連載小説
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(113)アークインプ
山の中の廃砦に住み着いたインプどもを追い払え。
いつもと変わらない、簡単な仕事のはずだった。



「がおー!」
露出度の高い衣装を身につけた幼い少女が、そう声を上げながら駆け寄ってくる。
頭には角、背中からは羽をはやした、いわゆるインプという魔物だった。
インプは身には魔力を帯びており、その魔力の影響を受ければ、彼女のタックルを全身で受け止め、一緒に倒れ伏したいという衝動に駆られるだろう。
だが俺は、腕を広げて腰を落とす代わりに、軽く拳を握って掲げた。
そして、インプが俺の腹に体当たりする前に、彼女の頭に拳骨を降りおろした。
ごちん、と鈍い音が響き、衝撃が拳に伝わる。
「んがっ!?」
インプは頭に降りおろされた拳にそう声を上げて倒れ込み、涙目になりながら身を起こした。
「い、いたい・・・」
「痛いか?もう一発ほしいか?」
インプは涙目のまま、首を左右に振った。
「だったら魔界に帰っておとなしくしてな。二度と悪さをするんじゃないぞ」
俺は彼女にそう言い聞かせると、床に座り込む彼女をそのままに歩きだした。
町外れの、山の中にある廃砦に入ってすでに一時間ほどか。
依頼によれば十数体のインプが住み着いているという話だったが、すでにそのほとんどをこうして拳でおとなしくさせていた。
魔王の交代に伴い、大部分の魔物が魔力で男を発情させて襲うという方法を採るようになったおかげで、俺のような人間が仕事をやりやすくなってきた。
俺はいわゆる、魔力が通じにくい人間だ。
血筋か生まれ育った場所によるものかはわからないが、俺は魔力の影響を受けづらく、通常の人間ならば興奮のあまり身動きがとれなくなるほど濃厚な魔力の中でも平然としていられるらしい。
だが、ただ魔力に強いだけであって、俺自身はそこまで強くはなかった。
しかし魔王の交代によって、魔物が命ではなく男を求めるようになってからは、抗して冷静に魔物の相手ができるようになった。
全く、魔王様様だ。
俺は、砦の廊下を進みながら、脳内の見取り図と自身の場所を照らしあわせた。
すでに砦の大部分を回っており、残っているのはお偉いさん用の部屋だった。最後の一部屋を確認すれば、砦にいるインプの片づけが終わる。
拳骨のおかげで、大部分のインプはいなくなっているだろう。
仮に俺に対して敵意を抱えているものがいたとしても、また返り討ちにすればいいだけのことだ。
そう考えながら俺は廊下を進み、最後の部屋の前に立った。
「・・・」
扉に手を当て軽く押すと、錆びた蝶番が音を立てながら扉が開いた。
「あ、いらっしゃい」
すると、大きなベッドの上で横になっていたインプが、俺に向けてそう声を上げた。
「へえ、ここまでこれたんだ。すごいね」
白髪か銀髪か、いずれにしろ真っ白な髪の毛のインプの声を聞き流しながら、俺は扉の左右に目を向けた。
どうやらこの部屋にいるのは、目の前のインプだけのようだ。
「あれだけいたボクの手下をなぎたおし、よくここまで来た!ほめて使わす」
俺は彼女の言葉を聞きながら、かつかつと部屋に入り、まっすぐにベッドに向かった。
「褒美として、このボクを・・・って、まだ話の途中だよ。止まって」
インプが俺に命ずるが、聞く理由はない。
「ほら、止まって」
ベッドの上に身を起こしたインプのそばまでくると、俺は拳を固めた。
するとそこでようやく危機感が芽生えたのか、インプが表情をこわばらせた。
だが、逃がす隙は与えない。
俺は彼女の白い頭めがけて、拳を振りおろした。
「・・・!」
インプが顔を伏せ、頭をかばうように交差させる。
その瞬間、彼女の体が一瞬光ったように見えた。
実際のところ、なにが起こったのかはわからない。だが、インプの体から何かが放たれ、俺の全身を打ったのは確かだった。
