳴った。
その怒鳴り方は『怒り』というよりも『恥ずかしさ』に満ちていた。


「けド、頼ミ・・・。エルフィアの・・・」


何故エルフィアが怒っているのか分からない、と言わんばかりの表情でリキヤは呟いた。
そんなリキヤに対してエルフィアは思った事をぶちまけた。


「いやだからと言って貴方!! 靴を舐めるなんて汚いでしょ!! 何考えているの!!」


確かにこちらからそう命令したが、まさか本当にやるとは思ってもみなかった。
エルフィアはまた顔を真っ赤にしながら声を挙げた。

「バカバカ!! 靴を舐めるなんてどうかしてるんじゃないの!! 何考えてるのよ、この馬鹿!! 言われたから簡単にやるなんてしちゃ駄目でしょ!!」
「う、ウう・・・」


しゅん、と悲しそうな顔をしたリキヤ。
がっくりと肩を落とし今にもその両目から涙を流しそうだった。


「あっ・・・」


その顔を見て、エルフィアは申し訳ない気持ちになってしまった。
大人達を困らせその慌てふためく様子を見るのは好きなエルフィアであるが、それで泣いている光景を見るのは好きではなかった。
そもそも素直に聞き入れやってしまう人間を見るなど初めてで、エルフィアはどう反応して良いのか分からなかったのだ。
特に人を疑う、という意味すら知らないこの男は。



「むう〜・・・・・!」



この『むう』は頭を抱えて悩む時に呟く『むう』だ。
この男は簡単に人のいう事を聞いてしまう。
このままではこの男は悪い奴らに騙されてしまう事だろう。
悪い奴らに要らぬ知恵を仕込まれ泣きを見るリキヤ。
そんなもの見たくないし自分も心が痛む。
となれば、誰かが教えて挙げなければならない。
その教える人間は誰か、考えるまでもない。
そう考えたエルフィアは決意した。


「あ、あのさ・・・」


人差し指で頬を掻きながらエルフィアは呟いた。
それも少しだけ恥ずかしいという表情を見せながら。


「もう、怒ってないし・・・。貴方は、その・・・ペット! ペット、ペットなんだからちゃんとエルヴィアが躾けて挙げるんだからね!! だから他の奴なんかの事聞き入れちゃ駄目だからね!! エルフィアとエルヴィアのいう事、ちゃんと聞きなさいよね!!」


後半の方からは半ばやけくそ気味にエルヴィアは喋っていた。
自分が面倒を見なければという気持ちはあったが、あくまでもリキヤはペットという位置付けは譲れなかった。
身分も立場も違うのだからそれをリキヤに分からせてやるのだ。
ただそれだけが理由かと聞かれるとエルフィアは首を傾げてしまうが。

「聞ク・・・? エルフィア・・・ノ事?」
「そう。だからエルフィアのペットにもなりなさい!! ペットなんだからエルフィアのいう事は絶対に聞いて!! そしてエルフィアがピンチになったら助けなさい!! んでもってエルヴィアとエルフィアの傍から離れないでよね!!」

もう全ての台詞をやけくそ気味でエルヴィアは喋っていた。
何でこんなにも恥ずかしく言わなければならないんだ、とエルフィアは混乱していた。
それを紛らわす為にやけくそ気味になっていたのだ。



「ウん・・・。分かっ、タ・・・!!」



エルフィアに対して目をキラキラとさせながらリキヤは頷いた。
その姿はまるで母親の言う事を素直に聞き入れる純粋な子供そのものだ。
余りにも純粋過ぎてエルヴィアは自分の仕出かした事に罪悪感を持ってしまう程だった。




(もう、調子狂うじゃないの・・・!!)




本当に素直で良い子だとエルヴィアは呆れていた。
もし彼が本当の犬だったら何度もその顎を撫でていた事だろう。








♢♢♢♢♢♢♢♢♢







それからというものエルヴィアの傍にリキヤ、そしてエルフィアも傍にいるのが見慣れた光景となっていた。
3人で一緒に散歩したり、3人で遊んだりもした。



「リキヤ・・・、こっちに来て・・・!!」
「ほらリキヤ!! ペットなんだからエルフィア達に付いてきてよ!!」
「オおお〜〜!! オレ、行くゾ・・・!!」



その光景を他の使用人が見たら決まって『リキヤはペットだからね!!』、とエルフィアは常に訴えていた。
がエルフィアはリキヤと一緒にいる時はまんざらでもない表情を浮かべていたし、時折笑みも見せていた。
つまりは、リキヤと一緒にいる事が楽しいという裏返しだ。
本人は恥ずかしがって否定しているだけであり、使用人達からはもう見え透いた嘘だと分かっていた。

雲一つない、まっさらな青空が広がるある日の午後。
三人はラルカバーズ家の広大な庭を散歩していた。
ラルカバーズ家の庭には何十もの大木や花々が植えらており、わざわざ公園とかに行かなくとも良い程の美しい風景が見られるのだ。
「本当に広いね・・・。この屋敷」
「そりゃお父様とお母様の家だもの〜。広くて当たり前だもの〜」
「ん・・・? あソ、こ・・・。なん、ダ・・・?」
そう言いリキヤが指さした先にあったのは、この庭にとって異質とも言える物だった。
その周囲は黒塗りのガラスで覆われ、入り口らしき扉は重い鉄壁で固く閉ざされていた。
よく花園を訪れる際、ビニールシートによって覆われたハウスの中に入るだろう。
あの様な形を想像してもらえれば分かりやすいだろうか。
エルヴィアとエルフィアにはそこが何なのか分かっていた。
「そこはね、花園なの・・・・。お父様とお母様しか入ってはいけない場所だからエルフィア達は入れないの」
「花、ゾの・・・? 花、イっぱい・・・あル?」
「うん。まあエルフィア達は『秘密の花園』って呼んでいるの。そこにはお花がいっぱいあるんだって。詳しくは分かんないけど、お薬作る時とかにお父様達があそこに入って材料を取ってくるの」
魔法の腕もさることながら、ラルカバーズ家は薬の調合師としても有名だった。
特にエルフィアとエルヴィアの母親が作り出した薬は飲めば、あらゆる病も治るという万能薬だった。
ただエルフィアもエルヴィアも薬の調合というのには興味なかった。
はっきりと分かる程派手で、薬よりも色々出来る魔法を学ぶが好きだった二人にとって、別にその場所に入ろうという気はなかった。


「ほら今日はリキヤに凄いもの見せてあげるんだから♪ とっととついてきてよ」
「うん・・・! 今日は凄いの、見せてあげる・・!!」
「ん・・・? す、ゴい・・・もノ?」


そう言いリキヤは首を傾げた。


「うん凄いものだよ。絶対に驚かせあげるから♪」


エルフィアがそう言うのだからリキヤはワクワクした。
一体、どんなものを見せてくれるのか。
楽しみで仕方ない。








♢♢♢♢♢♢♢♢♢






「お、オおオおっ!! おオおおっ!!」

それを見たリキヤは驚いていた。
エルヴィアとエルフィアの周囲に風が吹いたと思ったら、エルフィアの背後に水で出来た球体が。
エルヴィアの背後に火で出来た球体が現れた。
二つの球体は別の形へと変わり、たちまち竜の様な姿となった。
ジパングに伝わる、胴体が長く髭を生やしたあの竜の姿。
その大きさはエルヴィアとエルフィアの体より一回り大きく、その長さは二人の背丈よりずっと長かった。
そして炎の竜と水の竜が互いに吠える様に口を開けると、胴体を揺らしながら近づいていく。
互いの胴体を絡み付け、まるで互いを睨みつける様に見つめていた。
そして突然、2匹の竜はその体を破裂させ、水蒸気となって弾け飛んだ。
辺りが一瞬だけ霧へと包まり、後には何にも残らなかった。
その一連の光景はリキヤにとって素晴らしいものだった。


「お、オおおオ〜〜〜!!! す、スごい・・・!!」


リキヤは子供の様にはしゃぎ、喜んでいた。
二人が癒しの魔法師 と呼ばれている由縁だ。
幼い身でありながらも膨大な魔力を持ち、それでいて上級魔法を幾つも操れるのだ。
こんなのは朝飯前、という奴だ。

「どうだった、リキヤ?」

そう言いエルフィアは胸を張りながら威張っていた。
昨日エルヴィアと共に打ち合わせをしてきたのだ。
リキヤに見せる為に。


「うン、うンッ!! スごい!! スごい!!」


何度も首を強く振りながらリキヤは喜んでいた。
ここまで喜んでくれているなら、準備したこちらも嬉しくなる。

「ならよかった・・・。これはね、お礼なの・・・」
「お、レ・・い?」

その言葉にリキヤは首を傾げた。

「そう・・・。エルヴィアとエルフィアの為に働いてくれるリキヤの為の・・・」
「これからもエルヴィアとエルフィアの傍にいて。だからね。リキヤ、こっち来て」
「ン・・?」
エルフィアに手招きされ、リキヤは近づいた。
するとエルフィアはリキヤの首にある、首輪に手をかけた。
カチャカチャ、という音と共に首輪が外された。

