読切小説
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天使マリエルの堕落
市街地は炎に包まれていました。

風が吹き荒れる度に火の粉が舞い上がり、その舌が次々に建物を飲み込んでいきます。はじめは数棟を焼くだけだった炎は、今では区画一体を覆う程の火災へと発展しています。周囲には人々の悲鳴が響いていました。
割れた石畳の上を煙と炎に追われながら人々と魔物たちの懸命に逃げ走っています。その姿を、私は煙に覆われた上空から見ていました。彼らは火事から逃げているのではありません。私たち教団軍から逃げているのです。恐怖に顔を引きつらせる人々を、私が祝福を授けた兵士たちが追いかけています。

殺される人には、人も魔物も老いも若いも関係ありません。家族を守ろうとする父親も、必死で子を庇う母親も、泣きじゃくる幼い子供たちも。皆、兵士たちに殺されています。
兵士たちがしている事は正しい事です。魔物は悪であり、教団は正義です。けれどこの光景を見ていると、私の中の確信が薄れていきます。

魔物である我が子を守ろうとする父親は邪悪なのか。自分の命より子供を優先する母親は許しがたい存在なのか。そして、そんな彼らを無慈悲に殺す兵士たちは絶対的に正しいのか。
泣き叫ぶ声に目を向けると、まだ年端もいかない一人の子供に、返り血を浴びた一人の兵士が剣を振り上げています。
私は咄嗟に目を逸らしました。強い罪悪感と嫌悪感が胸を締め付け、吐き気がこみ上げてきます。

気がつけば私は炎から背を向け、戦場から飛び去っていました。




パチパチというかすかな音に私はハッとして、慌てて体を起こしました。
炎の爆ぜる音と物の焼ける臭いに、あの時の忌まわしい記憶が脳裏をよぎります。胃から何かがこみ上げてくるような感覚を覚え、私は慌てて口元を押さえました。

「だ、大丈夫ですか。マリエル様」

うずくまる私の背中を、誰かが気遣わしげに撫でてくれています。かすかに顔を上げると、そこには一人の男の子の姿がありました。年の頃は十二、三歳ぐらいでしょう。背丈は私より僅かに高いぐらいで、淡い亜麻色の髪が覆う顔つきにはまだ幼さが色濃く残っています。彼はその小さな体に丈の余った白い布服を身に付けていました。その服は私が随行していた兵士たちが身に着けていたものと同じでした。

私は数日前まで、魔物と人が共存する邪悪な都市を攻撃するため、主神であるお母様の指示に従って教団の軍勢に同行していました。しかし戦場の凄惨さに恐れをなした私は、あろうことか責務を放棄してその場から逃げ出したのです。

疲弊するまで脇目も振らずに飛び続け、気づけば私は名も知らぬ森を一人で彷徨っていました。
仲間の元へ戻ろうにも力を使い切っていたため、もはや満足に空を飛ぶ事すら出来ません。そもそも、お母様から与えられた役目を放棄した私には帰るべき場所など、元からあるはずもありません。途方に暮れて宛てもなく森を歩いていた私が、この少年――エルクと出会ったのはそんな時でした。

聞けばエルクは、私が随行した軍隊に所属していた少年兵だったそうです。私はエルクから、教団軍が周辺都市からの迅速な援軍によって敗北して散り散りに壊走した事、彼自身も追っ手から必死に逃げてこの森へとやってきたという事を教えてもらいました。
それ以来、私とエルクはこうして誰もいない森の中、たった二人で行動を共にしています。

「大丈夫です…エルク。心配をかけてごめんなさい…」
「いえ、そんな…マリエル様に何かあったら、神様に申し訳ないですから」

照れ隠しをするように笑うエルクの言葉に胸が痛みます。だって私はもう御使いではないのです。その証拠に私がいくら語りかけても、お母様からの声は帰ってきません。きっとお母様は職務を放棄した私に呆れ果て、見捨てたに違いありません。
私にはもう何も残されていないのです。天使としての力も、役目も、お母様の加護も。そんな事も知らず献身的な態度で接してくれるエルクには、本当に申し訳なく思います。

「マリエル様、まだ夜明けには遠いですから、もう少しお休みになっていてください」
「いえ…私ばかり休むわけにもいきません。私が見張りをしていますから、エルクこそ休んでください」
「そんな、マリエル様にそんな事をお任せするわけにはいかないですよ!」

慌てた様子で両手を振るエルクに、私は思わず苦笑を漏らしてしまいました。エルクの態度は本当に一生懸命で、どことなく愛らしさを覚えます。例えその思いが私ではなく、その後ろにあるお母様と教会に向けられているものだとしても、私の心は満たされていくのです。

「くすっ…そんなに私は頼りないですか?」
「あ、いいえ。そんなわけでは! ただ恐れ多いというか!」
「でしたら…少し話でもしませんか? 少し目が覚めてしまいましたので」
「あ、はい。それでしたら…」

私はエルクの傍らに並んで腰を落ち着けました。彼のかすかな甘い匂いを感じ、千々に乱れた心が落ち着いていくのを実感します。その匂いをもっと感じたくて、私は自分の体を少しだけエルクに預けました。
寄りかかる私に彼は、体を跳ねさせるほど驚いせます。けれど結局、彼は何も言わずに私の体を受け止めてくれました。そんな優しさが、私の心を静かに癒してくれます。

「えーと…どんな話がよろしいでしょう…?」
「そうですね…私はエルクのことが知りたいです」
「僕のですか? そんな面白い話はないですけど…マリエル様がそうおっしゃるのでしたら」