「・・・っ!?」
全身を打ち据える何かに、俺は一瞬声を漏らして、真後ろにひっくり返った。
尻餅をつき、背中を打って、廃砦の床に仰向けに横たわる。
「な、なんだ・・・!?く・・・!」
身を起こそうとするが、手足に妙に力が入らず、指先が床をひっかくばかりだった。
「・・・あれ・・・?」
いつまで経っても襲ってこない頭への衝撃と、代わりに届いた俺の転倒音と声に、インプは顔を上げた。
そして彼女は、ベッドの上から俺の方を不思議そうな目で見ていた。
「おい・・・!なにした・・・!?」
動かない手足をもがかせながら、俺はインプに問いかけた。
「な、何も・・・」
「じゃあ、何で俺は動けないんだよ!?」
俺の問いにインプはうーん、と考えてから、口を開いた。
「そうだ。動いていいよ」
彼女は許可の言葉を口にするが、そんなものでどうにかなるはずもない。
「何言ってるんだ、お前・・・」
「あれ?じゃあ、立って、起きて、歌って」
インプは次々に簡単な命令を連ねるが、そんなものでは俺の体は動かない。
仮に俺の体が自由だったとしても、無論命令に従う気もなかったが。
「あれ?・・・動かないの?」
「動けないんだよ」
見ればわかるようなインプの質問に、俺は噛みつきたくなる衝動を両手両足に力を込めて発散させながら答えた。
「・・・初めてだ・・・」
するとインプは、俺の方を見ながら、静かに呟いた。
「初めてだ・・・ボクの命令通りに動かない男の人って・・・初めて・・・!」
瞬間、インプの表情がぱっと、花でも咲いたかのように明るくなった。
「命令・・・?」
俺はインプの言葉に、何年も昔に聞いた話を思い出した。
生まれながらにして絶大な魔力を備えた、アークインプ。本人さえも無自覚の内に放つ魔力は、インプを従え、人間を操るという。
これまでの言動からすると、彼女はアークインプなのだ。銀髪という特徴や、インプたちを従えるという習性も、目の前のインプと合致している。
「さわるよ・・・?」
インプはベッドを降りると、仰向けに倒れる俺のそばに歩み寄り、頬に手を伸ばした。
彼女の細い指が、俺の肌に触れる。
すべすべとした指先から、俺の頬に痺れのようなものが流れ込んだ。
「・・・すごい・・・何ともないんだ・・・」
彼女の言動からすると、魔力を直接流し込んだのだろう。
恐らく、普通の男ならばこのインプに対して強烈な殺意を抱いていたとしても、一瞬のうちに理性ごと消え去り、インプに対して劣情を抱かせる。
これまで彼女が相手してきた男は、そんな反応をしていたに違いない。
「あは、ボクに触られて、そんな目で睨んでくるなんて・・・!」
敵意のこもった視線に貫かれて、アークインプはぶるりと体をふるわせながら、恍惚とした表情でそう呟いた。
「キス・・・したらどうなるかな・・・?」
「やめろ・・・!」
彼女の言葉に、俺は低く返した。
こんな、拳骨一つで大人しくさせられるはずのインプ相手に、身動き一つできないだけでも屈辱だ。だというのに、彼女はさらにキスまでしようとしている。
ほんの少し力を加えれば命を奪える状況だというのに、あえてそれをしない。
完全にアークインプは、俺を弄んで楽しむつもりのようだった。
「ふふ、捕まえた・・・」
彼女は俺の顔を、左右から手で挟んで捕らえると、どこかうれしそうにそう言った。
そして両の目蓋をおろすと、ゆっくりと顔を近づけてきた。
「く・・・!」
低く声を漏らしながら、全身に力を込める。
だが指先が少々痙攣して床をひっかくばかりで、顔を背けることすらできなかった。
俺はせめてもの抵抗のつもりで、口を一文字に結ぶと、唇に力を込めた。
数秒後、アークインプの唇が、俺の固く引き締まった唇にそっと触れる。
柔らかな感触が伝わり、軽く唇を吸った。
「ちゅ・・・ん・・・」