「はい、首輪取って挙げたから」
「お、オおっ・・・? 良い、ノ・・カ?」
「もうリキヤならエルヴィアを任せても大丈夫だって分かったからね。だから良い? ずっとエルヴィアとエルフィアの・・・」

そこで言葉を濁したエルフィア。
『ペット』と言うべきか、『使用人』と言うべきか迷ったのだ。
どちらを言っても恥ずかしい気持ちになってしまい、結局エルフィアはこう口にした。


「あっ・・・。うん、いいや。これからもよろしく、ね」
「う、ン・・・。分カ、った・・・!」



―――恥ずかしくて言えなかったんだね―――


双子の姉妹だからこそエルフィアの恥ずかしさを察していたエルヴィア。
素直に言えばいいのに、とエルヴィアは思っていた。







♢♢♢♢♢♢♢♢♢







その日はどんよりとした雲が空を覆っていて、薄暗い雰囲気を作り上げていた。
まだ夕方の5時頃だというのにもう暗闇が辺りを支配し始めていた。
「今日もまた遅くなっちゃったね・・・」
「大丈夫、大丈夫〜♪ ここは屋敷の庭だから遅れちゃっても問題ないし」
そう言いニコニコとエルフィアは笑っていた。
だがリキヤは肌の空気で悟った。
屋敷の方から得体の知れない者らの気配を。
それも敵意とも言える気配を。
「エル、フィア・・・。エル、ヴィア・・・。待ツ・・・」
すぐにリキヤはエルフィアとエルヴィアを呼び止めた。
「どうしたの、リキヤ?」
「危、ケン・・・!! ダメ・・・!」
「危険、って何もないでしょ? いつも通りの家だよ」
「うん・・・。考え過ぎだと思う・・・」
まだ幼く、リキヤの様に敏感でない二人には気配を感じる事は出来なかった。
だから能天気にエルフィアは屋敷の正面門へと向かい、ドアノブに手をかけた。


「ただいま〜〜!!」


元気よく声を張り上げ、屋敷の中へと入ったエルフィア。
いつもなら使用人らがその声を聴いて駆けつけくるのだが、今回は違った。

「あれ・・・?」

使用人らが駆け付けてこないし、屋敷が薄暗かった。
しかも心なしか空気も淀んでいる。

「ね、ねえエルヴィア・・・。おかしい、よね・・・」
「う、うん・・・。何だか、怖い・・・」

ここに来てエルフィアとエルヴィアはようやくただならぬ気配を感じたのだ。




















「ごきげん麗しゅう、ございます。お二人さん」



突然、男の声が聞こえてきた。
それも礼儀などない、人を子馬鹿にするかの様な口調だった。




『カッ…..! カッ…..! カッ…..!』



靴音と共に正面にあった階段から降りてきたのは一人の男だった。
飄々とし風貌で一見すればチャラけた人間の様に見えるがその瞳は底知れぬ闇を抱いていた。
「あんた、だれなのよ!!」
明らかに使用人でも、お客さんでもないその男にエルフィアは噛みついた。
「まあまあ、そんな怒らさんなって。メイドや使用人やら後はお前らの両親に、兎に角邪魔者は入ってこねえからよ」
「入ってこない、って・・・?」
「他の所にいるって事だよ」
それを聞いたエルヴィアは悟った。


――――屋敷にいる人全員、あの男に連れ去らわれたのだと。
だが何故そんな事をするのか。
それに答えるかの様に男は話を続けた。
「んまあ、お前さんらを快く思わない奴らの手駒。んでもって、あいつの保有者、だった人の手駒だな」
そう言い男はリキヤを指さした。
「リキヤの・・・?」
「ん・・・? ん、ン・・・・?」
何を言っているのか分からない、とリキヤは首を傾げていた。
「おっ、そうか。お前の名前、リキヤって言うのか。中々の名前だな〜」
「捨てられ・・・ってどういう・・・?」
心なしかエルヴィアの声はこわばっていた。


「そいつはな、捨てられていたんだよ」


その言葉は信じられなかった。
エルヴィアとエルフィアにとってお母さんとお父さんは自分達を見捨てたりしないし、優しくしてくれている。
なのに何故そのお父さんとお母さんは彼を捨てたのだろうか。
「な、なんで!?」
「さあな。あいつらはそこまで話してねえからな。まあ捨てられていて、孤児院にいたそいつを拾って、お前らを捉えようってのが狙いみたいだな〜」
言っている意味が分からなかった。
リキヤを使って自分たちを亡き者にとは?
エルヴィアもエルフィアも難しい顔をしながら困惑していた。
まだ幼いエルフィアとエルヴィアにとって、それが大人の権力争いであるという事は知る余地がなかった。
そしてリキヤが孤児だったという悲しき事実も。
「そしてそいつを実験体として薬を打ち込んだらしいな。身体能力が高くなる代わりに、思考やら言葉やらが落ちる薬を、な。そいつは道具として選ばれたんだよ」
「道具・・・!」
それを聞いたエルフィアも、エルヴィアも耳を疑った。
確かに実験とかは動物で試すのは良くある話だが人でやるなどあってはならない事だ。
だが二人が最も信じられなかったのはリキヤを実験体として、道具として扱っていた事だ。
確かにリキヤは頭が弱く、こちらの言う事を素直に聞く馬鹿ではある。
けれどエルフィアにとっても、エルヴィアにとっても大事な遊び相手―――――いや友達だ。
友達のリキヤを馬鹿にされ、しかも道具みたいに呼ばれたとなれば二人は黙っていられない。



「まあ計画を実行する前に、こいつが脱走して。あれやあれやと大慌てだな。まあ、結局は事起こして実力行使という訳でって。おっとお喋りが過ぎたな〜」



そこで男は気づいた。
エルフィアとエルヴィアから放たれている殺気に。
まだ戦闘の空気すら知らないこの幼い二人がここまでの殺気を放つとは信じられなかった。







「リキヤは、道具なんかじゃない!」



「リキヤは、実験体なんかじゃない・・・!」






エルフィアとエルヴィアは震えていた。
産まれて初めて感じた、抑えきれない怒り。
その手を見れば握りこぶしを作っていて、その顔を見れば目を見開き怒りの前歯を見せていた。



「「エルフィアとエルヴィアのリキヤを馬鹿にしないで!!」



腸(はらわた)まで煮える程の怒りを抱いたエルフィアとエルヴィア。
ここまで人を憎いと思ったのは初めてだ。
この男はエルフィアとエルヴィアの世界を邪魔する者。
大事な遊び相手であり、大事な友達、リキヤを傷つけようとする悪者だ。
こんな悪者は自分達が倒さなければならない。
そう決めたエルヴィアとエルフィアは容赦しなかった。
二人はその腕にありったけの魔力を溜め込んだ。
すぐに二人の両手から膨大な魔力玉が現れ、それを男へと向けて投げ放った。

「っ!?」

男はとっさの判断で真横へと飛んだ。
魔力玉は男の肩を掠め、壁へとぶち当たり大きなクレーターを作り出した。


「っち!! ガキだと思って油断しちまったか・・・!!」


流石はラスカバース家の人間か、と男はぼやいだ。
だが所詮、3人だけ。
こうなれば数で勝負だ。

「出番だ!!」

男が声を挙げるとあちこちから数人の兵士らしき男らが現れた。
いかつい兵装で身を包み、エルフィア達へと襲い掛かろうとする。

「逃ゲる・・・!!」 

そう呟くとリキヤはエルフィアとエルヴィアを抱えて走り出した。
その後を追おうと兵士らが動いたが、それよりも早くリキヤは駆け抜け、屋敷の奥へと消えていった。





「っち。賢明だなおい・・。追うのは止めとけ」



男が兵士らにそう命令した。
思考が獣並みになっても本能で判断する。
これでは命令通り、あいつらを生け捕りにするのは無理だ。


「まあ良いか。・・・手こずって死んじまったって事にすりゃ・・・」


余計な労力を使いたくはない。
それにこの屋敷を含め、その周辺一帯は焼け落ちる予定だ。
見逃した理由はどうとでも付く。


「じゃ、後片付けはお任せしますよっと」


回れ右をし、男はラルカバーズ屋敷を後にした。
そして屋敷の外には旗を掲げた一団が居座っていて、その旗には教団の紋章があった。






♢♢♢♢♢♢♢♢♢





焦げ臭い匂いがする、と思った時は壁や床に火の手が回っていた後だ。
どうやらあいつらが屋敷に火を放ったらしい。
煙が鼻や口に入り込んできて三人はゴホゴホとせき込んだ。




『ガラガラッ!!』



天井の一部が崩れ、通路が塞がれてしまった。
その先は裏口へと続いているのだがこれでは進めない。

「俺、ヤる・・・!!」

リキヤはエルフィアとエルヴィアを下すと、まだ焼けていない柱と柱を掴み、歯を食いしばりながら持ち上げた。


「ぬ、ウっ・・・!!!」


するとエルフィア達の体格であれば通れる程の小さな隙間が出来上がった。
「エルヴィア、行って!!」
「うん・・!」
最初にエルヴィアがその隙間を通り、次にエルフィアが通り、二人は無事に向こう側へと抜けられた。
「リキヤ、早く!!」
そう言いエルフィアは手を伸ばそうとするが、リキヤは首を横に振った。


