読切小説
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ソノ者ノ怒リ、買ウベカラズ
「クソッ! 離せ! 離せと言ってるんだ!」
 一人の女が宙に浮いてもがいていた。旅装束に鉄の胸当てを装備している。近くには彼女の物らしいメイスとラウンドシールドが落ちていた。
 彼女の名前はメプリ。いっぱしの旅の勇者だ。しかし彼女はこの通り、何者かに拘束され、敗北している。
 その拘束している物だが、ロープなどではない。かと言ってアラクネが張った蜘蛛の巣に絡まっているわけでもない。
 メプリは灰色の触手に四肢を縛られ、宙に浮かされていた。
「へっへーん、ルミル様の住処に土足で入り込んで暴れたってのに、ご命令に従えるかっての」
 メプリを拘束している魔物娘が嘲る。
 その魔物は人間と同じように手足を持っていた。服らしい物は身にまとっておらず、股間や胸の膨らみを灰色の粘体で包んでいる。格好以外は普通の人のように見える。
 だが、メプリを拘束している触手は、彼女の腰から生えていた。だがただの触手ではない。触手は先端に、黄金色に光る目玉がついている不気味な代物だった。それだけでも異様であったが、魔物にはさらに人ならざる特徴的な物があった。
 それは彼女の目……メプリを打ち負かした魔物には目が一つしかなかった。怪我などをしているのではない。鼻の上に大きな目玉が一つあるのだ。サイクロプスのように。
 ゲイザー。
 邪眼を持つ、単眼亜人の一種だ。
『クソッタレ、こんな気持ち悪い奴に……!』
 メプリが腹の中で舌打ちをする。そしてこうなった経緯を思い返す。

 ダリスウン山の頂上が暗い雲に包まれた、これはなにか強力な魔物が住み着いたに違いない。
 その噂をメプリは山の麓にある村で聞いた。真相を確かめ、魔物がいたならば討伐するべく、彼女は岩ばかりが転がっていて灰色で痩せている山を登った。
 山頂はたしかに黒い雲に包まれていた。しかしその雲は実際は雲ではなかった。何かガスか蒸気のようなもので、山頂にある洞窟から流れ出ていた。
その洞窟に住んでいたのがゲイザーのルミルだったのだ。
 初めて見たゲイザーの異様さにメプリはルミルを化物呼ばわりした。ルミルも突然の侵入者にそのような侮辱をされて穏やかではいられない。その場で戦闘になった。
 しかし戦いはほぼ一方的だった。リーチに差がありすぎて、メプリはルミルの懐に潜り込めずに攻撃を受け続けた。触手をメイスで叩くも、効果はほとんどなかった。
 そして四肢を拘束され、現在に至る。

「さぁてと、口だけ達者なこのおてんば娘にはお仕置きをしないとねぇ……?」
 にやにやと意地悪い笑みを浮かべながらルミルはメプリに言う。
「うるさい! ふざけるな! まだ私は……!」
「まだ? アンタにさっき以上の余裕はないと思うけど? 一方、アタシは"真の能力"を使ってないんだけど?」
「真の能力?」
 メプリの顔が引きつる。確かに今回ルミルは物理攻撃のみでメプリを屈服させた。他にも何か特殊能力があるのかもしれない。また「邪眼」と言われているその目を活かした行動をしていないのも気になる。
「見せてあげる……!」
 そう言ってルミルは触手の一つをメプリに向ける。その先端についている目玉の瞳がグッと、まるで蛇の瞳孔のように細くなった。
「……なんだ、不発か?」
 激痛や何かを警戒して身体を硬くしていたメプリだったが、何もないのでせせら笑った。ルミルはそれには答えず、逆に問いを投げ返す。
「アンタ、何もぞもぞしているの? もしかして、ムラムラしちゃった?」
「なっ……!?」
 突然の破廉恥な言葉にメプリは耳を疑った。いくら好色な魔物娘とは言え、こいつは何を言っているのか。
 だが
『うそ……アソコが……熱い……!? それに私……濡れてる……!?』
 言われた途端に、秘部が熱くなったように感じた。教団出身のメプリとて女。なんとなくいやらしい気分になることもあった。それでも故郷では自慰は禁止されている。故に掻きたくても掻けないような感覚に悶えるのであった。
 今、自分の身体に起こっている変化はまさにそれだった。
「はっ、くうぅう……何をした……? 催淫の魔法か……?」
「別にぃ〜? アンタがただ単にいつもムラムラしている変態さんだからでしょう〜?」
 わざとらしい口調でゲイザーはあざけってみせる。
「ふざけるな……! 私はお前らみたいな淫らな女じゃな……」
 語尾が弱くなり、最後まで言い切れなかった。本当にそうだろうか? 自分は清廉潔白な勇者だろうか? 言われてみれば、このような気分になったことは一度や二度ではないし、禁じられている自慰も隠れてやったこともある。そんな自分は、本当はルミルの言うとおり変態なのではないだろうか?
