読切小説
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覆水を返す魔法
 人は恋をする生き物である。
 人間だろうが魔物だろうがそれは変わらない。誰だって愛が欲しいし、愛されたいモノだと、心根から思う。
 「へへっ、俺は全然愛されねぇや」
 自嘲しつつ深夜の歓楽街を行く。そんな俺、和泉匠海(いずみ たくみ)はそれなりに落ち込んでいた。

 と、いうのもだ、本日は大学の友達と合コンに行ってきたのだ。魔物娘という愛に飢えた女性がいる現代社会において、合コンは実質婚活とも言えるだろう。一回参加すれば漏れなく恋人ができてそのままゴールイン!…という寸法だ。
 「ま、俺には需要がありませんでしたがね!」
 悲しいかな。俺は魔物の皆さんのお眼鏡には叶わなかったらしい。俺を誘ってきた友達は可愛いサキュバスさんと目出度く結ばれたってのに。大学入学から数か月で恋人ができるとは、まったく羨ましい限りだ。

 ということで、惨敗した俺は一人寂しく帰路についているわけで。
 「俺はものの見事に避けられたわ。そんなにカッコ悪いかねぇ……」
 そこまで悪い容姿ではないと自分では思うのだが。今じゃモテない童貞大学生だが、これでも昔は彼女がいたんだよ。
 「……………だから、ってのも分かるけどさ」
 人は恋をする生き物で、愛を求めるモノだ。
 だが、人は恋をするがゆえに傷ついて、苦しんで……大切だった想いごと恋人を捨てることもある。
 俺もそういうことをしたクチだ。
 「そのくせ、何時まで経っても忘れられないか。……そりゃ確かにカッコ悪いな」
 今でも彼女の影がちらつく。退屈な抗議の最中とか、街を歩くカップルを見ると、とっくに別れた彼女の姿が思い返されて。
 「いい加減、忘れたほうがいいよな」
 いつまで初恋を引きずってんだか。
 さっさと新しい恋を見つけて、忘れてしまおう。
 「……そう思って合コンに行ったら誰も相手してくれなかったけどな!」
 実際、彼女のことは今でも好きだし、きっとまだ恋をしているのだろう。だが、それは既に終わった恋だ。
 きっと彼女はもう振りきって、前へ進んでいる。俺もそうしなければならない。
 「出会い系に手を出すか……?」
 などと行く当てのない恋の捌け口を考えること数分、現在の俺の根城である二階建てのボロアパートが目に入った。
 これから家事をして、明日の講義の準備をしなければと思うと気が滅入る。いっそ自主休講してやろうか。
 「………………ん?」
 ガッタガタの階段を昇れば、俺の部屋の前で誰かが座り込んでいるのが見えた。
 癖のある黒髪の、地味な眼鏡をかけた大人しそうな女性だ。
 白いワイシャツの上に桃色のカーディガンを羽織り、足首の辺りまであるロングスカートを着たその女の子は、俺に気づくと満面の笑みを向けてくる。

 見間違えるわけがない。
 それは、さっきまで考えていた少女だ。
 それは、かつて俺が捨てた初恋だ。

 「久しぶりだね、匠海くん」
 目が離せないほど優しい笑顔で、記憶よりも大人っぽくなった彼女が、俺の前に立っている。
 「………なんでここにいるんだよ、志野」
 かつて恋をして、そして別れたはずの彼女……志野絢音(しの あやね)は、再会を喜ぶみたいに手を振った。



■■■■■■■■■■■■



 志野絢音という少女と出会ったのは、高校生のときだった。
 たまたま席が隣だったのがきっかけで、それから彼女に惹かれていったのを覚えている。
 志野を一言で表すなら、優等生という表現がよく似合った。授業中に寝ている姿は見たことがないし、休み時間でさえ教科書に向かっているような、勉強ばっかりの大人しい女の子だった。
 校則は絶対順守。先生をはじめとした大人の言うことはちゃんと聞く、規則正しくて真面目な子だ。
 そんな女性が、どういうわけか真夜中に一人で出歩いて俺のアパートを訪ねてきた。少なくとも俺の知る志野絢音はこんなことはしないはずだった。

 「えへへ、匠海くんは相変わらず優しいね」
 自宅のベッドに腰かけた志野が肩にかかった黒色のくせ毛を揺らす。最初に好きになったのは、彼女のこの髪だったか。
 「とりあえず上げただけだって。それで、どうしたんだよ?志野は遠くに行ったんじゃなかったのか?」
 記憶が正しければ、俺の進んだ大学と志野の進んだ大学との間には5県分くらいの距離がある。長期連休にふらっと寄るならまだしも、現在は6月中旬。バリバリに大学はやっている時期だ。
 だというのに、志野は遠く離れた俺の家にやってきた。どうにも、違和感がある。
 「えーとね、匠海くんに会いたかったから。…じゃ、駄目かな?」
 足をベッドに上げて、膝を抱え込む。いわゆる体育座りの姿勢。
 長いスカートの裾から見える白い素足にドキッとした。足首から爪の先までよく整えられている。踏まれたって悪くないくらいの、綺麗な足だった。
 って、いけない。新たな性癖に目覚めるところだった。これも久しぶりに会った彼女が可愛いせいだ。
 心を落ち着かせたくて、咳払いをする。
 「……会いたかったって、俺たちはとっくに他人だろ。1年前に別れたじゃねえか」

