〜真実の嘘、暖かい光〜
――春眠暁を覚えず。
そんな言葉があるが今は冬真っ盛りだから、俺には関係ない話だと思う。
……が、こたつに入って熟睡し、次に起きたときにはそこから出られなくなったとしてだ。
そのときはなんて言うのだろうか？
――冬眠暁を覚えず。
当たり前だよっ!?
そこら辺の熊さんにでも聞いてみろ、たぶん相手にされないだろうがな！
取りあえず何が言いたいかって？
暖かいところは魅力的だってことだよ。
俺、穂村明良(ほむら あきら)もそんな魅力に囚われた一人だった。
そして俺の唯一の同居人もまたそんな一人なのだが……これが気難しいもので、俺が構おうとすると離れていくくせに、ちょっと離れると自分からくっついてくるんだよな。
こんな態度をとるのがかわいい女の子ならよかったんだが、猫じゃなぁ……まあ猫は大好きだし、悪くはないんだけど。
俺はそう思いながら炬燵に足を入れ、丸くなっている愛猫の環(たまき)をモフモフとする。
「って、もうこんな時間か……そろそろ大学に出なきゃな。環、留守頼んだぞ。」
俺は大学に足を向け、家を出た。
＊＊＊＊＊
あたしは寒いのが嫌い。
冬なんてもうこたつから動く気も起きないわ。
でもアイツは暖かいの。
アイツのそばに居るだけであたしは頭がフワってなって、心の芯から暖まっていくみたい。
一人の(一匹の)ネコマタとして、アイツとの関係がもう少し進展したらって気持ちはあるけど……。
自分でもわかってる、いっつも素直になれないで距離を置いちゃうこと。
……穂村環、それがあたしの名前。
危うく最初は安易に『タマ』になるところだったから、流石に怒って引っ掻いてやったわ。
まったくもう、わかってない。
アイツはあたしのこと、全然わかってない。
あたしはアイツのことを考えながら人間の姿をとって、習慣になっている自慰を始めた。
「……明良の……んっ、あっ♪ 明良のバカ……っ！ こんなにあたしを好きにさせておいて、あんっ、何も気がつかない、なんて……っ！」
アイツはさっき猫のあたしに留守を託し、大学へ出ていったから今この家にいるのは私一人。
慰みで生まれた音だけが部屋を包んでいた。
そうしていたら、さっきアイツが出ていったはずの扉が再び動き、ガチャリと音を立てた――。
＊＊＊＊＊
忘れ物をした。
→さっき出発したばかりの家に帰った。
→可愛い女の子が一人で自慰をしている。
……うん、これは夢だな。たぶん俺の本体は今もこたつで冬眠しているんだろう。
ってことだがこの女の子はいったい誰なんだ？
いくら夢の中とはいえ、全く面識の無い女の子を家に招き入れるほど男として根性据わってない筈だぞ俺は……。
そしてその女の子の方はと言うと、何やら『どうしよう……!?』と顔に書いているかのような表情をした後、顔を真っ赤に染めた。
「み、見ないでよこのバカ明良ーっ!!///」
「え、う、うわぁっ!?」
ちょうど女の子の近くにあった、棚の上のダルマや赤べこなどが飛来してきた。
間一髪、なんとかドア外に避難する俺。
「ふはぁっ、何なんだ!? しかも、なんで俺の名前を知って……!?」
……まさか。
俺の頭にある考えがよぎる。
子供の頃からずっと一緒に過ごしてきた環だ。
猫は長生きするとネコマタになると聞いたことがある。といっても昔語りのような、根拠などまるでないものだったが……。
だがそう考えると辻褄が合う。ちらりと見えたさっきの娘の頭には不自然な突起が２つ付いていたから、あれがおそらく耳なのだろう。
そして身体は申し訳程度の体毛が胸や大事な部分を隠すように生えていた。
環と同じ、少しくすんだ茶色い毛だった。
……結局のところ、これは現実なのか……？
などと考えていたらドアが開き、さっきの女の子が服を着ている状態で俺を見た。
