なんて素敵な奴隷商店
城下から程なく歩くと、森の近くに打ち捨てられた教会がある。
その中に入ると、倒れ朽ち果てた十字架と割れて、どのような絵であったか判別の出来ないステンドグラスが目に入る。その割れたスタンドグラスから見える木々と空を眺めるのが私の日課である。
日々変化するその窓を鑑賞しながら、神父の私室であった部屋に向かう。そこはドワーフに特注で作らせた錠前と魔法によるロックで、二重に封鎖されており、子供や旅人が興味で開けることはもちろん一流の盗賊が突破することも不可能に近い。
それらを解除し、扉を開けると大きな地下への薄暗い階段が目の前に現れる。その階段こそ、魔物娘を調教し、従順な肉奴隷として販売する奴隷商店に続く道なのだ。薄暗い階段を降って行くと奴隷として出荷を待つ魔物娘達が繋がれている牢屋に出る。階段を降りきった私は重い木製の扉を開いた。
目の前に広がるのは、調教され淫猥な嬌声を上げる魔物娘達……
ではない。目の前に広がるのは空っぽの牢と拘束具である。
それらの1つに入り、その中のレンガを押し込むと牢屋の一番奥から隠し扉が開く。そこには転移魔法の術式が用意されており、大きめのその転移魔法陣は30人程度は一度に送ることが出来る。その魔法陣の中央に乗り、術式を展開させる。
｢じゃ、今日も元気にご主人様探し頑張ってくださ〜い｣
｢｢｢は〜い！｣｣｣
転移した場所は魔界化した森の奥地である。そこの開けた場所に奴隷を希望した魔物娘達が住んでいる居住区がある。長くとも3ヶ月ほどで買い手が見つかるため、ここの住人の入れ替わりは激しい。彼女らは普段はここで未来のご主人様を旦那様を心待ちにしているのだ。
｢では、今日のメンバーは…」
牢の数に限りがあるので、日によって牢に入る者が替わる。他の者達はどうしているかと言うと元奴隷の魔物娘(既婚)による奴隷となるための講義を受ける者や、設置された転移魔法で人間に変装し町に出かける者もいる。選ばれなかった日は自分の店を開いて商売すると言う剛の者までいる。
｢……の以上です｣
選ばれた魔物娘達は笑顔で残り、選ばれなかった魔物娘達は落胆しつつ各々の部屋に戻って行く。これが奴隷の選考であることを忘れないで欲しい。
｢わかっていると思いますが、あちらに着いた場合は教わった通り、
悲壮感、 悲 壮 感 を出してください。いいですね?
くれぐれも笑顔で『ﾗｯｼｬｰｾ!!』とか挨拶しないでください｣
｢そんな娘いたんですか!?｣
｢この前来たオークとゴブリン達がやってくれやがりました｣
もちろん、その日のうちに辞めていただいた。
一応彼女達に釘を刺しておき、廃教会に戻る。
これから今日の本格的な仕事が始まるのだ。
こちらに着いた魔物娘達が一番最初にすることは、用意されている汚れたぼろの服に着替えることである。この服には彼女達が念入りに自身の匂いを染み付けているため、未婚の男性は堪らなく興奮するだろう。
その後各自適当な檻に入ると牢の掃除を始める。前日の行為の後などがそのままの状態になっていることが多いので、この掃除はかなり念入りに行われる。私はそのうちに、今日の来客リストを纏め、段取りを整える。
掃除が済むと魔物娘達を集め、今日の獲も…ではなく客のリストを見せる。
｢予定では18人ほどいらっしゃるそうです。リストの中から好みの方がいた場合は今のうちに
私に言っておいてください。出来る限り要望に答えますが、何人かと一緒になったりした場合もありますので、その点はご了承願います｣
｢あたしはこの人がいいかな〜｣
｢じゃ、私はこの人で♪｣
｢私は直に合ってみてから決めるわ｣
｢同じく｣
ガヤガヤとリストに集まりながら、楽しそうに男性を品定めをする彼女らは、お気付きではない方もいらっしゃるだろうが、奴隷である。
｢では、希望のお客様と引き合わせられるように尽力いたしますので、そろそろ準備をお願いします｣
檻に入り拘束具を一人ひとりに着けていく。この拘束具は身体に負荷の掛からない特注の物だが、奴隷を希望した数名のドワーフたちによって作成されているため、材料費以外は無料である。因みに入り口の錠前も彼女達の作である。
彼女達全員に拘束具を付け終わり、準備が整う。