 俺と志野絢音はとっくに別れている。恋人という密な関係だったのは過去の話だ。
 別れた理由は、志野絢音という少女が真面目過ぎたこと。
 彼女の家は大変教育が厳しく、いい大学に通って、いい職場に就職することを至上としていた。そういう環境で育ったものだから志野は大人しく生真面目な性格になり、そして親の言う通り一流の大学に受かろうと必死に勉強していた。
 それが、俺たちの別れた原因。
 志野は何もかもを犠牲にして、親の思いに応えようとした。
 遊びも、友達も、そして恋も。

 「せっかく頑張って第一希望に受かったんだろ?なら、こんなとこにいちゃ良くないだろうが」
 志野はデートしても、一緒に話していても、素っ気ない態度ばかりで。
 俺から告白して、オーケーは確かにもらった。だが、志野との関係はあんまりにも淡白で、志野は嫌々恋人になってくれたのではと疑い始めてしまい……

 『付き合わせてごめんな。志野もしんどいだろうし、もう別れようか』

 1年前、夕暮れの空き教室に呼び出して、俺たちは別れた。
 その時の志野の返事は一言。

『そっか』

 ただそれだけ。本当、彼女は勉強が一番で、俺には無理に合わせてくれてたんだなと痛感した。
 彼女が頑張っているのを応援できればよかったのかもしれない。でも、俺は愛されない関係が苦しくて、耐えられなくなってしまった。

 「……ほら、元カレのボロアパートにお邪魔してないで帰りなさいな」
 あえて“元カレ”という言葉を使ったのは、少しでも志野絢音にとって特別な存在でありたいからか。だとしたら、醜い執着もいいところだ。
 「帰る場所、ないんだ。大学辞めたし」
 「はあ!?」
 驚く俺を尻目に、困ったように笑ってごろんと布団の上に横になる。
 第二ボタンまで開けられたシャツから、肌白い鎖骨と控えめな胸の谷間が覗いた。
 「学校が嫌になっちゃって退学して……って、どうしての?顔、背けちゃって」
 志野のちょっと見えちゃいけない部分を見てしまったので咄嗟に壁のシミを睨んでいたところに、悪戯っぽい声を投げかけられる。
 「う、うるせぇよ!それより、見えてるぞ!」
 熱くなった顔を隠して、無防備な志野に指摘する。
 「んー?これのこと?えへへ、匠海くんはエッチだね」
 「どこで覚えたんだよそんな言葉……」
 付き合っていた頃の志野絢音は間違っても“エッチ”などという言葉は使わなかった。そもそもシャツのボタンは外さないし、こうやって人をからかう真似もしなかったはずだ。
 なんだか、俺の知っている志野が消えていく気がして寂しくなる。
 「……お前、ホントにどうしたんだよ?学校が嫌とか、そういうの言うヤツじゃなかっただろ」
 どうにも今の志野は様子がおかしい。さっきの行動もそうだし、退学したのだってそうだ。一応元カレの俺から考えれば、ありえないことばかりが起こっている。
 「私、友達作るの下手だからさ、大学でも独りぼっちだったんだ。それで寂しくなって、学校辞めて……匠海くんのところに来ちゃった」
 寂しそうな瞳が俺を射抜く。そういえば、彼女は高校時代からずっと一人だったか。
 「それなら、親御さんのところに帰るとかさ……」
 「えへへ…お恥ずかしながら、お父さんと大喧嘩しちゃって。ほら、無断で退学しちゃったから。事実上、勘当されたかな?」
 照れたように笑っているが、普通に大事じゃねぇか。
 「ね、お願い。匠海くんのところに置いてくれない?」
 もぞもぞとベットから抜け出して、俺に擦り寄ってくる。甘い、いい匂いがした。
 「そういうわけにもいかないだろ。男の家じゃなくてホテルに泊まるとか……」
 「迷惑にはならないよ。匠海くんが心地よくいられるように……私は『なんでも』するよ?」
 腕に抱き着き、耳元で熱っぽく囁いてくる。

 なんでも。その言葉に、邪な欲望が鎌首をもたげた。
 例えば、キス。そういえば付き合ってるときもしたことはなかった。志野と舌を絡めあえば、とても気持ちいいだろう。
 例えば、愛撫。彼女の小ぶりな胸を思う存分揉みしだいてみたいと、何度も思った。
 例えば、セックス。彼女を犯す妄想など、数えきれないほどしてきて………

 「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」
 そこまで考えて、ようやく正気に戻った。咄嗟に腕を振り払い、志野と距離を取る。
 志野はというと、だらしなく目元を下げて、熱っぽく蕩けた表情をしていた。
 あの優等生な志野絢音の顔じゃない。男に媚びるような、雌の顔だ。
 「………なんでもは、しなくていい。……行く当てが見つかるまでなら、泊めてやる」
 今の志野を野放しにしちゃいけない。仮に俺が彼女を追いだしたら、それこそ何をしでかすか分からない。寝床欲しさにその辺の男を引っ掛ける可能性だってないとは言いきれない。今のコイツは、それくらいに危なっかしかった。
 「えへへ、やっぱり匠海くんは優しいね。」
 さっきまでの女の顔が鳴りを潜め、代わりに朗らかな笑みが浮かぶ。ああ、この笑みも付き合っていた当時ではお目にかかれなかった顔だ。
 「でも、匠海くんがしたいことなら、本当に私はなんでもシテあげるよ。だから遠慮なく言ってね?」
 眼鏡越しの志野の目は、見たことのない色をしていた。執着を甘く溶かしたような、情念の色だ。
 細い指先を口元に添え、軽く開けた口から吐息と共に小さく舌を出す。空いた片手はさりげなくシャツの胸元に引っ掛け、瑞々しい身体をちらりと見せつけてくる。
 誘うような仕草、記憶の中の志野絢音との乖離に、ゾクゾクとした劣情が走る。
 「よろしくね。昔みたいに、仲良くしよ?」
 彼女がどうしたのかはわからない。だが付き合ってた頃みたいには、もう二度とできないのだろうな。
 俺は、変わってしまった志野を呆然と眺めることしかできなかった。



