読切小説
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手にした果実
 ウキウキとした気分で俺は一人暮らしのボロアパートの自分の郵便受けを開けて覗きこむ。男の一人暮らし大学生でこんな気分で郵便受けを覗く奴なんて滅多にいないはずだ。いや、そもそも覗かないやつだって多いだろう。俺の隣の部屋の奴は開いてすらいない。ダイレクトメールがこれでもかとばかりに突っ込まれている。これが普通だ。
 だが、俺は郵便受けを覗くのに楽しみにしている事がちゃんとあった。開いてみると……自分の顔がニマニマと笑みを作るのを感じた。傍から見ると気持ち悪い絵面かもしれない。仕方がないじゃないか、嬉しいんだから。
 いくばくかのダイレクトメールに目立つ封筒がひとつ混じっている。ビジネス用のものとは違う、かと言って派手すぎない、おしゃれな女性趣味の封筒が。これが俺が楽しみにしていた物だ。
 郵便受けの中身を掻き込み、手に持って俺はアパートの階段を上がる。そして部屋に入って鍵をかけ、六畳一間の和室に座り込む。
 お楽しみは後だ。他の手紙を処分する。うん。ほとんどいらない代物だ。ってか、大学二年の俺に予備校の案内を送るんじゃない。バイトならともかく、予備校生としては行かんぞ。無慈悲にハサミで人力シュレッダーにかける。
 残った、大事な手紙を俺は取る。そして鼻から息を吸い込んだ。ああ、いつもの香り……甘くて、どこか爽やかな……彼女の香りが。
 そう、この手紙の送り主は俺の彼女だ。メールだのなんだのの電子の時代に今更こんな手紙なんて古臭いけど、でも独特の趣がある。彼女の文字が便箋に踊っている……彼女がわざわざこれを書いてくれたのだと思うと俺も嬉しくなるし、実際に手で手紙を返そうと思う。それに封筒や便箋にも彼女の趣味が表れる……いや、これは最近のメールとかでもそうかもしれない。だが、この香りは絶対にデジタルでは味わえない。香水でも振られているのだろうか……
 その香りに心を解きほぐされながら、差出人に"深川美香"と書かれた封筒を俺はカッターナイフで丁寧に開く。便箋が出てくると香りはもっと強くなった。
 "やっほー、翔太くん元気? 最近、日差しが暖かくなってきたね。"
 可愛らしい丸文字で、手紙はこう始まっていた。堅苦しい季語の挨拶などない、カジュアルな手紙。うん。こんなのでいいんだ。俺は手紙に目を通していく。
 内容としてはとりとめのないおしゃべりだ。前に送られたメールを少し肉付けした感じだ。手紙のやりとりをしている俺達だが、当然メールなどでもやりとりしている。だから、内容はだいたい知っていた。
 彼女が最近、ようやく大学に受かったこと、一浪の予備校生活は大変だったけどそれもおしまいなこと、一人暮らしが楽しみなことなどが書かれている。うん。メールで聞いていたから知っている。
 だが、後半で俺の目が見開かれた。
「マジかよ……」
 笑いが止まらない。自分でも気持ち悪いと思うのだが、どうしても止められない。
 先のとおり、一浪して大学に合格した彼女だが、地方を出て一人暮らしを始めるとメールで言っていた。その引越し先が手紙に書かれていたのだ。住所は……何の事はない。ここから15分もかからない。最寄り駅が同じだ。駅で俺がいつも使う出口とは逆の方から出て数分歩いたところだ。
 それだけではない。住所の次にはこう書かれていた。
"いつでも遊びに来てね。この手紙が届くころにはもう荷物は運ばれていると思うから"
 心が跳ねまわるような気分だった。
 実を言うと俺は付き合っていながら彼女の姿を知らない。俺たちはとあるSNSで出会った。そこで俺は彼女……美香に惹かれた。会話の楽しさ、同じ趣味であること、愚痴を聞いてくれる優しさ……いろんな物が俺にとってツボだった。そして俺は交際を申し込んだのだ。ネット上じゃ相手の顔は愚か、性別も分からない。もしかしたら"彼女"は男、ネカマかもしれない。でもそれでもいいやと思えるくらい、俺は彼女にハマった。
 幸いこの通り俺は彼女の本名を知ることができたし、通話もしたことがあるから、深川美香が女性であることは分かった。……さすがにあの声と名前で男だと言われたら俺は全てを疑わなければならないぞ。
 でも俺は美香の姿だけは知ることができなかった。俺はメールや手紙で友達と一緒に写っている写真などを送ったのだが、彼女は自分の姿が写った物だけは送ってくれなかったのだ。
 容姿に自信がない、と美香は通話で言っていた。本当かどうかは知らないが、俺としてはそんな物がどうでもいいくらいに美香に惚れている。
 もちろん、会えたこともない。去年の12月頭から付き合っているが、後がない受験だった彼女はクリスマスも正月もなく、勉強していたため会えなかったのだ。大学に合格できたら会う。そう言う約束だった。
 その美香にようやく会える。矢も盾もたまらず、俺はスマホを拾い上げて相手に電話をかける。
「もしもし?」
「あ、翔太くん? 手紙見たんだね?」
