連載小説
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第一話 春の訪れ

イーサンは目を覚ました。
冷たい空気が、息をするたびに肺に入り込んできて、ぼんやりした頭をはっきりとさせる。
ここは天国なのか、と思い身体を確かめる。
死んだような感覚はない。むしろいつもよりも元気なくらいだ。
身体を起こすと、隣にプラムがいないことに気付く。
二人を包んでいた橙色の壁は破られて、人が出られるくらいの穴があいている。
イーサンは無性にプラムに会いたくなった。いや、ここが天国ならむしろ会えないことを喜ぶべきなのではないか。
混濁した思考で身体を起こす。脱いだはずのシャツとズボンは無くなっていた。
地面に敷いていたコートを羽織って外に出ると、柔らかな日差しがイーサンの目をついた。
暖かかった。目の前に広がっているはずの雪景色はすっかり溶けきっていて、その下の草原が緑色の顔を表に出している。
どれほどの間寝ていたのか分からないが、どうやら天国ではないらしい。
イーサンのシャツとズボンは洞窟のそばの岩場に置かれていて、よく乾いていた。
プラムが干してくれたのだろうか、と考えながらイーサンはそれらを着て、上からコートを羽織ると、辺りを見回して彼女の姿を探した。
しかし、草原とまばらな岩場があるばかりで、何も見つけられない。
プラムがいない。それだけで胸が締め付けられるように苦しい。
イーサンがだんだんと必死になり始めた時、歌が聞こえてきた。
気楽なテンポの鼻歌が、崖の上から聞こえてくる。
プラムかもしれない。
イーサンがそう考えたときには、既に崖壁に手をかけて登り始めていた。
旅の間に何度か崖登りをしたことがある。それに崖壁はごつごつとしていて、掴まる場所に不足はなかった。
長い間何も食べていなかったはずなのに、不思議と身体は気力に満ちていて、軽々と崖を登っていける。




鼻歌に導かれるように崖を登りきると、広めの岩棚だった。
その端、草原を見下ろせる場所に蝶の羽を持った魔物がいた。
広々とした草原と、その先にそびえ立つ青々とした山々。
目下に広がる景色を楽しむように、鼻歌を歌っている。
もしかしたら、プラムの事を知っているかもしれない。
「ちょっといいか」
蝶の魔物は振り返った。その瞬間、あまりの美しさにイーサンは圧倒された。
輪郭の整った可愛らしい顔、細い2本の触覚が頭から垂れている。
豊満な胸の谷間を強調する黒い服は、魔物娘らしく露出の高いものだ。すらりと伸びた足は、しかしむっちりと肉付きのよい絶妙な曲線を描いていて、この上なく視線を引き付けられる。
肩まで伸びた金色の髪は、岩棚に吹く風でたおやかに揺れ、蝶のような羽は太陽の光を浴びて、教会のステンドグラスのように複雑な色彩を帯びて輝いている。
天使が存在するなら、ここは天国かもしれない。とイーサンは思った。
蝶のような魔物は、イーサンを見た瞬間にびっくりしたような顔をした。
目に涙を浮かべて、信じられないというような表情で彼を見ている。
どうやら、急に話しかけたせいで驚かせてしまったようだ。
「す、すまない。驚かせるつもりはなかったんだ」
イーサンが言うと、蝶の魔物は涙を拭ってにっこりと笑った。
それから、ふわりとした軽い足取りでイーサンに近づいてきた。
「良かった、起きたんだ。ずっと目を覚まさないから、心配してたの」
どうやら、イーサンとプラムがあの洞窟で吹雪をしのいでいたのを知っているようだ。
「俺と一緒だったグリーンワームを知らないか?」
「グリーンワーム?」
蝶の魔物は首を傾げた。
「俺の隣で寝ていたんだが、どこかに行ってしまったみたいで」
「えっと、私が分からない?」
蝶の魔物は、ずいと顔を近づけてくる。分からないかと聞かれても、今まで蝶の魔物に会ったことはない。