俺の唇を軽く吸いながら彼女は声を漏らし、顔を離した。
唇は柔らかだったが、虜になるほどではない。俺は、口元に残る感触を振り払うと、彼女を睨みつけた。
「あぁ・・・そんな目で見られるの、初めて・・・!」
アークインプは俺の視線に、どこか恍惚とした口調で言った。
彼女の放つ魔力に、多くの男が近づけば骨抜きにされ、唇を吸われれば身も心も捧げてしまっていたのだろう。
だが、俺は体質のおかげで、体の自由は奪われてはいるものの、心だけは屈せずにすんでいる。
そんな俺の反応が、彼女にとって新たな刺激として感じられているのだろう。
「もっと、ボクを見て・・・」
彼女はそう言うと、仰向けになる俺の腹にまたがり、上体を倒してきた。
両手で頬を押さえたまま、俺の瞳を彼女の濡れた目がのぞき込む。
アークインプの瞳には、彼女自身を刺し貫く視線に対する、異常な興奮が浮かんでいた。
「うぅ・・・」
突然変異種とはいえ、ただのインプにすぎない彼女にまたがられていることに対し、俺は情けなさを覚えた。
「悔しいの?ボクに向かってきた男の人も、最初だけそんな目をしてたよ・・・」
俺の目に浮かんだ感情を読みとったのか、アークインプが顔を近づけたまま言う。
「でも、悔しいのはほんの最初だけで、すぐに気持ちいいのに溺れていって・・・ふふ、こんなに悔しがられるのも、初めてだ・・・」
彼女は目を細め、くすくすと笑った。
「くそ・・・」
俺はそう漏らすと、せめてもの反抗として両の目蓋をおろした。加えて口を一文字に結び、顔の筋肉に力を込めて強ばらせる。
睨んでも、感情を露わにしても喜ぶというのなら、こうして表情を完全に押さえ込んでしまえばいい。
根本的な解決になっていないのは百も承知だが、それでもこうしていないと耐えられそうになかった。
「うふふ、我慢して・・・じゃあ、こうしようっと」
アークインプの声が、目蓋の裏の闇の中で響き、俺の頬から彼女の両手が離れた。
顔を撫でていた、彼女の放つ体温や吐息が消え去り、アークインプが離れたことがわかる。
すると、かすかな衣擦れが響いた。
肌と衣服が擦れる音だ。まるで、誰かが服を脱いでいるような。
「ん・・・」
俺の脳裏で、彼女が何をしているのか浮かびそうになった瞬間、彼女が声を漏らした。
アークインプの一声は、俺の脳裏に浮かんでいた衣服を脱ぎつつある彼女の姿に、鮮烈な現実感を与えた。
目を閉じているというのに、俺にまたがりながら上半身の肌を晒していく彼女の姿が見えるようだった。
そして、腹の上から彼女の重みが消え去り、数度の衣擦れを経てふぁさ、と布が床の上に落ちる音がした。
俺の脳裏のアークインプは、もはや一糸纏わぬ姿になっていた。
「ふふ、今ボクがどんな格好してるか・・・わかる?」
やや高い位置から、彼女の声が響いた。聞いてはいけない。
「あなたに睨まれて、全身がゾクゾクして、熱くなって・・・ふふ、脱いでもまだ熱いなんて・・・」
腕でもさすっているのだろうか。肌と肌の擦れあう音がする。
「何でボクの虜にならないのかはわからないけど、もっとあなたを見せて・・・どこまで耐えられるか、見せて・・・!」
その声と同時に、腹の上に重みが戻った。
そして、体を前後から挟み込む軽装鎧を留めている紐に触れると、彼女は紐を解いた。
軽装鎧がはがされ、シャツのボタンが一つずつ外れていく。
アークインプは、俺のシャツを左右に開くと、露わになった胸板に直接触れた。
「ああ、温かい・・・」
嬉しそうなアークインプの声が響き、彼女の指が胸の上を這い回る。
それなりにある胸板の筋肉をなぞり、皮膚と筋肉の作り出す凹凸に沿って指が動く。
微妙なくすぐったさが胸に生じ、俺の体を小さく震わせた。
「ん・・・気持ちいいのかな・・・?」
「違う、くすぐったいだけだ・・・」
「やっと口を開けてくれたね」
彼女の言葉に、俺は自分の失敗に気がついた。