 受話器から美香の声が流れる。少し高めで、ぽんぽんと弾むかのような調子が特徴的な明るい声。今は電話と言う機械を通して似たような物に電子で作られているこの声も生で訊くことができるのだ。
「え、分かる?」
「分かる分かる。声が全然違うもん」
「バレバレかぁ」
 手書き手紙も良い物だが、通話も通話でまたいいものだ。二人して笑う。ひとしきり二人で笑ってから美香が口を開いた。
「それで? いつ会う? 電話してきたってことは、もしかして今すぐにでも会いたい?」
「うん、今すぐでも」
「あははっ! 正直なんだからぁ♪」
 そう言う彼女も嬉しさは隠しきれていない感じだ。でも本当にすぐと言うわけには行かないようであった。今新しい家にいるらしいのだが、女の子はいろいろと準備が必要なのだ。
 一時間後に駅で待ち合わせ……そういうことになった。善は急げとばかりに、決まったら俺たちは通話を切った。スマホを顔から話した俺はしばらく固まっていた。ようやく彼女に会える……その喜びを噛み締めたあと、俺は跳ねるようにして立ち上がった。落ち着かない。落ち着かないがまずは風呂に入ろうと思った。汗臭いまま彼女に会うわけにもいかないだろう。ひげも朝剃ったけど再確認だ。
 美香に会えることで舞い上がって怪我とか何かしないように自分に言い聞かせながら俺は風呂場に向かった。



 一時間後、俺は駅にいた。まだ美香は着ていない。メールではライトブルーのデニムジャケットにクリーム色のセーターにダークグリーンのロングスカートで来ると言っていたが、それらしい格好の女性はいない。
『まだかなぁ、まだかなぁ』
 落ち着かないが、だからと言ってうろうろしていたら不審者だ。早る気持ちを押さえて俺は改札口の壁に寄りかかって東口改札と手元のスマホを代わる代わる見た。
 約束の時間を10分くらい過ぎたころだろうか。スマホの方を見ていた俺はハッと顔を上げた。まだ言っていた姿の女性は目に入っていない。だが、俺には分かった。"彼女"が来たことが。匂いで分かる。あの手紙と同じ、甘くて爽やかな……あの香り。
 果たして俺が顔を上げて十数秒後、一人の女性が西口に姿を見せた。言っていた通り、ライトブルーのデニムジャケットにクリーム色のセーターにダークグリーンのロングスカート……
 彼女も俺の姿を認めたらしい。首に巻いている薄手の紅いマフラーをなびかせながらちょこちょこと駆け寄ってくる。
「翔太くん!」
「美香!」
 抱き合わんばかりに俺たちは近寄った。俺たちはこうして会うことが出来た。嬉しさに心は爆発寸前だ。
 そして会えただけでも嬉しかったのだが、それだけではない。彼女、深川美香はものすごく美人だった。
 身長は小柄な方だろう。肌は冬から春に移ろうとしているこの時期にしては日焼けしている方だ。ゴーグルの跡とか無い限り雪焼けしているわけでもなさそうだ。つまり元々こんな色なのだろう。そしてきめ細かかった。
 目はくりくりとまんまるで可愛らしい。キラキラと嬉しさで光っているように見える。鼻筋とかもすらりとしていて可愛らしい。
 黒い髪は首下あたりまで伸ばしている。くせっけなのだろうか、先端はくるりと返っており、感じとしてはサラサラよりフワフワに近い。
 男だったら見てしまう胸……白いふわふわのニットに包まれているそれは控えめながらもきちんと自己主張がされている。ブラのパッドかもしれないけど。縦に入ったラインが彼女のスタイルの良さを際立たせていた。
 派手ではないけど綺麗で可愛らしい花……そんな言葉が似合いそうなのが彼女、深川美香だった。
「かわいいね」
 思ったように言うと、彼女は驚きに目を丸くした。
「え、ええ? だって私、髪はくりんくりんだし、胸大きくないし……」
「いや。滅茶苦茶カワイイよ」
 抱きしめたいくらいに。だが会ったばかりなのにいきなりそれをするのは気が引けた。なんというか、身体ばかり目当ての気がしたのだ。それくらいの余裕は一応あった。そう、一応。
 彼女の香りを嗅いでからだろうか。俺は自分の中の狂おしい何かが暴れまわっている気分だった。さすがに勃起はしてないけど、このまま彼女を滅茶苦茶にしたい……そんな気持ちが沸き起こっていた。それをなんとか押さえて紳士ヅラしてみせる。
 俺にカワイイと言われた美香は頬を染め、右手で口元を隠して照れる。そんな仕草がとても可愛らしい。手紙や通話じゃ絶対分からなかった。さらにその動きでふわりと彼女の香りが漂う。俺の心臓がどきんと強く脈打った。
「と、ところで……!」
 照れを払おうとするように美香は大きな声を出した。
「私、ここに引っ越したばかりで周りがどんな感じなのか良く分からないの。それで、翔太くんに案内して欲しいんだけど……」
「あ、ああ、そうだよね。それじゃ、案内させていただきます」
「よろしくね! あ、オススメのスーパーと……スイーツのお店と、あと花屋さんとかを教えてくれると嬉しいなぁ……」
 そう言いながら彼女は自然に俺の片手を取った。また心臓が脈打つ。このまま心臓発作でも起こしてぶっ倒れるんじゃないかとすら思った。



