読切小説
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静かな狂人の助言
 それにしてもずいぶん急な訪問だな。いいや、迷惑じゃないさ。とりあえず、そこに座りたまえ。紅茶でも飲むかい? 何、媚薬の類は入っていないよ。君を発情させても意味はない……発情したところで性欲処理などをしてやるつもりはさらさらないよ? この身体は髪の毛一本から足の先まで、もちろんおまんこも子宮も何から何まで君のお兄さんの物だからな。え? 恥ずかしいからそう言うことを言うなって? 事実だからしょうがないじゃないか。
 それで? 義弟の君が、兄嫁である私を訪ねに来るとは一体どうしたんだい? さっきのメールにあったけど、相談事があるんだって? 酔狂だね。私は「静かな狂人」と言われているマッド・ハッターだぞ? 狂っているつもりはないのだが……そのキャッチコピーを考えればあんまり相談事には向かないと思うね。相談なら君のお兄さんにすればいいのに……そこをあえて私に訊くのか? まあ、いいんだが……話を聞こうか。

 ふむふむ、へーへーほーほー……好きな人ができたと。なるほどねぇ、恋の相談か。君にも好きな女の子ができて早く一つになりたいってことか。え、ちょっと違う? ある程度は当たっているのか。ああ、そんなに怒らないでくれたまえよ。私は魔物娘なんだぞ? 恋愛話、浮いた話、セックスの話なんてのは大好物さ。魔物娘に恋愛相談すると言うことは猥談をするのと同義だぞ。それが嫌ならやっぱりお兄さんに聞きたまえ。むぅ……それでも私に相談したいのか? 分かったよ。何度も話を中断するとは思うが聞くよ。
 それでだ。誰が好きなんだね、君は? 私に相談すると言うことは私の知り合いか? ……おいおい、知らないって何さ。君はその娘に恋しているんだよ。知らない人に恋しているってどういうことだね……ん? 何々……ああ、なんだ。そう言うことか。それを早く言いたまえよ。ここ最近、毎晩夢に出てくる女を好きになってしまったのか、なるほどなるほど。その夢はエッチな夢なんだろう? あまり押しが強くない君のことだ。そのエッチな夢も、淫乱な美女に組み伏せられて激しくぐちゅぐちゅぬぷぬぷと腰を動かされて犯されているような感じだろう? ふふふ、今さら恥ずかしがったって意味はないぞ。もう私は目星をつけている……そうかそうか。やはりそうか。くくく……詳しく内容を教えてくれないかい? それは後々? ふむ……残念だな……まあ、今は君の悩みの方を最優先にしようか。当たり前だって怒らないでくれよ……

 さて、君も分かっているだろう。分かっているから私に相談したんだろう。ああ、そうだな。君が恋している相手は魔物娘、ナイトメアだな。まあそうだろうな。けど、種族は分かっても相手が誰なのかさっぱり分からないと。こう言うことだな? よしよし、ここまでは分かった。

 そうと分かれば話は早い。ナイトメアをどう捕まえるか。簡単さ。寝たふりをすればいいのさ。君が眠っていると思っている彼女が近づいてきたところを押し倒すんだ。
 何、夢の中の姿がどうであれ、ナイトメアは基本的に臆病で弱気だからすぐに捕まるさ。あるいは君の精液を何度も受けた彼女なら君に触れられるだけでイッちゃって崩れ落ちてしまうかもな、うふふ……どうした、自信がないか? 自信がないならタケリダケを使えばすぐに解決さ。君はきっと彼女を押し倒すなり熱り立ったイチモツを取り出して、セックスを期待してぬるぬるになっている彼女のおまんこにずぷりと突き刺してズッコンバッコン……うわっ!? なんだ、急に人の話を聞けと怒り出して……ああ、すまない。確かに聞いていなかったな。勝手に話を進めて済まなかった。