「エル、ヴィア・・・! エル、フィア・・・!! 逃げ、ル・・・!!」


見ればリキヤの腕がプルプルと震えている。
あの力持ちであるリキヤがその腕を震えさせているのだから相当の重さなのだろう。
「リキヤッ!? そんな事言わないでっ!! エルフィア達を守るのがリキヤの役目でしょ!!」
「絶対ダメ・・・!! 一緒に逃げよう・・・!!」
二人は必死に説得するが、リキヤには無理だ。
その小さな隙間は体が大きいリキヤでは通り抜ける事は出来ないし、このまま支えながら二人がいる側へと行くのも出来ない。
ならばリキヤは迷わなかった。
逃がすのだ。
リキヤにとって一番大事な二人を。

「だカら、逃げル・・・!!」 

そう言い残したリキヤは柱から手を離した。
重力によって木材が崩れ落ち、小さな隙間は塞がり、リキヤと完全に分かれてしまった。



「リキヤッ〜〜〜!!!」


エルフィアは思わず柱を持ち上げようとするが、力が足りず全く動かせなかった。
その上、あちらこちらから火の手が挙がっていた。
このままでは二人とも焼け死んでしまうだろう。





『逃げルッ〜〜!!』




がれきの向こう側からリキヤの叫び声が聞こえた。
それを聞いたエルヴィアは歯を噛みしめた。
「行こう、エルフィア・・!!」
「で、でもっ!!」
「死んじゃダメ!!」
エルヴィアは必死の表情でエルフィアへと迫っていた。
それを見たエルフィアは察した。

―――エルヴィアも辛いのだ、と。

リキヤを見捨てたくないが、ここで自分達が死んでしまったらリキヤの行為が無駄になる。
エルフィアよりもリキヤが大好きなエルヴィアは、エルフィアよりも辛いはずだ。
だがそれを押し殺してエルフィアへと訴えているのだ。
ならば、エルフィアも押し殺さなければならない。
そして生きなければならない。


「絶対、絶対!! 絶対に死なないで!! 死んだら許さないからねっ!!」


そう言い残してエルフィアはエルヴィアと共に走っていった。
歯を食いしばって、握り拳を作りながら。






♢♢♢♢♢♢♢♢♢







屋敷の裏口から何とか逃げ出したエルフィアとエルヴィアは後ろを振り返った。




―――屋敷が燃えていた。
何もかも焼き尽くす様な炎によって、跡形もなく。
すぐに水の魔法で消そうにも炎の勢いがすさましく、これでは焼け石に水だった。
最も今の二人には火を消そうという考えも、何も考えられなかった。
お父様もお母様もいないし使用人達もいない。
何よりもリキヤがいない。
いつも傍にいてくれたリキヤが。
いつも子供の様に無邪気に喜ぶリキヤが。
エルフィアとエルヴィアにとって大切な友達、リキヤが。

「いや・・・!! いや・・・!!」

こんなにもみじめで何も出来ないという虚しさは初めてだ。
幾らラルカバーズ家という家名の力があろうとも、幾つも上級魔法を操れる神童であろうとも。
たった友達一人守れずに逃げ落ちてしまうなど何と情けない事か。

「もう・・・いや!! 何でよ、何でよ!! 確かにエルフィア悪い事したと思うけど!! でもお父様やお母様を巻き込むなんて!! それに、リキヤも巻き込むなんて!!」

冷静に考えればエルフィアの悪戯と今回の件に、因果関係というものはないのだが今のエルフィアにはそんな事など考えられなかった。
どうしようもない虚しさがエルフィアの感情を埋め尽くし、彼女の両目から涙を流させた。


「こんな力なんていらない!! うっぐ・・・!!」


エルフィアとエルヴィアは右肩を抑え、その場でうずくまった。 
「痛む、の・・・!! エルフィア」
「それはエルヴィアも、同じでしょ・・・!!」
それだけではない。
屋敷から脱出する際、飛び散る火の粉が体のあちらこちらに当たっていた。
まだ幼い彼女らにとって体も心も、ボロボロだった。
「駄目・・・。生きるの・・!! リキヤとの約束、果たすの・・・!!」
「うん。生きなきゃ・・・。絶対に・・・!!」
そう、まずは逃げるしかない。
だがこの体で逃げ切れるのだろうか。
怪我を負っているこの体では遠くに行く事は難しい。
ならばどうするべきか、とエルヴィアは考え、そして思いついた。



「ねえ、『秘密の花園』に行ってみない・・?」
「え? なんで、そこに?」
「『秘密の花園』なら薬の元が取れるから・・。作り方は分からないけど、飲んでみたり塗ってみたりとかして・・・。もしかしたら良くなるかも知れない・・」


何もしないでこのまま痛みに苦しむよりも、望みをかけて花園の薬に頼る。
今はそれしかないみたいだ。


「うん、分かった・・・。行こう、エルヴィア」





♢♢♢♢♢♢♢♢♢





重い鉄の扉にかけられた施錠らを持ち前の魔力で全て壊し、『秘密の花園』へと入ったエルフィアとエルヴィア。
辺りは見た事もない花々でいっぱいだった。
まだら模様の花に透明な花、更にねっとりした粘液に包まれた花までも。
「こんな所に入っていたんだ。お父様とお母さまは・・・」
「エルフィア、先に行こう・・・」
草木を搔き分け、エルフィアとエルヴィアは進んでいく。
入り口が草木によって見えなくなってきた所でエルヴィアはそれを嗅ぎ取った。






「ねえ・・・。甘い匂い、しない・・・?」
「甘い匂い?」




エルフィアはクンクンと鼻を鳴らした。
確かに匂ってくる。
鼻の奥を刺激する甘い匂いが。



「な、なんなのかな?」
「行って、みる・・・?」



エルヴィアの声にエルフィアは頷き、二人は匂いがする方へと進んでいった。
草木をかき分け花園の奥へ奥へと進んでいく二人。
そして辺りが開けた場所に出ると。



「うわあ・・・・」



一面が草に覆われているその中心に大きな薄緑色の花があった。
その大きさは異常で、エルフィアとエルヴィアが花の中に入っても有り余る程の大きさだ。
恐る恐るエルフィアとエルヴィアはその花に近寄ってみると甘い香りが更に強くなってくる。
花の中を覗けば、花の中に、はちみつが溜まっているのが分かった。
どうやら甘い匂いはこのはちみつからみたいだ。


「良い匂い・・・」
「うん、良い匂いね・・・」


嗅いでいくと何だか思考が蕩けてしまいそうだ。
こんなにも良い匂いだから味も良いのだろうか。
エルフィアは思わず、その手で花のはちみつをすくって飲んでみた。

「んぐ・・」

ドロリ、とした感触が口の中いっぱいに広がる。
その甘い味はどんな甘いお菓子よりも甘く、あっさりしていて美味しかった。
それに体が火照り癒されているかの様な気分だ。



「ん・・・♪」



美味しい。
こんなに美味しいはちみつを飲んだのは初めてだ。
乾いた心と傷つけた体に蜜がしみ込んで落ち着いてくる。


「エルヴィア、このはちみつ美味しいよ。飲んでみて」
「う、うん・・・」

エルヴィアは恐る恐る花のはちみつをすくい、それを飲んでみた。

「ん、ぐっ・・・!!」

甘くあっさりとした味がエルヴィアの舌に伝わり、喉を潤していく。
そして胃の中へと納まれば体全体にはちみつの美味しさが広がっていく。


「美味しい・・・」


エルフィアの言う通り、このはちみつは美味しかった。
「でしょ、でしょ!! きっとこれが薬の元になってるんだよ!! ならこれ飲めば元気になるんじゃないのかな!!」
「うん、きっとそうだと思う・・・」
「なら飲もう!! いっぱい、いっぱい飲んで!!」
「うん、うん・・!!」

すっかりはちみつの味を気に入った二人はそれを飲み続けた。
飲めば飲む程、心と体が癒されていく。
暖かくなって満たされていくかのような気分だ。
心に余裕が生まれ、エルフィアはふと考えた。
―――これが薬の元になるというなら塗っても良くなるんじゃないのだろうか、と。
そう考えたエルフィアはエルヴィアに顔を向けた。


「ねえ、これが薬の元なら体に塗れば良くなるじゃないの?」
「うん・・・。でも塗るよりも浸かる方がいいんじゃないかな・・・。ジパングでは温泉って言うのに入って傷を治すって。だからこれに浸かれば・・・」
「う、うん!! やってみよう!!」