■■■■■■■■■■■■



 志野との生活は、予想していたよりも遥かに快適だった。
 「おかえりなさい!あっ、鞄は預かるよ。お疲れ様」
 大学から帰れば、ラフな格好の志野が出迎えてくれる。可愛い女の子に『おかえり』と言ってもらえるのは、孤独な一人暮らしの寂しさを消し去ってくれた。


 「そうそう、お部屋を片付けてたら……その…こんな物が……」
 「掃除してくれるのは嬉しけどエロ本を見つけるんじゃねぇ!」
 彼女はこんな風に掃除をはじめとする家事もこなしてくれる。今までは帰ってから全て自分でしなければならなかったから、代わりにやってくれる志野にはとても助けられていた。秘蔵のエロ本を見つけられたのはマジで辛いけど。
 でも志野の恥ずかしそうな顔を見れたのは良かった。顔を赤らめてもじもじする志野はめっちゃ可愛かった。


 「はい。今日はシチューにしてみたよ。いっぱい食べてくれると嬉しいな」
 朝昼晩。毎日ご飯を用意してくれる。ずっとコンビニの弁当か総菜パンばかりの食生活だったが、やはり手料理に勝るものはない。
 加えて志野の作ってくれる料理はとても美味しく、食べるとなんだか元気になるのだ。活力が湧くというか、疲労が飛ぶというか。まぁ、何故か下半身のほうも元気になるわけだが。
 ちなみに志野にその辺のことを聞いたら
 「うーん…魔法の力かな?」
 と、はぐらかされてしまった。
 食べたら欲情する料理ってかなり怖いが……。


 なんにせよ、志野が来てから俺の生活は一変した。楽なのもあるが、何よりも傍に誰かいるということが嬉しかった。
 それが、まがりなりにも過去に恋した相手なら、尚更に。
 もしも志野と別れることなく結ばれたのならば、こういう未来もあったのかもしれない。なんて今更か。彼女との関係はとっくに終わったのだから。

 こうして俺は、志野との日々を過ごしているのだが………いいことずくめとはいかない。


 「んっ♡」
 「待て、お前何しようとした」
 家に帰れば必ず彼女は出迎えて、そして口づけをしようとするのだ。
 「だって、おかえりのキスは必要でしょう?」
 「他人にする物じゃねぇよ」
 付き合ってたときだってキスしたことなかったくせに、今頃になって接吻をせがんでくる。どうにか押さえつけて回避しているが、油断の隙もあったもんじゃない。


 「へぇ……匠海くんは、こういうのが好きなんだ…♡」
 発見したエロ本を捲り、とろん、とだらしない笑みを浮かべる。
 「眼鏡の女の子が好きなの?えへへ、私みたいな子をオカズにしてるんだ…♡」
 にやけた表情で抱き着いてきて、その柔らかい身体を教え込むように押し付けてくる。
 「この本と同じこと、シテあげようか?……私のほうが、イイと思うよ♡」
 昔は本屋に置いてるグラビアを見ただけで顔を真っ赤にして逃げ出していたのに。今は、真っ赤な顔をして誘惑してくる。


 「ねぇ、手が疲れちゃった。匠海くん、食べさせてくれないかな♡」
 食卓を囲んでいると、唐突に言い出しスプーンを置いた。俺でもわかるほどの、あからさまな嘘だ。
 「……ダメ?じゃあ仕方ないね」
 一度断れば、彼女はあっさりと引いてくれた。ただ、それは聞き分けがいいからなんかじゃなくって。
 「ん、じゅるる……ぐちゅっ…じゅぷ、ぺちゃぺちゃ…」
 シチューの注がれた皿に顔を沈めて、犬がするみたいに食べ始める。はしたない音を立てて白い液体を啜り、様子を伺うように上目遣いでこちらを見てきた。
 自分の好きだった女性が、かつては理性的で聡明だった少女が、目の前で畜生じみた行為をしている。その背徳の光景に、身体が熱くなりぞわりと身震いがする。
 「っ!やめろ馬鹿!」
 急いで志野の肩を掴み、皿から引き離す。がちゃりと皿ごとシチューがひっくり返り、テーブルと床にどろりとした白液が零れた。
 白い液体で顔中をべったり汚した志野は、何故か酷く淫らに見えた。きっと、コイツが男のモノをしゃぶり白濁した欲望を浴びたらこういう風になるんだろうな。
 「……あ、ごめんね。汚しちゃった。……すぐに綺麗にするね」
 志野と目が合った瞬間、身体が金縛りにあったみたいに動かなくなる。それこそ魔法にでもかかったように、指一本動かせない。
 そんな俺を尻目に、志野は零れたシチューを時間をかけて啜っていく。
 ああ、この白いのが俺の精液なら。這いつくばって一滴残らず舐めとってくれたのなら。そんな空想を志野に重ねれば、劣情が逸物を固くさせていく。
 「……ふぅ…ごちそうさま。……あれ?もしかして、興奮した?」
 目ざとく勃起した男性器を見つけて、いやらしい笑顔を見せる。
 「ムラムラさせてごめんね。私と匠海くんの仲だし……好きにして、いいよ♡」
 このときの俺は、金縛りの解けた瞬間に外に飛び出し、1時間夜の街を駆けて煩悩を消すことで志野の誘惑に耐えた。


