2.3 Masochistic?
アマゾネスは確かに悔いていた。
剣技で劣っていたからだろうか?
惨めにも尻を叩かれたからだろうか?
勝てると意気込んでいたからだろうか?
━━否、断じて否。
「……っと、……りないぞ」
蚊の鳴くような声で何かを呟いている。
その言葉には落胆、後悔、そして
「なぜ!ここで!やめるのだぁーー!!」
頬を紅潮させ、息を荒げ、爛々と輝いた瞳で。
「ふふ、待っていろよ、次はもっと……」
褐色の肢体を抱きしめながら、決意を固めたアマゾネスが、一人。
***************************
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「での、そこで言ったのじゃ。馬鹿者、と」
「ほうほう、それで?」
「うむ、呆けたところをこの手で張ってやったわ!」
へー、とその背に負ぶったまま相槌を返していく。
背が小さいからか重さも大したことではなく、むしろ軽い部類に入るマリーをおぶりながら、街道を進む。
これが美少女かグラマラスな女性なら、と心の中で考えながら。
ふと思うと何故マリーを背負っているのだろうとカーマインは考える。
魔物なんだから人間の自分より体力はあるだろう、と。
「なぁ、お前様。話をきいておるのか?」
「あぁ、鎌で首を掻き切ったんだっけ?」
「ひっ、そ、そんなことはしとらんわい!」
びくり、と体を震わせながら耳元で叫ぶマリー。
なんだ、違うのかーと残念そうに返事をすると肩をぎゅう、と強く掴まれる。
「お、お、お主、儂を怒らせたらすごいのじゃぞ?!」
「ほほう、それで?」
「そ、それは勿論……」
「勿論?」
「……」
ひゅう、と街道を風が通り過ぎる。
背中に顔を埋めたマリーはプルプルと震えて言葉を発しない。
言葉を発しないマリーを横目に、カーマインはにやにやと笑っている。
子供をあやす、というわけではないがマリーと話しているとどこかいじめたくなる気持ちが沸いてくる。
一言一言に反応をし、面白いようにリアクションを取ってくれている。
「……もう知らぬ」
「いや、なんかその、ごめんな?」
いたたまれなくなったカーマインは軽い謝罪の言葉を口にした後、街道を進んでいく。
無言のまま街道を進むと道の端、草むらの中に点々と大きなつぼみが現れるようになった。
人が一人くらいは余裕で入りそうな大きさで、時折動いている。
種類によっては蕾が白みがかったものまでいる。
「なぁ、あれか?アルラウネは」
「うむ、アルラウネに……リリラウネまでおるのー……、数が増えとるわ」
ピンクの花弁の蕾から、白い花弁の蕾までかなりの数がいる。
数えれば優に20を超え、明らかに普通とは言えないような様相だ。
「しかしここらへんで集まっておるのー、何かあるのかの?」
ほぉー、と手であたりを眺めながら感心したように言う。
ひい、ふう、みい、と数えていると少し時間をおいてまた一から数えなおしている。
「ほれ、そこのやたらとでかいのが件のアルラウネじゃ。さっさといかんかの」
「……」
「どうしたのじゃ?そこの奴じゃろうて」
「……なんか、態度変わった?」
「儂は元からこうなのじゃ。今さらなことを言うでない」
はぁ、とため息をつきながら目の前のアルラウネに近づいてみる。
もぞもぞと時折動いており、動かなくなったかと思えばまた動き出している。
「これって」
「うむ、絶賛子作り中じゃな!」
魔物娘の特徴で言われていることは、所かまわず襲われる可能性があるということである。
山で川で海で丘で街道で街中で寝室で風呂で教会で戦場で。
反魔物国家に属する者たちからすれば外界は地獄だ、とまで言われている。
彼等からしてみれば人類至上主義を掲げていたら突然現れた侵略者。
なまじ下手に接触してしまうと皆、幸せそうにして消えていくというから手に負えない。
度胸試しと言って魔界に足を運んで帰ってきたものはいなかった。
度胸試しの範疇を超えていたのである。
そんな彼等から魔界と呼ばれるこの地をあるきながら、再度深いため息をついて疲れた様にアルラウネを眺める。
何故、魔物娘は場所など関係ないのだろう、やれればどこでもいいのだろうか、と。
ここに来る途中でも若者が一人連れ込まれていた。
頬を染めながらも助けを懇願していては助けるべきなのか見送るべきなのかが非常に迷ってしまう。
むしろ応援するべきだったのだろうか、と。
「お前様が考えるようなことは無粋じゃよ。我々魔物娘は本能にしたがい、番を見つけ、子をなし、次世代に繋げてゆく。多少過程を飛ばそうともな!」
「過程を飛ばす?」
「過程を飛ばしても、じゃ!」
ふんす、と小さな鼻から勢いよく息を吐き出し、偉そうにしている。
良いことを言った、格好良くまとめたと。
「人からしたらその過程が重要なんだけど?」
「ええい、やかましいわ!小さいことでぐちぐち言うでない!」
むきーとカーマインの頬を引っ張り憤慨しながら抗議するマリー。
それに対して頬を引っ張られたカーマインは背中から降ろそうとするものの、足をしっかりとホールドされているせいで中々降ろせないでいる。
「い、い、か、げ、ん!降りろっての!」
「い、や、じゃ!」
むきー、ともとれる叫び声をあげながら格闘する二人。
目の前にアルラウネを蕾がある中にお構いなしでだ。
「ほら、さっさと密をもらって帰るぞ!」
「ええい!男ならどしっと構えるもんじゃぞ!」
「いい加減、静かにしてもらえないかしら?」
そんな騒がしい空間に、一際凛とした声が響いたのであった。
剣技で劣っていたからだろうか?