そう考えた二人はいそいそと服を脱ぎ始めた。
お気に入りの白と黒が合わさった下着も脱ぎ捨て、靴も脱ぎ捨てば正真正銘の裸となった。
お風呂や着替えをする時にしか晒さない、産まれたままの姿。
エルフィアはふとエルヴィアの裸を見る。
まだ成熟していない肢体に、膨らみかけの乳房が目に付くし、そこから下を見れば小さな割れ目が一つ。
同じ女の子なのに何だか恥ずかしくなってくる。
「え、エルフィア・・・。なんだか、恥ずかしいね・・・・!」
「そんな恥ずかしいわけ・・・ないでしょ!! だって同じ女の子なんだし・・・」
けれど心臓がドクンドクンと高鳴っていた。
何でこんなに高鳴っているのだろうか、とエルフィアは不思議でたまらない。
だが今は傷を治す事が大事だ。
エルフィアとエルヴィアは花に溜まった、はちみつの液を見つめた。
一体どんな感触がするのだろうか。
そしてはちみつの液はどんな気持ちになるのだろうか。
好奇心と興奮と、そして少しの緊張感を持っていたエルフィアとエルヴィア。
「ちょっと粘ってするのかな?」
「なら手繋いで入る・・・?」
「う、うん!」
互いの手を取り合い、ゆっくりと足から花の蜜へと入りこんだ。



「「ん・・・!」」




ぬちゃ、とした感触が足全体に伝わってくる。
はちみつ風呂というのはこんなにも気持ち良いものなのか。
その上、足裏からは柔らかい花の弾力が伝ってきて、まるで羽毛のベッドに足を付けているみたいだ。
そしてゆっくりと膝を曲げ、胸元まで浸かった。














「はあ・・・♡」
「はあ・・・♡」







余りの心地よさに二人は思わず息を吐いた。
それも熱く、色っぽい息を。
「中々、気持ちいいね・・・。はちみつ風呂って」
「うん、こう浸かっていると案外いいかも、ね」
はちみつ風呂の心地よさに驚いたエルフィアとエルヴィア。
何だかこうして浸かっていると、体が熱くなってきた。
特に股座の、ぴっちりと閉ざされているはずの秘所が熱い。












「熱い・・・♡」
「熱い・・・♡」




エルフィアもエルヴィアも体をもじもじとさせていた。
見れば二人とも顔を赤らめ、潤んだ目をしていた。



「んんっ・・・♡」
「ん、んん・・・♡」



意識すればするほど熱くなって仕方ない。
そして秘所から伝わってくる熱さも。



「ん、んっ・・・・!!」



エルフィアが悶えていた。
股をもじもじとさせながら。
それを見たエルヴィアは、ふと考えた。


(苦しい、のかな・・・?)


何でエルフィアは苦しいのだろか。
それはアソコを触りたくても触れないからではないだろうか。
もしくはアソコを触る勇気がないのではないだろうか。
ならば、自分がやろう。
自分がエルフィアのアソコを触って楽にしてやろう。
そう考えたエルヴィアはその手でゆっくりとエルフィアの秘所へ伸ばし。
人差し指を立て、筋に沿って一撫でした。



『くちゅ♡』
「ひゃう!! エ、エルヴィア!?」


いきなりエルヴィアがそんな事してきたのだからエルフィアは思わずはしたない声を挙げてしまった。


「気持ち、良かった・・・?」


するとエルフィアは顔をそむけた。
気持ち良かった、などと言えるはずがなかった。
今まで感じた事のない感覚だった。
その途端にエルフィアの欲望は湧き上がってくる。
もっと味わってみたい。
そうだ、もっと味わおう。
もっともっと味わって楽しもう。
『性』という味を知ってしまったエルフィアはお返しとばかりにエルヴィアの秘所を指でなぞった。






『くちゅ♡』
「ひゃうう・・!!」
「な〜んだ、エルヴィアも感じやすいんだぁ・・・♡」


これは面白い『遊び』だ。
エルヴィアを弄れば可愛い声が聞ける。
そしていやらしい音が聞ける。
ならばもっと聞きたい。
エルヴィアのいやらしい声と音を。


『くちゅ♡ くちゅ♡』
「う、ひゃう・・!! エ、エルフィア・・・♡」
「べ〜だぁ♡ これは罰なんだよぉ♪ リキヤに、構ってばかりでぇ・・・。寂しかったんだからねぇ♡」


いつの間にかエルフィアはいつもの意地悪癖を発揮し、エルヴィアをいじめてきた。
人差し指でぎゅっと秘所を押し付け、下へ上へとなぞっていく。
単純ながらも効果あるテクニックだ。




「ほらぁ・・・♡ ほらぁ・・・」

『くちゅ♡ くちゅ♡』
「ひ、ひいっ♡ ひゃ、ひゃっ!?」





エルフィアのされるがまま、エルヴィアの秘所は弄られていた。
だがそんな事をされてエルヴィアは黙ってはいられなかった。



「な、なら・・・!!」



エルヴィアはまた人差し指をエルフィアの秘所へと向けた。






『くちゅ♡ くちゅ♡』
「ひ、ひゃうう!!」


情けないエルフィアのいやらしい声だ。
それも体をビクッとさせて挙げたのだから、その姿を見たエルヴィアはにやりと笑みを浮かべた。



「エルフィアも、感じてるんだぁ・・・・♪」



いつもの大人しいエルヴィアであれば、仕返しする事などあり得なかった。
だが今のエルヴィアは少し違う。
今のエルヴィアならこんな事だってしてしまうのだ。



『くちゅ♡ くちゅ♡ くちゅ♡』
「ひ、ひぎゅ!? ひ、ひひゃっ♡」
「ほらぁ・・・、感じてるぅ・・・!! 感じてる、エルフィア・・・♪」



初めてとは思えないテクニックだ。
正確に人差し指で秘所の入り口をなぞり、中指でクリを撫でる。
これはもう手馴れているとしか思えない。
されどエルフィアとて負ける訳にはいかなかった。



「こ、このぉ・・・♡」



『ぐちゅぐちゅ♡』
「ひやあぁあっ〜〜〜〜!!」

エルフィアがエルヴィアの秘所をまた弄った。
今度は人差し指で膣内へ入れ込んで。
そこからはもうお互い、秘所をいじり合った。




『ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅ♡』

『くちゃくちゃくちゃくちゃ♡』





弄る指先が止まらない。
性欲が止まらない。
幼い身でありながら、もう二人は性の味を知ってしまったのだ。
底なし沼の様にずぶずぶと沈んでいくしかない。


「ん、んはっ!? ひ、ひゃあ♡」
「ん、んん♡ んんんっ〜〜〜!!」


そんな事をし続けていれば、もう二人はイくしかなかった。


















「「ひゃううううっ〜〜〜〜!!!」」






二人のいやらしい悲鳴と共に、二人の秘所から愛液が飛び散った。
その愛液が花の蜜へと混ざり込み、溶け混ざっていく。
すると花の蜜は一層その匂いを増していく。



「はあ、はあ、はあ・・・・!!」
「はあ・・・。はあ・・・・!!」




荒い息を挙げ、快楽の余韻に浸っていた二人。
だがまだ足りない。







「足りない・・・」
「足りない・・・」




そう足りないのだ。
二人だけの世界なのにまだ足りないのだ。
いや、『二人だけ』じゃ足りない。








「分かってるよ、エルフィア」
「もう決まってるよね、エルヴィア」







二人にとって最も欲しい友達。
おしべとなってエルフィアとエルヴィアのつがいとなる大事な男。










「「リキヤが欲しい・・・」」






その瞬間、二人は『変わった』。
二人の肌が薄緑色に染められていく。
その上から緑色の草木が茂り、まるでタトゥーかの様に刻まれていく。
そして二人の頭に白い花―――百合の花が咲くと、もうエルフィアとエルフィアは人間ではなくなった。




「えへへっ・・・♪」
「えへへっ・・・♪」



新しく生まれ変わったエルフィアとエルヴィア。
その頭の中は彼の事でいっぱいだ。





「「リキヤ♡ リキヤ♡ リキヤ♡」」





何度も何度もその名を呼んでいた
今の二人には彼の事しか考えられなかったのだ。






♢♢♢♢♢♢♢♢♢




自分達にとって都合の悪い貴族らを拘束し、その屋敷らを不慮の事故と見せかけ焼き払い、その後自分達の息がかかった者らをそこに着かせる。
それが教団の立てていた計画だった。
されど、その作戦は失敗に終わった。
その理由は魔王軍―――正確に言えばその過激派を中心とした混合軍―――の手によって沈静化されていた。
何故魔王軍が出動したのか、理由は一つ。
教団の弾圧が行われるというその情報を事前に入手したからだ。
このままでは多くの人間の血が流れ、教団によって圧制を強いられてしまう。
そう判断した魔王軍は直ちに出動したのだ。
魔王軍の強さは圧倒的で教団やその関係者、全員取り押さえられていた。
勿論その中にはラルカバーズ家でエルフィア達と会った、あの飄々とした男もいた。



「っち・・・。これは、参ったな・・・」



焼け落ちたラルカバーズ家の跡地。
そこで膝を屈し、恨めしそうに男は首をうなだれていた。
「これで全員、かしら?」
『サキュバス』の一人がもう一人の『サキュバス』へと話しかけた。
「はい。教団に所属していた者、及び準ずる者は全員捉えました。ただ・・・」
そう言い『サキュバス』が後ろを振り返ると。