 志野は毎日、俺を誘ってくる。初めは気のせいかと思っていたが、数日続けばわざとだと嫌でも分かった。
 どうしてこうなったんだ。俺の知る志野絢音はこんな子じゃなかった。
 ずっと勉強一筋で、真面目で、清楚で。情欲とは最も遠い場所にいる女の子だった。
 付き合っていた当時は、俺に性愛を向けてくれたらと夢想したさ。だが、それはあくまでも夢想だったはずだ。
 それがどうだ?夢想は現実となり、その現実の志野絢音は夢想の何十倍も可愛くて、蠱惑的だった。
 これはダメだ。これじゃ、本当に襲ってしまうのも時間の問題だ。

 だから俺は、彼女と距離を取ることを決めたのだ。



■■■■■■■■■■■■



 「……悪いな。今日の夜、お邪魔するよ」
 大学構内の壁にもたれかかり、電話を切る。
 そろそろ志野との同棲に限界を感じた俺は、あの家から離れることにした。志野の言動は日に日にエスカレートして、より性的で、誘う意図が強くなってきている。一緒にいれば、いつか間違いを犯しそうで怖かったのだ。
 だから、友達の所に泊まり込んで、避難することにした。先日合コンでゴールインした友達に連絡すれば、快く了承してくれた。恐らく、俺が寝ている隣で彼女さんとイチャイチャするつもりだろう。あれだ、『隣で人が寝てるのに……』みたいなプレイをする気だ。興奮するシチュエーションではあるが俺を巻き込むな。
 「っても仕方ないか。そもそも迷惑をかけてるのは俺の方だし」
 友人の濡れ場に鉢合わせるのは控えめに言って地獄だが、致し方ない。今はあの志野絢音といるほうが危ないのだから。

 次の講義の教室へ向かいながら、考える。
 「アイツを受け入れる覚悟とか、俺にはねぇよ」
 志野が好意を寄せてくれているとしても、俺はかつて彼女を捨てている。その理由だって、“志野が俺を見てくれないから”という自分勝手なものだ。
 「そうやって振っておいて、いざ誘われたら手のひらを返すのはダメだろ」
 ずっと彼女が好きだった。今でも彼女が大好きだ。
 その好意が志野に伝わらないことが辛かった。その好意が志野から返ってこないことが苦しかった。
 だから捨てた恋だ。
 「志野と俺は結ばれねえよ」
 脈がないってのも分かってた。彼女はずっと教科書と向き合っていたから、俺と目が合ったことは今までなかった。会話だって、そんなに続かなった。志野から俺に話しかけてくれたことなんて、あったかな。
 「ははっ、思い返せば……ホントに恋人っぽくねぇや」
 どれだけ素っ気なくても、傍にいられればそれでいいと思っていたのにな。
 「やっぱ、好かれないのはしんどかったわ」
 志野絢音は俺が好きじゃなかった。義理で恋愛ごっこに付き合ってくれただけだ。彼女はいい子だから、気を使ってくれていたのだろう。
 そうして、1年前に俺たちは終わった。
 志野はなんともなく難関大学へ進み、俺も彼女から離れるように遠くの大学へ行った。
 そのままお互いを忘れて、二度と会うこともなく人生を終えるはずだったのに。
 「なんで会いに来ちゃうかねぇ」
 どうして今頃になって俺の元に来たんだ。
 どうして今頃になって俺に笑いかけてくれるんだ。
 どうして今頃になって、恋人みたいな真似をするんだよ。
 「……もう別れたんだよ。俺たちは」
 破れた恋は治らない。だから、これ以上後悔させないでくれ。
 迷いを振り切るように、教室のドアに手をかけて、開く。