 ほう、捕まえ方は知っていたか。いや、失敬失敬。じゃあ、話はもっと早い。襲ってしまえばいいじゃないか。何をためらっているんだい? ……ああ、そのためらいが悩みで、私に相談したいことなのか。ふむ、一体何なんだい?
 何!? 自分の気持ちを信じられない!? 一体どういうことだそれは!? ……っと失礼。つい大きな声を出してしまったね。だけどそれくらい驚いたぞ。さっき「好きな人ができた」と言ってから手のひら返しで「自分の気持ちが信じられない」と言うのだから……どういうことなんだい?
 ……考えがまとまっていないか。ゆっくりでいいよ。
 まず? ……ふむ、うん……なるほど「夢でしか会っていない人だから、本当はどんな人か分からない」と。そうだなぁ……それは確かにそうだな、君の思う通りだ。
 それに? ふむふむ……何? 夢でセックスしまくっているところから始まる仲だから、自分がまるで彼女の身体しか目的にしていないようで嫌だ、と? なるほどね……

 最初の悩みの方について先にお答えしようか。確かに夢の中のナイトメアと現実のナイトメアの性格が違うなんてことは多々ある。夢ではイグニスもびっくりなくらい情熱的に迫ってくるのに、現実じゃとても奥手、とかね。リアルの性格じゃ、ナイトメアは臆病だからね。そこは仕方がないと言えば仕方がない……
 でも、夢では君の理想通りの性格や人柄だ。夢で愉しめばいい。それで納得は……できないんだよね、知ってる。そうでなければ君は私に相談していない。リアルで彼女と心を通い合わせたいのだろう? そして多分、彼女自身も夢だけというのは納得していないはずだ。なぜ分かるかって? こらこら、何のために私に相談に来たのかね、君は。私が彼女と同じ魔物娘だからだろう? 蛇の道は蛇さ。種族は違っても彼女の考えは推測できるよ。
 それでだ。夢だけじゃ満足できないナイトメアだが……まあ心配ないだろう。ナイトメアは寝ている人の夢に入り込んで好き勝手やるわけだから、入り込んでいる人の好みなどはほとんど分かっている。そうさ、君の好みなど彼女には筒抜けのはずだ。どんな性格の娘が好きか、どんな髪型がいいか、もちろんどんなおっぱいが好きか、どんな体位やプレイが好みか……思い当たることがあるだろう? ドウドウ、カムダウンカムダウン。事実を言ったまでさ。落ち着きなよ、いきり立つのはアソコだけにしておきたまえ。
 話を戻そうか。ともかく、彼女は君のことを調べあげているはずだ。そして、現実でも君の理想に近づけるように努力しているはずだ。
 ふふっ、魔物娘がエッチなことだけを考える淫乱かと思ったかい? どっこい、狙った男に好かれてセックスするためにはちゃんとこのような努力もしているさ。
 乙女だろう? 私だって君のお兄さんに好かれるためにいろいろ頑張ったんだぞ。まあ、その話はいずれするとして……性格に関してはこれで分かったかい? うん、良かった良かった。

 さて、二つ目の悩みだが……これは君の心持ち次第だからなぁ……うん。だがな、私はこう思うんだ。
 君が私にこう言う相談をしに来ているだけで十分なんじゃないかって。「自分がまるで彼女の身体しか目的にしていないように思えて嫌だ」と……そう言う気持ちがあって、そして悩んでいるってことでね。
 なぜかって? だってそうだろう? 君のその悩みは、彼女を大切にしたいがための悩みだからさ。
 愛する人とつながるセックスってのは恋人同士では当然のことさ。とても素敵なことだと思う。私は君のお兄さんとセックスするときはこの上なく幸せに思う。それが当然であり、当然と思えることが本当に素晴らしいと思う。
 だがまあ……この手の恋バナとか良く聞くからね……そうじゃないカップルがいるのも知っている。たまに混じっているんだよ。相手の身体にしか興味を持っていないようなカップルがさ。しかも自覚すらできていないことが多い。それに比べて君はどうだ。自覚もできているし、そのことで彼女を傷つけていないかと彼女の事を思って悩んでいる。十分だと私は思うんだけどね? どうだろう?