「ぐるる、るウウゥ・・・・・!!」



両手両足を床へと付け体制を低くし、リキヤは獣の様な唸り声で威嚇していた。
その姿はまるでよそ者に向けて威嚇する獣そのものだった。
「う、う〜ん。あの子が抵抗してるのね・・・」
「はい・・・。ねえ、落ち着いて。ねっ。私達、別に危害加えたりしないからね」
サキュバスの1人がなるべくリキヤを刺激しない様、優しい声で問いかけた。


「むう、うウ・・・!!」


だがリキヤはその鋭い目で彼女らを睨みつけていた。
その目は敵意に満ちた目だった。
何故リキヤがそんな目をしていたのか。
自分とは全く違う姿だったから、ではない。
例え魔物娘だろうが何だろうがエルフィアとエルヴィアを守る為にリキヤはあらゆる者達に敵意を見せているだけなのだ。
「エルフィア、エルヴィア守ル・・・!! だカら、通サない・・・!!」
「ねえ、その人達って貴方の何?」
「友、ダチッ!! 友ダチッ!! 守ル・・・・友ダチ!!」
「参ったわね、これは・・・」
人間の、特に男性に対して暴力などもっての他。 
加えてあの子には思い人がいるみたいだ。
となれば魔物娘である自分達ではあらゆる意味で彼に手を出すなど出来ない。
何とかなだめたい所ではあるが彼があの状態ではそれも難しい。
どうしたものかと二人は頭を悩ませていた時。




「ここは任せてちょうだい」




その声を聴いた『サキュバス』は思わず後ろを振り返った。
後ろにいたのは白い肌に銀色の翼を携えた妖艶な女性。
その者は『サキュバス』あれば誰もが知っている存在であった。
「えっ? 『リリム』様? 何故、こんな所に?」
『サキュバス』の困惑をよそに『リリム』はリキヤの近くへと歩み出た。



「ぐ、グるゥ・・!!」


戦う意思を見せない『リリム』に対しても、リキヤはうなり声を挙げ、威嚇していた。
そんな彼に対し、『リリム』は口を開いた。




「ねえ、『リキヤ』君・・・」


『リリム』は優しい声でリキヤの名を呼んだ。
それに対し、リキヤは唸り声を止めた。


「ん・・・?」



自分の名前を知っていた。
その事がリキヤにとって気になったのだ。
それを見た『リリム』は、また口を開いた。



「二人ならあの『花園』にいるわ。行ってみなさい」





それを聞いたリキヤは目を見張った。


「え・・?! お、オお・・?」
「大丈夫よ。貴方を待っているから」


そう言い『リリム』はにっこりと笑みを見せた。
それも母親の様な優しいほほ笑みだった。
そのほほ笑みを見てしまうとリキヤは悩んでしまった。


「ウ、う・・・・・・・・・」

リキヤは『リリム』に対して首を振り、そして走り去っていった。
その首の振り方はまるで『リリム』の言ったその言葉を信じるかの様だった。
その光景を呆然と見ていた『サキュバス』は思わず『リリム』に声をかけた。
「『リリム』様。何故、あの者の名を?」
「まあ、調べていたらね。・・・結果的にだけど・・・」
何か含んだもの言いだった。
結果的に、とは一体何なのだろうか?
思わず訪ねてみたかったが、彼女がそこまで言うのでならば訪ねてはいけない事なのだろうと『サキュバス』は思った。


「さて、と貴方達。後はお願いね。私は話があるから。それも、大事な話の・・・」


そう言い残し『リリム』はその場から去っていった。






♢♢♢♢♢♢♢♢♢





リキヤは初めて、『秘密の花園』へとやって来た。
重い鉄の扉をゆっくりと開くと、綺麗な花々が広がっていた。
まだら模様の花に透明な花、更にねっとりした粘液に包まれた花と見た事ない花ばかりだった。
それと同時に甘い香りが漂ってきた。


「ん、ン・・・?」


心地よく癒される様な甘い香りでずっと嗅いでみたいと思える程だ。
そして思わず誘われてしまいそうな匂いだった。


「ン・・・・・・」


リキヤはふらふらと花園の奥へと進んでいった。
エルフィアとエルヴィアの身も心配だが、今のリキヤにはこの匂いが気になって仕方ないのだ。
まるで自分の為に用意した様な甘い匂いでつい従ってしまうのだ。
誘われるがままリキヤは奥へ奥へと進んでいく。
草木をかき分け、見知らぬ花を見つけてもリキヤは進んでいった。
やがて辺りが開けた場所に到達し、そこでリキヤが見たものは願って止まないものだった。
































「あっ・・・。リキヤ・・・!! こっちに来てくれた・・・」
「もう、遅いじゃない!! ご主人様を待たせるなんて!! ペットなんだから真っ直ぐに来なさいよね!!」



そう言い花の蕾(つぼみ)に収まっていたエルフィアとエルヴィアは出迎えた。
それも満面の笑みで。


「エル、フィア・・・? エル、ヴィア・・・?」


そこにいたのはエルフィアとエルヴィアだが二人の、今の姿を見てリキヤは混乱した。
確かにその幼い顔たち、紫色の髪の毛、そして藍色の瞳は二人のものだ。
だがその皮膚の色が違う。
二人は肌色だったはずなのに今や緑色だった。
しかもその頭には花の髪飾りみたいなのがあって、二人の下半身は花の蜜に浸かっている。
どうしてそうなっているのかリキヤには分からなかった。




「ほらこっち来なさいよ。ご主人様を待たせたんだから責任とってよねぇ♪」
「リキヤ、こっちに来て・・・!! エルフィアとエルヴィアと・・・一緒に遊ぼう・・・♪」



楽しそうな笑みを見せながらエルフィアとエルヴィアは誘っていた。
その姿に対しリキヤは戸惑っていた。



「お、オおお・・・? 俺、そっチに・・・。来テ、も・・・?」



今までだったらリキヤはすぐに二人の元へ来るのだが今の二人は明らかに人間ではない。
そんな二人に近づいてもいいのだろうか。



「勿論来てもいいんだから。それとも、ご主人様の命令に逆らうのぉ?」
「リキヤ・・・。エルヴィアの命令守れないの・・・」



守りたい所ではあるが、この場合どうすれば良いのか分からないのだ。
リキヤはひたすら混乱し、頭を抱えていた。



「あ、アあ・・・? う、ウウん・・・?」



そんなリキヤに対して業を煮やしたエルフィアは叫んだ。













「もうじれったい!! とっととこっちに来なさいよぉ!!」



すると何処から植物の蔓(つる)が何本も飛んできてリキヤの両手首と両足首を拘束した。




「ぬ、ヌおっ!?」



絶妙な力加減でリキヤを傷つけず、それでいて離さない
急な事でリキヤは気が動転してしまい、振りほどこうとはしなかった。


「はいカモ〜ン、リキヤ♡」
「はやく・・・♪ はやく・・・♪」


待ちきれないと言わんばかりに体をソワソワさせていた。
二人の目は完全に発情したメスそのものだった。
蔓はリキヤを連れ、そのまま二人の元へと運んでいく。
そして蔓はリキヤを解き、はちみつが満たされた花の中へと落とした。


「う、ウぷ・・・!」


落ちた瞬間、リキヤの口にはちみつの液が入り込んでしまった。
その味はあっさりとしていて甘い、美味しい味だ。
だがリキヤの場合はそれだけではなかった。



「う、ウ、う・・・・?」



体が熱くなってきた。
お風呂に入って暖まった、という意味ではない。
ムラムラとした気持ちになって、特に下半身の分身が熱くなってきたのだ。
そんなリキヤに対してエルフィアとエルヴィアは詰め寄った。



「はい、捕まえったぁ〜〜〜♪」
「ふふふっ・・・♡ リキヤぁ・・・♡」


腕を広げ、リキヤを抱きしめるエルフィアとエルヴィア。
それに対してリキヤは抵抗しようという気になれなかった。
体が熱くて、頭がぼうっとしていたからだ。


「それじゃ先ずは味見ねぇ〜♪ っと、エルヴィアが先だよね♡」
「うん・・・♡ リキヤ、いただきます・・・!!」



エルヴィアはそのぷっくりとした唇をリキヤの唇へと添えた。


「ちゅ・・♡」


唇に暖かく柔らかい感触が走り、甘酸っぱい味が口の中いっぱいに広がっていく。
その上まだ未成熟の、少女の唇だ。
柔らかさが段違いでリキヤは気絶してしまいそうになった。