『そうそう。あなたは変態よ』『あの時の自慰も、ダメとは思っていても気持ち良かったでしょう?』『今も、あの時みたいにアソコを弄りたいんでしょう?』
 頭の中で自分の声が響いて自分に話しかけてくる。まるで、自分を無理やり納得させようとしているかのように。
 メプリは声を振り払おうと頭を振った。それでも声は消えない。
「うるさい! 私はそんなんじゃない!」
 ひとり、メプリは大声を上げる。ルミルが少し驚いたように単眼を見開いた。
「おや、戦いは弱っちかったクセに粘るじゃない」
「……何をした……!?」
 熱い下腹部と冷たい下着を感じながら、メプリはルミルを睨む。にぃっとルミルは歯を見せて笑った。
「さてね。分かるようにもうちょっと"強く"してみますか」
 ルミルの顔とメプリの視線の間に触手が割って入った。その触手の先端に付いている目玉がまた蛇のような瞳孔でメプリを見つめた。
これを見ていると良くない。そんな予感がして咄嗟にメプリは目をそらそうとした。だがもう遅い。
「あ、あ、あああ……」
 メプリの口から弱々しい声が漏れた。それと同時に四肢から抵抗の力が抜ける。だが腰は相変わらずもぞもぞと動いていた。そして彼女の目は、ルミルの触手の目に釘付けになっていた。ルミルが触手を動かすと、メプリは丁寧にそれを目で追う。
『綺麗……まるでガーネットみたい……じゃなくて……!』
 ぶるぶるとメプリは頭を振る。だがそうしてみても、無意識のうちに目はルミルの触手の邪眼を追ってしまう。
「な、何を……」
「何をしたかって? まだ分からないの? まあ、無意識のうちにやっちゃうことだからしかたがないか……」
 ルミルは肩をすくめた。そして種明かしをする。
「アタシたちゲイザーの特殊能力は『暗示をかける』ことさ」
 暗示とは、他者によって与えられた言葉などを論理的根拠なしに無批判に受け入れることにより、自らの考えや態度、行動に変化が生じることだ。しかしその言動には被暗示者の能動的な物は含まれていない。そこは命令と違うところだ。また、意識を植え付けて言動を無意識に変化させる物なので、術者の思い通りに操れるというわけでもない。
「つまるところ、最終的な行動はアンタたちがやっているのさ」
「何を言っているのか全然分からない……!」
 確かに分からないのだが、自分のこの発情や邪眼を追視する現象を自分がやっていると言われるのを否定したくて、メプリは叫んだ。やれやれと言いながらルミルは触手の拘束を解いた。どさりとメプリは地面に落ちる。そのメプリの前でルミルはあぐらをかいてみせた。
「じゃあ試しにアタシを殴ってみなよ。ほら、今のアタシは丸腰だよ?」
 邪眼も閉じてみせる。これでゲイザーは怪しげな術は使えないはずだ。転がっていたメイスをメプリは拾い上げる。
「でやあぁああ!」
 メプリは得物を振りかぶって踏み込む。メイスをゲイザーの無防備な脳天に叩き込もうとした。だがその手がピタリと宙で止まる。ルミルは動いていないし、魔法などを使ってもいない。自分でメプリは攻撃の手を止めたのだ。
「ど、どうして……!?」
「アンタに『魔物は仲良くすべき魅力的な友だち』『単眼や触手は気持ち悪いものじゃない』って暗示をかけたからね。でもそれだけだ。アンタ、自分の親兄弟や友だちをいきなり殺せと言われて殺せるかい? 無理だろう? それと同じさ」
「くぅうう……!」
 確かに、自分の親しい人や愛する人を殺せと言われたら抵抗があるだろう。その人たちへの気持ちを討伐すべき魔物にも抱いてしまっているのだ。
 悔しさにメプリは呻く。その手からポロリとメイスがこぼれ落ちた。堕ち始めたメプリを見てクククとルミルは笑う。