彼女の身体は花の蜜のようないい匂いを纏っていて、思わず顔をそむける。浮気なんてしたら、プラムになんて言われるか。
「ああ、どこかで会ったか?」
「ほんとに分からない?」
今度は怒った表情で、さらに顔を近づけてくる。顔をそむけようにも琥珀色の瞳から目を離せない。
「すまない。本当に分からないんだ」
「ふーん、俺を喰って生き延びてくれ、なんて言ってくれたのに。忘れちゃったんだ」
「え?」
なぜそれを知っているのか、それを知っているのはプラムしかいないのに。
まさか。イーサンは動揺しながら訪ねた。
「プラム……なのか?」
「やっと分かったんだ。がっかりだなー。ちょっと嫌いになったかも」
「ごめん。こんなに綺麗になってるとは思わなかった」
イーサンは弁明した。
実際、今までずっと一緒だった少女が、こんな美人になってるとは夢にも思わないだろう。
するとプラムは、イーサンに甘いキスを一つして、くすくすと笑った。
「冗談だよ。嫌いになるわけないじゃない。この体も、空を飛べる素敵な羽も、あなたがくれたものなのに」
「俺が?俺は寝ていただけだ」
「ううん。イーサンが私にたっぷり精をくれたから、この体になれたんだよ」
そう言って、プラムはイーサンに身を寄せた。
ほんのりとした甘い匂いが理性を溶かしていく。
「ほら、あなたのための、あなただけものだよ」
プラムはイーサンの手を取って、頬に当てた。
恍惚な笑み。薄赤くのぼせたような頬。それを見ていると、心臓の鼓動が早くなるのを感じる。
イーサンはそっと腰に手を回して、身体をさらに引き寄せる。
乳房が形を変えながら身体に押し付けられ、鼻が触れ合うくらい顔が近くなる。
こうして、ぴったりとくっついているだけで、プラムの事以外が考えられなくなる。
そっと、唇を重ねる。その柔らかさはマシュマロなんか比にならないくらいだ。
唇が離れると、プラムはさらに求めるように唇を押し付けてくる。
舌が入り込んできて、唾液を求めるように口の中を舐めまわしてくる。
こらえきれずにプラムの性器に手を伸ばすと、そこは肉食動物が涎を垂らすように濡れそぼって、太ももを伝って愛液が垂れていた。
ぷは、と口が離れる。
ぐちゅぐちゅと性器をいじってやると、プラムが力が抜けたようにしなだれかかってきた。
「んんっ……ふふ、イーサンのエッチ……」
「エッチなのはそっちだろ」
すると、プラムは華奢な体に似合わぬ力で、イーサンを優しく地面に押し倒して、ズボンを引き下げる。
そこには、ギンギンに硬くなったペニスがそそり立っていた。
「エッチなのはどっちかなー?」
プラムはからかうように言って、ペニスを口に含む。
温かい口の中で、亀頭の裏側や裏筋をねぶるように、ペニスを舐められる。
「バカ、汚いって……」
何日か何週間か分からないが、ずっと洞窟で寝ていたのだ。
一旦、川を探して水浴びしないと汚くて仕方ないはずだ。
しかし、プラムの口は止まらず、蝶が花の蜜を吸うようにペニスを吸い上げてくる。
「おい、聞いて……っ!」
止めることができず、プラムの口に射精した。
自分でも信じられないくらいの量の精液がプラムの口から溢れ、腹の上に垂れた。
プラムは顔を赤らめて、恍惚した表情で精液を飲み干すと、続いて腹の上の精液を舐め上げる。
「なあ……」
イーサンが声をかけると、プラムは彼の腹を舐めながら上目遣いで応える。
「汚いだろう。ずっと風呂にも入ってないし……」
すると、プラムは舐めとった精液をこくりと飲み込んで、イーサンに抱きついてきた。
彼の目の前で、プラムは微笑む。
「大丈夫。毎日、私が身体を拭いてあげてたから。イーサンは汚くないよ」
プラムは柔らかくなったペニスを太ももで挟んで、優しく揉み上げる。
肉付きの良い、それでいてほどよく締まった極上の太ももの感触が、ペニスを瞬く間に硬化させる。
何度出しても物足りない、そう思いながらイーサンはかすかな疑問を覚える。
いくら魔物が相手とは言え、自分はこんなに絶倫だったか?