 「やあ、匠海くん。遅刻ギリギリだね」


 教壇に立っていたのは教授ではなく、悪戯っぽく笑う志野絢音だった。
 部屋には志野しかいない。いつもならいるはずの他の学生たちも存在しない。完全に、二人きりだ。
 「…どうして、お前がここに……」
 「時間になったし、とりあえず座ろうね」
 志野が指を鳴らした瞬間、身体が硬直する。
 「なっ……!」
 操り人形のようにぎこちなく、身体が勝手に動いていく。自分の意志とは関係なく最前列の椅子へと歩かされてそのまま座らされた。
 「……志野…!お前、何をした…!」
 「魔法の力だよ。えへへ、頑張って覚えたんだ」
 あくまで無邪気にはにかむ志野だが、その瞳には暗い情欲を湛えていた。
 「匠海くんは鈍感だから、私と特別授業しようよ。一緒に勉強なんて、あの頃みたいだよね」
 あの頃、間違いなく付き合っていた頃を言っているのだろう。あぁ、そういえば志野によく勉強を教えてもらってたっけ。
 「志野…!」
 「苗字で呼ばないでよ。私と匠海くんの仲だもん。……絢音って、読んで?」
 「付き合ってたときだって名前で呼んだことはないだろうが…!」
 甘えた声を遮って睨みつける。
 が、志野には効果が一切なく、それどころか俺からの視線に悶えて身体をくねらせる始末だった。
 「あぁ…♡それいいよ…♡匠海くんに見られてる…♡私だけを見てくれる…♡」
 引き寄せられるみたいに俺の目の前まで歩いてきた志野が、恍惚としながら肩を掴んでくる。
 「ねぇ、知らなかった?私ね、匠海くんのことが好きだったんだよ」
 彼女の瞳の中には、俺しか映っていなかった。
 「でもさ、私はこんな地味で、真面目で、面白くも可愛くもない女の子だから……匠海くんの彼女であり続ける自信がなかったの」
 金縛りはもう解けて、身体は自由に動かせる。しかし、どうしてか志野から目が離せなかった。
 「匠海くんに振られたあの日。『仕方ない』って思ったんだ。だって、私にはキミを引き留められる魅力がないから。飽きられるのも当たり前だよね」
 そんなことはない。お前は十分魅力的だ。そう言う暇もなく志野が話を続ける。
 「離れ離れになってからも匠海くんのことばっかり考えててさ。『ああ、匠海くんとはもう二度と逢えないんだろうな』とか『匠海くんは私のこと、忘れちゃったかな』とか……」
 ふと見えた彼女の目は、涙で濡れていた。
 「『匠海くんは、この先違う誰かと結ばれるんだろうな』……とか」
 縋りつくように、ただ強く。肩を掴む手に力が込められる。
 「そこまで思い至って、ようやく私はどうしようもなくキミを求める女なんだって気づいたんだ」
 破れた恋は戻らない。覆水を盆に返えすことは不可能なのだ。
 「私は匠海くんを手に入れられるならなんだってする。
  人間を捨てて、魔女に堕ちたとしても、絶対にキミと結ばれてやる。」 
 だから、志野絢音はヒトであることをやめたんだ。
 一度終わった恋を取り返すために、魔の力に手を出した。
 俺への執着を燃やし、愛欲に焦がれるその姿。地味ながらも、俺を魅了して止まない人ならざるその美貌。
 とっくに、コイツは魔物であったのだ。そのことに、ようやく気がついた。
 「好き、好き、大好き。私は、なにより匠海くんが大好き。匠海くんと一緒になれるなら、それ以外は何一ついらない。」
 実際に彼女は全てを対価に差し出した。親と縁を切り、せっかく入った大学も捨て、今まで人生で積み上げてきたモノを手放したのだ。
 志野絢音は、そこまでしてでも俺を求めたんだ。
 「ねぇ、匠海くんは私のことを好きじゃなくていいから……私のモノに、なって…?」
 泣きそうな顔で、ゆっくりと唇が近づけてくる。とことん自分に自信がない彼女の告白は、寂しさと独占欲に満ちていた。
 ……どうにも、無性に腹が立つ。
 「んむぅっ!?」
 志野が唇をつける前に、彼女を抱きしめて俺からキスをする。ただ触れるだけの子供みたいな口づけだ。
 柔らかい。ずっと望んでいた彼女とのキスだ。
 「……言わせてれば、やれ『魅力がない』だの『飽きられる』だの『好きじゃなくても』だの、うだうだとよお…!」
 正直言って、頭にきた。
 「俺はなぁ!ずっと前からお前に堕ちてんだよ!志野が……絢音が好きすぎてどうにかなりそうなんだよ!」
 俺の惚れた女が悪く言われるのは我慢がならない。それが、愛する人自身の口からの物ならば、到底許せやしない。