「抵抗する気はなくなっちゃった? そうだよね。魔物娘を始め、人を傷つけたくないと思うようになってきたし、アタシには叶わないと思うようになってきた。何より、ムラムラして気持よくなりたくて仕方がないんでしょう?」
 メプリの手足に触手が再び絡みつく。本当のところは目の前で自慰でもさせてさらに屈服させたいところだが、それはしない。自分でも言った通り、暗示と言うのはあくまで意識を植え付けて行動を変化させる物なのだ。相手に淫らな事に対する抵抗感や単眼への嫌悪感を消失させたりすることはできても、自慰を強制したりすることはできない。そこのところはファラオとは違うのだ。
「だからアタシがアンタを気持ちよくしてあげる♪」
「な、何を言って……あっ!?」
 驚いている間に、メプリの鉄の胸当てのベルトが引きちぎられる。丈夫な革でできているはずなのに、ゲイザーの触手はそれをまるで塵紙か何かのように破壊してしまった。先ほどの戦いで、物理攻撃ですら手加減をしていたらしい。魔物の実力を目にしてメプリは改めてゾッとする。
 しかし驚いている暇はない。胸当てを壊したルミルは旅装束も同じように破いていく。あっという間にメプリは下着姿にされてしまう。
「なんてことするんだ! や、やめろ……!」
「ふふん、そんなこと言いながら触って欲しいと思っているくせに。ブラの中では乳首がビンビンに勃って、ショーツの下ではオマンコがぐちゅぐちゅに濡れているくせに」
 ルミルがせせら笑う。図星だ。自分が身体を動かすたびに乳首が下着と擦れてしびれるような快感が走り、ショーツの下の秘裂は痛いくらいにうずいていた。ルミルが「自分は淫乱」「エッチな事が大好き」「気持よくなりたい」「目の前の単眼と触手が自分を気持よくしてくれる」などの暗示をかけたためだ。だがあくまで暗示。抵抗をなくしただけだ。故にそこから先はルミルがとどめを刺す。
 とうとうメプリの身体を最後まで守っていた物が取り去られ始めた。ブラが引きちぎられ、ぷるんと形のいい胸が支えを失って左右に広がる。
「ふぅん、アタシよりおっぱい大きいじゃん。ちょっと妬けるなぁ……」
 単眼をジトっと細めながらルミルがつぶやく。そう言う彼女の胸はメプリと比べると控えめだ。ルミルの触手がメプリの胸に巻きつき、むにゅりとくびるかのように揉みしだく。その胸に嫉妬をこめているかのように。
 その間に別の触手が蠢く。水気を吸ったショーツが破かれる。むき出しになった彼女の大事なところが物欲しげにひくついていた。
「や、やめろぉお!」
「いやだね。こんなに発情しきった人間のメスが目の前にいたら気持よくしてあげたいと魔物娘が思わないはずがないじゃん」
 そう言いながらルミルは拘束に使っていない触手全てをメプリに向けた。各々の先端に付いている目、全てが情欲に打ち震えているメプリを見ている。
「ほぉら。全部アタシの目だからアンタの、汗ばんだ肌も、尖った乳首も、本気汁垂れ流しているオマンコも、全部丸見えだよ?」
「……!? 見るな! 見るなぁあああ!」
「やれやれ……そうは言うけど本当は見られるともっと感じちゃうんでしょう?」
 次の瞬間、ルミルの目の一つがメプリの目先に突きつけられる。また暗示をかけるつもりだ。その視線を避けようとメプリは思ったが叶わなかった。すでにその邪眼を見るように暗示をかけられていたからだ。
 メプリに暗示がかけられる。途端にメプリは周囲の視線をいつも以上に感じるようになった。今なら暗殺者に背後から狙われても気づける気がする。だが今はそんな状況ではない。自分の全裸を見ているのは異形の、目玉のついた触手と単眼の魔物なのだ。羞恥心と恐怖が一気に煽られる。しかしその羞恥心と恐怖が自分の気持ちを性的に昂ぶらせてもいた。とろりと膣壁を愛液が伝い流れ、外へとこぼれ落ちるのをメプリははっきりと感じた。