数週間眠っていたとはいえ、単に溜まっていたからという理由では説明できないくらいに、体中に精力がみなぎっている。
その理由なき力に、イーサンはほんの少しだけ不安を覚える。
すると、プラムはそれを嗅ぎ取ったように、彼に深いキスをしてから言った。
「イーサン、生まれ変わったのは私だけじゃないんだよ」
「なんだって」
「洞窟で一緒に眠ってる時、イーサンは一回死んじゃったの。身体が冷たくなって、心臓も止まってた。でも、私がイーサンからもらった魔力を全部あげたら、なんとか生き返って……」
「つまり、俺はインキュバスになったわけか」
「たぶん……」
話には聞いたことがあった。魔物とずっと交わっていたり、魔界に長い間身を置くことで、魔力を大量に浴びた人間の男はインキュバスになってしまうと。
「俺も魔物になったわけか」
「うん……」
イーサンが自嘲するように呟くと、プラムは申し訳なさそうに目を伏せた。
イーサンはプラムの頭を撫でた。
「気にするな。お前と一緒にいれば、いずれこうなっていたさ」
そう言うと、プラムにキスをして、硬くなったペニスを膣口にあてがった。
プラムのぞくぞくした期待に満ちた顔を眺めながら、ペニスを突き入れる。
その瞬間、イーサンの身体を途方もない脱力感が襲った。
射精している。という感覚でさえ意識の彼方にあり、頭の中は痺れるような快感と甘い脱力感でとろけていた。
しかし、ペニスは硬いままで、プラムの中にあった。
「っはあ……イーサンの、熱い」
プラムは気持ちよさそうに身体を震わせた。
「ねえもっと、もっとちょうだい」
プラムがゆさゆさと腰を揺らしてペニスを搾り始めると、まだ絶頂の余韻が抜けていないイーサンの頭に、さらなる快感の波が押し寄せ、頭の中を蹂躙する。
無数のひだがペニスを優しくいたぶる感覚、子宮口がペニスの先端を吸い上げる感覚、イーサンの身体にあつらえたかのような絶妙な力加減、耳に心地よいプラムの喘ぎ声、いくら放出しても湧き上がる無限の精力が身体にみなぎり、イーサンの存在が、理性が、思考が、本能が、プラムを愛するという一点に注ぎ込まれていく。
プラムをペニスで貫いたまま、イーサンは立ち上がった。
人間の頃では考えられない膂力で、プラムの体を持ち上げると、乱暴な腰使いでプラムの膣内をかき混ぜる。
「ああっ!んっ!激しい!っ!」
「激しい方がいいんだろ!?」
「うん!イーサンので、激しくされるの好きっ!好きっ!」
プラムは喘ぎながらイーサンの口に吸いつき、舌を貪るような激しいディープキスをする。
さらに激しく腰を振って、子宮に叩きつけるようなピストンを繰り返すと、プラムは手足をイーサンの身体に絡めて、背筋をわななかせる。
射精。白濁液を接合部から垂らしながら、二人はさらに強く抱き合った。
それは端から見れば痛々しいくらいに強いものだったが、肉体すら邪魔に思えるくらい、二人は一つになろうとしていたのだった。



数分後、イーサンは啄むようなキスを繰り返しながら、プラムを地面に下ろした。
「帰ろう」
イーサンはズボンを履きなおした。
「イーサンの故郷に?」
「ああ」
プラムはそっと、後ろから抱きしめるようにイーサンの脇に手を差し込んだ。
蝶の羽がはためくと、二人はふわりと浮き上がる。
イーサンは抵抗しなかったし、驚きもしなかった。
プラムがそうするのなら、それを受け入れてやろう。そんな気分だった。
そして、二人は岩棚の下へ、空を飛んで崖を下りていった。
洞窟の前に降りたつと、イーサンは荷物を運び出し、洞窟に別れを告げた。
「どのくらいで着くの?」
ふわふわと宙に浮かんで、プラムが聞いた。
「1日もかからないさ。すぐに着く」
イーサンは草原の先を真っすぐに見た。
そびえ立つ山々、その足元にうずくまるようにしてイーサンの故郷はあるはずだからだ。


20/10/01 00:51更新 / KSニンジャ
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