「あぐっ・・・♡ ん、んちゅうう・♡ れろっ・・・♡ ん、ずうう・・・♡ ちゅるるうう・・・♡」



エルヴィアが唇ですすり、その唾液でリキヤの唇を汚していく。
その淫らでいやらしい音は傍にいるエルフィアを興奮させた。



「ああん♡ すっごく美味しそうな光景!! エルフィア我慢出来ないよぉ〜〜〜!!」



股をもじもじと動かしながら涎を垂らし見つめていたエルフィア。



「なら、しちゃう・・・?」
「うんうん!! したいしたい!!」



エルヴィアを押しのけ、エルフィアはその唇をリキヤの唇へと付けた。



「む、むちゅうう!! ちゅ、ちゅぷ!! ちゅ、ちゅるうう〜〜〜♡ ちゅ、ちゅう・・・・!!」



また唇に暖かく柔らかい感触が走った。
それも今度はエルフィアの舌が口の中へと入ってきて、口の中全体を舐めまわしていた。
ぬめりとしたエルフィアの唾液が入り込んできて、口の中が酸っぱく感じた。



「んんんっ・・・!! ちゅ、ちゅぷっ!! ちゅぷ、ぷっ・・・!! ちゅる、ちゅうるうぅ・・・!!」



その熱い口づけにリキヤは何も言えなかった。
既にその快感によって理性がそぎ落とされていたからだ。
そしてエルフィアが口を離せば、エルフィアとリキヤの唾液が口を伝って虹色の架け橋を作り出した。


「ああ!! そういえばリキヤ、服着てる!! ダメ!! エルフィア達が裸なんだからリキヤも裸にならなきゃ♪」
「うん・・・!! リキヤ、裸にさせなきゃ・・・♪」


最早快楽のままに暴走するエルフィアとエルヴィアはリキヤの服を掴み脱がし始めた。
その脱がし方は荒く、ネクタイは生地の痛みなど無視した引っ張り方で解き、シャツはボタンが付けられているにも関わらず胸元の端と橋を掴んで引っぺがしたのだからボタンが弾け飛び、ズボンは股を割くかの様に引きちぎった。
そして露になるのはリキヤの裸体。
ガタイが良い筋肉質の体でその下半身を見れば天へとそそり立つ、猛々しいモノが。



「いや〜〜〜んんっ♡ これがリキヤの、おちんぽぉ〜〜♡ おちんぽなのぉ〜〜〜!!」
「うわぁ・・・♡ すんごぉい・・・♡ ガッチガチにぼっきしてるぅ・・・♡」



うっとりとした目でエルフィアとエルヴィアはリキヤの勃起したイチモツを見つめていた。
その太さはバナナの様に太く、先を見れば皮からはみ出た亀頭が見えていた。
青筋を浮き出させ、ビクビクと動いているのは興奮している証だ。
されどリキヤにはそれが分からなかった。
ただこういう時の場合、多分見せるべきものではないのではと考えていた。


「あ、アが・・・!? そ、ソれ・・? 見るモの、じゃ・・・?」


興奮する体を抑えながらリキヤは訴えたが、それは無駄だった。


「何言ってるのぉ〜〜♪ こんなにおっきいおちんぽはねぇ、出して挙げなきゃ苦しいんだよぉ〜〜!!」
「うん・・・♡ いっぱい出させて挙げるぅ・・・♡」


性の事で頭がいっぱいなエルフィアとエルヴィアは互いの手をリキヤのイチモツへと合わせ掴み、そのまましごき始めた。




『シュコ♡ シュコ♡ シュコ♡ シュコ♡』



幼い手のひらがたるんだ皮を掴み、ピストン運動の如くしごいていく。
一定のリズムを刻み、それでいて効果的な刺激を与え続ける。



「ねえねえ♪ 気持ち良いでしょ♪ ちっちゃな女の子にぃ、ゴシゴシされてぇ〜〜」
「ふふふ・・・♪ 気持ちよくなっていいよぉ・・・♡ 白いの、ドビュドビュって出してもいいよぉ・・・♡」



そう言い甘い言葉で責めてくる姉妹にリキヤはどうする事も出来ない。
リキヤは早くも荒い息を吐きながら感じていた。



「あ、あがっ!! お、オおっ!! エ、エル・・!!」



リキヤは何とかその名前を呼ぼうとするが下半身から感じてくる快感で上手く言えない。
その上リキヤの顔が赤く火照り、ガクガクと膝を鳴らしていた。
となればもうリキヤにはまともに話す事は出来なかった。



「ふふふ♪ もう、そんなに感じちゃってぇ〜〜♪ ほらぁ、出しちゃえっ!! 出しちゃってよねえ!!」
「我慢なんてしないで・・・♡ いっぱい出してぇ、楽になろうぅ・・・♡」



しごくスピードが速くなり、甘い言葉で更に攻めてくる。
となればイチモツの亀頭からは透明な液体が漏れ始めていた。



「あははっ♡ お汁漏らしてるぅ〜!! すんごく苦しそうで堪らないんだぁ〜〜!!」
「ならもっともっと、も〜っと感じさせて挙げるっ・・・♡」



そう言いエルフィアとエルヴィアは、その舌でリキヤの乳首を舐め始めた。
リキヤの乳首は薄い桃色で女性の乳首の様にぷっくりとはしていないが、敏感な所である事に変わりない。



「はむっ♡ れろっ♡ ちゅ、ちゅぷりゅるう♡ ちゅ、ぷっ♡」
「く、ちゅぷる・・・♡ ちゅ、じゅるう・・・♡ れろっ♡」



棒にくっ付いたりんご飴を舐めまわす様に、舌をいやらしく舐めていたエルフィアとエルヴィア。
その快楽にリキヤは嫌でも感じてしまう。



「あ、アああっ!? そ、ソこはっ・・・!! そこ、ハ・・・!!」



だが二人は止めない。


「ちゅる、ちゅぶちゅぶっ〜〜〜!!」
「ちゅ、ちゅるううう、るううう〜〜〜!!」


次にはその口でリキヤの乳首に吸い付いてきた。
まるで乳を吸うかの様な吸い方でこそばゆい感触が乳首から伝わってくる。


「あ、アっ!? お、オおおっ!!」


獣の様な叫び声を挙げたリキヤ。
幼い二人から乳首攻めされれば、もうリキヤの快感は最高潮だった。






『シュシュシュシュシュ♡』




止まらぬ手コキに止まぬ乳首攻め。
既にリキヤのイチモツははち切れんばかりに膨らみ、幾筋もの血管を浮き出させていた。




「あ、アが!! お、おオおォ〜〜〜〜〜〜!!!」


ただ叫ぶしかないリキヤの耳元で甘い声を囁く。



「だしちゃぇ♪ ぴゅるぴゅるぅって、いっぱいいぃ〜〜〜!!」
「ザーメン・・・♡ 白いせーし、ぶちまけちゃってリキヤぁ・・・♡」



そんな事をされたらもう、リキヤは限界だった――――















『びゅく、びゅる、びゅりゅううう〜〜〜〜!!』



イチモツが一瞬膨らんだと思ったら、その次には鈴口から精液を噴き出した。
玉袋に溜まっていた粘り気ある子種汁が吐き出されていく。
その精液は、はちみつの液へと混ざり込んで、薄く消えていく。
そしてエルフィアとエルヴィアの手には精液がべったりと付いていた。


「わあぁ・・・♡ いっぱい、出たねぇ・・・♡ リキヤぁ・・・♡」
「ふふふふっ♪ すんごい出たぁ♡ 褒めてあげるぅ〜〜!!」


うっとりとした目で手についた精液を見つめていたエルフィアとエルヴィア。

「あ、ア・・・。あアあ・・・・・」

リキヤは頭の中が真っ白となっていた。
リキヤにとって初めてとなる絶頂へと至った快感。
その表情を見れば心ここにあらずで、今でも倒れ込みそうだった。
けれどまだリキヤのイチモツは天高くそそり立っていた。
その光景を見たエルフィアとエルヴィアはいやらしい笑みを浮かべていた。


「ね、ねえっ!! 入れたいよねぇ♡ もう抑えきれないぐらいバキバキなんだよねぇ♡」
「ううん・・・♪ 出させて挙げる、出して挙げるぅ・・・♪ 出ないとリキヤ、苦しそうだものぉ・・・♡」


勝手にそう決めつけたエルフィアとエルヴィアは指先を使って自身の股へと手を伸ばす。








『くぱぁ・・♡』



指を使って膣の肉を開くとはちみつの様な粘液が垂れ落ちた。
その中は桃色の肉壁で覆われていて、ビクビクと引くついていた。
女性の、それもまだ幼い膣の味という禁断の快楽。
リキヤはそれを今、味わう事になる。

「どっちにするぅ? ああ、やっぱりエルヴィアからだもんねぇ〜♡ リキヤの飼い主なんだからぁ〜〜」
「うん・・・♡ リキヤぁ・・・♡ もっともっと、ザーメン出してねぇ・・♡」

そう言いエルフィアとエルヴィアはリキヤの体を花びらへと押し付け、尻もちを付けた状態にさせた。
そうなればリキヤの下半身、特にイチモツは蜜へと浸かってしまった。
蜜は尿道へと流れ込み、リキヤのイチモツを更に勃起させてしまう。
そこへエルヴィアがまたがり、濡れぼそったその秘所をリキヤのイチモツへと定めた。