「どう? 見られるだけでもイッちゃいそうになっているんじゃない?」
「あ、ああああ……やめ、やめ……」
「じゃあ、まずは一回、イこうか♪」
 メプリの嘆願を無視してルミルが楽しそうに言う。胸に巻き付いている触手二本と、股間のあたりにいた触手一本が目を閉じた。そしてそれぞれが愛撫を始める。胸にあった触手は先端で乳首を転がすように撫で、股間にあった触手はクリトリスに凹凸のある胴体をずるずると擦り付ける。
「ひゃぁあああ!?」
「あははっ♪ 少し前まで威勢良かった勇者も可愛い声を上げるじゃない♥」
「や、やめ……ひうぅう!?」
 快感から逃れようとするかのようにメプリは腰を暴れさせ、首を左右に激しく振る。しかし効果はない。触手は蛇のように執拗にメプリの性感帯を攻め続ける。
 メプリの声が昂ってきた。その身体に限界が迫っている。もはや暴れている腰が触手から逃げようとしているのか、逆に自分から擦りつけているのか分からない。
 ルミルは自分の触手で彼女を攻めながら、その瞬間を見逃すまいと注視する。
「やっ、あ、あああああっ!」
 一際強くメプリの身体が宙で跳ね上がる。達してしまったのだ。それを見てルミルは満足気に、しかし意地悪そうに目を細めた。
「イッちゃったね。アタシに触手で攻められて……アンタがイッてる時の様子、この目と触手の目でバッチリと見たよ」
「う、うぅうう……」
 空中で四肢を縛られてぐったりとしているメプリは呻いた。自慰は主神教団の教えに背いて何度かしたことがあったが、絶頂の経験はなかった。悪い感覚ではない。むしろ最高な気分だった。これを味わえるのなら教団の教えなどどうでも良くなる。
『いや、駄目だ……! それでは目の前の淫らで不浄な魔物と変わらないではないか……』
 頭の中でそう叱咤するが、その頭の声も弱々しかった。メプリの様子にルミルは全てを見破る。
「はっはーん、アンタ……イクのは初めてだったんだ? ふふふ、どう? 気持よかったでしょう? もっとイキたいでしょう?」
「ううぅ……」
 否定できない。ルミルの笑みがもっと広がる。さらにメプリに快感を叩き込もうと、ルミルの触手がドロドロになっているメプリの入り口をなぞった。
 快感にとろけていたメプリの顔から血の気が引き、顔が引きつる。
「ま、待て! そっちはやめろ! やめろぉおお!」
「……うるさいなぁ、せっかくアタシもエッチな気分で燃えてきたってのに……」
 興醒めだと言わんばかりにルミルはその単眼を怒らせる。その目がメプリの目を捉えた。
どくん
 一瞬、身体の血が逆流したかとすら思った。それだけ強い暗示をかけられたのだと、メプリにも分かった。
「な、何をした……?」
「さあね、すぐに分かるさ。それじゃ、本番と行こうか?」
「や、やだああ……うあっ!? ああああっ!?」
 拒絶の言葉を口にしたメプリの声が快感にまみれた絶叫に変わる。だが彼女の膣内にルミルの触手は潜り込んでいない。それだと言うのにメプリは声を上げ、達していた。身体を雑巾のように絞られているかのような快感にメプリは悶え、空中で悶える。
「あっ、あああ……はぁ、はぁ……これは……何を、した……?」
「暗示の応用さね。アンタが拒絶の言葉を口にするたびにイクようにしたのさ」
 息も絶え絶えのメプリに、ルミルは得意そうに説明した。
 最終的な反応、絶頂することに関してはメプリの意思は入っていない。そこは普通の暗示とは違う。拒絶の言葉を言う事自体はメプリの意思による行動であってルミルの意思はない。また、ルミル自身は暗示をかけた以外は何も彼女にはたらきかけておらず、操ることもできない。そこは暗示と同じだろう。