全力でしかめさせていた表情をゆるませ、思わず声を出してしまったからだ。
「普通の人なら、もう意味のある言葉なんて言えなくなってるよ・・・」
胸から腹へと、撫で回す範囲を広げながら、アークインプが言った。
「体をがちがちにして、おちんちんびくびくさせながら、うあーとかああーとか・・・まるでケダモノみたい」
魔力によって理性を奪われ、発情させられた男に比べれば、俺は正気を保っているだけましだ。
それに、彼女の『技術』は魔力の後押しあってのもののようだ。ならば、正気を保っている俺ならば、耐えられる可能性はある。
「どこまで頑張れるか・・・いっぱい、我慢してね」
その言葉の直後、俺の首筋をなま暖かい風が撫でた。
アークインプの吐息だと気がついた直後、首筋に濡れた柔らかいものが触れる。
舌だ。アークインプが、舌で俺の首を舐めている。
首筋から生じたくすぐったさが、直接俺の頭に入り込んだ。
思わず声を漏らしてしまいそうな感触に、ほんの少しの快感が混ざっていた。
「う・・・!」
俺は首筋を這う甘い感触を堪えながら、声を漏らした。
全身の力みを強めるが、その間にもアークインプの舌は俺の首を舐め続けていた。
唾液が皮膚に擦り込まれ、柔らかな舌肉が首筋の血管をなぞる。
ほんの少し歯を立てられれば、たちまち大出血しかねない場所への愛撫は、俺に快感とともに幾ばくかの恐怖感を与えた。
だが、恐怖のもたらす背筋のゾクゾクする感覚は、快感のもたらすものに混同されていく。
「くぅ・・・!」
「ん・・・」
俺が声を漏らすと同時に、アークインプの手が俺の胸板から腹筋をなぞり、股間に触れた。
ズボンの下では、いつの間にか肉棒が固くなっており、彼女の指が触れたことでびくびくと脈打った。
首筋から鎖骨へと舌を移しながら、彼女は肉棒をまさぐる。
ズボンの布地ごと肉棒をつかみ、軽く擦り、形をなぞる。
ぺにすへの直接的な刺激は、俺の意識に堪えがたい快感としてたたき込まれていく。
加えて、目を閉じてるせいで肌や性器への刺激が、いつも以上に強く感じられた。
「く・・・!」
俺は低くうめくと、目を開いた。
天井が目に入り、胸板を這う舌や、ペニスを掴む指の感覚がいくらか紛れる。
だが、快感が消えてなくなるわけではなかった。
「はぁ・・・はぁ・・・」
口を開き舌をつきだしたまま、アークインプが荒く呼吸を重ねた。
屹立をまさぐる指の動きも、いつしか激しいものになっている。
俺は、改めて気がついた彼女の様子の変化に、目だけを下方に向けた。
すると、胸板に顔を寄せるアークインプの姿が目に入り、彼女の頬が紅潮しているのが見えた。
大きく開いた口からは、艶めかしく光を照り返す舌が突き出されており、顔の赤みと相まって非常に淫らな気配を醸し出していた。
いや、事実そうだった。アークインプは、その内側に抱え込んだ情欲を露わにし、見目幼い少女の姿からかけ離れた淫らな気配を纏っていた。
淫魔。
その名に違わない姿だった。
「ん・・・」
彼女は舌を引っ込めると、ついに俺の胸板の一点、平らな乳首に吸いついた。
乳輪も薄く、胸にとりあえずへばりついているといった部分だったが、アークインプは唇をすぼめて吸いつき、うまそうにそこを口中で舐めた。
「う・・・ぐ・・・!」
今まで全く意識してこなかった箇所への、情熱的なキスに俺は思わず声を漏らしていた。
すると彼女の指がズボンから一度離れ、ベルトに触れる。
腰のあたりを締め付けていたベルトをゆるめ、アークインプはついにズボンの内側に手を差し入れた。
易々と彼女の手は下着の内側に入り込み、二重の布地で押さえつけられていたペニスに直接触れる。
布地に隔てられていないアークインプの指は、非常にすべすべとしていた。
ゆっくりゆっくり、彼女の指が肉棒をしごき、屹立の猛りを強めていく。