 「お前鏡見たことねぇのかよ!つーかどいつも見る目がねぇんだよ!絢音は可愛いんだよ!」
 ボサボサした黒い癖毛も、理知的な印象を与える眼鏡も、白い肌も、細い肢体も。
落ち着いた声も、匂いも、何もかも。そのすべからくに俺は魅了されているのに。
 「ちくしょう!付き合ってた頃は冷たかったくせに!別れてから距離を縮めてきやがって…!」
 「だ、だって……匠海くんとどう話せばいいか分からなかったし……私みたいなのと一緒にいたって、面白くないって……」
 「それなら告白してねぇわ!こっちはお前が隣にいるだけで心臓バックバクだったってのによお!」
 胸に抱いた彼女は困惑しつつ、しどろもどろに答える。なんで怒られているのか分かっていない様子だ。
 「ああクソが!もう一回言わなきゃ分からねぇか!?俺は、絢音が好きだ!だから付き合ってくれ!!」
 大声で叫んだ、人生二回目の愛の告白。半ばヤケクソだが、これは偽りのない俺の本心だ。
 絢音とずっと一緒にいたい。もう離れたくない。彼女との恋を、もう一度やりたい。
 「……私で、いいの?ほ、ほら…この世には他にも可愛い女の子がいるし……もっと匠海くんに似合う子だって……」
 にやけきった表情で何を言っているんだか。愛する男に選ばれ、優越感に塗れて悦に浸る絢音は口先だけの言葉をぺらぺら並べてきやがった。
 「絢音が好きだっつってんだろ!この……バーカ!バーカ!」
 だらしなく惚けた絢音の唇を奪い、舌を彼女の口に滑り込ませる。今度は舌と舌を絡めるキス。経験がないのでテクニックもクソもない、ただ貪欲に求めるだけの口づけになってしまった。
 「んっ♡………ちゅぅ♡…くちゅ♡」
 そんな必死な舌使いに、絢音は応えてくれる。互いの唾液を混ぜあって、その味を心行くまで愉しむ。
 「…っはぁ♡…嬉しい♡匠海くんにキスされちゃった……♡」
 力の抜けた絢音が身体を預けてきた。頬は朱色に染まり、色っぽく肩で息をしている。
 「ひゃう!?……た、匠海くん?なにか…お尻触って…ひぅっ♡」
 背中に回した腕を小ぶりな臀部に這わせて揉みしだくと、可愛いらしい悲鳴が上がる。
 「散々誘ってきたんだから……こういうことをしてもいいんだよな?」
 「ま、待って!外は明るいし、ここは学校だし……あっ♡そこはっ♡」
 「絢音のココは準備できてるみたいだけどな」
 スカートの中に指を突っ込んで絢音の秘所を撫でると、粘ついた感触がした。発情したソコは既に洪水を起こしていたらしい。
 「つーか、お前下着はどうした?着けてこなかったのか?」
 「んっ♡だ、だってぇ…ひっ♡匠海くんと繋がるのに、下着なんて…んぁ♡邪魔、だったんだもんっ♡」
 「ばっちりヤる気だったんじゃねぇか!」
 問いただしながらも責める手は止めない。入口の辺りをぐちゅぐちゅと弄ってやれば、悩ましい声が教室に反響する。
 「はっ♡はぁっ♡……あっ…♡」
 指をスカートから抜いて、絢音のシャツのボタンを開けてやる。小さな胸にツンと勃った乳首、お腹とへそ。ずっと見たかった絢音の裸だ。
 「やぁ…♡おへそ弄らないでぇ…♡」
 愛液で濡れた指でへそを引っ掻いてみる。お腹も柔らかい。顔を埋めて、白くてフニフニした腹部を堪能したい衝動に駆られたが、今はその下の方を苛めるほうが良さそうだ。
 「あっ……♡」
 スカートを脱がせて、彼女の大事な所を露にする。ぽたぽたと愛液ととめどなく溢れさせ、太腿に雫が伝っていた。もう辛抱たまらないようだ。
 「絢音。もっとよく見せろ」
 「はぁい……♡」
 あえて高圧的に命令すれば、彼女は熱に浮かされた様子で机の上に座り、股を広げてぐちゅぐちゅに濡れた割れ目を見せつけてくれた。
 「ぅう…はずかしいよ…♡あんまり、みないでぇ…♡」
 「見られて興奮してるくせに」
 顔を真っ赤にした絢音だが、決して嫌がってはいない。それどころか視姦されて感じ入っている。
 俺もそろそろ我慢の限界だ。ズボンのチャックを下ろし、すっかり大きくなった肉棒を取り出す。
 「ぁあ…♡匠海くんの、すごい…♡…いまから、いれてくれるの…?」
 「そんな欲しそうにされたら、挿れないわけにはいかないだろ。俺も、早く絢音と繋がりたいしな…!」
 ぴっちりと閉じられた入口に亀頭をあてがい、ゆっくりと中に沈めていく。
 「っ…!キツっ…!」