焚き火の中で割れる枯れ枝を見つめながらエルクがぽつりと口を開きます。暗い森の中で、焚き火の炎だけが鮮やかに光を放っています。赤い炎に照らされる彼の顔を眺めながら、私は静かに耳を傾けました。

「僕が教団軍に入ったのは妹のためなんです」
「妹さん、ですか?」
「僕の妹は難しい病気にかかっていて、お医者様が言うには凄く治すのが難しい病気なんだそうです。その症状を抑えるのに薬が必要なんですけど…うちは貧乏で。それで僕は軍隊に入る決心をしたんです」
「お金が必要だったから、軍隊に入ったのですか」
「はい…軍隊に入れば、とりあえず支度金がもらえます。そのお金があれば妹に薬を買ってあげれると思って…」

家族について話すエルクは、少し恥ずかしそうに顔を赤らめながらいました。その表情の先にどのような過去があるのか、窺い知ることは出来ません。おそらくは今話した以上の思い出が、彼の中にあるのでしょう。
私にはそれが少しだけ羨ましく思えました。責務を放棄してすべてを失った私には、振り返る過去のすべてが後悔しかないのですから。

「エルクは、偉いんですね」
「いえ…そんな…それにこんな理由で聖戦に参加するなんて、不純でしょうし…」
「気にしないでください。戦う理由なんて、人それぞれですから。それに…戦場から逃げ出した私に、エルクを批難する資格なんてありませんから…」
「マリエル様…?」

私は今まで自分が戦場から途中で逃げ出した事を彼に伝えてきませんでした。だからおそらく彼は、私も同じように敗走したものだと思い込んでいるはずです。しかし実際の私は、味方を見捨てて逃げた臆病者なのです。
そんな私が、必死に妹さんを救おうと勇気を出したエルクの立派な行為を否定できるわけがありません。

「私は…臆病者です…あなたたちを守らなければ…いけなかったのに…魔物を倒すべき…だったのに…。それなのに…人と魔物が…平和に暮らしているのを脅かしたのは…私たちだと思うと…急に怖くなって…」

彼のぬくもりを感じながら、私は自分の心を吐露していきます。
彼はこんな私を軽蔑するでしょうか。嫌悪するでしょうか。彼に嫌われるのを想像すると悲しみが胸を覆います。自分が泣いているということに気づいた時には、私の頬を幾筋もの涙が零れ落ちていました。

「…っ…ご、ごめんなさい…ひぐっ…」

このままでは彼の服を涙で汚してしまう。そう思った私は懸命に嗚咽を堪えながら彼から身を放そうとしました。
しかしそんな私を、彼は逆に強く抱き止めてくれたのです。震える私の体に彼の温もりがゆっくりと伝わってくるのが分かりました。

「マリエル様…大丈夫です…もう、怖くないですから…」
「エルク…服が…服が汚してしまいます…」
「いいんです…マリエル様の涙は汚くなんてありません…だから好きなだけ泣いてください…」
「ううっ…エルク…エルクぅっ…ごめんなさい…ごめんなさいっ…」

エルクは何も言わず、ただ私の背中を優しく叩いてくれています。唯一の救いであるエルクから拒絶されなかった事が嬉しくて、私は彼の優しくて温かい胸に抱かれながらいつまでも泣き続けていました。




それから、一週間。私たちは未だに森を抜ける事が出来ていません。
翼の使えない私の移動は遅々としたものです。歩くという行為自体に慣れていないため、その足取りはぎこちなく、時にはエルクの背を借りる場面すらありました。そんな私を見捨てずに支え続けてくれるエルクには感謝と申し訳なさで私は胸が一杯になります。
ここはまだ魔物が生息する親魔物国家の領内です。今の私たちには魔物が出てきたとしてもどうする事も出来ません。
力を失った私では足手まといにしかなりませんし、エルク自身も一人で魔物を相手取れるほど戦いに慣れているわけではありません。いつ出現するか分からない魔物に怯えながらの移動は、私たちを精神的にも肉体的にも疲労させていきます。
結局その日も、たいした距離は移動出来ず、森は早くも薄暗くなってきていました。

「マリエル様、今日はここで休みましょう」

そこは眠るには申し分なさそうな苔むした柔らかい地面が広がった場所でした。すぐ傍には踝が埋まる程度の浅い川が流れていて、水の確保も容易です。エルクと私は周囲を見回し、互いに満足げに頷いてみせました。

「本当はマリエル様には屋根のある場所できちんと寝ていただきたいのですが…」
「ふふ、そんな我侭は言いませんよ。今日も無事に眠れる場所が見つかったことを感謝致しましょう」

エルクに微笑みかける私の心がズキリと痛みました。主神であるお母様に見捨てられた私が一体誰に対して感謝をするというのでしょう。しかしそんな感情は億尾にも出さず、私は会話を続けていきます。

「では私は薪をとって来ますね」
「すみません、マリエル様のお手を煩わせて…自分は食料を探してきますので」
「いいんですのよ、エルク。もっと私は頼ってください」

申し訳なさそうに肩を落とすエルクを安心させるために微笑みかけ、私は枯れ枝を捜しに森へと分け入っていきました。
この一週間で、私は野宿にだいぶ慣れていました。はじめは彼ににすべてを任せっきりで役に立たなかった私ですが、最近では水汲みや薪を探す程度の簡単な事なら手伝えるようになっています。
まだまだ食料を採ったり――食べられる食材を調達するというのは意外と難しいものでした――、焚き火をつけたりすることは出来ませんが、それでも多少なりともエルクの役に立てているかと思うと、それだけで心が弾みます。

