読切小説
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愛欲の目覚め、生への耽溺
 食欲。性欲。睡眠欲。
 言うまでもなく人間の三大欲求である。
 三大の名に恥じず、大半の人間に対して絶大な吸引力を誇るこれらの欲望だが、しかしながらカクテルの如く、これら素晴らしき三つの誘惑を複数同時に味わうのはなかなかに難しいことである。
 睡眠欲を例にとってみれば分かるだろう。寝ながらセックスは出来ないし、寝ながら飯を食うことは出来ない。
 何が言いたいのかというと。

「んっ……はぁ、はぁ、はぁ……んむ……」

 美女のオナニーを鑑賞しながら飯は食えんということだ。

 先日、俺はこの、俺の目の前で自慰に耽るマンティスに襲われ、逆レイプされた。
 素早い動きと鋭利な鎌でたちまちのうちに俺を組み伏せ衣服を切り裂き、無理矢理犯されているというのにムチムチしたエロイ太股の甘美な感触に不覚ながら硬くなってしまっていた俺の肉棒を咥え込むその一瞬前まではまさしく昆虫というべき鉄面皮を誇った彼女が、いざ挿入した瞬間頬を赤く染め、劣情に濡れた喘ぎ声を上げはじめたのは忘れがたい。
 
 その日以来、彼女は俺を巣らしき縦穴に連れ込み、全く解放する様子が無い。時々外に出て食料を調達してきてくれる(俺のためにわざわざ、人里まで行って狩った獲物と野菜やら加工肉やらを交換して来てくれているらしい)以外はほとんどずっと俺にくっつき、いちゃいちゃしたがるのだ。
 愛玩動物と何ら変わらない、屈辱的な有様だと罵る輩もおろうが、俺自身は全く気にしていなかった。
 この巣穴は前から彼女がねぐらとして使用していたものらしく、底に草が敷き詰められていたり、昼夜通して気温があまり変わらなかったりで、なかなか居心地が良い。それに加えて、多大な性欲を持て余したむちむちお姉さんが毎日甲斐甲斐しくお世話してくれるのだから、逃れたいと思う方が男として不自然とすら思うわけだ。
 だから、空腹を押して、股間をもどかしげにまさぐりながら潤んだ目でこっちを見つめるマンティスさんの無言の訴えに応えてあげたくなったとしても、何らおかしいことはない、筈だ。

「……しょうがないな」

 食べていた肉を置いて、服を脱ぐ。相変わらずの無表情だが、セックスが出来ると知ったマンティスの顔はやはりどこか嬉しそうな印象を与えた。
 ツリ目美人のオナニーショウを魅せつけられて、俺のモノは既に勃ってしまっている。臨戦態勢のそれを受け入れるのが待ちきれないとばかりに、マンティスさんが跨ってきた。
 両膝を突き、横たわった俺の脇の下に手を付き、女性器で狙いを定める。最近破瓜を迎えたばかりのそれはしかし、ここしばらくの頻繁な使用によって隠されていた貪婪さを急速に開花させつつあった。
 愛液を漏らして挿入を嘆願する淫唇を、亀頭にそっと合わせる。たったそれだけ、粘膜同士が触れ合っただけで、俺の上のマンティスさんは微かに喘いだ。
 初めて俺とセックスしたあの日から、もう何度も味わったというのに、未だに性の快楽というものに慣れないらしい。寧ろ俺を抱けば抱くほど、彼女は感じやすく、我慢弱くなっていっているような印象すら有る。
 雨上がりの地面のようにぐちゃぐちゃに濡れた陰唇にくちづけられ、俺の敏感な尿道付近に快楽の電流が走る。思わず腰を引きかけるが、仰向けに寝転んだ状態ではどうしようもない。引力に任せて腰を落とし、肉棒を飲み込むマンティスさんに、被食者たる俺は抵抗のしようもない。
 一気に根元まで咥え込まれて、淫水をまとった肉襞の生み出す強烈な摩擦に息を飲む。そのまま毎晩のことのように、ガンガン腰を振ってくるのかと思ったが、少し待っても動きがない。怪訝に思ってマンティスさんの顔を見てみると、今までにないほど緩んだ、淫蕩そのものといった表情があった。