 駅でこうして会った俺は美香を連れて自分の街を紹介した。と言っても、この街は住宅街なのであまり紹介することもないのだけど。スーパーはひとつしかない。安く済ませたいなら、散在しているのが厄介だが、肉屋、八百屋、パン屋、ドラッグストアを回った方がいい。前者3つは顔なじみになればおまけしてくれたり古くなった食材をかなり安く譲ってもらえる。ドラッグストアはカップ麺やスナック菓子、アルコールなども揃えているからかなりお世話になる。
 女の子をデートに連れて歩くにしてはずいぶん色気のないところに来ている気がするが、俺はそれどころじゃない。昼飯には駅から数分歩いたところにあるファミレスに行って、2時にその場でイートインもできるケーキチェーン店に行ったのだが、自分が何を頼んだのかすら覚えていない。悲しいかな、どんなおしゃべりをしたかもだ。それだけ俺は横にいて手をつないでいた美香に、そして彼女から漂う香りに舞い上がっていた。だけど美香はそんな俺を攻めたりすることなく、にこにこと笑いながら話をしてくれ、俺の話を聞いてくれていた……



 日が傾き始めた4時……ケーキ屋を出る。俺は美香と半日もいられたことに恍惚としていた。そんな俺に美香が突然提案してきた。
「さっきも言ったけどね、私、昨日引っ越したばかりで部屋がまだダンボールだらけなの……それで、タンスとか重いし組み立てが大変だからさ……翔太くんに来てもらって手伝ってくれると助かるんだけど……」
『マジか!?』
 実際に口に出さなかったのが不思議なくらい、俺は驚いた。付き合っていたとは言え、女の子が始めて顔をあわせた人を家に招く!? これは……もしかしてOKと言うことなのか!?
 良からぬ考えが俺の中でぐるぐるとねずみ花火の如く回る。黙っている俺に、美香は曇った顔を向けた。
「だめ……かな?」
「い、いやいやいや! 手伝えるなら喜んで!」
 いやらしい想像は全てうっちゃり、俺は頷く。向こうの意図は読めないけど、ここで結論付けなくてもいい。とりあえず家に行ってみよう。幸い俺は一人暮らし。帰らなくたって困る人はいない。
「良かった! それじゃ、行こう! 本邦初公開、私の新居よ!」
 曇りかけていた美香の顔があっという間に晴れる。そして彼女は俺の手を引いて一人ずんずんと進んでいくのであった。
 


 いくらここがマイタウンと言っても、俺は郵便配達人でもなんでもない。住所だけ聞いてそこにあっという間に行くことはできないのだ。家に誘われたことに未だに舞い上がっている俺は美香に引かれるがまま歩く。
 駅を抜けて歩いて10分ほど。俺は美香が大学に通うために借りたアパートに付いた。三階建ての鉄筋コンクリート造。俺が住んでいるアパートより立派だ。エントランスは狭いが二重にロックがかかっていて扉が閉まると自動で鍵がかかる代物であった。まあ、女の子が一人暮らしするならセキュリティも相応に堅固な物だろうし、その分建物もしっかりした物になるはずだ。
「ここって、女性限定のアパートなの?」
「ううん、そんなことないよ。まあ、女性率が高いらしいけど」
 手早く鍵を開けながら美香は言う。彼女はここの二階の一室に引っ越したらしい。その二階までの移動だというのに彼女はエレベーターに俺を引き込んだ。四人乗りの小さなエレベーター。美香に家に誘われた時に良からぬことを考えてしまったためか、そのエレベーターも意識してしまう。そう、気分としてはラブホのエレベーターだ。
『最低だ、俺……』
 そうは思っても、その感想は拭い去れない。俺の手を握って横に立っている彼女から漂う香りが俺の中の妖しげな気持ちを駆り立て、心臓に早鐘を打たせる。彼女に聞こえて閉まっているのではないかと思うほどだ。
 時間にして数秒だが、俺はどのくらい経ったか分からないくらい、感覚が滅茶苦茶になっていた。美香に引っ張られないとドアが開いたことすら気付けなかったかもしれない。
 美香は209号室の前で泊まった。スカートのポケットからまた鍵を取り出してドアを開ける。
「散らかっているけど、どうぞ入って」
「お、おじゃまします……」
 叱られた子どものように俺はおずおずと小さくなりながら言って玄関の中に入った。奥はリビングらしいが……なるほど、ダンボールがいくつも積まれていた。引っ越したばかりと言う雰囲気が出ており、生活感は極めて薄い。
 美香の邪魔にならないように俺は靴を手早く足を使って脱ぎ捨て、回れ右をしてその靴を揃えて踵を自分側に向ける。その時であった。美香も同じようにショートブーツを乱暴に足で脱ぎ捨てた。そして跳ねるようにして玄関から廊下に上がった。廊下には靴を並べ直した俺が立っている。当然、美香は俺にぶつかった。
「おっとと!?」
 俺が美香を抱きとめる形になる。慌てすぎだと俺は苦笑したが、それを言うことが出来なかった。彼女の髪から香るあの芳香とともに、違和感が沸き起こったのだ。今、美香は悲鳴の一つも上げなかったのでは?