(もっと色々覚えたら…エルクは沢山褒めてくれるでしょうか…)

最近気づいた事ですが、エルクに頭を撫でられたり、体をギュっとされると、凄く体がポカポカしていい気持ちになります。熱があるみたいに頭がポーっとして、もっとして欲しいっていう気分になるのです。
だから私は、ついついエルクに褒めてもらいたくて、彼が気に病むのも承知の上で、手伝いを申し出てしまうのです。ご褒美が欲しいがために手伝いをするだなんて、本当は不純だと理解はしていましたが、私は自分を止める事が出来ません。それほどまでにエルクに褒められるのは嬉しいことなのです。

多分、私はエルクに好意を抱いているのだと思います。妹さんのために兵士になるぐらい直向きで、こんな状況でも弱音一つ吐かないぐらい勇敢で、そしてこんな私を支えてくれるぐらい優しくて。気づけばそんな彼の存在は、私の中でとても大きなものになっていたのです。

(あれ…エルクはまだ戻ってきてないのですね…)

薪を両手一杯にかかえて野営地に戻ると、そこには誰もいませんでした。夕暮れに染まる森をいくら見渡しても、周囲には私を出迎えてくれるエルクの姿はありません。戻ったらすぐに褒めてもらおうと思っていた私の口から自然と大きな溜息が零れてしまいました。

「はぁ…残念ですけど…エルクが戻るまでの辛抱ですね…」

とはいえ、エルクがいないと私にはすることがありません。薪に火をつけようにも火を起こす方法がありませんし、探しにいって入れ違いになっては本末転倒です。水を汲みに行こうにも、目の前に小川があるのでその必要もありません。
手持ち無沙汰な私は、じっと川の流れを見つめていました。その弛まぬ流れを見つめていた私は、ふとある事に気づきました。いえ、気づいたというより、忘れようとしていた事を思い出したという方が正しいでしょうか。

(そういえば、最近体を全然洗っていなかったですね…)

普段は意識していませんでしたが、わざわざ確かめるまでもなく、私は汚れています。
汗を吸ったワンピースは全身に張り付いて不快ですし、素足で歩き続けていたせいで足は泥まみれです。金色の髪も絡んでボサボサですし、羽根も灰を被って薄汚れているように見えます。考えてみれば、あの戦争から今日まで満足に体を洗った記憶がありません。こんな汚い体でずっとエルクに接していたなんて思うと、自分の顔が羞恥で熱くなるのが分かります。

「エルクはまだ戻ってくる気配がないですし…少しぐらいなら…大丈夫ですよね…」

葛藤は短いものでした。
意を決した私は脱いだ服を畳む暇すら惜しみ、いそいそと小川へと足を踏み入れていました。
天使とはいえ、私だって見た目同様に心は女の子です。自分が汚いというのは耐え難いものですし、それを改善する方法が目の前にあるのなら、躊躇する理由などありません。

「さぁ…そうと決まれば目一杯、綺麗にしないとですね」

私はかすかに冷たい川の水を手で掬い、それをゆっくりと全身にかけていきます。水が肌を流れる度に汚れが落ちていくのが実感出来、それが疲弊した私の心と体を癒してくれます。
私は自らの体を確かめながら、丁寧に掌で擦っていきました。
子供のような体型の私は全体的に小ぶりです。背も低いですし、胸も小さいです。けれど、同時に赤ちゃんのように傷一つない綺麗な肌は私の自慢でもあります。それをエルクにも見て頂きたくて、私はいつもより丹念に汚れを落としていきます。

(あ…わ、私は何を考えているのでしょう…)

体を洗っていた私は、先ほど自分が考えていた事を戦慄を覚えました。
彼に肌を見て頂きたいだなんて、自分の考えとは到底思えない破廉恥なものです。私は人々に貞潔と禁欲を説くエンジェルです。お母様の子である私が異性に肌を見せるなんて、あってはならないことなのです。たとえそれが、好意を抱いている相手だとしても、許されざるものなのです。
私は自分の煩悩を振り払うように、慌てて川から上がりました。
果実を抱えたエルクが戻ってきたのは、丁度肌に残る水を手で払い、ワンピースに身にまとった頃でした。

「マリエル様、いま戻りました。お待たせして申し訳ありません」
「あ、エルク。いいえ。大丈夫ですよ」

私は顔が赤く染まるのを感じて、ついエルクから顔を反らしてしまいます。彼を見ていると、先ほどの破廉恥な考えがどうしても脳裏をよぎってしまいます。エルクに私の肌を見て欲しい。自慢の肌を堪能して欲しい。そして綺麗だと言ってほしい。
頭の中からそんな邪な思いが溢れ出るのを、私には自分自身で止める事がどうしても出来ないのです。

「マリエル様…どうかなさいましたか?」

異変を感じたエルクが、私の顔を伺っています。その気遣わしげな眼差しで見つめられるだけで、私の下腹部がキュンと熱を帯びていくのが分かります。言うのもはばかられるような場所からは何か粘着質な液体があふれ出し、それが下着を濡らしていました。本当はいけない事だと理性では分かっているのに、私は胸の高鳴りを抑える事が不可能でした。

「…だ、大丈夫ですよ…エルク」
「でも、そんなに顔が真っ赤で…もしかして、お体の具合でも悪いのでは…」
「具合が…そ、そうかもしれませんね…悪いのかもしれません…」