「もしかして、入れただけでイったのか?」
「……」 

 相変わらずの無言。しかし、頬を真っ赤に染めて口を半開きにし、唇の端から涎すら見えるだらしない表情が何よりも雄弁に物語ってくれていた。熱に浮かされたような、半分焦点の合わない目をしたマンティスさんが、荒い息を突きながら腰振りを始める。
 森の暗殺者との異名に違わず、引き締まった無駄な肉の無い、それでいてふんわりとした女性らしい丸みや柔らかさを保ったマンティスさんの身体が生み出す肉筒の苛烈な締め付けは、溢れかえる愛蜜によって滑りを増し、俺から精を搾り啜ろうとする。
 組み敷かれ一方的に男性器を嫐られる状況に妖しい快感を覚えつつあった俺だが、絶頂しながらも腰のグラインドを激しくするマンティスさんのほうがより耽溺の度合いを深めているようにも思えた。
 はっ、はっと舌を出して、雌犬のように短い息を吐きながら、獰猛な女アサシンが俺を貪り食らう。下の地面に水溜りを作るほど大量のマン汁を垂れ流し、卑猥な水音を立てて騎乗位セックスに溺れる。異常な濡れ具合のエロマンコに擦られ扱かれ、俺の快楽神経が焼き切れそうになる。
 複雑な構造を持った女陰が、意志を持つかのように蠢き、射精を促す。自分の意志とは無関係に快楽中枢を興奮させられ、俺はもう既に身も心もマンティスさんのものだ。
 子種汁を欲する子宮口にキスされ、尿道口が悦楽に震える。我慢などさせてくれないのは今までの交わりから分かりきっているので、俺は素直に限界を訴える。

「な、あ、もう、出る……!」
「……!」

 射精の訴えに、捕食者の動きがより激しくなる。獲物を駆り立てる時よりも早く、マンティスさんの尻が上下に動く。膣内射精を待ち望む女主人の激しすぎる愛撫は、まるで精嚢から白濁を直接吸引されているようにすら思えた。
 もうダメだ、と思いかけた刹那、不意にマンティスさんがこちらに身体を倒してきた。視界いっぱいに、欲望に濁った瞳が映る。自分でも気づかないうちに、俺は唇を奪われていた。
 俺を最初にレイプしたときのあの無機質な様子から考えるに、マンティスさんにキスの意味が分かっていたとは思えない。
 下の口で俺を貪ると同時に上の口でも美味しく頂こうとするその行為は、男を求める魔物娘の本能故か。強引に唇を割って舌をねじ込み、口腔内を傍若無人に弄り倒すそのキスは、マンティスさんに愛玩される自分の立ち位置を魂に刻みこむようで、そのあまりの気持よさに俺はものも言えず彼女の胎内に精液を放ってしまっていた。

「ん、んっ……!」
「……!?」

 膣内での暴発に、マンティスさんの目が見開かれるが、すぐにまたその瞳は劣情に汚れていく。挿れただけでオーガズムに達するほど淫乱な女性器が、膣の奥に中出しされてイかないはずがないのだ。
 二度、三度と断続的に精を放ち、びくんびくんと男性器が震えるごとに絶頂に押し上げられる彼女は、それでも俺の唇を離そうとはしなかった。
 ずるずると粘ついた音を立てて、俺の唾を飲み込みながら、受動的な快楽に翻弄される哀れな犠牲者の眼を見据える。自分の所有物を見るその眼光から、目を背けることが出来ない。全身を抱かれながら、精を捧げる様を見つめられて、なんだか恥ずかしくなってしまう。腰を深く落とし、下半身を限界まで密着させて、最後の一滴まで搾り取ろうとするその様は、この縦穴の外への興味を失わせるに余り有るものだった。
 長く続いた射精も終わり、肉棒の痙攣も収まると、俺はようやく一息付けるようになった。マンティスさんも、何十回かエクスタシーを感じてひとまず落ち着いたのか、身体を起こして萎え始めた俺のものを解放する。狭くてきつい淫壺には収まりきらない白濁液が逆流するのを、少し残念に思っているようだった。
 とは言っても、魔物娘とのセックスが一度や二度で済むはずがないのは、俺も身を持って知っている。力を失った陰茎を見る彼女の視線はまさに興味津々といった感じで、さながら好奇心旺盛な子どものようである。俺としても、二人の淫液で白っぽく汚れたマンティスさんの太股のあまりの淫猥さに、言い知れぬフェティシズムを感じさせられていたのだ。
 と、俺の視線に気づいたらしい彼女が、自身のえろっちいフトモモと半萎え状態の男性器を見比べる。はっ、と何か思いついたか、再びマンティスさんは立ち上がり、下半身を寄せてきた。が、狙いがセックスにはないということは、すぐに分かった。