 その違和感がより強くなる。美香が俺の首に両腕を回したのだ。それはとっさに掴んだと言うより、絡みついて逃さないと言う感じであった。
「み、美香……!?」
「もう……我慢できない……!」
 美香はそう言うなり、いきなり俺のくちびるを奪ってきた。彼女の舌が強引に俺のくちびるを割ってくるくると口内で回り、蹂躙してくる。19才の女性とは思えぬほどの荒々しく情熱的なキスであった。
 キスは比較的短かった。すぐに俺はその口づけから解放される。
「美香……急に何を……」
「いいよね!? 翔太くんも我慢出来なさそうだしね! "ソノ気"があったから私の家にも来たんでしょう?」
 畳み掛けるように美香は言う。その目は酒に酔っているかのように座っていた。言いながらデニムジャケットを肩口から滑り落とす。シワになろうが踏みつけられようがもはや知ったことではないと言う勢いだ。
「え、いや、その……んんっ!」
 自分の下心を言い当てられて激しく動揺した俺だが、そのことに言及する前に再び彼女にキスされる。しかも今度はぐいぐいと彼女に身体で押されていた。よろりと俺は玄関からリビングへと数歩押しやられる。
 今度のキスは先程よりも長く、激しかった。また解放されたころには俺は息も絶え絶えと言った感じであった。
「み、美香……何を……!?」
「ああ、やっと翔太くんと……!」
 俺の言葉を美香は聞いていない。よたよたと三歩ほど後ろに下がる。その手がせわしなく自らの右脇腹を動きまわっていた。グリーンのスカートのホックとファスナーが外され、すとんと床に落ちる。スカートの下はタイツなど穿いておらず、白地にスモークピンクのドット柄と同じ色のフリルが付いた可愛らしいショーツが露わになった。俺も男だ、ついそれを凝視してしまう。
 だがその目がすぐに驚きに見開かれた。その緑色のスカートから……いや、そう見えるだけだ。彼女の足先の周囲から巨大な葉が伸び出した。それも複数枚。それは見る見る間に美香の半身ほどの大きさになった。
 はっとして俺は美香の顔を見る。その頭髪も大きく変化していた。髪質は変わっていない。だが黒髪は雪のように白に変わっている。また、側頭部から羊の角のような物が対になって伸び、渦を作っていた。羊の角と違うところと言えば、それが節くれだっておらずツヤツヤしていそうなところだろうか。
 そして俺が頭部の変化に気を取られている間に下半身はさらに異形の変化を遂げていた。美香の下腹部がまるで橙色の球状の粘体に包まれていた。まるでオレンジのゼリーだ。足元に広がっている葉をヘタと捉えれば、ちょうど果物に見えなくもない。
「み、美香……お前は……」
 美香の誘い、急な襲撃、そして変化……あまりにいろんな事が起きすぎて俺は動転していたが、それでもいくつか理解した。ここで"イベント"が起こるのは彼女の方もまんざらではなかったこと、それどころかその下心を持って俺を家に誘い込んだこと……そして彼女が人ではなく、魔物娘であったこと……
 魔物娘はもはや珍しい存在ではない。俺の大学にもそこそこの人数を見かける。よってこの人ならざる者の出現に恐怖を覚えたりはしなかったが……さすがに驚いた。
 爛々と目を獣のように輝かせていた美香の顔も曇る。
「ごめん……驚いちゃったかな……言い出せなかったんだけど……私、バロメッツなんだ……」
 バロメッツ……その名前は俺も聞いた覚えがあった。姿は巨大な果実にワーシープが生えたかのような感じである。目の前にいる美香は典型的だ。身体から小さな綿毛を放ち、その綿毛の芳香と魔力によって男を虜にするのが特徴だ。
「隠すつもりじゃなかったんだけど……大学決まるまでは会わないと自分で決めていたのも本当だけど……その……やっぱ驚くかなと思ったし……」
 ぼーっとした頭で俺は考える。美香の手紙から漂っていた香り……それは香水ではなく、彼女の綿毛がまぶされていたのだろう。彼女の自白を聴き続けているとやはりそうだったらしい。綿毛の影響があると分かるともう手紙のやりとりをしてくれないと思って怖かったのだそうだ。
 だが俺はそれを知らずに彼女と手紙のやりとりを続け、その香りを嗅ぎ続けることに鳴った。そしてその芳香は今、正体を現した美香からソレまでにないくらいに、濃厚に撒き散らされている……
 バロメッツの芳香の虜になっている男が、その芳香の持ち主の前に辿り着いたらどうなるか。
「それで……どんどん言いづらくなっちゃって……今日、最初に会った時も人間の姿を……きゃっ!?」
「美香……!」
 今の俺のようになる。
 俺はふらふらと、脳裏に刷りに刷り込まれた香りを求めて美香の身体に迫ろうとした。彼女の下半身に巨大なゼリー体があることなど、頭から抜け落ちている。夢遊病者のように、俺は両手を差し伸べて美香に迫った。
 意外にも、バロメッツの果肉にあたるゼリーは弾力がなく、まるで蜂蜜のようにとろりとしていて俺の身体を受け入れた。少しだけ動きにくかったが俺は美香の身体に肉薄し、そして今度は俺の方から彼女を抱きしめていた。
 近寄ってきた俺に小さな悲鳴を上げた美香だったが、拒みはしない。それは急に近寄られたことと、もう一つの理由からだ。