私の体を襲う異変は今まで経験した事のない未知のものでした。私の体はエルクに見られるだけで、どんどん火照っていくのです。
連日歩き続けているため、エルクの体からは強い汗の匂いがしています。それがとても甘い芳しい香りのように感じられて、私の呼吸は荒くなり、頭が痺れていくのです。

「具合が悪いのでしたら、無理はなさらないでお休みください。自分が見張りをしていますから」
「では…申し訳ありませんが…そうさせて頂きますね…」

促されるままに私は苔むした地面の上に横たわります。そんな私の事をエルクが優しく撫でてくれています。彼の手が触れる度に、電気が走るような刺激が私の体を流れていきます。それをエルクに悟られないように私は必死に漏れそうな声を必死で堪えていました。ドロドロに掻き乱される自分の心を落ち着けるのに必死で、なかなか眠る事が出来ませんでした。




それからの数日は苦痛の連続でした。私の体を襲う異変は日を増すごとに悪化しています。熱病に侵されたように火照る体は、何かを求めるように疼き続けています。頭は朦朧とし、満足に歩く事すらままなりません。にも関わらず感覚は鋭敏で、彼に触られるだけで敏感に反応してしまいます。気づけば私は一日中、エルクの事を目で追いかけ、エルクのことばかり考えてるようになっていました。

私は一人で、夜の森を見つめていました。今日の火の番は、無理を言って私がやらせてもらっています。エルクは連日の疲れからか、その場に横になって深い眠りについています。ぼんやりと上を見上げると、梢の隙間から満点の星空と大きな満月が見えました。仄かな月明かりを頼りに、私はエルクの元へと近づきます。

「エルク…」

寝汗を浮かべるエルクは凄く疲れてみえました。それもそうでしょう。私という存在が彼に負担を強いているのですから。そんな彼を支えるためにも、出来るだけ手伝いをしてきたつもりですが、それでも彼の負担の方がなくなるというわけではありません。私の何倍も疲れているであろう彼の事を思うと、本当に申し訳ないという気持ちになってきます。

私はエルクに嫌われたくないのです。でもこんな何の役に立たない私では、嫌われても何の不思議もないのです。それがとても悲しくて、もしエルクに嫌われたらと想像するだけで、心がズキズキと痛むのです。いえ、もしかしたらもう半ば呆れられているかもしれません。天使でありながら彼に何も返す事が出来ない私は見捨てられてもおかしくない存在なのですから。

「何か…恩返しが出来ればいいのですが…」

夜の闇に消えていく私の声に、答える者は誰もいません。エルクは瞼を深く閉じたまま、まったく目を覚ます気配がありませんでした。
泥のように眠るエルクは見た目よりも幼く見えました。いくら兵士だったとはいえ、彼はまだ子供といっても通じる年齢なのです。こんな小さな体で私を懸命に支えてくれているのだと思うと胸が一杯になります。私は彼の横に座り、彼がしてくれているみたいに、そっと彼の体を撫でていきました。

(ああ…エルクの匂いってなんでこんなに…甘いのでしょう…)

最初は彼を癒すつもりで撫でていました。しかし彼の甘い匂いに当てられた私は、気がつけば顔をすり寄せて彼の匂いを夢中で嗅いでいたのです。彼の匂いに包まれているだけで、私の頭と体が、火照っていくのが分かります。

(ふぁぁ…素敵ですぅ…♪)

私は彼の服に手をかけ、起こさないように気をつけながら、上着をゆっくりと肌蹴させていきます。
これは卑猥なことではありません。寝汗をかいたまま眠るのは彼も不快でしょう。ですから彼が少しでも楽に寝れるように、拭いて差し上げるのです。そうこれは、恩返しなのです。
気づかれないように細心の注意を払ってシャツのボタンを外していくと、やがて彼の胸元が露になりました。年の割りにしっかりと鍛えられ無駄な肉のない胸は、彼の浅い呼吸に合わせ静かに上下を繰り返しています。
夜風に素肌を晒しているのが寒いのか、彼はわずかにむず痒そうに顔をしかめていました。しかしそれもすぐに収まり、彼は再び小さな寝息を立て始めます。私はほっと安堵の息を零し、彼の胸元に手を伸ばしました。

(彼の胸に…私の手が触れていますぅ…♪)

普段は決して見る事の出来ない彼の胸に触れている。そう思うだけで、私の心は今まで経験した事がない幸福感に包まれていきます。それをもって味わいたくて、私は丹念に掌で体を拭っていきます。
彼の汗が掌に纏わりつくにつれ、彼の甘くて素敵な匂いがどんどん強くのが分かりました。その匂いを嗅いでいると、今まで以上に私の体は疼きだし、頭が霞がかったようにぼんやりとしてきます。

(はぁ…はぁ…だめです…今は頑張って…ご奉仕しないと…)

ともすれば曖昧になりそうな意識を奮い立たせ、私はなんとか上半身を掌で拭っていきます。私とエルクしかいない、暗く静かな森に私の鼻にかかった吐息の音だけが響いています。私はおもむろに彼の下半身に目を向けました。そこが上半身よりも濃厚な甘いを放っているのが、私に伝わってきているのです。

(次はぁ…こちらにも、ご奉仕しないとぉ…♪)

私はゆっくりとベルトを外し、ズボンを開いていきます。すると下着の隙間からはエルクの男性器――オチンチンが飛び出してきました。苦しそうに力強く脈打つそれは、とても甘い匂いを放っていて、先端からはわずかに汗とは異なる液体に濡れています。

(エルクのオチンチン…すごく立派ですぅ…♪)

