連載小説
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少女と人形の行き着く先
それからさらに数日して俺は雨の中を傘も差さずにうつむきながら歩く女の子を館の窓から見た

和也「あれは…」

雫『傘も差さずに、何かあったみたいですね…』

瑠璃『どこいくの?』

和也「これでいいか」

俺が魔界に来る前に持ってきていた傘を持ち彼女のところに向かう

和也「傘も差さずにどうしたんだ?」

???「お兄さんは?」

和也「俺はあそこの家に住んでいる、君はなぜこんな雨の日に傘も差さずにふらふらと歩いていたんだ?」

???「私、マイ。」

和也「俺は小林和也、元々は他の世界に居たんだが魔物とくっついてこの世界に来た」

マイ「私、要らない子だから」

和也「どう言うことだ?」

マイ「お母さんが、新しい男の人を連れてきて「お前なんて産むんじゃなかった、とっとと出てけけこの疫病神」って言われたから」

和也「とりあえず、詳しくは家の中で話すといい」

俺はそのまま彼女を連れて館に戻った。

和也「ほら。」

そのままタオルを渡す

マイ「…お父さん」

瑠璃『!』

和也「そういえば、きみの父親は?」

マイ「病気で死んじゃったよ…二年ぐらい前にね…」

和也「なるほど…」

瑠璃『ちょっといい…?』

そのまま俺は瑠璃に部屋の外に連れ出される

和也「…」

瑠璃『彼女を助けてあげて…』

和也「言われるまでもない、と言うより彼女の母親人間として終わってるな」

雫「それに関しては私もそう思いました…」

和也「彼女も魔物に変えてみるか?そうすればまた運命も変わるかもしれない」

雫「意見が合いましたね」

瑠璃『うん、そうした方がいいよ…』

和也「なら、その事は頼む…」

瑠璃『うん。』

それからしばらくして、瑠璃は戻ってきた

瑠璃『これ、彼女から』

彼女が持っていたのは西洋のドレスを着たいわゆるフランス人形みたいな感じのだった

和也「これは?」

瑠璃『彼女からだよ』

和也「…」

そのまま花に入ろうとしていた彼女に人形を渡し直す

和也「これはきみの大切なものだろう?それなら君が持っているべきだ」

マイ「でも…」

和也「いいから。」

そのまま人形もろとも巨大な花に彼女を乗せるとそのまま花びらは閉じた、この花は入れた人間を女性なら魔物、男性なら普通はインキュバスにする特殊な魔界の植物だ。


和也「これでよし」

雫「彼女はあまりにも可哀想ですね…」

和也「そうだな…」

瑠璃『せめてこれからは人並みに生きてほしい…』

和也「確かにな…」

瑠璃『大丈夫かな…』

和也「さて、な…」

雫「一つ手を打ちますか」

和也「?」

雫はまた中庭に向かい彼女の入っている花の近くにたつ

和也「?」

雫『…』

如雨露から水ではない何かをかけたらしい

和也「?」

雫『これでいいはずです』

和也「何を?」

雫『魔力を少し注ぎました』

和也「なるほど…」

それから寝室に戻ろうとしたときに蠢いている方の花を見た

和也「どうなってんだろそういや」

雫『見てみましょうか』

花びらが開くと、そこには完全に魔物になった元勇者がいた

和也「そっちの方が表情豊かじゃないか」

元勇者『うるさいぃ!?』

雄しべなのか雌しべなのか、その花にあるそれに元勇者は乳首を引っ張られると一気に白目を剥いて表情をだらけさせた

和也「よさげな相手が来るまでしばらくそうしてろ」

また花びらが閉じる、くぐもった声が聞こえる…

和也「…」

そのあと寝室に戻るが彼女たちの顔は晴れない

和也「?」

雫『私たちには、他人事に思えません…』

瑠璃『本当に、何てこんなことが出来るの…?』

和也「それが人間だ、忌々しい…」

雫『…』

瑠璃『…』

そのまま俺は前後から強く抱き締められる

雫『一人でどこにもいかないでくださいね…』

和也「少なくとも今のところその予定はない」

瑠璃『うん…』

そのまま夜が明けた…

和也「朝、だな。」

雫『…♪』

瑠璃『…♪』

二人は幸せそうに俺を抱き締めている

和也「…」

愛されている感謝が心に満ちた

和也「?」

瑠璃『まさか…』

そこにいたのは一組の男女だった

和也「何か?」

玄関から出て聞く

???「娘を知らない?」

和也「名前は?」