「もう……脱がないで私の果肉の中に入ってきちゃって……ジーパンも靴下もベトベトになっちゃうよ?」
 美香の言葉にはっとして見下ろしてみると、確かにデニムの一部に液体が染み込み、またゼリー状の果肉が付着していたりした。
「これじゃ洗濯が必要じゃん……洗濯機はまだ用意していないんだよ?」
 呆れ気味の声で言いながら、それでも美香はくすくすと笑った。そして彼女の方からも抱き返してきた。
 顔が近づく。今度は俺の方も不意を打たれず、動くことができた。三度、口づけが美香の部屋でかわされた。くちゅくちゅと水音が響き、二人の吐息がそれに絡まり合う。
 たっぷりと俺たちはキスをした。どのくらい続けていたか分からない。口を離した時には二人共全力疾走したのではないかと言うくらいに息が上がっていた。
 それで終わるだろうか、いや、終わるはずがない。俺は獣欲盛んな20才の上に数ヶ月恋人に会うのにおあずけをくらい、おまけに魔物の魔力に捕らわれている男。美香はその魔力を放っている、年頃で好色な魔物娘。止まれるはずがない。
 俺は着ていたパーカーのファスナーを下ろし、さらに下に着ていたシャツごとそれを脱いで放り捨てた。美香もまた白のセーターを抜いだ。慎ましやかな胸を包んだ、ショーツと同じデザインの可愛らしいブラが現れる。
 我慢できない。俺は美香がそれを脱ぐより先に押しのけて乳房をむき出しにする。手でその小ぶりながらも柔らかい感触を確かめ、さらに片方の頂点に口を近づけて貪り付いた。
「あんっ、あはっ……♥」
 少し驚いた美香であったが、押しのけたりなどしない。その間に彼女は用を成さなくなったブラジャーを取り去り、同じように放り捨てた。それをいいことに俺は彼女の香りを胸いっぱいに吸い込み、舌を女の肌に這わせた。ほのかに甘い。
「はぅっ……翔太くん、私……胸小さいよ? なのに……んっ、そんなに吸い付いて……そんなにいいの?」
「ああ、いいよ……柔らかくて、形も良くて……かわいいよ、美香……」
 うわ言のようにいいながら俺は胸にむしゃぶりついた。揉みしだかれ、乳首を転がされる感触に美香は短い嬌声を上げ、果実の中心でぷるぷるとその裸身を震わせた。その動きによって綿毛がさらに撒き散らされているのだろうか。周囲の香りは全て美香の物によって包まれていく。
「あ、あんっ……♥ ねえ翔太くん……おっぱいもいいけど……」
 可愛らしい声を上げていた美香が、次に行けとおねだりをしている。美香の胸はいつまでもしゃぶりついていたい心地よさがあったが、その彼女に言われてしまってはしょうが無い。それに、俺だって先にも行きたい。
 ふわりと美香は果実の中で下半身を曲げた。まるで空中浮遊しているかのようだ。そして再び脚を伸ばすより先に、ショーツを脱ぎ去った。乾きかけのボロボロのスライムでも塗りたくったらそうなるだろうか、その布切れは果実のかけらがくっついていた。だがそのクロッチは果汁とは違うもので染みを作っていた。それは……
 想像して俺のモノが脈打つ。すでに股間は張り詰め、デニムを押し上げてテントを作っていた。美香がくすくすと笑う。
「翔太くんのそこ……すごく苦しそう……ね、脱いで?」
 言われるまでもない。美香のようにジャンプして……なんてことは出来なかったが、俺は果実の中に手を突っ込んでベルトを外し、下のトランクスとソックスごとジーパンを脱いだ。やはり不用意に美香の果実に突っ込んでしまったからだろう。デニムには果実のかけらがたくさんくっついてしまい、ぷるぷると揺れていた。だが今は何も考えまい。俺はそれを放り捨てた。
 これで二人共生まれたままの姿だ。全裸で、下半身をバロメッツの果実に包まれた状態で、俺達は向き合っていた。
「すごいたくましい……身体も引き締まっていて……それに……」
 好色な魔物娘と言えども羞恥心はあるらしい。美香は顔を手で覆っている。だが指の間から俺の身体を、特にいきり立ったペニスを見ている。
 一方の俺も、美香の裸は直視できなかった。でも俯きながらもその身体を見ている。先ほどいじった可愛らしい胸、きめ細やかな小麦色の肌、オレンジ色のゼリーに包まれている柳腰、その中央は……
「ね、翔太くん……あんまり見られると恥ずかしいよ……それより……触って?」
 触られるより見られる方が恥ずかしいのかと俺は苦笑しつつも、触ることは吝かではない。果実の中で足を動かし、美香に近づく。そして果実に手を突っ込み、美香のアソコに手を伸ばす。
 下腹部に手を乗せたら、すぐに彼女の秘密の花園を探り当てることができた。そこからはバロメッツの果実の液体とは違う、美香の果汁があふれていた。見ることは出来ないが、触ればその液が絡みついてくる。
「すごい濡れているよ……胸触られて、見られただけでこんなになっちゃったの?」
「いや……恥ずかしい! 言わないで……!」
 彼女は顔を紅くしてしまった。それは見られまいとするかのように美香は顔を俺の胸板に埋める。だがその位置は彼女からも俺に触れられる距離だ。