「えへへっ・・・♡ リキヤぁ・・・。いただき、ますぅ・・♪」



そのまま一気に深く飲み込もうと、エルヴィアは腰を降ろした――――










『じゅぶ、ぶるるうぅ〜〜〜!!』



それは一瞬だった。
破れたかの様な感触が走ったと思ったら、既に子宮の入り口へ亀頭がキスをしていた。
その瞬間リキヤの体に凄まじい快感が襲い掛かる。



「ぬ、ヌおっ!! お、おオおオおおおッ!! おおッ!!」



だらしなく舌を垂らしよがり狂うリキヤに対し、エルヴィアは快感を噛みしめ舌なめずりをした。


「ん、んはぁ・・・♡ リキヤと、一つになっちゃったぁ・・・♡ だ、だめぇ・・・♪ 我慢、出来ないぃ・・・♪」


普段の大人しい姿から考えられない程、エルヴィアはだらしない表情を浮かべていた。
そしてエルヴィアは本能の赴くがまま、腰を上下へと振り回し始める。



『パンパンパンパンパンパンッ!!』



貪欲にリキヤのイチモツへと喰らいつき、精液を絞り出そうとするエルヴィアの膣肉。
そして精液はまだかまだかとエルヴィアの子宮はひくひくと動いていた。
処女膜を破られ、その痛みがまだ残っているというのに、エルヴィアはそんな事お構いなしに腰を振り回していた。


「ひ、ひやぁ・・・♪ リキヤぁ・・・♡ 出すのぉ・・・♡ ザーメン、出すのぉ・・・!!」


舌を垂らし、リキヤに抱き着くエルヴィア。
幼いエルヴィアにまたがれ、思うがままに絞られる青年のリキヤ。
その光景はまさに背徳的で欲情そそる光景だった。




『パンパンパンパンパンパンッ!!』


「もうっ♪ じっと見ているだけじゃつまんないっ!! ならリキヤの唇また頂いちゃおう♪」



見つめていたエルフィアは堪らず、その唇をリキヤの唇へとくっ付けた。



「はむっ!! ん、んむううちゅっ♡ ちゅ、じゅるるうっ♡」



また柔らかい感触といやらしい音が鳴り響き、リキヤに更なる快感を与える。



「ん、ンぐっ・・!? ンんんんンっ〜〜〜!!!」



エルヴィアの膣肉によってイチモツを刺激され、エルフィアの唇によって甘酸っぱい味が口の中へと広がっていく。
そんな過剰なまでに刺激されれば、リキヤはもう限界だった。



「だぁめぇ・・・!! もういっちゃうのぉ・・・!!



エルヴィアの絶頂と共に、それが来た―――――

















『びゅく、びゅるうううぅううぅ〜〜!!』



リキヤのイチモツがまた唸りを挙げた。
尿道を伝って精液が吐き出され、エルヴィアの子宮奥深くへと注がれていく。
それを満足げな表情で味わっていくエルヴィア。


「ん、んん・・・♡ 入ってくるぅ・・・♡ リキヤの、せーしぃ・・・♡」


幼いにも関わらず、もう膣内に射精される快感を覚えたエルヴィア。
もう彼女は立派な、『女』であった。
やがてイチモツの唸りが収まり、リキヤの射精が終わった。

「ぷ、はあっ・・・♡」

恍惚とした表情で腰を挙げると、秘所からリキヤのイチモツがずり落ちた。
そしてエルヴィアの秘所からはリキヤの熱い精液が垂れ落ちる。
それは何とも背徳的な光景だった。

「ああん!! もう我慢できないぃ〜〜!! 次はエルフィアの番っ♪ エルフィアの番っ!!」

性の事しか頭になく、尚且つエルヴィアがリキヤと交わったのだからエルフィアはもう我慢など出来ない。
エルヴィアの体を押しのけ、エルフィアはリキヤの上へとまたがった。



「あ、アが・・!! で、デな・・・い!!」



もう萎えたという事を伝えようとしたリキヤだが、リキヤのイチモツは変わらず固く勃起したままだ。
それを見たら誰とて、嘘だ言うものなのに。



「あははっ♪ 何言ってるのぉ♡ もっともっと出せるじゃないぃ・・♪ いっぱい出すのぉ♡」



聞く耳も持たないエルフィアは間髪入れず、その腰を降ろしリキヤのイチモツを飲み込んだ――――












『ちゅぶ、ちゅぶぶうっ!!』

処女膜が引きちぎれる音と共に、イチモツを膣内へと飲み込んだエルフィア。


「んぎいひいいぃいい〜〜〜!!! これが、これがっ!! 入れられる快感っ〜〜!!」


飲み込んだ瞬間、背中を逸らせ、エルフィアが快感の声を挙げた。
膣内に感じてくる、リキヤのイチモツが。
そして子宮の入り口近くで亀頭がキスをしている。
それが最高にたまらない。
秘所から血が流れているにも関わらず、エルフィアもまたエルヴィアと同じく腰を動かし始めた。









『パンパンパンパンパンッ!!』




「あ、ああん♥ エルフィアの、じゃ収まらないぃ〜〜♥ こんなにぶっといのに犯されてるううぅ〜〜♥」



何度も何度も子宮の入り口へキスされる快感。
それが気持ちよく、快感に酔いしれるエルフィア。
その姿にエルヴィアは羨ましそうに見つめていた。




「むうぅ・・・♡ そんなに、気持ちいいのぉ・・・♡  また・・♡ またっ・・・♡」



エルヴィアはもじもじと太ももを擦っていた。
またリキヤと交わりたいという欲望が抑えきれないのだ。
だが今はエルフィアの番だ。
エルフィアが存分に味わう時間なのだ。
だから我慢していた。




「う、動かすっ!! 動かしてぇ♡ せーし、ザーメン!! いっぱい出すのぉおおぉ〜〜!!」




『パンパンパンパンパンパンッ!!』



エルヴィアが激しく体を上下へと動かした。
その度にリキヤのイチモツは膣肉に締め付けられ、そして膣肉から解放される。
それを何度も何度も味合わせられるのだ。
男として最高の快楽だった。




「あ、アがガが!? お、オおおオ・・・!?」



また今まで感じた事のない快感がリキヤの体を襲ってくる。
そう、2回も味わっているのだからリキヤにはもう分かる。
これが絶頂へと至るという事が―――――




















『どびゅ、びゅる、びゅくるうううぅ〜〜〜〜〜!!』


また吐き出されるリキヤの熱い精液。
今度はエルフィアの膣内からあふれ出て、
それに対しリキヤはもう何も考えられなかった。
ただただエルフィアとエルヴィアから与えられる未知の快感に酔いしれていた。 

「ぷはっ・・・♡ す、っごく濃いのがぁ・・・♡」
「う〜んっ・・・。エルフィア、満足してる・・・・。それならエルヴィアも、またもらいたい・・・♡」

そう言いエルヴィアはリキヤの顔を覗いた。
だがリキヤは反応しなかった。


「あれれぇ〜。リキヤ、もう終わりなのぉ♡」
「リキヤ・・・。もっとエルヴィアと遊びましょう・・・♡」


エルヴィアとエルフィアはそう迫るが、それでもリキヤは反応しなかった。
余りの快感で意識を失ってしまったからだ。
まるで眠っているかの様に目を閉じ、ぐったりと花びらに背を持たれていた。