「……♪」

 自身が寡黙なためか、言葉に出さずとも俺の心を敏感に察知するマンティスさんは、今度はそのフトモモで俺をいじめようというのだ。
 足の上に座り、半勃起のふにゃちんを、腿で挟む。いわゆる素股の体勢だ。
 森の中を縦横無尽に駆け、野生動物を狩り殺すマンティスさんの脚は健康美の象徴とも言えるもので、そんなきれいな脚が男女の体液で汚れているさまは見ているだけでも獣欲を刺激される。ましてや挟まれ、直接刺激されるとなったら、いかに射精直後といえども奮い立たない道理がない。
 急激に充血し始めた肉槍を見て、エロ脚お姉さまが口角を釣り上げる。そり立っていくそれを、逃さないとばかりにぎゅっと脚でホールドする。ハリのある肌の、その真下にあるしなやかな筋肉は、どんなオナホールよりもきつく竿を絞めつける。

「う、わっ、これ、やばい……」
「……ふふ」

 思わず声を漏らした俺を見下ろして、マンティスさんが小さく笑う。心底嬉しげに、左右の足を交互に動かし、モモコキを続行する。先程の性交とは違って、マンティスさん自身はそれほど気持よくなれないだろうが、それでも脚で俺をいたぶるのは、また違った楽しみがあるらしい。
 ほんの微かな、しかし隠しきれない嗜虐性を湛えた彼女の表情は、余人が見れば普段の仮面の如き顔と区別がつかないかもしれないが、俺にとってみれば何よりも得難い美女の微笑みである。両のフトモモと股間、三点で肉茎を刺激され、溜まらず我慢汁を漏らす様を見て、蟷螂女の陰唇は一層潤うのだった。
 器用に腰を動かし、脚を操ることで素股責めを楽しむマンティスさんだったが、男根が股に擦れることで緩やかな快感は得られていた。先程のようにいきなり絶頂するほどではないが、快楽を、『楽しむ』ということをごく最近まで知らなかった彼女にとっては、このような穏やかな悦楽もまた新鮮なものだったらしい。むっちり太股で俺の腿をゴシゴシ摩擦しながら、精液と愛液にまみれた膣口で裏筋やカリ首などを触れる。多少じれったい感じがお気に召したか、マンティスさんが脚の動きを速めた時。
 勢い余って、マンティスさんの足裏が俺の顔に当たってしまった。直前で押しとどめてくれたため、蹴られることは避けられたものの、顔に思い切り脚を押し付けられる形になってしまった。
 流石の彼女も、自分の失態を申し訳なく思ったのか、動きを止める。が、眼下の男根の様子を見ると、途端に表情が晴れる。顔を足蹴にされた俺のモノは、今まで以上に硬くなってしまっていたのだ。
 肉棒を太股で扱かれながら顔を踏まれるという、端から見れば悲惨極まりないこの状況を、俺は喜んでしまっていた。快楽の探求に余念のないマンティスさんは、自分や俺が気持ちよくなれる新たな方法を見つけると、とても嬉しいらしい。楽しい遊びを見つけた少年のように、足責め素股の新鮮な快楽と男を踏みつけにする背徳の味に耽る。
 俺の方も、今までに無い被虐的な歓びに、そろそろ限界が近づいてきてしまっていた。足の裏を舌で舐めながら、ご主人様に射精を請い願う。

「もう、出る……!」
「ふふ。ふふ、ふふふ」

 何も言わず、ただ嗤うマンティスさんは俺の言うことなど気にも留めない。ただ、性的捕食者としての快楽を貪るのみである。弾力有る肌で一際強く、ぎゅっと締められた時、尿道口から屈従の証が溢れた。
 白い汚液を腹から膝に掛けてたっぷり浴びたマンティスさんは、今までにないほど満足気に見えた。サディスティックな遊びを知った愛しい女王様は、すっくと立ち上がると、その綺麗な切れ長の目で俺をただ見下ろすのだった。

「……ふふふ。たのしい。たのしいね? とっても……」

 肉食動物もかくやというほど凶暴な雰囲気を放つ彼女の巣穴から、俺はきっと一生出られないのだろう。
 それでも良かった。こんなに素晴しいご主人様がいてくれるのに、わざわざ外へ行く必要など無いではないか。
 この快適な縦穴で、俺達二人はずっと、生を楽しみ続けるのだ。
12/02/11 21:48更新 / ナシ・アジフ

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