 美香は果実に手を突っ込み、その中で固く張り詰めていた俺の肉棒を握りこんだ。ぷるぷるした果実に包まれているのも悪くはなかったのだが、その中で彼女の柔らかな手に包まれるというのは比べ物にならないくらいの快感だ。
 その美香の手がいやらしく動き出す。俺は思わず身体を震わせた。
「ふふふ……翔太くんの身体、びくびくって震えたよ。気持ち良い?」
「ああ、気持ち良いよ……!」
「あんっ♥ そんなにお豆いじっちゃダメ……♥」
 彼女もまた俺の愛撫に身体を震わせた。
 片腕で互いに抱き合い、もう片手で互いの性器を愛撫しあう。二人は揃って嬌声を上げ、身体を震わせる。いつまでもこんな時間が続けばいいのにとは思ったが、身体はそうは行かない。
「ダメ……翔太、くん……そんなにされたら、私……」
「え? あんまり激しくしてないよ?」
「うぅん……外は、ゆっくりされる方が好きなの……だから、もう……」
 濡れた瞳で美香が俺を見上げてくる。イキそうになっているのだと俺は嬉しくなった。だが同時に俺も追い詰められていた。我慢しようとしても彼女の手はそれをあざ笑うかのように竿を、亀頭を撫でまわして射精を要求してくる。でもそうすると……
「大丈夫だよ」
 俺の気持ちを見透かしたように美香が唐突に言った。
「このまま、んっ、実の中に出し……うぅ、出しちゃって大丈夫だよ。ちゃ、ちゃんと吸収できるから……だから、ね……いっぱい、出して……♥」
 そう言って美香は指で輪をつくり、亀頭をそれに通した。敏感な先端が、カリが、くびれがピンポイントで刺激される。美香に射精の許可をもらって油断していたこともあっただろう。それで俺はトドメを刺された。
 美香の身体にしがみつきながら俺は射精していた。夕焼け色の粘体の中に、白濁の粘液がどくどくと注がれていく。
「んんっ♥ くぅうう♥」
 偶然なのか、それとも射精の感覚を果実でも感じ取っているのか、直後に美香が俺にしがみついたままびくびくと身体を震わせた。身体が、胸が、尻が、果実がぷるぷると揺れる。
 互いに身体をもたせかけあったまま、俺達は絶頂の余韻に浸っていた。荒い息遣いが、新居に響いている。
 先に立ち直ったのは美香だった。少し間延びしていながらも、声をかけてくる。
「ねぇ……重くない? 大丈夫?」
「大丈夫だ。美香の方こそ重くないか?」
「大丈夫。この果実、自由に硬さを変えられるから」
 言われてみればなるほど、イッたばかりで力が入っていないというのに俺の下肢は果実の中で直立を保っていた。言うなれば、果実に腰をかけるような形になっていて、それで倒れるのが防がれている。臍のあたりまで果実に沈み込んでいる美香もまた、その周囲を硬化させることで倒れるのを防いでいた。ちょっと興味が湧いて、美香の近くの果実をつついてみる。まるでゴムボートのような弾力を持って弾き返してきた。
「それより……えへへ、すごく気持ちよかった♥」
 美香が俺を見上げてくる。相変わらず濡れた目。さらに一度絶頂に導かれたために余裕と至福が混じった顔をしている。その目には少し疲れ気味の俺の顔が映っている。なんて顔をしているんだ、俺。まだまだこれからだろう。
 そしてその通りだった。美香は果実の中から俺を解放しなかった。取り込んだままぴょこぴょこと動いてリビングに移動する。
 玄関から見た通りリビングはダンボールでうめつくされていた。だが、寝るために出したのだろう。折りたたみベッドが出ている。他に出ている物と言ったらローテーブルくらいか。その上には紙らしき物が散らばっている。
「続きはベッドで?」
「うぅん。さすがにこのベッドに二人で乗ると壊れちゃうと思うから……」
 言いながら美香は俺に背を向け、壁に手を突き、腰を突き出した。この体勢は、つまり……
「ね、後ろからして……翔太くんに……思いっきり動いて欲しい……始めてはこの方が動きやすいと思うし」
 獣の体勢に近い格好で彼女が誘ってくる。ごくりと俺は喉を鳴らした。果実の中に沈み込んでいる柳腰に両手を添える。美香の顔が少しだけこわばった。
「あ、翔太くん、その……」
「なんだ?」
 呼び止めたはいいが、恥ずかしくなってしまったのか彼女は俯いて黙ってしまう。だが俺は待った。さすがに彼女をないがしろにして自分の快楽を求めるほど、獣性に囚われてはいない。やがて彼女はぽつんと言った。
「始めてだから……その、ほどほどに、ね……?」
「う、後ろから誘っておいてそれは……でも分かった。優しくする」
 そう言って俺は腰を進め、一度出したというのに萎えてないモノを彼女の尻に押し当てた。果実の中ということで入り口がどこにあるか探しづらい。おまけに、自由に硬さや弾力を変えられるとは言え大気中と同じと言うわけには行かないのだ。果実の中の下半身はスムーズに動かなかった。
 困っていると、不意にそのペニスに先ほどの手が添えられた。
「ほら、ここだよ……」
 彼女が片手を自分の身体の下を通して俺の肉棒を掴んで導いてくれていた。それにしたがって腰を進めると……なるほど、確かに尻とは違う柔らかな肉がそこにあった。