幾度か程良い値段で娼婦に相手してもらったことはあったが、アークインプのもたらす快感は娼婦たちのそれ以上だった。
「く、くそ・・・!」
顎に力を込め、奥歯をぎりりと鳴らしながら、おれはこみ上げてくる射精感を堪えた。
魔物相手に、しかもこんな少女のような姿の魔物に、あっと言う間に達せられるのを避けるためだ。
娼婦の手技でも多少の我慢はできた。だがそれも娼婦が、俺が長く楽しめるようにと手加減してくれたからだ。
アークインプの指の動きに手加減はなく、むしろ少しでも射精に近づけようとしているようだった。
にじむ先走りを親指で亀頭全体に塗り広げ、裏筋を四本の指で順番に圧迫し、ゆっくりと扱く。
彼女の手の柔らかさや、指の腹のなめらかさ、そして繊細な指使いが俺を徐々に限界へと押し上げていく。
「・・・・・・!」
頭蓋骨の内で、みしみしと奥歯が軋む音がした。
だが、それでも脳裏を渦巻く快感は、俺の意志とは裏腹に肉棒の脈動を強め、腹の内で渦巻く感覚を大きくしていった。
そして彼女の握る指を押し返すほどにペニスが脈打ちだしたところで、彼女がひときわ強く俺の乳首を吸った。
「んちゅ・・・」
「っ!」
胸板に快感の火花が飛び散り、俺の頭の中に蓄積されていた快感が、ついにはじけた。
指一本動かぬはずの体がびくんと震え、腰が跳ね上がる。同時に、肉棒の先端から堰を切ったように、煮えたぎる白濁が噴出した。
亀頭に刻まれた鈴口が大きく広がり、尿道を押し広げながら精液がほとばしる。
液体しか通らぬはずの尿道を、精液の粘りがごりごりと擦っていく。
俺は絶頂の快感に理性をなぎ倒され、肉棒がズボンと下着の内にあることも忘れ、白濁を迸らせ続けた。
下着の布地に精液がへばりつき、肉棒とアークインプの手をぬらす。
だが射精はほんの数度繰り返した程度では収まらず、肉棒と彼女の手をベチャベチャに濡らしながら、延々と続いた。
下着の布地を精液の水分が通り抜け、ズボンに染みができる。
まるで失禁したかのようだが、本当に失禁しているのではないかという勢いで精液は迸っていた。
そして、俺の肉棒はたっぷり数十度の脈動を経て射精の勢いを弱め、ついに数度の空打ちを経てから射精を止めた。
脳裏から全身にあふれだし、意識を思いのままに翻弄していた快感の渦がふっ、と気配を消し、絶頂の余韻だけが俺の体に取り残された。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・うぅ・・・」
俺は疲労とけだるさに荒く呼吸を重ねながら、下着の内側の感触に声を漏らした。
「あぁ・・・こんなにいっぱい・・・」
アークインプが俺の胸板から顔を離し、唇と乳首の間に唾液の橋を架けながら、うっとりとした口調で呟いた。
彼女は肉棒から指を離すと、下着と下腹にへばりつく精液を指ですくいとりながら、ズボンの内側から手を抜いた。
アークインプの目の前、俺の胸板の上に掲げられた彼女の手は、文字通り精液でずぶぬれになっていた。
指先についている白濁は、手を抜く際に意図的に付けたものだろうが、それでも白濁にまみれていることに変わりはなかった。
「あは・・・ん・・・」
彼女は人差し指を伸ばすと、口を開いて精液塗れのそれを咥えた。
飴でも舐めしゃぶるかのように、うっとりとした顔で彼女は自信の指を吸い、ちゅぱちゅぱと音を立てた。
そして精液の味がしなくなれば、今度は中指、薬指と、指を一本ずつしゃぶっていく。
指が終われば、今度は手のひらと手の甲。肌にへばりつく白濁を、口を開けて舌を突き出しながら、彼女は舐めとっていった。
胸板に顔を寄せていたのを見下ろすしかできなかったため、先ほどは舌の動きはよく見えなかった。
だが、こうして自分の手をなめるアークインプの姿は、見ているだけでも肉棒に舌を這わせられているかのように、淫らな気配を放っていた。