 まあ何にせよだ! 君が行動を起こさない限りは始まらない。勇気を出して彼女に襲いかかってみるがいい♪
 何、ハードルが高いって? まだ君はそんなことを言っているのかね、君は……夢の中でズッコンバッコンとヤッているんだから、襲われて向こうが拒むはずがあるまい。何を恐れているんだい?
 ……まあ、魔物娘的にはノープロブレムなのだが、その勇気を振り絞るのは確かに大変かもね。なら手紙を出すのはどうだい? そう手紙、ラブレターだ。夢に入り込んでエッチをする前に、君の思いをしたためた手紙を読む彼女……頬を赤らめて君が少なからず好意を抱いているのを知って嬉しくなる……なかなかロマンチックだ、いいじゃないか。それならできるだろう? その後の夢でのエッチも情熱的に激しい物になること間違いないぞ♥
 クク、期待してしまったかい? あー、だからそう怒るのは止めたまえ。図星だと認めているようなものだぞ、ふふふ。

 お、帰るのかい? 君は私の義弟なんだ、君さえ良ければもう少しゆっくりしていっても構わないが……ああ、そうだな。手紙のことを考えなければいけないね。手紙についてもアドバイスできるが? ……何、私が口を出すと手紙の内容がエロくなるだと? 失敬な。と言いたいが、事実だね。分かった。君も男だ。頑張ってまだ見ぬ惚れた女を落とせ。あ、でも何かまた相談したいことがあったら私に聞きたまえよ。
 ああそうだ。出し損ねてしまったが、お茶用にクッキーも焼いたんだ。せっかくだから持って帰ってくれたまえ。大丈夫だって、これも媚薬の類は入っていないよ。だが、君が彼女と一緒に食べたいのなら、媚薬入りを用意しておくぞ? ククク……いや、いっその事早く彼女を連れてきたまえ。私とお兄さん、君と彼女さんの四人でお茶会をしようじゃないか。素敵なパーティーを、な♥ ふふ、楽しみにしているよ。























 ……さて、そこの君。いつまで隠れているつもりなのかな? 普通の人間だと気づけないようだが、私は魔物娘だ。漂わす魔力は隠せないよ。まあ、恥ずかしかったり怖かったりするのなら、無理して出ることはないけどね。
 という訳でだ。君が唾をつけている男がいきなり魔物娘の所を訪ねて心配になったようだが……このとおりだ。私は既に心も身体も決めた男がいる。彼はただの義弟で、そして今日はアドバイスをしただけさ。残念だね、ラブレターは彼から君へのサプライズにはなりそうにないな……まあ仕方がない。期待に胸を高鳴らせて、おまんこを濡らしながら待っていたまえ♪
14/01/16 19:08更新 / 三鯖アキラ(旧:沈黙の天使)

■作者メッセージ
ジャバウォックが更新された中、今さらながらマッドハッターSS。
「誰か真面目なマッドハッター書いてくれないかな」と言っていたので、恋愛相談に乗ったマッドハッターを書いてみました。
絵を見た時、お茶を飲みながら話を聞くマッドハッターさんが思い浮かんだんですよ!
「マドモアゼル。そんな浮かない顔をして何事かお悩みかな?」「私で良ければ君の、話し相手になりたい」的な。
でも……やっぱり狂っちゃったよwwwww
いや、一応ちゃんとアドバイスはさせてみましたが、ときどきエロい方向に大暴走。
ま、魔物娘だから仕方ないね♪

そんなわけでエロ無しでしたが、楽しんでいただけたでしょうか?
マッドハッターさんのアドバイスが軽くなりすぎていないか心配ですが……楽しんでいただけたのでしたら幸いです。

それではまた別のSSで、ごきげんよう。

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