 ぐっと俺は腰を押し進める。かすかな抵抗とともに俺のモノは果実とは違う果肉に包まれた。同時に美香が少し苦しげな声を上げる。思わず俺は腰を止めてしまったが……
「いいの……そのまま入れて……」
 美香が振り向いて続きを促す。
「翔太くんと、一つになりたいから……」
「……!」
 一息に突き込んでしまう衝動を何とか抑えながら、俺はゆっくりと彼女の中に侵入していく。
 果実は美香の身体の一部。すでに性器を含めた下半身を沈めている俺は彼女と一つになっていると言えたかもしれない。だが、彼女の膣内はそんな考えは生ぬるいと言わんばかりであった。
 美香の膣内は熱く、たっぷりの愛液でぬめっていた。奥に肉棒を進めるたびにその液が染み出てくるようであった。まるで、歯を立てた桃から果汁があふれるかのように。それでいながら弾力もある。
 バロメッツは植物系の魔物娘。その身体から採取できる木綿や綿毛、果実は他の者も手に取ることができるだろう。だが、彼女のソコは、つがいになった者しか知ることができない……それを思い知らされるような味わいであった。
 気遣うだけで精一杯であった。俺は無意識のうちに腰を動かし始めた。口に含んだ果実を咀嚼するかのように。噛めば噛むほど味わいが出るように、抽送を繰り返すたびに彼女の蜜壺の心地よさが肉棒を通って俺の脳髄へと響く。
「はっ、あっ♥ あ、いい……♥ 気持ち、いい……♥」
 両手を壁に突き、首をうなだれているかと思いきや反らし、美香は快感を身体で表現する。その声にも苦痛は混じっておらず、甘い物一色で染まっている。その身体は官能の炎で火照っているか、表面に汗の玉が浮かび出ていた。思わず俺は腰を曲げて背中で揺れているそれを舐めてみた。
「……甘い……!」
 美香のあの香り、甘くて爽やかな香りがいっぱいで、それを味覚で表したかのような味だった。これまで食べたどんなはちみつ、どんな果実よりも美味だった。
「気に入ってくれた? こっちの方も……んんっ、いいよ……♥」
 少し無理をしながら彼女は俺の方に首を向け、身体を反らす。くちづけをねだっているのだ。俺の方も体勢が少しだけ辛いが、その要求に答えた。途端に口内に広がる"美香"……汗にまさるとも劣らない芳醇な香りと味わいが広がる。思わず夢中になって俺は彼女の口内を蹂躙し、その味をもたらす唾液を全て舐めとろうと舌をうごめかす。一方で肉欲は正直かな、腰の方は少し体勢がつらいということで動きは鈍っていたが、動き続けていた。
 かと言って快感が鈍ると言うことはなかった。興奮しきった美香もまた腰を左右に揺り動かし始めていた。バロメッツの果実と美香の秘蜜の果実に、俺の肉棒はミキサーに入れられたかのように掻き回される。彼女からももたらされた快感に絶頂が思った以上に早いペースで俺の身体に迫ってきた。
「ちょ、タンマ! ちょっと……!」
 それから逃れようとするかのように俺の身体は彼女から抜けだそうとした。だが……
「ダメ……♥」
「うあぁああ!?」
 美香から抜け出そうになったと思ったら俺は再び彼女の中に突きを入れていた。快感で身体が言うことを聞かないとかそう言う類の物ではなかった。まるで何者かに後ろから押されたかのようであった。
 何が起きたのかは分からなかったが、俺の身体は再び美香から逃れようとする。先ほどより抵抗があった。それでもなんとか抜けきろうとしたが、また押し込まれてしまった。まるで、スリングショットで打ち出される弾のように。
「美香……これ……!」
 二回もされたら何をされたか分かった。美香は果実の一部を硬化し、弾力性を増加させたのだ。俺の方を向く美香は淫靡にとろけた顔をしている。
「ダメだよ、抜いたりなんかしちゃ……♥ 一緒に、最後まで、シよ?」
「いや、でもこのままだと俺がヤバ……あああ!」
 俺の声は嬌声で途切れてしまう。サッと美香が笑った。その笑みは植物系であり羊の要素を持つ魔物娘でありながら、狼のような肉食の色を見せている。
「あんっ♥ 大丈夫だよ♥ イッても……んふぅ♥ 腰が止まらないようにしてあげるから♥ 射精しても萎えないように……ふぅうん♥ おまんこで刺激してあげるから……♥」
「あっ、うあああ!」
 おまんこ……その隠語が引き金になってしまったのだろうか。俺はイッてしまっていた。彼女の膣内が俺の精液で満たされていく。その間も彼女の果実によって無理やり俺は動かされ、彼女の身体に腰を打ち付けていた。
「んはぁああ♥ 出てるぅ♥ もっと……もっとぉお♥」
 さらにと言う彼女の要求。さきほどの宣言通り、俺は動き続けることを強制される。加えて、腹筋に力を込めているのだろうか、今は腰を動かしていない美香の締め付けが強かった。射精直後の敏感な肉棒を膣肉で扱きぬかれ、剛直を保たされる。
 バックで突いた上に二度射精した。割りと俺は体力を使っていた。息もかなり上がっている。本当は休みたかった。だが身体は疲労しながらも快感を全力で肯定し、三度目の射精、二度目の種付けを求めていた。
 そして目の前のバロメッツもそれを望んでいた。
「いい、いいよぉお♥ 翔太くんとセックス♥ 腰を動かしあってセックス、気持ちいいよぉ♥」