それは彼の幼い容姿とは不釣合いなほど、強く大きくそそり立っていました。わずかに血管を浮かばせて脈動するオチンチンは、風に先端から汁を流しているせいで、とても苦しそうに見えます。

(あぁ…こんなに汚れてぇ…ここもお掃除をしないと駄目ですねぇ…♪)

気づけば私は吐息のかかるほどの距離に顔を近づけて彼の獣臭を嗅いでいました。本来なら生臭いはずのその匂いは、蜂蜜にも似たねっとりとした甘さで、私の鼻腔を刺激しています。そんな甘美な誘惑を耐える事が出来ず、気づけば私は、彼のオチンチンを口に含んでしまっていました。

(ふぁぁぁっ…美味しいですぅぅっ…♪)

彼のものを中に含んだ瞬間、蕩けるような味と香りが口の中に広がっていきました。特に先端から滴る液体はどんなお菓子よりも素敵な味わいをしているのです。それをもっと味わいたくて、私は夢中でエルクのオチンチンを舐め始めました。
口の奥まで彼のオチンチンを頬張り、時には頬肉に強く押し当てる。そしてその間も、舌の先で先端を転がすのは止めません。私が刺激を与える度、彼のオチンチンは敏感に痙攣して、美味しいお汁を垂れ流してくれていました。

(あぁ…こんなにドンドン溢れでてっ…お掃除が終わらないですぅ…♪)

「んっ…んんっ…」

夢中でオチンチンを舐めている私の耳に、彼のうめき声みたいな寝言が聞こえてきます。もしかしたら彼が起きてしまうかもしれない。そんな思いが一瞬だけ脳裏を過ぎりましたが、私は行為を止めませんでした。だって、これは彼のお掃除。つまり恩返しなのです。決してやましい事ではありません。

先端から止め処なく溢れるお汁を丹念に吸いながら、私は彼のオチンチンを自然と喉の奥深くまで招き入れていました。本当ならえづいて当然のその行為もなぜかまったく苦しくありません。むしろ彼のものが喉奥に当たるのが気持ちいいのです。
やがてオチンチンが唐突に、一際強い脈動を開始しました。ビクビクと力強く脈打って何かを吐き出しそうなその動きに心を躍らせながら、私はおねだりをするみたいに更に強く吸い付いてみました。その瞬間、彼のものからドロっとした熱くて液体――精液が口いっぱいに放たれました。

(んぁぁぁぁっ♪ 甘くて凄いのが出てきましたぁぁぁぁっ♪)

エルクから放たれた濃厚で粘っこい精液を喉で受け止めた瞬間、私の背筋に電気が駆け上っていきます。喉に精液が当たる度に、私の体は歓喜で震え、飲み込む度に下腹部がキュンと締め付けられます。ビュクビュクと際限がなく溢れ出て、喉に絡みつく精液に、私は夢中になっていました。

「うぁっ…あ…え…マリエル様…?」

呆然と私を呼ぶ声が聞こえてきます。尿道に残った精液を吸い取りながらゆっくりと顔をあげると、そこには自分の一物を咥えられて唖然とした表情を浮かべるエルクの姿がありました。

「エルク…目が覚めたんですね…♪」
「マ、マリエル様…これは…夢…でしょうか…」
「いいえ、現実ですよ。おはようございます、エルク」
「え…あ…ど、どうして…」

エルクは自分のオチンチンとそれを咥えていた私に交互に視線を向けています。その表情は状況がつかめず酷く混乱しているように見えました。
私は精を吐き出して小さくなってしまったオチンチンから口を離し、青ざめるエルクを安心させるように、微笑みを浮かべました。

「エルクには普段からお世話になってますから。その恩返しです…♪」
「そ、そんな…マリエル様がフェ、フェラチオなんてっ…」
「フェラ…チオ…? 今の行為はそういう名前なのですか。エルクはどうして、名前をご存知なのでしょう?」
「えっ…あ…そ、その…軍にいた時に…その…軍隊にいた先輩に教わって…」
「エルクは、フェラチオをされて…気持ちよくなかったですか?」
「あ…き、気持ちよかったと思います…多分…寝てたので…その…よく分かりませんでしたけど…」

私の問いかけにエルクはかわいらしく顔を真っ赤に染めて俯いてしまいます。そんなかわいいエルクが愛おしくて、私は思わず彼に抱きついてしまいました。

「それはよかったです…♪ ではまたシてあげますからね…♪」
「…あ…う…マリエル様…その…ごめんなさい…」
「何を謝るのですか、エルク…気にしないでください…。
「だ、だって…」
「いつもお世話になっているのは私なんですから。これぐらいさせてください…♪」
「え…あ…ご、ごめんなさい…」

エルクがなぜ謝るかは私には理解出来ません。私はただ、彼の甘美な精を頂いたという満足感と、愛しい彼が気持ちよかったと言ってくれた幸福感に満たされながら、彼の胸に顔をすり寄せるのでした。
気づけば、体と心をあれだけ苛んでいた衝動的な疼きは消え去っていました。




それからは毎日のようにエルクの体を拭き、オチンチンにお口でのお掃除――フェラチオを続けています。
はじめは乗り気ではなかったエルクも、毎日続けていくにつれ、次第に彼から求めてくれるようになってくれました。彼自身も行為に慣れてきたのでしょうか。最初は一回出したら終わりだったのが、ここ最近では二回、三回と続けて出来るようになっています。オチンチン自身も、回を重ねる事に大きく、逞しくなっているように思えます。

「んっ…んんっ…ちゅるっ…ひもち…いいれふか…?」
「は、はい…マリエル様…っ…気持ちいいです…っ」
「ならぁ…もってしてあげまふからねぇ…んっ…んっ…ちゅぅぅっ…♪」