 絡みつく絢音のモノは、初めてなのか締まりが凄い。肉棒全体が強く圧迫され、気を抜けば射精してしまいそうだ。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
 どうにか奥まで突き入れると、絢音が声にならない声でよがる。
 「……はぁ、はぁっ♡…イッちゃった…♡たくみくんに、はじめてをささげて…イッちゃった♡」
 嬉しそうに涙を流し笑う絢音は、クラクラするほど艶やかで、可愛かった。ずっと恋焦がれた人を己のモノにした。その実感が、幸福が、胸の中に湧き上がる。
 「ね、うごいて♡いっしょに、きもちよくなろうよ…♡」
 「そうしたいけど……ちょっとでも動かしたら射精そうなんだよ…!」
 情けない話だが、女性経験のなかった俺の男根は役立たずで、余りの快楽に駄目になっている。というか絢音の膣内が気持ち良すぎる。1ミリ動かしただけで絶頂しかねない。
 男のプライドもあるが、俺は彼女と長く交わりたい。せっかく結ばれたのに、こんな短い時間で終わらせるのは嫌だった。
 「まだ出したくないんだ…♡じゃあ、こうしてあげる」
 きつく食いしばった口に指先が触れ、絢音が何言か呟く。すると、肉棒の快楽はそのままに、射精感が少しずつ落ち着いていった。
 「なんだ…?出そうにないぞ…?」
 「どうかな?気持ちいいのはそのままに、射精だけ遅らせる魔法だよ。長く愉しめるようにって思って、覚えたんだ♡」
 なかなかに不思議な感覚だ。俺の分身はびくびくと震えているのに、精が飛び出しそうにない。やばいくらいの快楽に襲われているが、割合冷静になれている。本当に、魔法にかけられたみたいだ。
 「今の私は魔法使い。どんな快楽、どんな交わりだって実現できるよ♡
  さぁ、望んで?私が全部、叶えてあげる♡」
 「……じゃあ、遠慮なくいくぞ…!」
 魔女のように妖艶に笑う絢音に突き立てた逸物を、限界まで引き抜き……一気に奥まで突き入れる!
 「っぁあああああぁぁぁぁぁぁっ♡」
 一往復しただけで今まで感じたこともないような快楽に襲われる。それは絢音も同じで、ビクビクと身体を震わせた。
 「やっべ…気持ちいい…!」
 「え、へへ♡あんっ♡……匠海くんに悦んでもらえるように…ひぃっ♡からだ、弄ったからぁ…♡」
 「弄ったって、なにしたんだよ…?」
 少なくとも俺には、セックスをするのに自身の肉体を改造するという発想はない。
 「匠海くんのモノを、きゃっ♡いっぱいよくするためにぃ♡ナカが、勝手にうねうねして扱くようにしたんだぁ♡…とっても、イイでしょ…♡」
喘ぎながらも絢音は説明してくれる。童貞だったからこんなものかと思っていたが、言われてみれば確かに揉みしだくように膣壁がうねっている。
 「あとねっ♡おまんこの味覚を強化してるからつ♡匠海くんの味がいっぱい感じられるんだけど……んあっ♡……これ、すごい…♡美味しすぎてぇ…おかしくなりそうだよぉ…♡」
 昔の理性的な志野絢音の面影はそのままに、俺の下で快楽に乱れている。かつては落ち着ていたのに、今となっては涎を垂らして艶やかな声を響かせるだけだ。
 「なぁ、どんなことでも叶えてくれるんだよなぁ?」
 もっと、絢音のあられもない姿がみたい。そんな意地の悪い欲望が胸に灯る。
 「うん…♡匠海くんが悦ぶなら、どんな恥ずかしいことでもしてあげるよ…♡」
 「じゃあさ、もっと絢音がよがるところが見たいんだけど、できるか?」
 眼鏡の向こうの蕩けた目に少しだけ理性が戻る。口元に手を当て、なにかしら考えているようだ。邪魔するものいいが、更に気持ちいいことをしてくれるならと、腰の動きを一旦止める。
 「そうだね。なら、こんなのはどうかな?」
 絢音が自らの下腹部を撫でると、ハートを模した紋様が刻まれる。
 「んぁあっ♡……えへへ…やっちゃった…♡
  これはね、刻印……淫紋のほうが分かりやすいかな?快楽をより鋭く感じられるようになるもの、って思ってくれたらいいよ。」
 紫色に淡く光る刻印が浮かび上がった瞬間、膣壁がびくびくと痙攣し始めた。すでに効果が発揮されているのだろう。ただ俺のモノが入っているだけでも、今まで以上に感じているようだ。
 「はあっ♡…今のままでも、やばいけど…♡これね、私がイクと、一画ずつ模様が増えるようにしててね…♡私がいっぱい絶頂しているところ、見て分かるようになってるんだ♡」
 「いたせりつくせりだな。なら、始めるぞ」
 「うん♡満足するまで、シテ…♡」
 甘えた声に応えるよう、最奥に肉棒を叩き込む。