「他にもいろんなバリエーションがあったけどね。名前を呼ばれるとイッちゃうとか、金属音を聞くだけでイッちゃうとか……でも今回はこれが面白そうだったからそうしてやった。さぁて、どうなるかなぁ?」
「……!」
 ニヤニヤしているルミルをひと睨みしてから、メプリは歯を食いしばった。何も言わなければいいのだ。
 そんなメプリの努力を嘲笑するような表情をルミルは顔に浮かべた。何も言わずに触手をメプリの膣内に挿入させる。
「うわあああああっ!?」
 挿入の快感にメプリは宙で背を反らせた。オーガズムにこそ達しなかったが、固く閉じられていた口を開くには十分すぎる快感だった。
「気持ちいいでしょう? でもまだ挿れただけだよ? ほらほら、動かしちゃうぞー?」
「や、やめ……ぁあああああっ!」
 やめて、そう言おうとした瞬間、電気のような快感がメプリの身体を走りぬけ、彼女は身体を固くした。暗示によって達してしまったのだ。
「うーん、すごい締め付け♪ アンタ、なかなかの名器だよ。魔物になった時、かなり旦那泣かせになるだろうね」
 触手でメプリの柔肉を堪能しているルミルが楽しげに言う。肉体が鍛えられているか、彼女の膣肉も引き締まっており、男性器を咥えこんでいたら精巣から精液をストローのように吸い立て、搾りとることだろうとルミルは確信していた。
 メプリが一人勝手にオーガズムを迎えてしまったが、本番はこれからだ。ルミルはゆっくりと抽送を始める。ずちゅ、ぬちゅ、と卑猥な音がメプリの股間から響いた。膣壁を触手で擦られるたびに、メプリは悶える。
「入り口あたりは感度も良好♪それなら、ここはどうかなぁ?」
 擦る動きを変え、ルミルは触手を強めに突き入れた。メプリの子宮口がズンと突かれる。
「ひぐ、ううっ」
 腹に重い一撃を食らったかのような呻き声がメプリの口から漏れた。だがその声には喘ぎ声のような物も混じっている。それを聞き逃すルミルではなかった。
「そのうち奥を突かれるのも好きになるかもね。じゃあ、今のうちに開発しようじゃないの♪」
「そ、そんな! やめ……ああああっ!?」
 うっかり、やめろと叫びかけてしまった。掛けられていた暗示が発動し、メプリの身体が本人の意思とは無関係に絶頂する。
 好機とばかりにルミルは笑い、小刻みに触手を動かした。こつこつと先端でメプリの子宮口をノックする。
 慣れていない子宮口への攻めも、快感の最高潮の時に行われると、身体はそれも快感と勘違いした。絶頂が過ぎ去ったころには、先ほど以上に奥への攻めにメプリは快楽の喘ぎ声を漏らすようになっていた。
「ほらほら、いい感じになってきた♪ もっとイッちゃって、もっと奥で感じられるようになりなよ♪」
「ぐ、ぐぅうう……」
 一度はミスを犯したが、二度目はない。そう言わんばかりにメプリは歯を再び食いしばった。一瞬ルミルが不機嫌そうな表情をするが、すぐに嗜虐的な笑みを浮かべる。この強情な獲物を自分の手で堕とすというチャレンジ心のような物を抱いたのだ。そして勝ち目は十二分にある。
 一本の触手がメプリの首に巻きつく。その触手と腕を縛っている触手を使って、ルミルはメプリの姿勢を仰向けの状態から屈曲させた。
「ほぉら、見てごらん」
 暗示をかけられていたわけでもないのに、思わずメプリはルミルが言うままに見てしまった。強制的にとらされた姿勢によって突きつけられた、目の前にある光景。それはルミルの触手が自分の秘部に深々と潜り込んでいる様子だった。触手は自分の体液によって妖しく濡れ光っている。ルミルが触手をうねらせ、抽送させるたびにぐちゅぐちゅと行儀の悪い咀嚼のような音が自分の股間から立った。