「あっ、そっか〜。疲れちゃったから寝ちゃったのねぇ」
「むう・・・。リキヤ、力持ちなのにすぐ疲れたの・・・」


ふくれっ面でリキヤを見つめるエルフィアとエルヴィアだが、次にはにんまりと笑みを浮かべてリキヤの手を繋いだ。


「でも・・・・。これからは、3人で仲良く暮らそうね、リキヤ・・・♪」
「そうそう♥ リキヤは、エルフィアとエルヴィアだけのものなんだからぁ〜〜♥」


そう言いエルフィアとエルヴィアは互いの頬をリキヤの頬へと擦りつけていた。
リキヤへの愛情を示すかの様に、そして二度と離さない様に。






「「えへっ♪ えへへへっ〜〜〜♪」」




二人はだらしない笑みを浮かべながらリキヤを抱きしめた。
その光景は主人とその使用人ではなく、それこそ生涯の伴侶であった。






♢♢♢♢♢♢♢♢♢





教団の手によって数多くの者が捉えられ、教団地下の檻の中へと囚われていた。
その中にはラルカバーズ家の使用人も、そしてその当主と夫人もいた。
「まさかあなた達がここに隠れていたとはね・・・」
「・・・・許されざる罪ではございませぬ。如何なる処遇も受けますゆえ」
「私も同じです。ですが娘達は、エルフィアとエルヴィアには非がありません。どうかあの二人だけは見逃してください・・・」
そう言いエルフィアとエルヴィアの両親は『リリス』に対し頭を下げた。
魔王軍の手によって囚われていた人達は全員解放され、皆自由になれた事に喜んでいる中、二人は喜びもせず真剣な顔だった。
「ええ。魔界から研究用の花が数点、何よりも『リリラウネ』の花を持ち逃げした・・・。 普通であれば重い罪に問われるけれど・・・」
数年前、魔界にある植物研究所から花が数点ほど盗まれるという事件があった。
そしてその盗まれた花の中には『リリラウネ』の花が交ざっていたのだ。
『アルラウネ』の変異種であり、その生態が未だによく分かっていない貴重な花であったが当時の二人はそこまで重要な花だとは思っていなかった。
と言うもの盗んだ際には何処にでもある小さな花だったからだ。
だが育てている内にその花が大きくなっていき、今ではあそこまで巨大な大輪を咲かせてしまった。
その花の花粉や蜜から作られた薬の効能はすざましく、無名であったラルカバーズの地位を挙げた要因の一つでもあった。
けれどその花は元より、あの花園にある花全てが魔界から持ち去った品だ。
当然、人様に言える様な品物でなくもし知れたら教団からの弾圧を受けるだろう。
だからその力が知られぬよう花の秘密を二人だけのものとし、その花は元より魔界の花らを知られぬ様に隠してきたのだ。
「・・・ねえ一つ聞かせて欲しいの。あなた達は見逃していたでしょ。あの子、確かリキヤって名前だっけ。リキヤって子が何処の人かも分からないのに、貴方達は大事な娘達の傍にいたのを許した・・・。それは何故?」
「あのリキヤという子があの子達にとって幸せの種になるのであれば、私達は許したのです」
「最初は驚き、警戒はしていましたが・・・。あの者は危害を加えないと分かればこのままにさせておきました。けれどそれ以上の関係を持つとなると、身分の違いがありますし何より・・・あの者は身元不明だと聞かされておりますゆえ」
花を盗んだ一件とは何ら関係ない話ではあるが、二人はそれに対して指摘しなかった。
「じゃ貴方達は、許さないの? 娘達とあの子との関係を」
リリスの問いに二人は首を横に振った。
「それは許します。あの子達の幸せを奪う事などあってはならない事です」
「私も、エルヴィアとエルフィアの我がままに付き合えるのはあの子ぐらいです」
それを聞けて満足だった。
二人の返答に『リリス』はゆっくりと首を頷けた。


「・・・なら交換条件、という訳じゃないけれど。私からのお願いよ。三人をこのままにさせて挙げて。私達にとって最も幸せなのは愛する人同士との時間・・・。それを邪魔するのは無粋にも程がある。だから、ね・・・」
「罪を・・・お許しになると?」
信じられないと言わんばかりにエルフィアとエルヴィアの父は呟いた。
「私はそこまでの権限はないし、第一あの子達の幸せを考えたら、無かった事にするのが得策だもの・・・」
「・・・・申し訳・・・ございませんでした・・・」


二人は深々と頭を下げ、謝罪した。
それは自分達の愚かさに対して、そして『リリス』への感謝に対しての謝罪だった。


「さあ、もう教団や貴族達に怯える日々は終わりよ。これからは優しさに満ち溢れた時間が訪れるのだからぁ♡」









♢♢♢♢♢♢♢♢♢









「はい、はちみつたっぷりのバターロール。落とさない様にね」
「はイ・・・。ありガとウ、ござイまス・・・!!」



そう言いリキヤはお金を払い、お辞儀をした。
リキヤが今いるのはエルヴィアから教わったパン屋さんだ。
そこに行ってバターロールを買って来るようお願いされたのだ。
リキヤが店から出ると至る所で愛の言葉を投げつける男女の姿が見えた。



「ねえねえ、後でいっぱい中出しさせてぇ〜〜♡」
「今日はパイズリやって、あ・げ・る〜〜」
「24時間種付けやりましょうよぉ〜〜」


少し前だったらこんな卑猥な台詞を聞いたら、道行く人は顔をしかめていたであろう。
だがこの地域一帯が魔界と化した今、風俗だとか地位だとか関係ない。
悠久に幸せを受けられる、夢の様な世界。
リキヤはそれがどんなに幸せなのかよく分からなかったが、少なくとも自分は今幸せだと感じていた。





『ギュ・・・・!!』




「ンッ・・・!!」


リキヤの手首に巻き付けられた緑色のツルがうごめいた。
早く帰ってきて、というメッセージだ。
二人を待たせる訳にはいかない。
リキヤは駆け足で走っていった。











♢♢♢♢♢♢♢♢♢


















元『ラルカバーズ』家の屋敷があった場所は修繕され、以前と変わらない屋敷と庭に戻っていた。
リキヤがその門を開け、中に入ると見覚えある者と出くわした。


「あっ、リキヤ君。久しぶりですね」
「バアル・・・さン。オひさし・・・・ぶり、デす・・」


庭の手入れをしていたバアルに出くわし、すぐにリキヤはお辞儀をした。
バアルは相変わらずラスカバース家の使用人として仕えていた。
本人曰く、自分にとって居心地よい場所だからという事らしい。
「それは・・・? ああ、頼まれたのですね。お二人から」
リキヤの手に持っている紙袋を見たバアルはすぐに察した。
「全く、リキヤ君ぐらいしか付き合えないと思うよ。あの二人とは」
「つキ、あウ・・・?」
「平たく言えばお似合いの夫婦、みたいなものだよ」
「ふウ、ふ・・・?」
バアルの言っている事が分からなかった。
リキヤにとって特別な事をしている訳でなく、単純に二人と仲良しであるだけ。
何故バアルは夫婦という言葉を使うのだろうか。
それほど深い関係なのだろうか。
「っと、無駄話は余計だったね。さっさと行っておいて。二人が待っているはずだよ」
と同時にリキヤの手首に巻き付いていたツルがまたうごめいた。
先ほどよりも強く、リキヤの肌へと食い込む程に。
どうやら相当ご立腹の様だ。


「お、オおっ!? お、俺・・! 早ク、行ク!!」


一刻も早く二人の元に来なければならない。
そう考えたリキヤはすぐに走っていった。



「ふふっ・・・。ほんと、良い子だよ・・」



バアルは笑みを浮かべながらその後ろ姿を見つめていた。







♢♢♢♢♢♢♢♢





リキヤは秘密の花園に入る為の扉へとたどり着いた。
扉は重い鉄壁から木材で出来た質素な物へと変わっていたがここに入れるのはリキヤと、エルヴィアとエルフィアの両親だけだった。
リキヤがゆっくりと扉を開き、中に入ると草木らがざわめきだした。
まるでリキヤを待ちかねていたかの様に。
と同時に周囲から緑色の蔓らが飛び出し、リキヤの両手首、両足首に絡まりついた。
この蔓は一体何なのかリキヤには分かっていたから、リキヤは抵抗しなかった。
蔓はゆっくりと、リキヤを傷つけぬ様に運んでいく。
そして蔓達に運ばれ、着いた先に待っていたのはリキヤにとってご主人様である二人。




「リキヤ・・・。少し、遅かった・・・!!」
「リキヤ、ご主人様を随分と待たせたのねぇ?」




リキヤの主、エルフィアとエルヴィアだ。
それもふくれっ面をしながらエルフィアとエルヴィアはリキヤの顔へと詰め寄った。


「う、ウう・・・。ごメん、ナさい・・・」



リキヤは謝罪したがエルフィアとエルヴィアは許さなかった。
こんなに待たせたのだからリキヤにとことん遊んでもらうのだ。
気持ちよくて幸せになりそうな、『遊び』を一緒に。



「なら今日はぁ・・・・♥ お尻で前立腺刺激コースにしちゃおうかなぁ〜〜♪ エルフィアのおまんこにいっぱい中出ししてもらうんだからぁ♥」
「駄目・・・今日はたっぷり愛撫でコース♥ いっぱいザーメン吹き出してエルヴィアが満足するまでぇ・・♥」



そう言いエルフィアとエルヴィアはリキヤへと迫っていた。
エルフィアとエルヴィアの『遊び』は止まる事はない。
毎日が幸せだ。
大好きなリキヤと一緒にいられる。
それがどんなに素晴らしい事か。
これからも変わらない。








「「ずっとエルフィアとエルヴィアの傍にいてね。リ・キ・ヤ♡」」






エルフィアとエルヴィアは互いの頬をリキヤの頬へとこすり付け、リキヤへの愛情表現を示していた。
それに対しリキヤは力強く頷いた。




「う、ウん・・!! 俺、ずっとイる!! エル、フィアとエル、ヴィアと・・・一緒ニ!!」




こうして名もなき一人の純粋な青年は、二人の幼い姉妹によって可愛がられるのだった。
使用人として、もしくは伴侶として・・・。








19/07/05 22:46更新 / リュウカ

■作者メッセージ
ここまでお読みいただきありがとうございました。
仕事や寝る際、もしくは遊んでいる際にふと

『リリラウネ×姉妹×ロリってイケるんじゃね?』

なんて事思いついて、
んで忠犬みたいな子がいて仲良くさせたら面白いんじゃないの?
とか色々思いついて書いてみたら結構長文になってしまいましたね・・・。
いつも長くなってすいません。
ですけど魅力は詰め込んだと思いますのでお楽しみ頂けたら嬉しいです。
さて、次は短く書きたいですけれども次もまた長くなるかも・・・

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