惨めにも尻を叩かれたからだろうか?
勝てると意気込んでいたからだろうか?
━━否、断じて否。
「……っと、……りないぞ」
蚊の鳴くような声で何かを呟いている。
その言葉には落胆、後悔、そして
「なぜ!ここで!やめるのだぁーー!!」
頬を紅潮させ、息を荒げ、爛々と輝いた瞳で。
「ふふ、待っていろよ、次はもっと……」
褐色の肢体を抱きしめながら、決意を固めたアマゾネスが、一人。
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「での、そこで言ったのじゃ。馬鹿者、と」
「ほうほう、それで?」
「うむ、呆けたところをこの手で張ってやったわ!」
へー、とその背に負ぶったまま相槌を返していく。
背が小さいからか重さも大したことではなく、むしろ軽い部類に入るマリーをおぶりながら、街道を進む。
これが美少女かグラマラスな女性なら、と心の中で考えながら。
ふと思うと何故マリーを背負っているのだろうとカーマインは考える。
魔物なんだから人間の自分より体力はあるだろう、と。
「なぁ、お前様。話をきいておるのか?」
「あぁ、鎌で首を掻き切ったんだっけ?」
「ひっ、そ、そんなことはしとらんわい!」
びくり、と体を震わせながら耳元で叫ぶマリー。
なんだ、違うのかーと残念そうに返事をすると肩をぎゅう、と強く掴まれる。
「お、お、お主、儂を怒らせたらすごいのじゃぞ?!」
「ほほう、それで?」
「そ、それは勿論……」
「勿論?」
「……」
ひゅう、と街道を風が通り過ぎる。
背中に顔を埋めたマリーはプルプルと震えて言葉を発しない。
言葉を発しないマリーを横目に、カーマインはにやにやと笑っている。
子供をあやす、というわけではないがマリーと話しているとどこかいじめたくなる気持ちが沸いてくる。
一言一言に反応をし、面白いようにリアクションを取ってくれている。
「……もう知らぬ」
「いや、なんかその、ごめんな?」
いたたまれなくなったカーマインは軽い謝罪の言葉を口にした後、街道を進んでいく。
無言のまま街道を進むと道の端、草むらの中に点々と大きなつぼみが現れるようになった。
人が一人くらいは余裕で入りそうな大きさで、時折動いている。
種類によっては蕾が白みがかったものまでいる。
「なぁ、あれか?アルラウネは」
「うむ、アルラウネに……リリラウネまでおるのー……、数が増えとるわ」
ピンクの花弁の蕾から、白い花弁の蕾までかなりの数がいる。
数えれば優に20を超え、明らかに普通とは言えないような様相だ。
「しかしここらへんで集まっておるのー、何かあるのかの?」
ほぉー、と手であたりを眺めながら感心したように言う。
ひい、ふう、みい、と数えていると少し時間をおいてまた一から数えなおしている。
「ほれ、そこのやたらとでかいのが件のアルラウネじゃ。さっさといかんかの」
「……」
「どうしたのじゃ?そこの奴じゃろうて」
「……なんか、態度変わった?」
「儂は元からこうなのじゃ。今さらなことを言うでない」
はぁ、とため息をつきながら目の前のアルラウネに近づいてみる。
もぞもぞと時折動いており、動かなくなったかと思えばまた動き出している。
「これって」
「うむ、絶賛子作り中じゃな!」
魔物娘の特徴で言われていることは、所かまわず襲われる可能性があるということである。
山で川で海で丘で街道で街中で寝室で風呂で教会で戦場で。
反魔物国家に属する者たちからすれば外界は地獄だ、とまで言われている。
彼等からしてみれば人類至上主義を掲げていたら突然現れた侵略者。
なまじ下手に接触してしまうと皆、幸せそうにして消えていくというから手に負えない。
度胸試しと言って魔界に足を運んで帰ってきたものはいなかった。
度胸試しの範疇を超えていたのである。
そんな彼等から魔界と呼ばれるこの地をあるきながら、再度深いため息をついて疲れた様にアルラウネを眺める。
何故、魔物娘は場所など関係ないのだろう、やれればどこでもいいのだろうか、と。
ここに来る途中でも若者が一人連れ込まれていた。
頬を染めながらも助けを懇願していては助けるべきなのか見送るべきなのかが非常に迷ってしまう。
むしろ応援するべきだったのだろうか、と。
「お前様が考えるようなことは無粋じゃよ。我々魔物娘は本能にしたがい、番を見つけ、子をなし、次世代に繋げてゆく。多少過程を飛ばそうともな!」
「過程を飛ばす?」
「過程を飛ばしても、じゃ!」
ふんす、と小さな鼻から勢いよく息を吐き出し、偉そうにしている。
良いことを言った、格好良くまとめたと。
「人からしたらその過程が重要なんだけど?」
「ええい、やかましいわ!小さいことでぐちぐち言うでない!」
むきーとカーマインの頬を引っ張り憤慨しながら抗議するマリー。
それに対して頬を引っ張られたカーマインは背中から降ろそうとするものの、足をしっかりとホールドされているせいで中々降ろせないでいる。
「い、い、か、げ、ん!降りろっての!」
「い、や、じゃ!」
むきー、ともとれる叫び声をあげながら格闘する二人。
目の前にアルラウネを蕾がある中にお構いなしでだ。
「ほら、さっさと密をもらって帰るぞ!」
「ええい!男ならどしっと構えるもんじゃぞ!」
「いい加減、静かにしてもらえないかしら?」
そんな騒がしい空間に、一際凛とした声が響いたのであった。
16/09/27 00:39更新 / つくね
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