やがて、アークインプの手に塗れていた白濁が、すべて彼女の唾液に代わったところで、ようやく彼女は口元から手を離した。
「はぁ・・・美味しかった・・・」
ほっ、と息をつきながら、彼女は俺の方を見た。
「あなたも気持ちよかったでしょ」
「・・・・・・」
言葉での返答の代わりに、彼女への敵意を燃やしながら、俺は沈黙で応じた。
正直なところ、気持ちよくはあったが、それを認めてしまえば魔物に屈したことになってしまう。
もう少し、彼女が飽きるまで正気を保つことができれば、勝機はある。
「ふふ、そうやってだんまりっていうのも・・・いいね」
彼女は一度俺の顔に口元を寄せると、生臭い唇で頬にキスをした。
柔らかくはあったが、俺の精液の臭いがする。口へのキスでなくてよかった、と思いたい。
「下着が濡れて気持ち悪いだろうから、脱がすね」
彼女はそう言うと、俺の上から立ち上がった。
衣服を脱ぎ捨てているため、彼女の小振りの乳房屋無毛の股間が俺の目に晒されるが、彼女は気にする様子もなく、俺のズボンに手をかけた。
短いかけ声とともに、ズボンとした戯画両足から引き抜かれ、白濁塗れの股間が露わになる。
「あは、べちょべちょ・・・!」
アークインプは嬉しそうにそう言うと、手にしていたズボンを放り捨て、俺の目に背を向けながら、胸の上に腰を下ろした。
「ふふ、ボクのあそこの感触・・・わかる?」
左右の尻と太腿、そしてその間の軟らかな肉の感触を強調するように、彼女が腰を揺すった。
そして彼女は腰を落ち着けると、俺の肉棒に手を伸ばした。
白濁塗れのペニスを掴み、手を上下に動かす。
「にゅるにゅる・・・にゅるにゅる・・・」
精液のぬめりを、口で表現しながら、彼女は肉棒を引き抜かんばかりの力で肉棒を握りしめてはゆるめつつ、扱いていた。
先ほどの、ズボンの下での愛撫が揉むことに重点を置いていたのに対し、今の彼女の手の動きは摩擦に重きを置いている。
俺自身のはなった精液のぬめりを借り、彼女の指がぬるぬると屹立をこすっていく。
「う、うぅぅ・・・!」
ついさっき絶頂したばかりだというのに、俺の体内では再び絶頂の予感が芽生えつつあった。
肉棒の脈動が徐々に強まり、肉棒の根本がひくつく。
「あぁ、またびくびくしてきた・・・」
手の中で、指を押し返すペニスの脈拍に、アークインプが嬉しそうに声を上げた。
自分の体液を肉棒に擦り込まれながら、二度目の絶頂を迎えさせられる。
屈辱的であるが、俺の肉体は彼女のもたらす快感に歓喜し、喜んで精を放とうとしていた。
(耐えろ・・・!我慢しろ・・・!)
唇の端を犬歯で噛みしめ、顎に力を込める。
すると、口の中にじわりと鉄の味が広がった。
痛みが絶頂寸前まで高まっていた精神をいくらか冷めさせた。
「こんなにしても、二度目が出ない・・・あぁ・・・すごい・・・!」
だが、俺の必死の我慢も、彼女を喜ばせることにしかならなかった。
「普通の人なら、もうおちんちんから白いのぴゅーぴゅー出してるのに・・・もう、ほかの娘にあげちゃうのが惜しくなってきたよ・・・」
ペニスを握ったまま身をねじり、彼女が俺に顔を向ける。
アークインプの瞳には、興奮と情欲によって妙にぎらついており、腹を空かせた獣のようだった。
彼女の興奮は瞳だけでなく、ほかの場所にも現れていた。
顔は紅潮し、肩が荒い呼吸によって上下し、その肌にはうっすらと浮かんだ汗のもたらす艶を帯びている。
そして、俺の胸に押しつけられる彼女の股間は、湿り気を帯びていた。
「ほら、いっぱい出して・・・!」
彼女が腰を小さく動かし、胸に尻の間を擦りつけながら、そう俺に言った。
同時に、彼女の指の動きが強まり、肉棒の根本から先端に向けてひときわ強く擦られる。
裏筋を押しつぶしながら、指の輪の中を亀頭がくぐり抜け、腹の奥から白濁がほとばしる。
「きゃ・・・!」
顔めがけて噴出する精液の勢いに、アークインプは声を上げた。