「……入って、いいわよ」
「あ、ああ……ってそのTシャツ、俺のじゃないか!?」
「っ!? あっ、こ、これはその、あんたの匂い……じゃなくて！ えっと……そう、これしかなかったから！ べ、べつにアンタが居ないときにいつも着てる訳じゃないから!?」
取り繕うように女の子はまくし立てた。
「なんかいつもいい香りがすると思ったんだ……お前の仕業だったんだな？」
「い、いい香り……っ!? ぁ、ぁう……っ///」
耳をピクピクと動かしながら、真っ赤になり女の子はうずくまる。
「……まあ、いいや。とりあえずお前、環……だよな…………？ これは夢じゃなくて現実なのか？」
俺の言葉に、女の子は顔を上げずに呟いた。
「気づくのが遅いわよ、もう……。どれだけあたしが…………」
「え……？」
うつむかれたまま小声で喋られたので聞き取るに聞き取れず、思わず聞き返してしまう。
「あ、あはは、いや、ええうん、そうよ？ ここは間違いなく現実だし、あたしは環。……黙ってたけど、ネコマタなの」
ネコマタ。
その言葉が環からも発され、俺の想像とまさかの合致を果たした。
「何となくそう思ってたけど、やっぱりか……一体いつから？」
俺がそう聞くと、環は怪訝そうな顔をする。
「いつから……？ 最初からに決まってるじゃない。あたし達はネコマタとして生を受けるんだから」
「そうだったのか……!? 今まで全然気がつかなかったぞ……！」
「もう……アンタが鈍いから……っ、だから私はいつも一人で…………」
そうしてまたうつむいてしまう環。
普通はハッキリとしている環の声だが、語尾がたまに小さくなって何を言っているのかよくわからないときがあるな……。
すると静かになった二人の間で、『きゅうっ』という、ネコの鳴き声のような、ネズミの鳴き声ような……可愛らしい音が聞こえた。
音のした方を見ると、環が真っ赤な顔になりながらお腹の辺りを押さえていた。
「ぁう……/// ……ああもうっ！ お腹空いたわっ！ なんか作ってっ、このバカ明良っ！」
急に怒ったように俺にご飯を要求してくる環。
元々飼い主は俺なのだし、いつも環に餌を与えていたもの当然俺だから、環の要求はなんらおかしくないものなのだが、人間の姿をしながらそう言われると不思議な感覚がする。
「俺はお前の奴隷かっ！」
「あたしの大好きな飼い主様……じゃなかったっ、そう奴隷よ奴隷！」
うっ……かわいいな……。
やはり環はどんな姿でも俺の愛猫、環なんだと再確認。
……変わっていない。
そう、素直じゃないところも、ご飯をねだってくるところも、愛おしくなるほどに可愛いところも、なにも。
「……わかったわかった。お前の『飼い主』としての務めは果たすって」
「わかってないぃっ……!?」
耳をピンとたてながら頬を膨らませて抗議してくるが無視。
「その姿だったらいろいろ食べれるのか？」
メニューを決めるため、聞いてみる。
「……ええ、そうよっ」
無視したのが気に障ったのか、すこしご機嫌斜めらしい。
「じゃあテキトーに作るから、こたつで待っててくれ」
「テキトー!? 全力で作りなさいよ全力で！」
「はいはい」
不承不承頷く俺。
＊＊＊＊＊
「あー、温まるわ〜っ」
味噌汁を汁まで飲みながら環は満足そうにご飯を食べ終わった。
「朝の俺の残りしかなかったから、今度買い物行かなきゃな…」
日本らしく、白米に焼き魚と味噌汁。
まあネコマタだって猫だ、朝が魚だったのはある意味よかったかもしれない。
「じゃあそのときは、あたしも付いてくわ」
「料理、できるのか？」
これは少し意外だ。
「当然じゃない！ ご飯に鰹節と醤油かけるのって立派な料理でしょ？」
誰でもできるものだった！