敏感に震えるエルクのものを一杯に頬張り、私は丹念に口での奉仕を続けていきます。彼のオチンチンの反応が、雄弁に私の行為を採点してくれています。私はそれを体と頭で覚え、彼を悦ばせるための更に動きを激しくしていきました。

「んぁっ…て、マリエル様…」
「れろぉっ…ちゅっ…っ♪ …んぐっ…んぐっ…♪」

舌でカリ裏をなぞり、亀頭をに吸い付き、そして時には激しく頭を振り乱しながらジュパジュパと下品な音を立てて彼の立派なものを咥え込む。そんな私の行為に、彼は一際大きく跳ねて悦んでくれています。

「んっ…えりゅくのおひんひんっ…びくびくしてまふぅっ…♪」

間近に控えた射精を理解し、私はエルクの竿を喉の奥まで招き入れ、同時にエルクの睾丸を丹念に揉みほぐしていきます。射精の際に美味しい精液がたっぷり詰まったここをマッサージしてあげるといつもより沢山出してくれるという事も、私が最近知ったことの一つです。

「っ…も、もう出ますっ…」
「いいれふよぉっ…んっ…たくしゃん…らしてくらしゃいぃっ…♪」

エルクの腰が大きく痙攣を始め、オチンチンから精液が口の中へと撒き散らされていきます。既に今日だけで三度目の射精にも関わらず、エルクの精はまったく衰える事を知りません。彼の一物を根元まで深く咥え込み、私は夢中で甘美なご馳走を嚥下していきました。

「んっ…んっ……ああ…零れてしまって…勿体無いですぅ♪」

口の中に吐き出された精液を飲みきった私は、まだかすかに痙攣を繰り返すオチンチンを清めていきます。
お口でのお掃除は、射精が終わって終わりというわけではありません。最後にはきちんとお掃除をしなくてはいけません。竿に付着した涎や精液を丁寧に舌先で拭い去り、尿道の中に残る残滓を吸い取って、はじめて奉仕は終わるのです。

「ふぁぁぁ…やっぱりエルクの精液が美味しいれすぅ…♪」

既に三回も甘美なご褒美を頂いた私のお腹はご馳走で一杯になっていました。胃からは今にもタプタプと音が聞こえそうな程なほどです。にも関わらず、口の中に充満する彼の熱く甘い感触に私の体は火照っていました。いえ、むしろその火照りは彼の精を頂けば頂くほど増していくのです。
最初は彼の精を飲めば収まっていた疼きも、近頃では今まで以上の何かを求めるように、より高鳴っているのが分かります。

ふとエルクに顔を向ければ、彼も同様に興奮の冷め切らない表情を浮かべていました。あれほど沢山の精を放った一物は未だに強く勃起して、苦しそうに揺れています。エルクは熱い視線を私のワンピースから覗く太腿に注いでいました。見れば、私の秘部から溢れでた愛液が太腿を伝ってゆっくりと垂れています。

「マリエル様っ…!」

気づけば私の体はエリクによって組み敷かれ、地面に倒れていました。彼の細い腕が私のワンピースをたくし上げ、濡れてその機能を話していない下着を強引に脱がしていきます。彼が求めているものが何なのか、私には瞬時に理解出来ました。彼は私を犯そうとしているのです。
その行為の意味を理解した私の胸の去来したのは、嫌悪ではなく歓喜でした。彼に犯してもらえる。彼が求めてくれている。彼と一つになれる。欲を禁ずるエンジェルでありながら、私の心と体は彼と幸せになれるという事実に悦んでいるのです。

「マリエル様が…マリエル様が悪いのです…僕を…僕をこんなに誘惑するから…っ!」
「あぁ…ごめんなさいっ…♪ 罪深い私に…あなたのオチンチンでオシオキしてくださいぃっ…♪」

私は自ら足を広げ、彼を受け入れる事を示しました。既に私のオマンコは彼の侵入を心待ちにして、蜜を溢れさせています。そんな私の足を掴み、エルクは自らの怒張を濡れそぼった秘所に押し付けていきます。
しかし慣れない初めての性行為であるためか、エルクのオチンチンは恥丘を擦るばかりで、なかなか待ち望んだ快楽を与えてくれません。

(あぁぁっ…でも、これぇっ♪ ビリビリってぇっ♪ 凄いですぅっ♪)

エルクは後悔しているように顔を歪ませながらも、私の純潔を奪おうと必死に腰を振っています。大事な場所をなぞるビキビキに膨張したオチンチンにクリトリスを刺激され、私の体はどんどん蕩けていきました。擦られる度に私の中から愛液が溢れ出し、それを潤滑油として彼の動きはより滑らかになっていきます。

「マリエル様が…マリエル様がこんなに淫らだなんてっ…!」
「そうですっ♪ 私は悪いエンジェルですぅっ♪ エルクに犯されるのを期待していた、淫乱天使なんですぅっ♪ だからぁ、だから早く入れてくださいぃっ♪」

大きく充血したクリトリスを散々嬲られた私は限界に近づいていました。目の前がチカチカと点滅し、空を飛ぶような感覚が全身を襲っています。そして耐え難い絶頂の波に私が浚われそうになった、まさにその瞬間、蜜で濡れた彼の一物が私のオマンコへと入り込んできたのです。