｢準備もよろしそうなので、お客様をお呼び致します。
皆様のご健闘をお祈りしております｣
そのまま、客との待ち合わせ場所へと向かい今日始めての客を連れてくる。客というのは基本的に反魔物領の金満家がターゲットとなっている。
反魔物領からここへの移動はどこにあるのか悟られぬように、転移魔法での送迎となる。私も廃教会まで転移魔法で移動すればいいと思うかもしれないが、その場合、私自身は使えないので魔道具を使っての転移となる。そうなると思いのほか出費がかさむ為、急を要する時以外は使わないほうが経済的なのだ。
｢ここが噂の…｣
筋骨隆々の壮健な姿の男性が今日第一の客。経歴を見ると凄腕の傭兵らしく、書類に華々しい戦果が書かれていた。といっても所詮は人間同士の戦争であるが。
｢えぇ、この他にも奥に奴隷達がただいま調教されております(嘘である)、きっと貴方様のお気に召す奴隷が見つかるはずでございます。こちらのカタログは奴隷の特徴が書かれておりますので、是非ご覧になってください｣
ここにいる魔物娘と森にいる魔物娘どちらもそれらには書かれており、かなりの数に上る。それらに目を通しながら、傭兵がある事を呟いた。
｢ふむ…皆、調教済みというわけか?｣
｢ご自分で調教を行いたいという方もいらっしゃるので、あえて捕まえたままの奴隷も取り扱っております。そちらは少々危険ですが…｣
｢なるほど…では、出来る限り抵抗する奴がいい。
戦で捕まえた女を犯すのが趣味なんでな…｣
｢それはそれは、英雄色を好むと申しますし勝者の嗜みですな。少々お待ちを、ただいま未調教の奴隷を連れてきます｣
客をその場で待たせ、控え室に入る。その間に客が奴隷に乱暴を働こうとしても、牢の鍵が開かないため安全である。あの牢は客を閉じ込めていると言った方が正しい。
設置された通話魔法で森の居住区にある連絡所に繋げる。
｢もしもし、うん、オーガさんが夫探してたよね？ うん、ちょうど今見つかったから、
うん、そう 抵抗してもいいそうなので、はい、お好きなように、はい、では、お待ちしております」
しばらくして、やって来たオーガを傭兵は大変気に入った様で、すぐに家に連れて帰って行った。
その後聞く所、やって来たオーガも傭兵を大変気に入った様で、すぐに森に連れて帰って行ったらしい。
さて、次の客は纏めて五人か…
｢味見は出来ないのかね？」
｢そうそう、やはり具合を確かめないと…ゲヘヘ｣
ゲヘヘなんて笑う人本当に居るんだ…。今回の5人はあるギルドのお偉方だそうだ。こちらとしてはお金さえもらえれば経歴は大して関係ない。
｢もちろん出来ますよ｣
味見で済まないが
｢それじゃあ、あれなんか良さそうだな…｣
｢ひっ!｣
一人が指差すほうを見ると16〜7ほどのサキュバスが怯えた表情でこちらを見ている。
上出来だ。なかなかの演技派である。
｢わかりました、他の方達もお決まりになられたでしょうか?」
｢いや、」
｢我々もその娘で｣
｢皆で輪姦すのが楽しみでしてな…」
｢ゲヘヘ…｣
こいつらは、私がここの管理人であることを幸福に思って欲しい。あの兄弟なら間違いなくこいつらをさっきの傭兵諸共悪びれず粉々にして居るだろう。
｢申し訳ございません、複数の男性の魔物娘の輪姦は衛生的な問題で大変危険なため禁止されております｣
｢どういうことかね?｣
｢まず、輪姦のしている別男性の唾液または精液を魔物娘の皮膚、口内などを通して体内に摂取すると、健康に甚大な影響を与えるという結果が出ています(大嘘♪)。
また、男性器を膣内に二本以上入れる行為をした際に、膣よりも擦れる相手の男性器に快感を得てしまいアルプ化する方も続出しています(大法螺♪)
極めつけは、魔物娘がそれを非常に嫌がり、前時代の姿に戻って襲い掛かって来るという可能性まで…(真っ赤ッか♪)
それでもよろしければ、こちらのどうなっても私はいいという書類にサインをしていただければ…｣
｢や、やめておく!!｣
｢しかし、輪姦自体が禁止されているわけではございません。少々値は張りますが、分身薬がございますので、そちらでお一人づつ楽しんでいただいてはどうでしょうか?｣
マントのポケットから分身薬を何錠か取り出す。