「しょうがない、今度俺が教えてやるよ。少しは自信あるんだぜ？」
「知ってるわよっ！ あ、アンタがそうしたいって言うなら……教えてくれてもいいわよ……？」
「はいはいわかったわかった。けど、それならどうして買い物に付いていきたいって言ったんだ？ 鰹節と醤油にご飯なら家にあるぞ？ 材料が必要なわけでもないのに……」
『はい』は一回、『わかった』も一回……などと親に叱られそうなセリフだが、生憎と俺はもう大学に通う一人暮らしだ。
そして環は焦ったような声音で俺の問いに答える。
「それは……べ、別になんでもいいでしょっ!? 少しでもアンタと一緒に居たいとか、そんなんじゃないんだからね!?」
まくしたてるように言葉は続く。
「そ、それはそうとアンタ、なんで急に帰ってきたのよ!? 大学はどうしたの!?」
「あー、実はな……天気予報でにわか雨が降るって言ってたから、傘を持っていこうと思ったんだけど……」
環がご飯を食べ終わった頃にはもう天気が崩れ始めていて、今はもはや土砂降り。
そのとき強風が窓に雨粒を叩きつけ、ビシ、ビシッ、と音を立てた。
「きゃっ…………!!」
「うわ、かなり降ってるな……なんか今日はいろいろあったし、大学の方は友達に代返でも頼んでおくか。……お前のこともあるし、な」
見ると環は少し体が震え、握りしめた手はじっとりと汗をかいているようだった。
環は、雨に怯えているのだ。
「やっぱり俺がお前を飼い始めた、あの日のことがまだ……？」
言語によって意志疎通ができることがわかった今、ずっと思っていたことを聞いてみる。
「……ええ。あの日、氾濫した川の小島に取り残されたあたしを容赦なく凍えさせた雨が、今でも大嫌いよ」
俺はそれを助けた。思えばかなりの無茶、というか無謀なのだが……奇跡的に二人ともこうして無事だ。
もうあれから何年も経った今も、小島で震えていた環の姿は鮮明に覚えている。
「ねぇ……その、いつもみたいにそっち、行っちゃダメ……？」
雨の日はいつも俺の膝の上で震えていた環。
やはり、かなりの心的外傷を負ったのだろう。
環がどんな姿をしていようとも断る理由は欠片もなかった。
「ほら、環」
「うん…………」
俺があぐらをかいた膝に、スッポリとはまるようにして安定した環。
いつもと違う重みと以前から気になってはいた香り……女の子の匂いに俺は少し戸惑う。
環の方は安心したのか、ポツポツと呟き始めた。
「……あの時、アンタがあたしには光みたいな存在に思えたの。明るくて、暖かくて……。ずっと、お礼を言おうって思ってたんだけど、なかなか自分のことを明かすキッカケがなくて。だから、今言うわね。その……あたしを助けてくれて、ありがとう…………！」
珍しく、環が素直な気持ちを吐露してくれている。
なら、俺も真摯な気持ちで答えなければいけないな。
「ああ、どういたしまして」
環をしっかりと見つめ、俺はお礼の言葉を受け入れた。
「…あ、えっ!? ふぁっ……」
すると突然顔を赤く染めてうろたえる環。
首をブンブンと降った後、何かから逃げるように俺の腰に手を回し、胸に顔をうずめてきた。
ちょうどいい場所に頭があったから、俺はいつもしてやっているように、優しく耳の付け根部分を撫でた。
＊＊＊＊＊
――ダメ、もう限界。
今までずっと溜めてきた気持ちが、心の奥の奥からとめどなく湧き出てくる。
――――アイツの温もりがもっと欲しい。
――――アイツと、繋がりたい。
アイツの真剣な顔を見て心臓が高鳴って、まともに直視できなくなったあたしは逃げるようにアイツの胸に顔をうずめた。
そしたらアイツはあたしの頭……耳の付け根部分の敏感な場所を撫でてきた。
その手の優しさと顔をうずめた時に嗅いだアイツの匂いは、あたしの理性を飛ばすのに充分だった。