「ううっ…!」
「んっっ、んあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ♪」

メリメリと裂けるような感覚と共に、私の脳髄に凄まじいまでの電気が走りました。その気持ちよさはお口でご奉仕していた時の比ではありません。下腹部から背筋を通して流れる電気が、私の頭の中で幾重にも弾け飛んでいきます。破瓜と同時に絶頂に達した私は、呼吸をする事すら忘れ、悦びの絶頂をあげていました。
そんな私の状況を省みず、エルクはまるで所有者を刻み込むかのように収縮を繰り返すオマンコに自身の一物を埋め込んでいきます。

「マリエル様っ…気持ちいいっ…」
「あぁっ♪ 私もっ、私もきもちいいですぅっ♪ オマンコっ♪ ジュボジュボされるの最高ですぅぅぅっ♪」

上に覆いかぶさったまま、エルクは鼻息を荒くして獣のように私の狭い膣壁を犯しています。私の中から掻きだされた大量の愛液がジュブジュブと音をたてています。森の中に響き渡る淫らな水音を耳にしながら、私は涎を垂らして恍惚とした表情を浮かべました。彼がここまで私を懸命に求めてくれているという事実が、私の心を昂ぶらせ、更なる高みへと押し上げていくのです。

「ふぁぁっ♪ エルクのオチンチンっ♪ すごいですっ♪ 私のオマンコっ、ぐちょぐちょですぅっ♪」

恥も外聞も捨て去った私の甘い嬌声が森の中に木霊します。そんな声に反応したのか、彼の一物は私の膣中で更に大きく膨れていきました。大きくなった彼のものが膣壁を縦横無尽に蹂躙し、私の心と体を決して浮かび上がる事の出来ない快楽の底へと堕としていきます。
エルクは私を貫きながら、ワンピースの中に腕を侵入させてきました。そして彼の指先が私の小ぶりで慎ましい胸に触れた瞬間、今までとは違う、新たなる刺激が生まれます。

「あぁぁっ♪ な、なんですかぁっ、それぇっ♪」

エルクによってもたらされる未知の快感に、私は歓喜の声をあげました。服で擦れても、自分で触ってもこんな刺激を感じた事はありません。彼に胸を触られ、揉まれ、乳首をつねられる度に、私の体にオマンコを突かれるのと異なる快感が生まれていくのです。

「ふぁっ♪ だめですっ♪ おっぱいがぁっ♪ つぶれちゃいますぅぅっ♪」

言葉とは裏腹に私の体はビクビクと歓喜に震えて、荒々しく愛撫を受け止めていました。彼の指先で痛いぐらいの勃起したコリコリと刺激され、掌全体で全体を揉み潰されるだけで、甘く切ない快感が私の心を振り回していきます。胸とオマンコ。上と下とをいいように弄ばれる私は、気づけば私は顔を左右に揺らしながら、喜悦の涙を流していました。

「んひゃぁっ♪ それっ、いいですぅ♪ オマンコとオッパイっ♪ 同時に犯されるのっ、気持ちいいれすぅっ♪」
「あぁ…うぅ…マリエル様っ…」
「こんなっ♪ こんな凄いの知ったらっ♪ もうっ、我慢できないですぅっ♪」

劣情を浮かべるエルクの瞳には、だらしない笑みを浮かべながら涎を垂らす私の顔が浮かんでいました。彼はそんな私の表情をじっと見つめ、我武者羅に腰を振り乱しています。バチバチと頭が焼け切れるような快楽を覚えながら、私は夢中で彼の体を両手を抱き締めました。

二人の体が密着し、オチンチンが今まで以上に深く入り込むと、彼の膨れた先端が私の子宮に力強くキスをしているのが分かりました。膣を最奥まで彼に犯されているという実感に、私の頭は真っ白に染まっていきます。

「あぁぁっ♪ エルクのオチンチンっ♪ ビクンビクン震えてっ♪ 私の大事なところをつついていますぅっ♪」
「あぁっ…駄目ですっ…このままじゃっ…」

膣の中でエルクのオチンチンが一際大きく膨らんだ瞬間、欲望に溺れていたエルクの瞳に、一抹の理性の光が戻りました。彼はオチンチンを膨らませたまま、必死に腰を引こうとしています。しかし既に快楽に堕ちきった私は、そんな彼を拒むように腰に自分の足を絡みつけ、今まで以上にオチンチンを深く招き入れるのです。

「だめですぅっ♪ もう、もう逃がさないですよぉっ♪ エルクはぁ、私のものなんですぅっ♪ だからっ、私もエルクのものにしてくださいぃぃっ♪」
「ううぁっ…でっ…出るっ…!」
「出してぇっ♪ 私の子宮にっ♪ エルクの子種を出してくださいぃぃっ♪」

エルクの一物を子宮に押しつけながら、私は精を求めて腰を前後に振り乱しました。彼の亀頭に子宮口をコリコリと潰される感触に私が一際大きな絶頂を覚えそうになった瞬間、彼のオチンチンから、とうとう待ち望んでいたものがあふれ出してきました。

「んぁぁぁっ♪ 出てるっ♪ 出てましゅぅぅっ♪ エルクの精子っ、ビュクビュク出てましゅぅぅっ♪」

私を孕ませたいという意思が感じられそうなその量に、私は喉をさらけ出して嬌声をあげました。彼の射精は過去に経験したものよりも長く、強く、私の奥へと子種を吐き出していきます。私の体が、膣が、子宮が、彼の精子で悦んでいるのが分かります。愛しい人の精液で体の中から白く染め上げられていくという快楽に浸りながら、私は今までにない絶頂を覚えました。