 あまりの光景にメプリは自分の頭に血が上るのを感じた。上りすぎて頭の血管が切れたのではないかと思うほどだった。
「や、やだぁ、だあああああっ!」
 がくんとメプリの腰が揺れる。またやってしまった。怒りと羞恥のあまり思わず「やだ」と言ってしまった。その拒絶の言葉は自分の身体を絶頂させると分かっていたはずなのに。
 計算通りとばかりにルミルが笑った。対してメプリはもう何も見まい、声も上げまいと目を固く閉じ、歯を食いしばる。だがルミルは笑うのをやめない。
「あっははは! それで解決するとでも思っているの?」
「ひゃっ!? あうああああっ!」
 膣内に潜り込んでいる触手がうねり、それに反応して固く閉じられていたメプリの口から嬌声が上がる。暗示により発情した身体に同性が相手でも耽溺させる魔物娘による愛撫には教団出身の女勇者であっても無力であった。
 やめてと言葉を紡ぎかけた口がそれを止めようが開いたまま止まる。押し殺したような声がメプリの口から漏れた。
「ほらほらぁ、いつまで我慢が続くかな!?」
 ルミルによる触手の抽送が速くなった。女勇者の花弁はひっきりなしに押し込まれてはめくれあがり、中から蜜が掻き出される。溢れでた愛液は触手を伝い、ぽたぽたと洞窟の床に滴り落ちていた。
 だがメプリはそれに気づけない。気づく余裕などない。最後にかけられた強力な暗示を抜きにして、触手による愛撫で達しそうになっていた。それに耐えようと目を強く閉じ、身体を固くしている。かつ激しく声は上げながらも拒絶の言葉だけは言わないように意識しているのだ。自分の身体の様子など分かるはずがない。それでもメプリの身体には絶頂が着実に近づいていた。
意識を散らそうとルミルは愛撫する箇所を多くする。メプリの耳に触手を伸ばす。そして先端でくすぐった。狙い通り、オーガズムを我慢しようとしている メプリの意識が散る。しかしもうひと押しだ。
 触手がもう二本、下半身へと伸びていった。そのうちの一本が膣より背中側にある小さなすぼまりをつつく。
「えっ!? そこはダメっ! だめぇええええええ!!」
「あ……」
 ルミル自身も少し油断していた。まさか肛門を突いただけで拒絶の反応を示し、そして反応の鍵となる言葉を口にするとは思ってもいなかったのだ。
 がくりと首を垂れて荒い息をついているメプリを見ながらルミルはポリポリと頬を掻いた。
「あー……そうだよね。そりゃアナルをいきなり攻められたら驚くよね……」
「……」
 メプリが顔をゆっくりと上げる。その目には当然だと言わんばかりの非難の目、アナル挿入を避けられるのではないかという期待、それに反して菊座への攻めも味わってみたいという欲望が浮かんでいた。
「……ま、驚いたからと言ってアタシはやめるつもりはないんだけどね♪」
「かはぁああっ!」
 歌うような、それでいて容赦のない残酷な言葉とともに、ルミルの触手がメプリの排泄器官にねじ込まれた。本来出すための孔であるそこは、しかし度重なる絶頂にて弛緩しており、いともたやすく異物の挿入を受け入れていた。
「あっさりと入っちゃったな。やっぱりアンタ、淫乱だわ」
「うっ、あう……あがっ……!」
 応える余裕はメプリにはない。肛門に入った触手がもたらしているのはそこだけの快感ではない。膣内に潜り込んだ触手の存在感も増すことになっていた。これまでに経験したことのない快感にメプリは酸欠の魚のように口をパクパクさせる。
「ほぉら、こうすると効くでしょう?」
「うわあああああっ!?」
 前後の孔に入り込んでいる触手が、間を隔てている肉壁をこすり合わせる。肩凝りをほぐすかのようなじんわりとした快感とともに、ビリビリとしびれるような快感が腰から全身へと駆け巡る。