 「 んっ      あっ ♡」

 鈴口が子宮口にめり込んだ瞬間、絢音が大きく跳ねた。
 「………ひゃあああああああぁぁぁぁぁぁああああぁぁあっっ♡」
 一瞬、意識が飛んでた。余りの快感に脳が処理しきれなかったのだろう。
 が、帰ってきたところで逃れる術はない。
 「こりぇらめぇぇぇぇえぇっ♡イクぅぅぅぅぅっ♡」
 関係ないと抽挿を繰り返すと、さっそく下腹部の刻印が広がった。
 「もうイッたのかよ…!どんだけ感じてんだ…!」
 「やばいやばいやばいっ♡はぁあっ♡あたまバカになるぅぅぅぅぅぅっ♡」
 大粒の涙を流し、髪を振り乱してがくがくと痙攣して暴れまわっている。挿れにくいので腰を掴んで固定してやると、広がり続ける刻印が見えた。
 「だめぇぇぇっ♡イッたらぁ、ひぃんっ♡こくいんっ、おおきくなってぇっ♡もっとかんじちゃうぅぅぅぅっ♡」
 快楽地獄に堕とされよがり狂う絢音に、もはや過去の聡明な彼女は見る影もなかった。ほとんど喋らなかった口は淫らな声だけを響かせ、ろくに目も合わせなかった瞳には俺しか映っていない。真面目な表情はだらしなく緩んで、賢い頭は交尾のことでいっぱいになっている。
 かつて恋した志野絢音は、もういない。
 ここにいるのは、俺を愛し、そして俺が愛する一人の女だった。
 「とろけりゅうぅぅぅぅぅっ♡たくみくんのおちんぽでっ、あたまこわされちゃうぅぅぅぅっ♡ぱこぱこ、きもちぃぃいいいっ♡」
 昔のコイツなら、こんな下品なことは口にしなかっただろう。そんな彼女を壊したのは俺だ。俺が、絢音をこんないやらしくて、たまらなく可愛い女の子にしたのだ。
 「あの頃は、もっと賢かったのになぁ…!いいのか、こんなの覚えたら、もうマトモな人生送れねぇだろ…!」
 「いいっ♡いいのぉっ♡わたしっ、ずっとたくみくんにハメハメされるんだもんっ♡
  こーびしかっ、かんがえられないメスになるのぉぉっ♡んああぁぁぁっ♡
  たくみくんのっ、せいどれいになりましゅっ♡いつでもどこでもおかされるっ、にくべんきになりましゅぅぅぅぅぅっ♡」
 「それも悪かねぇけどっ、俺は恋人がいいな…!」
 「こいびとっ♡いいのっ?わたしみたいなメスでっ、っひぃいぃいぃぃぃっ♡」
 「絢音は、嫌か…?」
 重点的に子宮をノックしてやると、一突きごとに跳ね上がり、刻印の紋様が増えていく。紫色の線はすでに下腹部全体を覆っていて、絢音がイキっぱなしになっていることがよく分かった。
 「こいびとっ、こいびとぉっ♡まいにちっ、たくみくんにあいされるのっ♡
  いいよぉっ♡んひぃっ♡たくみくんに、おまんこされてっ♡ラブラブせっくしゅっ♡
  してぇっ♡わたひをぉっ♡こいびとにしてぇぇぇぇぇぇぇぇええぇぇっ♡」
 舌を突き出し、浅ましい懇願を恥ずかしげもなく叫ぶ。
 ホント、なにしても可愛いな。そう思うくらいに、俺は絢音に嵌っているようだ。
 「は、ははっ!俺、すっげー幸せだ!ずっと、絢音とこうなりたかった!」
 「わたしもっ♡ずぅっと、たくみくんといっしょにっ、なりたかったのぉっ♡
  えへ、えへへ♡……あんっ♡りょうおもい、だねっ♡」
 ずっと思い描いてきた絢音とのセックスは、最高に幸せだった。ようやく恋が報われた実感が、深く繋がる愛情が、幸福感にとなって俺たちを包み込んでいく。
 「絢音、出すぞ!」
 魔法で誤魔化しても、幸せと悦びは騙せない。着実に責め立てられていた男性器から精液がせり上がってきているのを実感する。
 「うんっ♡ナカにだしてっ♡もうはなれないようにっ♡わたしに、きざみつけてぇぇぇぇぇぇ♡」
 あまりに愛おしくて、絢音の身体を抱きしめる。彼女もまた、手足を背中に回して抱きしめてくれた。
 「愛してる」の言葉を叫びあい、「大好き」を分かち合う。
 互いが完全に一つになったかのような快感に身をゆだね、最奥に精を放つ。
 「んぁぁぁぁああああああっ♡イクぅぅぅぅぅぅううううっ♡♡」
 快楽でいっぱいになった絢音が、抱き着く力を強めて身体中で絶頂する。
震える肉棒を咥えた媚肉もまた、俺をより深く感じさせようとしがみついてきた。
 「ぁあ……しあわせぇ……♡もう、はなさないよ…♡」
 「言われなくたって離れねぇよ。いつまでも幸せにしてやるからな」
 「うんっ♡……ずっと、一緒に…♡ずっと、幸せでいようね…♡」
 どちらともなく唇を重ね、舌を絡める。
 繋がっていることを確かめ合って、二度と手放さないようにと、深く、深く愛し合う。
 一度破れた恋は、ここにもう一度結ばれた。
 今度は、いつまでも恋をしよう。



■■■■■■■■■■■■



 「えへへ、匠海くんとこうしてデートするのも久しぶりだね」
 よく晴れた休日、俺と絢音は二人並んで街を歩いていた。
 「ま、昔はこうして手を繋ぐことだってできなかったけどな」
 「むぅ、悪かったって」
 頬を膨らませて手を放し、腕に抱き着ていてくる。絢音の小さくとも確かに存在する柔らかな胸が押しつけられた。
 「んっ。私、こうしてるの好きだなぁ。…なんだか、匠海くんを独占してるみたいで」
 うっとりとして肩に頬を擦り寄せてきた絢音が愛らしくて、優しく頭を撫でてやった。

 一度別れた反動か、絢音は常に俺の傍にいたがり、暇さえあれば身体を絡めてくるようになった。
手を握ったり、腕に抱き着くなんて当たり前。どちらかが寂しくなれば、何時何処でも関係なく交わったりなんてこともしている。
 大学に行ってる間に俺と離れるのが耐えられないと言って、絢音が俺と同じクラスに編入してきたときは流石に驚いた。おかげで退屈な授業中でもイチャつけて、大学生活が楽しくなったのだけど。
というわけで、今や24時間毎日絢音と一緒にいるといっても過言ではない。いやはや、好きな人と常にいられるのがこんなにもに嬉しく、幸せだとは。

 「今日はね、久しぶりのデートだからいっぱい下調べしてきたんだ」
 甘え切った様子の絢音が、街を案内してくれる。
 「美味しいお店から定番のデートスポット、品揃えのいいアダルトショップまで!
あっ、丁度いい路地裏も見つけてるから……我慢できなくなったら、しようね?」
 魔女と呼ぶにふさわしい妖艶な顔で誘ってくる。愛する人との快楽に堕ちた、最愛の魔女からの招待状。当然、断ることなんかできるわけもない。
 「じゃ、さっそく案内してもらおうか」
 「えへへ…♡今日も、たくさん愛してね…♡」
 俺だけの可愛い魔女に攫われて、路地裏まで連れ込まれる。
 「髪の毛一本から精液の一滴まで全部私のモノ。絶対に、手放したりしないからね♡」
 街の明かりとは反対に、薄暗く人気のない道で、密やかに愛を交わす。執着するかのような抱擁と、貪るような口づけ。
 聡明な少女が愛欲に浸り、獣みたいに涎を垂らして悦楽に沈んでいく。
 「永遠に、大好きだよ」


 二度と、離れない。二度と、離さない。
 いつまでも二人、幸せな快楽に堕落しよう。
 ようやく、俺たちの恋は叶ったのだから。
20/04/08 12:17更新 / めがめすそ

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