もう本能が抑えられなくって。
――――あたしは勢いよくアイツを押し倒し、キスをした。
いつものあたしならこんなに簡単にこういうことはしなかったはずなのに、どうして……？
そう考えることさえ、関係ないことだとばかりに体がどうしようもなくアイツを……明良を求めていた。
＊＊＊＊＊
多分、と俺は混乱した頭で推測する。
……さっきのご飯のせいだな。
喜ぶかと思って味噌汁にマタタビの粉末を入れてみたのが失敗(成功？)だったのだろう。
酔ったのかいつもより素直になった環が、自分の気持ちに真っ直ぐになっているのは、とてつもなくかわいい。
が、このままの流れで行為に及んでもいいのか……？
そのための確認だけはしておこうと思った。
「環……お前は俺のこと、好きか？」
「そ……、そんなわけないでしょっ!? どうしてあたしがあんたなんか……っ！」
酔っていてもさすがに直球過ぎると、帰ってくる答はいつもの環のように、正反対のこと。
その時点で答えは聞けたも同然なのだが、ひとつ、ある発見があった。
俺が気付いたのは、環が嘘を吐くとき、尻尾が上下左右に揺れ動いているということだ。
……じゃあ、次は変化球で勝負してみるか。
俺はなんとしても、環の口から『好き』と言わせてみたくなった。
「……なら俺は、環のことは好きじゃないって言ったら？」
その言葉に、目を見開く環。
「え……、っ？ 嫌いだなんて、そんなのいやぁっ!! 好きでいてよぉ……っ！ あたしは明良のことが好きなのに！ 明良があたしのことなんとも思ってなかったら、あたしの我慢はどうなるのよぉっ!?」
尻尾は動いていない。それはどちらも本当のことなのだから。
ずっと俺を想いながらその心をひた隠してきた、環の苦労がそこに見えた。
「俺の気持ちはな……」
言うなり俺は環を強く抱き締め、さっきとは逆に環の唇に自分のを被せる。
「んぅっ……!? ん、あふぃらぁ…………♪ はぷっ、ん、んんっ……!!」
俺を求めるように深いところまで舌が侵入してきた。
環は俺を放すまいと、二つに分かれたそれぞれの尻尾で輪を作るように俺を捕らえる。
身を寄せ合っているので、環の柔らかな双丘がフニャリと歪み、俺の胸にその形を合わせた。
唇をいったん離れさせて、俺は言う。
「好きなんかじゃない……環、大好きだ……!!」
「〜〜〜〜っ!!////」
この上ないほど、環は顔を赤らめた。
俺は環を抱きしめていた腕の片方をほどいて、双丘を揉みしだく。
「環……すごく柔らかくて、気持ちいい……!!」
それが俺の率直な感想だった。
軽くもう一度キスをして、そのまま俺は環の胸を弄り続ける。
「や……っ、ダメ、そんなとこ……っ！」
拒絶の言葉を発する環。
だが体に巻き付いた尻尾を見ると、先端の方が『もっと、もっと』とせがむように動いている。
環の尻尾による拘束が弱まったので、俺はピクピクと動く耳を口にくわえた。
意外にも冷たく、フニャリとしていて気持ちいい。
「にゃあぁんっ/// あひぅっ、ら、めぇぇっ……♪」
「そうか……？ ダメなら止めるけど？」
ちょっと嗜虐心が生まれた俺は、ここで焦らしてみる。
「あっ、やぁ……、それもダメぇっ……もっと……もっとぉ……♪」
蕩けるような声音で環が言い、耳の付け根辺りをスリスリと擦り付けるようにして頭を俺に寄せる。
「それじゃあお言葉に甘えて、遠慮なく……っ!!」
俺は胸を揉んでいた手で、固くなっている薄桃色の突起をつまみ、軽くつねる。
そしてそれと同時、耳に息を吹きかけてやった。
「あ、ふぁあぁぁぁあんっ!!」
環は全身を震わせ、鳥肌を浮かべながら軽く絶頂したようだった。
俺を捕らえていた尻尾の方は完全に束縛が解け、ピンとまっすぐ伸びて硬直してしまっている。