 さらに、膣に入り込んでいる触手はこすり合わせる動きだけでなく、その幹で抽送の動きとうねる動きを同時に行っていた。
「あ、あはああああっ!」
 メプリの背が反り返り、痙攣する。ついに彼女は暗示の効果なしにアクメに達した。
 だが絶頂を見させたからと言って手を緩めるルミルではない。達している最中のメプリに抽送を続ける。
「んああああっ! やめ、やめぇあああああっ!」
 クライマックス中の身体は敏感だ。その状態での攻めはこの上ない快楽であると同時に苦痛も伴う。やめるように懇願しようとしたメプリだったが、その言葉は自分の身体をさらなる絶頂に追いやる引き金だ。メプリの身体がまた跳ねる。
「こわれ、ちゃうぅ……」
「大丈夫大丈夫。魔物娘がやってるんだからそこら辺は平気だって。ほらほらほらぁ! イキ狂っちゃいなよ」
「やぁあああああっ!」
 ぐりんとメプリの目が上を向く。最大級の快楽で思考力も意識力も奪われてしまっている。反射的に拒絶の言葉を吐いてそれでまた達してしまう。メプリに取って最悪のサイクルに陥ってしまった。しかし当のメプリの表情は、どこか至福を感じさせる。彼女はメスの快楽に屈服しつつあった。
「いやらしい姿になって来たねー。アンタのその姿、この目と触手の目でバッチリと見ているよ」
 その様子をルミルは無邪気な笑みを浮かべ、相変わらず彼女を嬲りながら単眼と触手の目で見続けるのであった。
「股開いてオマンコにもアナルにも触手をぶちこまれて喜んで、マン汁がだらだら出てグチュグチュ音を立てて、体中汗まみれで、アヘ顔で何度もイッて、よだれ垂らして……いやぁ、変態女勇者、ここに極まれりっ、だね!」
「ダメッ! 見ないで! 見ないでぇええああああ!!」
 ほとばしる絶叫。繰り返されるアクメ。痙攣する身体。淫らで狂おしい、魔物娘による意趣返しはまだまだ続く。



「だめぇ……んふあぁああ! あうぅ、イイ……ダメぇ、またイぐぅ……」
 ルミルの触手に犯されてどれくらいの時間が経っただろうか。もう何度、触手の愛撫とゲイザーの暗示で達したか分からない。
 身体は快楽に慣れ、まるで中毒にでもなったかのように貪欲にそれを求めようとする。少し前までは教団の女勇者だったメプリは今では前の孔にも後ろの孔にも触手を深々と咥え込み、腰をくねらせる淫らな女になっていた。弱々しく嬌声を上げる口からはだらしなくよだれがこぼれている。漏れている体液はそれだけではない。
 宙に吊るされている彼女の足元には水たまりが広がっている。それは彼女の愛液と小便だった。快感で緩みきった彼女はその体液を留めることができなかったのだ。
「だらしないねえ……アンタ、化物呼ばわりした奴にここまでされたんだよ?」
 メプリをそこまで堕とした張本人、ゲイザーのルミルは笑いながら言った。だが彼女はまだ満足してない。メプリの堕落はまだ極まっておらず、また彼女から肝心な言葉を聞き出してないのだ。
「さぁてと、口だけ達者なおてんば勇者さん。改めて聞こうか。アタシの姿、どう思う?」
 触手で拘束されて吊るされているメプリの前に、ルミルはその姿を晒す。大きな丸い目を顔の中央に一つだけ持ち、腰からは無数の触手が生えていてそれぞれの先端に目玉がついている、禍々しい姿だ。
 暗示をかけられ、また快感を徹底的に叩き込まれて調教された女勇者は答えた。
「はい……綺麗だと、思います……」
「そう。じゃあ、アンタもなってみたいと思う? さっきは化物呼ばわりした、ゲイザーに?」
「……! ……なりたい! なりたいですぅ! エッチで綺麗で人を気持ちよくできるゲイザーになりたいですぅ!」
 魔物になりたいかどうかに関して、暗示はかけられていない。故に今のルミルに対するメプリの答えは本心だ。