その声には驚きよりも、歓喜の色が多く含まれていたように俺には思えた。
その証拠に、彼女は声を上げながらも肉棒を離さず、むしろもっと搾り取ろうとするかのように指の動きを強めていたからだ。
射精の勢いが強まり、彼女の顔や胸元を白く汚してく。
そして、最後に数度痙攣してから、ペニスからの白濁の迸りは止まった。
「あははぁ・・・熱ぅい・・・!」
アークインプが指をはなし、そう言葉を震わせながら言った。
彼女は両手の指を広げると、手のひらを自身の胸に当て、胸にへばりつく精液を塗り広げていった。
ぬちゅぬちゅ、という今までとは違う水音が室内に響いた。
「こんなにたくさん・・・においも、すごい・・・!」
アークインプはうっとりした声でつぶやきながら、俺の方を振り返った。
「ふふ、まだそんな目をして・・・」
折れそうになる心を奮い立たせるための敵意に、アークインプはそう言いながら背筋を奮わせた。
「ねえ・・・あなたはどんな目で、ボクを睨んでくれるの・・・?」
彼女はそう言いながら俺の体の上で身をぐるりと回すと、肉棒の上にまたがる姿勢になった。
必然的に彼女の両足の付け根に、肉棒が押さえ込まれる。
彼女の女陰は濡れており、柔らかに俺の屹立を圧迫していた。
「もっとすごい顔でボクを睨んでよ・・・ほら、ほら、ほら・・・!」
肉棒を挿入せず、ただその上に乗ったまま、彼女が腰を前後に動かした。
彼女の両足の付け根からあふれる愛液が肉棒に絡み、指よりも柔らかな肉が屹立を擦る。
「う、うぁぁ・・・!」
彼女の膣口の粘膜を裏筋に感じながら、俺は声を漏らした。
心の底にわき起こる、アークインプに屈してしまいたい衝動と戦うためだ。
彼女の魔力によって全身が動かないおかげで、彼女を押し倒して肉棒を突き入れたいという衝動と戦わずにすんでいるのは、不幸中の幸いといったところだろうか。
だが、いずれにせよ肉棒が彼女の股間によってしごかれていることに代わりはなかった。
俺の体内で三度目となる射精の予兆が、徐々に膨らんでいく。
「ほら、ボクみたいなインプに組み伏せられて、悔しいでしょ・・・?もっとボクを睨んで、ボクを罵って・・・!」
熱のこもった語調で彼女はそう言うと床の上に手を付き、両足を俺の胸の上に乗せた。
彼女の両足が閉じられたことで、俺のペニスが彼女の女陰と左右の太腿に挟まれることになる。
彼女の足を閉じる力に、以外と肉付きのよい太腿が、俺の肉棒を締め付けた。
「ほら、ほら・・・まだ膣内に入れてないのに、こんなにびくびくして・・・」
彼女は腰を揺すり、太腿と女陰の入り口で肉棒をかき回した。
愛液と先走りに精液の残滓が混ざったものが、太腿と肉棒の間で粘着質な湿った音を立てる。
同時に、彼女の体温も加わり、太腿の間で愛液に肉棒が蕩けそうな感覚を、俺は覚えていた。
実際のところ、本当に肉棒が溶け崩れているのではないか。
股間に存在するはずの肉棒の輪郭が曖昧になり、ただ太腿と膣口のもたらす快感だけが取り残されていく。
「うぁぁ・・・あぁ、ぐ・・・!」
思わず漏らしていたあえぎ声を、奥歯を噛みしめて押さえ込む。
すると、俺の顔を見ていたアークインプが、その表情に愉悦を覚えた。
「必死に我慢してる顔も、いい・・・!」
体を支えていた手を持ち上げると、彼女は薄い乳房にへばりつく精液を、ぬちゅぬちゅと手のひらで塗り広げた。
中途半端に乾いていたためか、精液は彼女の乳房と手のひらを接着し、手の動きにあわせてかすかな膨らみを動かせた。
「ん・・・」
乳房を揉むとも擦るとも異なる感触に、アークインプは声を漏らした。
だが、彼女が感じている間にも、俺の肉棒の融解は止まらなかった。
興奮に熱を帯びた彼女の太腿の隙間は、もはや湯の中のようだった。
絡みつく粘液が、容赦なく屹立の表面を擦り立て、ペニスに快感をそそぎ込んでいく。