｢それがあるなら早く言いたまえ! まったく怖がらせおって…｣
金貨の入った小袋を各々の懐から出し机に置くと、私の手から薬をひったくって行った。
｢それでは他の方々にも相応しい奴隷を紹介させていただきます｣
このメンバーの中に魔物娘があらかじめ希望していた者が居たためそれとなく誘導する。
他にも彼女達は何かしらの合図を送り男性を希望している事をそれとなく私に伝える。希望する男性が重なった場合、他の男性が行為に夢中になっている最中にサービスとして追加で入ってもらう。
｢では、一時間ほどしましたら戻りますのでどうぞお楽しみください…｣
魔物娘が男性を虜にするには十分過ぎる時間である。私の言葉も男女の喘ぎ声でほとんど聞こえていないだろう。
私は奥の転移魔法陣に乗り、また森の居住区へ移動した。
｢奴隷になっていただく前に皆さんには、ここで最低限の奴隷としての立ち振る舞いを学んでいただきます｣
奴隷になる事を望む魔物娘は意外にも数多い。近隣諸国にそれとなく噂を流しただけで毎日のように志願者が現れるのだ。おかしな話だがその志願者からここの維持費として金銭を払ってもらっている。お金を貯めて奴隷になりに来るものも少なくないが、こうなってくると奴隷とは一体何なのか訳がわからなくなる。
来たばかりの奴隷志願者に居住区の施設について説明して回る。本来は私の仕事ではないが現在は人手が非常に足りないため私もこのように駆り出されるのだ。
「ここが一番重要な施設となっていますので、しっかりと説明を聞いておいてください｣
一通り居住区の説明を終えた後、施設の１つに連れて行く、ここには今までの奴隷達の個人情報が魔法紙に記載され保管されている。それらを慌しく魔物娘やインキュバスが整理しており、時折ハーピーやワーウルフなどが中に入ってきて書類を追加して行く。
施設のいたるところに魔力の張られた真っ白の紙が額縁に設置されている。
そこで、彼女達にカプセル大の魔道具を配る。あの人も言っておいたのでそろそろ来る頃だろう。
｢皆様にお配りしたのが、どれいマーカーです。皆様の安全をお守りする高性能魔道具となっております。名称については
ど こでも
れ んらくできる
い いマーカー
と覚えてください｣
｢これを一体何に使うんだ?｣
｢それを今から実演いたしますので…｣
話していると近くに魔法陣が出現し、その中からインキュバスが一人現れる。
｢ちょうどよいタイミングで」
｢言われたから来たけどさ…毎回私がやらなきゃダメ?｣
｢元を言えば、貴方が始めたことでしょうに…丸投げしている分これくらいしてください｣
｢ハァ…こんな事になるならしなきゃよかったよ…」
ｺﾞｸｯ
溜息をつきながらマーカーを飲み込むインキュバス。実はこの実演をやるのが私の密かな楽しみでもある。
｢体内に取り込んでも体に悪影響を及ぼすことはありませんので、安心して服用ください
では皆さんこちらをご覧ください、何も書かれていないただ絵のように思われるでしょうが…｣
｢はいよ｣
ﾊﾞｺﾝ!!
隣にいるインキュバスから金槌を受け取ると、彼の頭を思い切り殴りつける。
ﾋﾞｰﾋﾞｰﾋﾞｰ!!
アラームが鳴ると同時に白紙に中央に大きく見本と書かれた個人情報が移る。その中には現住所と主人の名前や顔など事細かに記されている。
｢……やる度に威力が増してる気がするんだけど?」
｢このように、一定以上の人体へのダメージが加わりますと、ここと私に連絡が入ります。もし万が一、主人からいき過ぎた懲罰や拷問を加えられると、こちらから救助隊が向かう仕組みになっております。皆様の安全は私どもがお守りいたしますので安心して奴隷として出荷されてください。また、結婚して番になる場合は、申請していただければ解除できますのでその際は、お申し付けください」
｢｢｢おぉぉ〜〜｣｣｣
｢おう、無視か」
｢と言うことで、お疲れ様でした。帰っていいですよ｣
｢絶対、これ専用にゴーレム作るべきだと思うんだよね｣
｢そんな残酷なこと出来ません｣
｢私にならいいんかい｣
｢では、私は仕事に戻りますので｣
｢嫁さんの前だとダダ甘えのガキンチョが…｣ﾎﾞｿｯ
ﾊﾞｺﾝ!!