 自分のことを化物呼ばわりした勇者が、自分の触手をヴァギナとアナルに咥え込み、淫らなことを叫び、自ら魔物になりたいと宣言する。ここまでに自分が堕とした。ルミルの顔に会心の笑みが浮かんだ。
「それじゃあお望み通り、アンタをアタシと同じゲイザーにしてあげる……!」
 ルミルの顔にある目と触手にある目、全てがメプリに向けられ、カッと見開かれる。その目からピンク色の光線が放たれた。
「うあああああああっ!」
 光線に打たれたメプリの身体がアクメに達したかのように反り返る。光に包まれたそのシルエットが人間の物から少しずつ変化が現れた。
 腰から草でも生えるかのようにふさふさとした尾が伸びる。続いてその尾を掻き分けて幾本もの触手が伸び、ひとりでにうねり始めた。
 そして光が消え、メプリの顔が明らかになる。閉じられている彼女の目が開かれた。顔の中央に一つだけ存在している、ガーネットのような黄色地に紅い瞳を持つ邪眼が。
「くっくっく……ようこそ、こちらの世界へ♪」
 ルミルは愛護的にメプリの身体を床に置き、そして膣と肛門に挿入していた触手を抜いた。抜去される際、メプリの口から声が漏れた。その嬌声には嫌悪感は一切ない。彼女は完全に、快楽に貪欲な魔物娘へとなっていた。
 触手の先端についている目も一斉に開かれる。その目でしげしげと自分の様子を観察した。
「すごい……私、本当にゲイザーになった……」
「そうだね。どうよ、人間やめた新しい身体は?」
「いい……すごくいい……」
 初めてゲイザーを見た時はあれほど嫌悪していたその姿だったが、今はこの上なく魅力を感じる。この容姿と邪眼を持ってしたら、どんな男も落とせる自信のような物すら沸き起こっていた。
 元は女勇者だったゲイザーは満足そうに、快感の余韻でまだ焦点が少し合っていない目を細めた。
 そして女勇者を自分と同じ存在に変えたゲイザーもまた、自分のした事に対する達成感と新たな同胞の誕生とその未来の幸せに目を細めるのであった。


 ゲイザー……大きな単眼と目玉のついた無数の触手を持つ魔物娘だ。
 その姿は異様かもしれないが、決してバカにしてはいけない。彼女らを侮辱した者はその邪眼によって暗示をかけられ、容姿に対する嫌悪感を消し去り、身体を使って彼女らの魅力を叩き込まれることになる。
 もちろん、教えこむのは男とは限らない。彼女らの瞳は同性であろうとおかまいなしに籠絡する。そして調教し、魔物の世界へといざなうのだから……
13/09/30 21:24更新 / 三鯖アキラ(旧:沈黙の天使)

■作者メッセージ
私が純愛甘口SSしか書けないと思ったか!? 残念だな! 触手陵辱は好みなのだよ!!(ただし、リョナ、流血、死亡は除く)
まあ、触手は『前も後ろも』で、ケンタウロスの速水風歌で書きましたけどねw
そんなわけでゲイザーSSでした。
暗示と言うと某同人ゲームダウンロード販売サイトで「男がオナニーをすると同調して感じてイッてしまう」「名前を呼ばれるとイッてしまう」「シャーペンのクリック音でイッてしまう」って内容の作品があり、そこからヒントを得て「拒絶の言葉を口にするとイッてしまう」を「見ないでぇえ!」と一緒に考えつき、このようなSSになりました。
まあ、暗示の定義から調べなおしてその前段階もちゃんと書くことにしましたが。
魔物の中でもかなり過激な感じのSSになり、私のSSの中でも結構毛色が異なるSSとなりましたが、いかがだったでしょうか?
次回は甘口SSになるかなぁ?
今後ともみなさん、どうぞよろしくお願いします。

さてと……チャージアックスの練習でもしてくるか(えーっ!?)

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