 あられもない言葉を喚き散らす美香。その腰が再び動いていた。今度は彼女も前後に腰を動かしている。俺に使った果実の弾力強化。それを自分の腰回りにも使ったのだ。スーパーボールのように俺たちの腰は跳ね回りぶつかる。激しい抽送だった。生活感の薄いアパートの一室には、オスとメスの匂いが濃厚に漂い、肉同士が激しくぶつかり合う乾いた音と、汁気の多い物を口を開けて咀嚼するかのような上品とはとても言い難い音が響く。全部、俺と美香がしていること。
「くはっ……美香、また……」
 びりびりと肉棒から痛いくらいの刺激を受け、俺は音を上げる。またイキそうになっていた。うん、うんと美香も赤ちゃんが甘えるような声で相槌を打つ。
「私も、そろそろ……一緒に、一緒にぃい♥」
 俺の下腹部と美香の尻が離れた。ぎりぎり、結合しているがちょっとでもすると俺のカリが美香の陰唇を捲って出てしまう。
 その俺の腰と彼女の太ももからはこれまでにないくらいの力を感じた。弾力性を持った果実がぎりぎりまで引き伸ばされている。ゴムが引き伸ばされているのと同じだ。これによって俺と美香の腰が弾かれたらどうなるのか……恐怖と同時に期待感が俺の胸をよぎる。美香もそうだっただろう。
 そして、それが成された。次の瞬間には二人の身体がぶつかり合っていた。俺のモノが美香の子宮口を穿ち、抉る。美香のそこもぐりぐりと俺の先端を撫でまわし、刺激した。
「あっ、ぐぁああっ!」
「んぁあああああ♥」
 隣室に響くのではないかと言うくらい、俺達は声を出してしまっていた。そうでもしないと、速攻で意識を持って行かれそうだった。
 そして、速攻じゃなかっただけだった。精液が尿道を通り抜け出たのを実感したと同時に俺は目から火花が飛び散ったように感じ、次の瞬間には目の前が真っ暗になった。射精しながらの気絶。それでも、同時にイッた美香の膣がきゅうきゅうと収縮し、俺の肉棒から精液を搾り取っていることだけは、心地よく感じることが出来た。


「ごめんね、やり過ぎちゃったかな?」
「まったくだよ。優しくしてとか言ってたのに、これじゃどっちが、だ」
 美香に膝枕してもらいながら俺は呟く。頭は彼女の腿と果実で柔らかく包まれているが、尻に当たる床は固くて冷たい。彼女に包まれていた時の居心地の良さを考えるとまるで地獄だ。だが、起き上がって果実の中で立って抱き合う気力は俺に残されいなかった。上半身すらちょっと今は動かすのが辛い。
 一方、美香の方は元気そうであった。そりゃそうだよな。男の精液を魔力にして活動する魔物娘だもんな。とは言え、さすがに最後は飛ばし過ぎたか、彼女の顔にも疲労があった。
「でも、まあ気持ちよかったからいいや」
「そう言ってくれると嬉しいけど……でも気持ち良いからって理由だと、他の人に浮気したりしない?」
 少しムッとしたような声が俺に降り掛かってくる。俺は苦笑いしながら、気力を振り絞って上体を起こした。そしてその目線をローテーブルに向ける。そこには便箋と封筒がうず高く積まれていた。全部俺が送った手紙だ。
「これだけ俺たち、手紙をやりとりしたんだよな……」
「え? うん、そうだけど……」
 美香は戸惑った様子になる。ああ、そうだろう。話題をいきなり変えられたかと思っただろうからね。でも俺の中では繋がっている話だ。
 これだけ手紙のやりとりをした……つまり
「それだけ美香の香りに漬けられている……もう君の虜だよ」
 おまけに彼女の汗やキスも味わってしまった。もう後戻りはできない。
 それを聞いた美香は……ぽろぽろと涙をこぼし始めた。
「お、おい! 何泣いているんだよ!? 俺何かまずいこと言ったか!?」
「うぅん……違うの……ちゃんと私たち、身も心も結ばれたんだなって……手紙で心は結ばれていると感じていたけど、それが身も結ばれたことでもっと繋がることができたんだって……」
 なるほど、そういうことだったか……俺は胸をなでおろす。同時に心の中で花が咲いたかのような気分になった。彼女の言葉を聞いて、自分の心の喜びが形になった……そんな感じだ。
「これからもよろしくね、翔太くん……」
「ああ、よろしくな、美香……」
 
 メールや通話や手紙だけだった俺たちの付き合いは、こうして新たな始まりを迎えた。
15/01/14 22:00更新 / 沈黙の天使

■作者メッセージ
どうも、ご無沙汰しております、沈黙の天使です。
みなさん、いかがお過ごしでしょうか。私のことは忘れてしまったでしょうか。

いろいろ忙しくてクロビネガでSSを書けなかったのですが……新魔物娘のバロメッツちゃんを見て懐かしいことを思い出したりして、気づいたら書きはじめていました。それも、これまでの私の執筆速度をはるかに凌駕した速度で(最高時はざっと平均の1.5倍)

と言うわけでいかがだったでしょうか?
最初は正体隠していた美香でしたが……まあタグでバレバレですよねw
お口にあいましたら、そしてオカズになりましたら幸いです。

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