ﾋﾞｰﾋﾞｰﾋﾞｰ!!
｢あへぇ…｣
男のアヘ顔など誰が得するのか。と思ったが魔物娘達からすると可愛いらしい。全員すっかり骨抜きにされている。
｢お時間ですが、ご満足頂けたでしょうか?｣
｢さ、最高だ…｣
｢と言うことはお買い上げ…｢いくら払ってもいい!!｣
｢それでは｣
かなり吹っかけたが5人とも異を唱えることなく購入して行った。あそこまでデレデレになっていれば、虐待などとても出来ないだろう。嬉しそうに腕組みをしながら帰って行くサキュバスと中年が印象的であった。
今度は…貴族か
｢カタログをご覧になっ｢そんな物必要ない!!｣
｢貴様のような下賤な者が私と口を聞こうなどずうずうしいわ!!、貴様は私がいう奴隷を売れば良いのだ!｣
本当に管理人が温厚な私であることに幸せを感じて欲しい。あの人達なら本人粉々どころか一族郎党粉々にしていただろう。
『お前、私のこと完全に殺人快楽者かなんかだと思ってるだろ』
何か聞こえた気がするが幻聴だろう。
｢そうだなぁ…まずはこいつだ｣
話は変わるが、ここに来ている奴隷には変わった目的で来るものもいる。
｢そしてこいつだ｣
例えば、奴隷の身分から正妻になるというシンデレラを夢見てあえて奴隷となって近づくものや… 二連鎖
｢こいつとこいつもだ｣
自分のためにいくら金銭を支払ってくれるのかを試すものもいた。これはジパングだかの狸の魔物娘がやっていたな。 三連鎖 四連鎖
｢そしてこいつらだ…｣
一番多いその他の理由は、傲慢な買い主を調教し奴隷にしたいというものだ。
五連鎖 六連鎖 七連鎖
｢ばよえ〜ん」
｢なんだ!!文句でもあるのか!?｣
｢まさか、代金さえ頂ければ私は何も｣
ではお買い上げの奴隷を見てみよう。
ギルタブリル
アラクネ
アマゾネス
ウシオニ
ダークエルフ
ダークエルフ
ダークエルフ
彼女達は３姉妹だそうだ。ウシオニさんはそもそも奴隷という事自体よく分かって無さそうだったが今となっては、特に問題はない。
｢金はさっきの場所に用意させている!!さっさと取って私の前から消えろ!
ふへへ…お前達…たっぷり可愛がってやろう…｣
ここが仕事場なのだが…
嬉しそうな彼女達の後姿見送って、金の回収に掛かる。
因みにダークエルフさんの鞭はウシオニさんに渡しておいた。私としては本物の鞭でやって欲しいところだが、彼女達は優しいのだ。
あのバカを連れてきた場所に転移すると、突然何人かの鎧を着た屈強な人間に襲い掛かられた。もともとこういうつもりだったのだろう。しかし、こちらもバカルーラを呼んで返り討ちにした。
｢おい、誰がバカルーラだ｣
｢どこでもバカとか穴抜けヒモ野郎とかの方がいいですか?｣
｢なんでお前はそんなに辛辣なの?｣
｢私と妻に面倒事押し付けて旅に出るわ…
帰ってきたと思ったらこんな余計な仕事作るわ…｣
｢……すいませんでした…｣
｢で、あの人達はどうなったんですか?｣
｢魔界の海の真ん中に飛ばしました｣
｢あまり不法投棄して海を汚さないように｣
｢海って多少汚れてたほうが魚がいるらしいぜ
それでどうするんだ、回収できないんじゃないか?」
｢問題ないです。後で彼女達に連絡すれば利子付きで帰って来るでしょう
その時のゴタゴタは…｢はいはい、それくらいは是非是非やらせていただきたく存じま〜す」
｢お願いしますね｣
｢俺の方が前は偉かったんだけどなぁ…｣
｢関係ないです」
｢さいですか…｣
｢それでは、まだ客の予定があるので牢に送ってください。
それが終わった後は、賭博場の視察に向かうので待機しているように」
｢了解ですヤクザ副領主サマ｣
ｶﾞﾂﾝｯ!!
ﾋﾞｰﾋﾞｰﾋﾞｰ!!!
終わり
15/11/25 00:31更新 / ヤルダケヤル