???「マイよ、あんなのでも子供がいると金がもらえなくなるから探してるのよ…」

和也「なるほど…あんたらが…」

雫『貴女方に彼女を渡しはしません、まず親として恥を知りなさい』

???「なんなのよあんた」

和也「あんたは「お前なんて産むんじゃなかった、とっとと出てけこの疫病神」そういって叩き出したんだってな、そんなやつに返すとでも?」

???「うるせえよ」

男の方が殴りかかってきたがそのまま拳を握りつぶしその腕を滅茶苦茶な方向にねじ曲げる

???「!!!!?」

男の方は泡を吹いて気絶してしまったらしい

???「ひっ…」

雫『貴女のような人間は生かしておきたくさえないですね…』

和也「殺すなよ?あとで面倒なことになる」

雫『!なら、こうしましょうか…』

彼女は俺に見せたことのないとても冷たく、凶悪な笑みを浮かべた

雫『…』

彼女の眼が不気味な光を放つ

???「!?、動け、ない…!?」

雫『私のような古代種の魔物は、今の魔物に比べて優しくはありませんよ?』

そのまま女の頭を掴む

雫『元々、私は私に敵意を向けないものや家族以外はどうなろうと正直どうでもいいんです。こんな人間が居るからこそ子供が苦しむんですから…』

和也「子供は産まれる場所を選べんしな」

雫『…』

彼女が何かを詠唱(?)すると女の頭上に小さな光の玉が浮かんだ

雫『貴女のような女は子供を生む資格さえありませんよ…』

そのまま続けていると、女の方に変化が訪れた

???「!?あ、あぁ…」

雫『そんなに子供が要らないなら二度と子供を産めないようにしてあげます…』

どうやっているのかは分からないが、雫は女の若さと言うか生命力を吸い取っているらしい

???「や、め…」

ドクン、ドクン、と光の玉が大きくなるにつれて女の顔からは生気がなくなっていく

雫『黙りなさい』

さらにまた眼が不気味な光を放つと、雫の手首を引き剥がそうとした腕も上から力が加わっているのか離れる

雫『ふう。』

命を吸い付くしたらしく、女はもはや枯れ枝やミイラのような老婆になっていた

雫『貴方に最後のチャンスをあげます、マイが貴女を許したならこれを返します』

和也「これどうする?」

俺は男の方をみる

瑠璃『近くの自警団に連絡しました。』

和也「なら安心だ」

そのまま女はふらつきながらもついてくる

和也「さあ、マイ。」

マイ『…』

出てきたマイは、人形とひとつになって魔物になっていた。

和也「リビングドールになったのか、相応しいといえば相応しいな」

マイ『誰?この人』

???「マイ…」

マイ『貴女が仮に私を生んだ親だとしても、私は貴方にかける言葉はないわ』

???「…」

マイ『言い訳も聞きたくないし聞くつもりもない』

???「…」

マイ『結局親としての責務より自分の欲望を優先したんでしょう?』

???「それは、否定出来ない…」

マイ『なら私はもう貴方を親とは思いません、お引き取りを』

???「…」

そのまま女を引き取らせた

マイ『…帰った?』

和也「…ああ。」

マイ『…!!!』

彼女は俺たちに抱きつき泣き始めた

マイ『…!!!』

和也「辛い決断だよな…」

マイ『うん…』

雫『これ、どうする?』

マイ『なにこれ』

雫『彼女から吸い取った生命力よ』

マイ『なら…』

彼女の提案は「あの女が心から悔い、心から後悔と反省をしたときに魔物になる上でその生命力が女に戻る」というものだった

和也「あれが死ぬのが先か、魔物になるのが先か…」

マイ『死んだら、それまでじゃない?私はその程度にしか思われてなかったってすごく悲しいけど…』

雫『解ったわ。』


そのまま何かを雫は詠唱(?)して玉を軽く投げた

和也「とりあえず、終わったな。」

マイ『これから、よろしくお願いします。』

和也「ああ、よろしく」

雫『せめて、貴方にも素敵な殿方が現れますように』

瑠璃『うん、よろしくね』

こうして館にまた一人増えたのだった
19/07/14 00:01更新 / サボテン
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■作者メッセージ
どうも、サボテンです。

今回の話は如何だったでしょうか?

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