「あぁぁぁっ♪ こんなのっっ♪ こんな気持ちいいのっ♪ 耐えられないですぅぅっ♪」

最早私には自分の体の痙攣を止める事が出来ません。蠢動を繰り返す膣は私の意志とは無関係に、精を求めてエルクのオチンチンに絡み付いていきます。白く染められた意識の中で私が感じるのは、体の最奥までエルクにマーキングしてもらえたという堕落した雌の悦びだけでした。

「あぁ…エルクぅ…♪ 私っ…堕ちちゃいましたぁ…♪ 天使じゃなくてぇ…エルクの雌になっちゃいましたぁ…♪」
「はぁ…はぁ…マリエル…さま…」

すべてを吐き出して力尽きたエルクが私に体を預けてきます。私はそれが嬉しくて、彼を逃がさないように強く抱き締めました。だってこの重さは、彼がそんなになるまで私を全力で求めてくれたという証拠なのです。堕ちてしまった私を、エルクが拒まなかったという証明なのです。

「あぁ…エルク…好きです…大好きですぅ…♪」

既に身も心も快楽に溺れ、堕落してしまった私は、二度と光輝く天界へと戻る事は出来ないでしょう。
しかし私には後悔はありません。エンジェルである己を捨て去り、一匹の雌としての道を選んだ私には、主神であるお母様も、教会の教えも、聖なる祈りも、そして私を信奉する者たちの声も、そのすべてが必要のない存在なのですから。
いまの私には、エルクさえあればいいのです。ただエルクといつまでも交わりあい、共に快楽の中に堕ちていく事、それだけが私の唯一にして絶対の存在意義なのですから。

「エルクぅ…私と一緒に…堕ちていきましょぉ…♪」

未だに残る快楽の余韻に包まれながら、私はエルクの口に自分の唇を重ねました。




――あれから、どれほどの月日が経過したでしょうか。数ヶ月かもしれませんし、数年かもしれません。もしかしたら数十年かもしれません。私とエルクは未だにこの森の中にいます。
愛と肉欲に溺れた私たちはそれ以外のすべてを捨て去り、今日も獣のように絡み合い続けています。

「マリエル…マリエルっ…」
「あぁぁぁっ♪ エルク、もっろっ、もっとちゅいてくらしゃいぃぃ♪」

あの頃から変わらぬ姿のエルクは、今日は私を後ろから荒々しく貫いています。理性が抜け落ちた顔でうわ言のように私の名前を呟きながら、雌に精を放つ事だけを目的にがむしゃらに腰を振っています。私はその度に、はしたないあえぎ声をあげて彼を受け入れるです。高く突き上げたお尻に彼の肉棒が叩きつけられ、子宮が押し上げられる快感に、私は翻弄されていました。

「ふぁぁっ♪ エルクっ、きもひいいれしゅっ♪ しょれっ、しゅごいれしゅぅぅっ♪」

貞潔を失い快楽に溺れた私は、ダークエンジェルに堕ちてしまいました。純白だった羽根は黒く染まり、髪は金から白銀へと変貌を遂げています。自慢だった汚れ一つない白い肌は青白い淫靡な色と化し、その身には半身を覆うように快楽のルーンが刻まれています。
「しゅごいっ♪ エルクのおちんぽっ、子宮にチュッチュしてましゅぅっ♪」
「マリエル…はぁ…はぁっ…マリエルっ…!」

エルクは欲望に塗り固められた顔で物のように私を貫き続けています。彼のオナホールになれるという被虐的な悦びを感じながら、私は愛する彼の精液を精一杯味わおうと、膣を締めて怒張を子宮口まで招き入れました。

「らしてぇっ♪ たくしゃんっ♪ ザーメンらしてくらしゃいぃぃっ♪」
「ぅっ…ぁぁぁっ…!」

私の声に応えるように彼の膨らんだ亀頭から大量の精液が子宮に向けて叩きつけられていきます。愛する人の甘美なご馳走を子宮の奥で味わうという、雌としての最高の快楽を味わいながら、私は大きく体を震わせるのです。

「んひゃぁぁっ♪ エルクのぷっりぷりザーメンっ♪ 子宮にあたってましゅぅぅっ♪」

射精を終えたエルクが私を荒々しく掴み上げ、今度は自分で腰を振るように要求してきます。私はその無言の訴えに頷きながら、漆黒の翼を大きく震わせ、激しく腰を振り乱していきました。

「エルクぅっ♪ ずっとっ♪ ずっと一緒れすよぉぉっ♪」

私たちは卑猥な水音を響かせながら、永遠に淫らに交わり続ける事でしょう。
この森の中でたった二人で、いつまでも。
11/09/26 12:47更新 / メガンテ

■作者メッセージ
はじめまして、もしくはお久しぶりです。メガンテです。

二作目となる本作は、エンジェルちゃんが主役です。

エンジェルちゃんはきっとその献身的な性格から、大好きな人へのご奉仕はもちろんが大好きなはず。もちろん食料が「人間の男性の精」なんだからフェラ大好きなのは確定的に明らか。そしてそこから欲望のままに求められたりして、未知の快楽に翻弄されながら教義や信仰を投げ捨てて、虜となった相手を巻き込んで堕ちていくに違いない!
という願望という名の欲望が大量に含まれたSSとなっております。

エンジェルちゃんマジ魔性の女。


前作がそこそこ長かったので圧縮しようとしましたが、そこまで長さ的に変化がなかった上に後半が駆け足になってしまい、変化(堕落)の工程が割愛気味になってしまったのは大きな反省点です。

相変わらず拙い部分が目立つ作品ではありますが、お気に召して頂けたなら幸いです。

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