そして、彼女の太腿に不意に力がこもった瞬間、俺の肉棒が限界を迎えた。
「・・・!」
食いしばった歯の間から小さく吐息が漏れ、上げ損ねたあえぎ声を補うような勢いで、射精が始まる。
彼女の太腿の肉を押し退け、天井に向けて精液が放たれる。
垂直に打ち上げられた精液は、一瞬イスほどの高さまで上がると、俺と彼女の体に向けて降り注いだ。
「あっ・・・!あぁ・・・!」
熱を帯びたまま肌を打つ粘液の感触に、アークインプはうわずった声を漏らす。
そのたびに彼女は太腿を擦りあわせ、その感触が肉棒を刺激した。
「ぐぁ・・・!」
搾り取られる。三度目の射精にいたって、俺はやっとその意味を理解した。
魔力と物理的な刺激が、俺の身体を操り、体内から精液を無理矢理噴出させる。
心臓が破れそうなほど早く打ち、俺の意識が快感に塗りつぶされていく。
もはや、彼女の声も身体の重みも感じられず、ぎりぎりと噛みしめている歯すら実在するかどうか怪しくなってきた。
心臓が一つ打ち、肉棒が一つ膨張し、精液が噴出する。
そのたびに、俺の意識が削り取られ、快感が俺を蝕んでいく。
「あぁ・・・あっ・・・!熱・・・!」
肌を打つ精液か、太腿の間で大きく脈打つ肉棒か、そのどちらかの熱に彼女は声を漏らした。
だが、俺はアークインプがどちらに感じたのか確かめる間もなく、意識をブツリととだえさせられた。




それから、俺はアークインプとともに暮らすようになった。
話に聞くような夫婦の関係ではなく、玩具とその持ち主の関係だった。
「ほーら、どっちに飛ぶかなー?」
俺をイスに座らせ、その傍らに膝立ちになったまま、アークインプが言う。
俺の肉棒には彼女の指が絡みついており、唾液と先走りで濡れた音を奏でながら、規則正しい動きでしごいていた。
そして俺と彼女の前、数歩先ほどには三体のインプが、口を開いて待ちかまえている。
「さ、そろそろイくよー」
彼女は俺の肉棒を扱く速度を早め、少しだけ指に力を込めた。
強まった刺激に、俺の腰が小さくはね、肉棒から精液がほとばしった。
「あ!」
「きゃ!」
「・・・っ・・・!」
噴出した精液にインプたちが押し合いヘし合いし、顔面で白濁を受け止める。
誰も口でキャッチはできなかったようだったが、それでも互いの顔を舌で舐め合い、精液を啜っていった。
「ふふ、あんなに奪い合っちゃって・・・」
彼女が楽しげにそういいながら、俺の顔を見上げた。
だが、俺はあえて何の反応も返さず、三人のインプともアークインプとも違う方向に目を向けていた。
「・・・そういう仏頂面も、いいね・・・」
アークインプはそうささやくと、肉棒から手を離して立ち上がった。
そして、俺の頬に顔を寄せると、唇をちょんとそこに当てた。
「・・・好きだよ・・・」
「・・・・・・」
彼女のキスと言葉に、俺は答えなかった。
アークインプが俺を愛しているわけがないのだから。
なぜなら、彼女は、俺の反応を楽しんでいるだけにすぎないのだから。
13/05/01 23:11更新 / 十二屋月蝕
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■作者メッセージ
久々に逆レ書いたよ。
甘々イチャイチャしてない逆レ、しかも挿入なしとか久しぶりだ。
確かにイチャコラヤイサホーはいいけど、たまにはこうピリリと一方的弄びスパイスの利いたものもいいですよね。
あと、膣内射精しちゃうと妊娠出産していつしか愛が芽生えそうだからという理由で、互いに一線引くためにあえて膣内射精はしない間柄とかいいよね。
そういう互いに快感を楽しむための契約で、一線を引いたつき合いをする二人という設定のお話も、いつか書こうと思います。

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