毛が逆立っているようで、丸く太くなっているように見えた。
「んっ……はぁっ……はぁっ……！ それならお返しよ……♪」
息を少しの間整えた環は強引に俺のジーンズを脱がし、俺のそれを露わにしてきた。
しばらくの間恍惚とした表情で見つめられ、俺も恥ずかしさがつのる。
俺の羞恥に反応してか、俺のそれがピクンと跳ねた。
環の表情は恍惚としたものから一転、さながら獲物を狙う狩人のようなものに変わると、ネコぱんちのような手さばきで俺のそれを掴み、おもむろに口へと運んだ。
「ん……じゅるっ、あむ……んぐ、れろぉ……♪」
環の舌は猫のようにザラザラでも、人間のようにぬるぬるもしていない、ちょうどいい感触だった。
それが俺に刺激を与える。
「くっ…あぁっ」
思わず声が漏れてしまうほどの快感。
「あたしだけ気持ちよくなっちゃって、アンタになんもないなんて……不公平、よねっ！」
言葉を発するために浅いところまで引いていた口を、一気に奥に、根本まで呑み込むようにされ、俺のそれは快感にビクンと震えた。
「ろお？ ひもひいいれひょ？」
喉をコロコロと鳴らしながら環がそう言う度、奥まで飲み込まれているそれも自然と刺激される。
「環っ、お、俺もう……!!」
俺のそれはすでに暴発寸前だった。
……が、そこで急に環は口を離し、俺への刺激を止める。
射精ができずに口淫が終了してしまい、とてももどかしくなってしまう。
「環、なんで……っ!?」
「ふふ……、さっきあたしを焦らした分のお返しよ。それに……出すならココにしてよね……っ！」
仰向けになった俺にまたがり、腰を下げて俺のそれをゆっくりと挿入していく。
「ん……っ、あ、はぁっ……♪ 明良のが、あたしに、あっ、入ってくるぅっ……♪」
ゆっくりと、味わうようにして環が俺と繋がっていく。
俺はしかし、さっき焦らされた分のもどかしさが残っていた。
環の腰を掴んで一気に奥へと突き挿れ、そのまま激しく動かしてやる。
「あぁぁぁぁっ!? ぅん、あっ!? ゃんっ!? にゃぁん♪ らめっ、いきなりそんなっ、おくっ、こわれちゃうのぉっ/// おかしく、なっちゃ、ぅぁ、ぁっ♪ ぁ、あぁぁぁぁぁぁんっ♪」
断続的な痙攣のリズムが、環の絶頂を伝えてきた。
俺は休むことなく空いた手で彼女の尻尾の根本、尾てい骨の辺りをコリコリと弄る。
「ひあぁぁんっ!? そんなっ、さっき気持ちよくなっちゃったばっかなのにぃ♪ しっぽっ、しっぽらめぇぇっ!?」
ネコマタとして引き締まったしなやかな体は、それでも快楽を執拗に貪っていた。
「ぁ……やっ、またっ♪ またきちゃうっ♪ お願い、こんどは一緒に……っ!!」
「環……っ!!」
「あき…らぁ……♪ あっ、ふっ、ぁっ、ぁにゃっ、ふにゃあぁあぁぁあん!!!!」
抑えきれない気持ちとともに、ドクドクと俺の精が環に注がれる。
「明良の……、温かぁい……♪ あたしこれ、大好き……っ」
それを境に、繋がったまま環はまどろみに墜ちた。
＊＊＊＊＊
〜雨上がり〜
「……さて、これからは環の分も料理作らないといけないから、買い物に行ってくるよ。環は俺が帰ってくるのを待っててくれ」
「一緒に行くって言ったじゃない!! 忘れたの!?」
「でも環……立てないだろ？」
そう。目を覚ました環はさっきの行為で腰が抜けてしまって、しばらく足に力が入らないらしかった。
「うぅ〜っ//// 明良のバカっ!! バカ明良っ!!」
「大人しく留守番できたら、後で夜にご褒美あげようかなぁ〜？」
「なっ、ば、バカっ! 何言ってんのよもうっ！ ……明良なんて、大大大嫌いよっ!!」
――にわか雨の止んだ昼下がり、そう言った環の尻尾が今までで一番大きく揺れて、七色の虹をなぞった。
〜end〜
13/02/22 22:49更新 / ノータ